「孤独死という重いテーマですけど内容はブラックコメディーで笑えます。チャップリンの『人生は近くで見ると悲劇だけど、遠くで見ると喜劇だ』という言葉通りです」
ほぼ新人ながら孤独な人間を観察することが趣味の“孤独ウォッチャー女”という難しい役を見事に演じきった瀧内公美さんの初主演映画『グレイトフルデッド』が11月1日からロードショー。とても言葉を大切にする女性で、デビューの経緯や撮影秘話などを、丁寧に言葉を選びながらも場を盛り上げつつ語ってくれました。ブレイクを予感させるオーラを放つ女優の作品は、ぜひ劇場でご鑑賞を!
初が3つそろうナミ役を絶対に演じたかったんです
──女優になったのは約2年前の22歳。少し遅めのデビューですよね。「私、先生になるのが夢でした。子どもは大好きなんですけど、『君自身が子どもだから、同じ目線にはなれるけど、教師には向かないかもしれない』と教授に言われていました」
──そこで、なぜ女優の道を?
「周りはどんどん内定をもらうから焦るじゃないですか。だから、興味があった女優業に挑戦するために“新しい女優”に応募したんです。履歴書を送って1週間ぐらいで就職が決まってホッとしました(笑)」
──自分に“脱ぎ”を課したのは?
「一生、この世界でやっていくという決意と、二度と一般社会には戻らないという反抗心からです。退路を断てば前に進まざるを得なくなりますから、何をすれば私は一生、戻れなくなるかと考えた時に、出てきた答えがヌードだったんです。だから今回のオーディションでも、聞かれてもいないのに『脱げます。脱ぎたいです!』とアピールしました。キャリアもないくせに、『私を拾わないと一生、後悔しますよ』とも言いました」
──そこまで役に固執したワケは。
「私がナミを演じることになれば、映画初主演・初長編・初ヌードって、初が3つ揃うんです。“三大”って人に与えるインパクトが大きくて、だから絶対に、ナミ役をやりたかったんです」
──ご両親はどんな反応を?
「母は私が幼い頃から『普段の行動にすべての人柄が現れるから、品を持った大人になってほしい』と言い続けた人なんですね。でも、今の仕事は応援してくれています。『人は死に向かって生きているから、自分の好きなことをして死んでいってほしい』と私を教育した人なので。ただ、ここでは言えないひどい反抗期を迎えた時に、『あなたのことは諦めました』とも言われましたけど(苦笑)」
役のために太りましたけどあのヌードはちょっと(笑)
──話を映画に戻しますが、撮影前に激痩せしたそうですね。「撮影前に舞台でお芝居の稽古を受けたんですが、自分ができなくて厳しくご指導頂いたんですけど、気づいたら3キロ痩せてたんです。痩せたというより、やつれたのかも。そうしたら、私の顔を見た監督が『田舎から出てきたばっかりのような、ぽっちゃりした顔がナミのイメージとピッタリだったから選んだのに。太らなきゃ下ろす』と言うので、必死に太りました」
──どんな方法で?
「インするまで数週間しかなかったので、夜食べて即寝る力士のような生活を繰り返しました」
──その甲斐あって、健康的なヌードを披露できたワケですね。
「観て頂くと分かりますけど、私の中であれはないなって(笑)監督から『どうせ痩せるから、パンパンの状態できて』と言われましたけど、衣装がきつかったですもん。夜中に食べたあのカップラーメンとかポテトチップスがあの肉になったのかなって、完成作を観て自己嫌悪でしたよ。初ヌードだからキレイに見られたくて、途中、痩身エステに行ったりもしましたけどね」
──ヌードを大勢の観客に観られるのは恥ずかしくないですか?
「いえいえ。観て頂きたいです。孤独死という重いテーマですけど内容はブラックコメディーなので、笑えると思います。チャップリンの、『人生は近くで見ると悲劇だけど、遠くで見ると喜劇だ』という言葉通り、人が真剣にやってることってなぜか笑えるんですよね」
W主演の笹野さんからの教えは同業者には秘密です!
──笹野高史さんとのW主演も話題になっています。「笹野さんがいなかったらやり遂げられませんでした。撮影前は、厳しくて怖い方だと聞いていたんですね。実際、演技に対してはそうですけど、普段は優しさの塊みたいな人で。疲れている私を気遣って、肩揉みしながらセリフ合わせをしてくれたんですよ! ロケ地が山梨で私が寒がっていたら、次に会った時、ピンクのポンチョまでプレゼントしてくれたんです。ほかの現場に持っていけない…今でも大切な宝物です」
──笹野さんから習ったことは?
