パンプキンポテトフライの谷拓哉さん、山名大貴さん。高校の同級生でコンビを組み丸10年。山名さんのシュールなボケと谷さんのスローテンポな喋りのツッコミが特徴の二人組だ。初単独ライブ「ぶた」を開催した22年には「ツギクル芸人グランプリ」「第43回ＡＢＣお笑いグランプリ」決勝などキャリアを積み重ね「Ｍ―１グランプリ２０２３」準々決勝のネタでバズったのは記憶に新しい。話を聞けば聞くほど温度差を感じるがそこは10数年の仲。これからも楽しく、二人ならではの漫才道にまい進する――。


悔しいと思っていたけど考えてもしゃあないし気にせんとこって… ──小誌が求人情報誌なので、バイトの話からいいですか。
山名「上京してからカラオケ店やコールセンター、清掃業を深夜にやってますね。今はホストクラブでバイトをしていて」

谷「バイトしてんの？」

山名「してるわ！なんでオマエはしてないねん」

谷「ボーイと言わんと勘違いする。カッコいいんやから」

山名「分かるやろ！坊主頭でこの感じで。全然カッコよくないねん。歌舞伎町のトップダンディという店でウエイターの仕事をしてます。年下のカッコいいコに頼まれてシャンパン開けてヨイショ～！とかやったり（笑）芸人が何人かいて、週３～４回出て日給８千円前後もらってます」

──谷さんはバイト経験が少なそうなので、山名さん多めでお願いします。面白エピソードは。
山名「面白…シャンパンの…」

谷「10年ぐらいバイトしてるんでしょ、なにかあるやろ」

山名「後輩の誘いで働き始めて怖いイメージがあったけど入ってみたら意外とちゃんとしてる。従業員全員が男性なんで体育会系というか芸人の世界に似ている」

谷「ちょっと勘弁してよ（笑）下積み時代はどうやった？とか取材でバイトの話はよく聞かれるんですよ。エピソードが１つもないって今までどうしてた？」

山名「お客さんのこと話したらダメなんですけど、某セクシー女優さんが誰もが知ってる社長さんと２人で遊び来て４０００万ぐらい使うのを目撃したことが。Ｍ―１優勝賞金の４倍というスゴい額が動くのが見られるという」

──谷さんは？
谷「見とけよ、面白受け答えを。東京に来て10年、11年経つんですが最初はしてました。１人暮らしもしてて、今は家もないしホテル暮らしで」

山名「端折るなよ」

谷「困ったちゃんなんで僕」

山名「困ったちゃんだからじゃないのよ」

谷「東小金井に住んでた時は近所のコンビニや居酒屋で働くも１週間で辞めちゃう。で、お金がないから家賃が払えず家を失い、電気もケータイも止まる。バイトする、辞めるを繰り返す。働かずに死なないようにしないとって２年間チャレンジしたけどムリだったのでお金のある人にもらえばいいやでヒモ生活に突入。９、10年は一切してないです」

山名「長いって」

谷「前は友人宅を転々としてたけど今一緒にいる女の子が『ビジネスホテルの部屋を借りてるから住んでいいよ』と」

山名「変やて。彼女？」

谷「じゃない。友だちとかでもな い、味方、同志かな」

──谷さんは最近、クズ芸人の新星とピンでも取り上げられてます。
山名「悔しいですね…って最近まで思ってたんですけど。焦らないと、今後どうしたらとか…なくなりました」

谷「なくなんなよマジで」

山名「考えてもしゃあないし、気にせんとこって」

谷「辞めてまえ」

山名「コイツのピンでの稼働が増えているので比例してバイトを増やしてます」

谷「出てた番組を観ないんですよ。『Ｎ93　パンプキンポテトフライの剣』とかで話したいじゃないですか。１人で関西テレビの『マルコポロリ！』に出ました。『出てたけど何もできてなかったなあ』『オマエは出てないやろ』ってやり取りしたいのに観てないって。エピソードは共有していたほうがいい。時間はたっぷりあるし」

山名「忙しいねん！『マルコポロリ！』は観たなあ」

２人が周囲にどう映っているか分からないけど楽しくやってます！！ ──コンビ結成10年で振り返って思うことは。
谷「すごく売れたいとか、こんなん言ったらあれですけどＭ―１王者になりたいとか個人的にはない。楽しくやってそこそこお金もらって、休みがあってぐらいがいいなと思うようになった。高校の同級生で組んでいるので早く売れたい、Ｍ―１獲りたいとなったら、こんなヤツと組まないです。山名と組むってことはコイツのこの感じもＯＫ、全面的に受け入れてます。周りにどう見えてるか分からないけど楽しくやってます」

山名「もっとこうして欲しいとかずっと思ってたんでしょうけど、諦めた、完全に観念したのが23年ぐらいかなと勝手に思ってて」

谷「観念待ちやった？」

山名「そう。オマエの観念待ち」

谷「イジってるとかじゃなくてマジでスゴい。舞台度胸も平場もバイトのエピソードだって１年目の芸人と変わらない。今日この取材が終わってバイト話は２、３コ持っていた方がいいなと思うのが普通。コイツも思うけど考えない。で同じことを繰り返す。ずっと何とかなるんちゃうかという顔しているのがスゴい。オレやったら芸人辞めてます。死んでます」

