「女の子って不安定で移り気じゃないですか。 そこは沙織も同じだから普通の女の子を演じた感覚ですけど、 どんなコでも沙織のようになる可能性はあるんじゃないかな」

ブラジャーを外したＧカップの乳房に客の手を導き、全身愛撫、素股、口戯で射精へと導く身体障害者専門のデリヘル嬢、沙織。彼女は身体障害者の「生と性」に接することで内面的な変化を遂げるというセンシティブな女性だ。その沙織を映画『暗闇から手をのばせ』で演じたのは、女優として着実にキャリアを積み重ねている小泉麻耶ちゃん。沙織を通して伝えたかったこととは――。本作に加えて、3月29日から4月1日まで上演の舞台「ドブ、ギワギワの女たち」でも麻耶ちゃんの女優魂が観られる。ぜひ劇場へ！
──体当たりのシーン満載ですね。特に下半身に顔を埋め、フェラチオをするところは驚きました。
「あれ、完成作を一緒に観た友だちからも『まさか、本当にしてるの!?』と言われたんですけど、するわけないじゃないですか（笑）リアリティを出すために、現場で監督やスタッフさんたちと歯ブラシの柄を使おうって案も出たんですけど、本番では違うあるモノを代用しました。みなさんの夢を壊したくないから何かは秘密ですけど、カメラマンさんのプロの技もあって、本当にしているみたいですよね。私も驚きました」

──リアリティを出すために、衣装や小道具の協力も？
「ご相談という形で私の私物を使わせて頂きました。そういう意見って結構言っちゃうほうなんですよ。超ミニワンピースとか昔フツーに着てたんですけど、ある時、年配の方から『風俗嬢みたいだよ』と言われたことがあったから、それを持参して。部屋着で身につけたピンクのキャミとショートパンツも、私物です。寝る時は今の時期だとさすがに寒いですけど、最近早起きを心掛けているから、朝起きてお風呂に入った後、ボディークリームを塗る時に。風俗で働いている沙織という人間がそこに生きているようにしたくて、露出を多めにしました」

──クランクイン前に、風俗嬢の方から話を聞いたと伺いましたが。
「現役の方と以前していた方、両方から聞きました。今は家族の借金のためになるような人はほとんどいなくて、ホストに狂うか整形やエステとかの自己投資、ひたすら貯め込むかの３種類に分かれるらしいです。沙織はホストにハマった挙句、借金を背負ったタイプかなと、台本には書いてありませんでしたけど、自分の中で設定して演じました」

──劇中で沙織は、３人の客に性的サービスをしていますね。
「筋書きでは森山晶之さん演じる健司に出会うことで沙織は頑なだった心が溶けていくんですけど、作品を観たらその前に会ったホーキング青山さんが扮した中嶋に心を開いているように見えるんですよね。反省点です。ホーキングさんが面白過ぎたんですよ。帽子に描かれたセックスって文字を指差してずーっと連呼するから私、笑っちゃって。店長役の津田寛治さんは、すごく紳士的で素敵な方でした。沙織が風俗嬢を続けたいって言った後、津田さんが『いいよ』としゃべる時のシーン、大好きなんですよ。カッコイイ！」

──作品に込められたメッセージの小泉さん流の解釈は？
「女の子って不安定で移り気じゃないですか。そこは沙織も同じだから普通の女の子を演じた感覚ですけど、どんなコでも沙織のようになる可能性はあるんじゃないかなって。あと、監督と話をした時に、この映画を観て社会福祉に目覚めてもらおうとは考えていなくて、少しだけ前向きになってくれたらいいと。それは私も同感です」

──女優業にまい進していますが、今後のビジョンは。
「５年後の30歳までに女優として賞を取りたいから、そのために今、左利きを矯正しています。食事のシーンで私だけ利き腕が違うと、そこに別の物語が生まれてしまうので。あとは、早寝早起きとお酒は２杯まで！」

──その理由は？
「生活のリズムを正したいのと、お酒は私、酒グセがあまり良く…（笑）女友だちから夜遅くに飲みに誘われて断ると『小泉さん、勘弁して下さいよ～！そんな人じゃないでしょ』って茶化されるんですけど、そのコも今、早寝早起きに巻き込んで規則正しい生活を実践中です」