「とても大切な言葉を頂いたんですけど、ドカントを読んだ女優さんに参考にされたくないから、秘密です(笑)笹野さんが今後、私と同じキャリアの女優に同じアドバイスをすると想像するだけで悔しい(笑)ただ、『女優には、叱られるか褒められるか2種類しかいないから、褒められる女優になるためには今、自分に何が必要か』と教えて頂きました。『気持ちがいい女優になりなさい』とも言われました」
──ほかに学んだ点は。
「自分と向き合えるようになりました。役を演じる上で、自分が幼少期に経験した嫌なことを掘り返す必要があったんです。親の仕事の都合で南国で過ごす時期が長かったから、人との距離感が掴みづらいこと、1人っ子なのに十分に物を与えられなかったこと、悪いことをしたら外に放り出されたこと…。すべてを思い出すのは辛かったですけど、役に反映することができたので、いい経験ができました」
INFORMATION
■映画『グレイトフルデッド』
INFO&STORY
孤独な人生を歩んできたナミ(瀧内公美)は、孤独な人間を観察するという奇妙な趣味を持っていた。ある日、今にも孤独死しそうな老人・塩見(笹野高史)を見つけたナミは、塩見を観察することに熱中していく。ところが、そんな塩見の前に現われたボランティアの女性スヨン(キム・コッピ)が、「信仰」という救いで塩見の人生を一変させる。幸せそうな塩見を見て嫉妬心に駆られたナミは、塩見を拉致監禁する暴挙に出るが…。深刻化する高齢化社会を背景に、孤独老人観察を趣味とする女性と孤独死寸前の老人が繰り広げる愛憎を描いた異色サスペンス
CAST&STAFF
瀧内公美 笹野高史 キム・コッピ 矢部太郎 酒井若菜 木下ほうか 愛来 渡辺奈緒子 泉政行 赤間麻里子 金澤美穂 久保田磨希 松尾諭 板尾創路 松田賢二
監督/内田英治
脚本/内田英治・平谷悦郎
制作・配給/アークエンタテインメント
公式HP
11月1日(土)より新宿ミラノほか全国順次ロードショー
PROFILE
瀧内公美(たきうち・くみ)
1989年10月21日生まれ 富山県出身
映画やドラマや舞台、CMなどで活躍。PVハジ→「WhiteWinter Love。」出演。映画出演は「エクソシストを探せ」「さよなら渓谷」「牙狼外伝 桃幻の笛」「Crash #3!清水健太× DE DE MOUSE 『ノアの箱車』」など。公開待機作に「横たわる彼女」(戸田彬弘監督)がある。
公式ブログ
■映画『グレイトフルデッド』
INFO&STORY
孤独な人生を歩んできたナミ(瀧内公美)は、孤独な人間を観察するという奇妙な趣味を持っていた。ある日、今にも孤独死しそうな老人・塩見(笹野高史)を見つけたナミは、塩見を観察することに熱中していく。ところが、そんな塩見の前に現われたボランティアの女性スヨン(キム・コッピ)が、「信仰」という救いで塩見の人生を一変させる。幸せそうな塩見を見て嫉妬心に駆られたナミは、塩見を拉致監禁する暴挙に出るが…。深刻化する高齢化社会を背景に、孤独老人観察を趣味とする女性と孤独死寸前の老人が繰り広げる愛憎を描いた異色サスペンス
CAST&STAFF
瀧内公美 笹野高史 キム・コッピ 矢部太郎 酒井若菜 木下ほうか 愛来 渡辺奈緒子 泉政行 赤間麻里子 金澤美穂 久保田磨希 松尾諭 板尾創路 松田賢二
監督/内田英治
脚本/内田英治・平谷悦郎
制作・配給/アークエンタテインメント
公式HP
11月1日(土)より新宿ミラノほか全国順次ロードショー
PROFILE
瀧内公美(たきうち・くみ)
1989年10月21日生まれ 富山県出身
映画やドラマや舞台、CMなどで活躍。PVハジ→「WhiteWinter Love。」出演。映画出演は「エクソシストを探せ」「さよなら渓谷」「牙狼外伝 桃幻の笛」「Crash #3!清水健太× DE DE MOUSE 『ノアの箱車』」など。公開待機作に「横たわる彼女」(戸田彬弘監督)がある。
公式ブログ
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一