Huluが仕掛ける新しいシットコムプロジェクトは、〝稀代のコント師〟お笑いトリオ東京03の3人。「キングオブコント2009」王者の座を獲得してからは順調に実力と人気を伸ばし続けているが、〝漫画みたいに(上手く)いかない。〟時期もあったという。苦境をどう乗り越え現在に至ったのか。配信中のドラマ『漫画みたいにいかない。』の注目ポイントとともに斬り込んでみると—。
(当時の自分に)好きなことをやっていたらいいことがあるよ、とは言えますね。東京03はショートネタブームの時に一切、手を出さなかった。やせ我慢でしたけど(笑)好きなことだけを突き詰めていったら食えるようになったので(飯塚)
僕が飯塚さんに誘ってもらったように、どうにもならない時は誰か救ってくれる人が現れることもあるのでは。完全に人頼りですが(笑)(角田)
僕の場合は運や人だけに恵まれて、フワッとここまできてしまったんです。運がいい人は周りにも運がいい人が多いかも…(豊本)
大人の説教は経験を美化しただけ刺さる台詞が沢山あるドラマです
──東京03の名付け親で本作の監督と脚本を担当しているオークラさんは、みなさんの役をアテガキした、というのは本当ですか?豊本「クールぶっているが女にだらしない…アテガキなんでしょうね(笑)僕が個人的なゴタゴタがあった最中にオークラさんは脚本を書いていましたから」
角田「僕は娘はいませんが、バツイチというのはまさにそうです」
──あはははははは!
角田「笑いすぎですよ〜(笑)」
飯塚「僕は(東京03で)ツッコミのポジションなので、熱い人間をバカにするという役どころはすごく演じやすかったですね。〝裏突き〟というか、人を小馬鹿にする感じが」
角田「全くの素ですよ。日頃から人をバカにしていますから」
飯塚「それが全くの素って!」
──(笑)本作には高岡早紀さんも出演されますよね。
飯塚「高岡早紀さんのこと昔から大好きなんです。いやぁ〜、キレイ! キレイでしたよ〜!」
豊本「いい感じのまま大人になられているじゃないですか。大人の色気がヤバかったですねぇ」
角田「撒き散らかして帰りましたね〜、あのすごい色気を(笑)」
──3話目には、ももクロの玉井詩織さんも登場します。
豊本「最初は玉井さんが演じるアンモモって誰なんだ? というところから始まり、少しずつ正体が分かってくる回ですね」
飯塚「かなりハイテンションなやり取りをしています。毎回、何かしらのネタが仕込まれているので、そこは見応えがあるかと」
──全話を通しての見どころは?
角田「セットという外側は、かなりオシャレなんです。でも後半になるに従って非常にテンポが早い展開もあり、話は面白いですし、オークラさんなりのメッセージが込められていると思うんですよね。『大人だってダメな部分はあるんだぞ』という」
飯塚「それこそ玉井さんの回は、『大人が説教できると思ったら大間違いだ』『大人のアドバイスなんて適当だ』みたいな内容です」
豊本「大人が絶対に正しいと思うなとか、大人のアドバイスなんて自分の体験を美化して言っているだけなんだという、まあまあいい台詞があるんです」
──そのいい台詞はご自身にも当てはまりますか?
飯塚「間違いなく当てはまるし、自分に言い聞かせている部分もあるし、大したもんではないですよね、大人って。自分がなってみて初めて分かりましたけど」
豊本「もっと立派な大人になっていると思っていたのに、いざなったら全然ですからねえ」
──では〝漫画みたいに(上手く)いかない。〟時期はありましたか。
飯塚「この世界に入ったのが20歳ぐらいなんですけど、理由がノストラダムスを信じていたからなんです。1999年7の月に地球は滅亡するとずっと言われていて、だったら好きなことをしようと」
豊本「そうしたら全然売れないまま月日が流れ、地球も滅亡しなかったんですよね…」
角田「普通にヤバイですよね、この状況(笑)終わってくれたらまだ良かったのに」
飯塚「だから、あの時期はかなり辛かったですね。『滅亡…しないんかい!』と(笑)そこからが長かったですし。その3年後ぐらいに3人で結成したんです。あの頃がどん底の時期ですね」
角田「コンビを組む前って、ネタ番組もなかったんです。『爆笑オンエアバトル』ぐらいで、勝っても次につながるかが曖昧な時期でもあった。だからバイトで食いつなぎライブに出る生活でした」
──どんなバイトを?