山名「人の立場になって死ぬな」

──躍進の22年に続く23年はどんな１年でしたか。
山名「２年前のＭ―１準々決勝は結構ウケたんですけど先にいけなかった。今年も準々決勝で負けたんですがＭ―１グランプリだけで考えると頑張らないとって」

谷「もちろん出ますけど、Ｍ―１を意識してネタを作ったことがない。ウケてもスベッても今年は好きなネタを楽しくやりたいと」

──Ｍ―１グランプリの準々決勝ネタが話題になりました。
谷「予選が始まった時点でシモが入ってないネタが３本ぐらい。よそいきするのが嫌でかましているワケじゃなく下ネタ好きなんです。この３本を叩いてやるより一番強いヤツがそうだったぐらいで話題になっていいやとは思わず準決勝に行くつもりでした。他にやりたいネタがなかったので楽しい方、楽しい方で選んだらあれにたどり着いた」

山名「やってる最中は楽しかったですね。谷がネタ考えて３回戦と準々決勝でやるネタの候補を挙げて、〝ハメ撮り〟には驚いたけどでもこのネタが今一番強いからと言われた時に確かにウケてるなあと。腹も決まっていたので楽しみでした」

──Ｘで「ネタ選びは慎重に！」とツイートされてました。
谷「ユーモア、世間へのサービス精神で。『ハメ撮りのネタやってた人がこんなこと言ってるわ』とクスッとしてもらえたら」

──切磋琢磨する、ライバル視する同世代芸人を挙げるなら。
谷「〝ハメ撮り〟はあれですけど他のコンビがやってもウケへんやろというネタが好きでだから弱めの台本の方がいい。パンポテってなんでこのネタでウケてるんやろうが好き。ガチガチ固めて伏線張りまくってる人らにＭ―１で勝ちたい。さすらいラビーとかね」

山名「実名いらない」

谷「仲がいいので。ホンマに思ってたら名前を出せないですよ」

山名「劇場でよく一緒になるのはさすらいラビー、ママタルトさん、ストレッチーズ。ひつじねいりはユニットライブも一緒やしＭ―１で勝ち上がれば嬉しい。あとカナメストーンさん、きしたかのさん、ヤーレンズさん。僕らよりちょっと上なんですけどライバルといえばライバルかな」

１人でテレビに出る権利を得るためにＭ―１の決勝に行きたいです ──日本テレビ系ドラマ『だが、情熱はある』の話を。ヘッドリミット役にモデルは？
谷「キングコングさんがモデルだと聞きました。脚本の今井太郎さんが僕らのことを知ってくれていて急に売れっ子漫才師役、キングコングさん役で出演することに。それを今井さんが決めたと聞いたので『有難うございます』と言いたかったのに現場にいなくて俺らのボスがおらんとめちゃめちゃ居心地が悪かった。『誰が呼んだのコイツら』って感じで」

山名「現場にはいてはらへんかったからね」

谷「１シーンのためだけに大阪まで行きました」

──連ドラですから反響も大きかったのでは。
谷「そうですね。観いひんかったやろ」

山名「自分の出演している３話は観た」

谷「エグい、最低人間」

山名「あと最終回をチラッと。オマエは？」

谷「観てない」

山名「最低～」

谷「キャラだから、悪いヤツだから（笑）オマエはキャラ的に観とけって！」

──仕事をする上で心掛けていることにどんなことがありますか？
谷「それっぽいことを言って終わらせられるところを嫌なものは嫌、好きなものは好きと言う。大勢の人に嫌われて、たくさんの人に好かれるような人間性が出ている芸人になりたい。思ったことをちゃんと言おうと意識してますね」

山名「カッコつけないようにしよう。そうすることが多かったんです。大きく見せたい、面白く思われたい、スベってつまらないと思われたくないから前に出られないとか。これからはなくしていこうと。思っているけどまだ完璧じゃないから、もっとさらけ出す、自分を認めて変なプライドを捨てられるようにしていきたい」

──最後にお二人の今後について聞かせて頂ければ。
谷「なるべく１人で動きたいのでしっかり頑張っていきたい」

山名「あー悲しい。コンビとしてで聞かれてるから」

谷「ネタするだけの関係になりたい。１人で出る時はクズだ、ヒモだと散々言われて先輩のイジリに返していくのが好きなんです。けど２人だと何もできないコイツをイジらないといけない。ちゃんとした方の役回りをすることになる。それが面倒で。ピンでテレビに出る権利を得るためにＭ―１の決勝に行きたいですね。準々決勝ぐらいのヤツが１人で出ても『コンビで出てネタしろ』ってなるので」

山名「正直すぎるわ（笑）素直すぎるって」

谷「早く権利を得てボロボロのサイドカーを切り離して」

山名「観念しろって！」


【関連リンク】ホスト系やモデル系の男性向け求人はこちら