角田「ミスタードーナツです。楽しそうでしょ?(笑)」
豊本「結構、プライド持って働いていたんですよ」
角田「ドーナツを作る役目ってなかなかなれないんですけど僕、任されたんです。初めて自分が作った商品を見た時は『あ〜、自分も一人前になったな』と」
飯塚「じゃあ、そこで社員になってやっていけよ!(笑)」
角田「確かに、お笑いで得られない手応えをバイトで埋めていた感はありましたね」
飯塚「僕は夜勤でステーキ屋さんの掃除とか、あとは東京03を結成してからは角ちゃんと派遣のバイトをしていましたね」
角田「登録制のね。集合場所までは一緒なんだけど、そこから別々の仕事に行かされて、一緒にバイトする意味ないわって!(笑)」
──豊本さんはどんなバイトを?
豊本「一瞬だけコンビニや喫茶店で働きましたけど、携帯電話がちゃんと作動するかどうかチェックするという仕事を長く続けました。流れてくる携帯を手に取り、カートリッジに挿して緑がついたら戻す。赤がついたら外すという、地味〜な仕事を」
──当時、心が腐ったりは。
3人「腐ってましたよ!」
飯塚「と言いつつ、何だかんだいって楽しくやってたよね? オークラさんやおぎやはぎ、ドランクドラゴンとか誰もテレビに出ていない時期に、一緒にライブをしていたから楽しくて」
角田「自分が好きで志した道だから、という理由もありましたし」
豊本「一応、希望を持ってやっていましたからね」
飯塚「ただ3人で組む際には『これで売れなかったらお笑い芸人を辞めよう』と思って始めたわけですから…半分は絶望していたんでしょうね」
──ですがブレイクして今に至ります。男性3人組ですが、人間関係で大切にしていることは。
飯塚「僕は豊本とアルファルファというコンビを組んでいた頃、腹に思うことがあっても何も伝えなかったんです。話し合うこともしなかったし、好きにすればいいと思ってた。でもそれがストレスになり、溜まりに溜まって爆発してしまったので、その経験を踏まえて東京03になってからは全部言おうと。揉めようが、どう思われようが全て。風通しを良くしているつもりなんです」
角田「結果、そのおかげで人間関係が良好なんでしょうね。言われた瞬間はイヤな気持ちになったり、反発することもありますけど」
──飯塚さんに何か言われた時は。
角田「完全に逆ギレしますね(笑)」
飯塚「前に角ちゃんがスベッたんで、酒を飲みながら『あの発言スベッたけど、今後どうしようか』と言ったら、『スベッてない!』と言い張るんですよ!(笑)スベらないようにするにはどうすればいいのか話し合いたいのに逆ギレ。しかも僕の発言を拒否するかのように、その後ガンガン飲んで記憶をなくすし(笑)」
角田「飯塚さんの意見を受け入れられるようになるまで10年ぐらいかかってますからね。正論を言われると何も反論できないんです。最初は正論を言われたのに逆ギレしましたけど、そこで非を認めてしまうと『そうだよなぁ…』で終わっちゃう」
──豊本さんは?
豊本「僕は『そうか…』と、言われた瞬間はヘコみます。そして、しばらくすると忘れます」
飯塚「そうなんです。豊本には定期的に同じことを何度も言わないと必ず似たようなミスをするから難しいんですよねぇ」
──なるほど。夢を追う読者に向けてメッセージも頂けますか。
飯塚「こういう時に角ちゃんとか豊本が何言うのか聞きたい(笑)」
角田「えーっと…明るい希望が見出だせない時って僕は『そのうち何か見つかるでしょ』ぐらいに深く考えないタイプなんです。僕の場合は飯塚さんが家の近くに引っ越してきて(東京03に)誘ってもらったというのがデカいので、どうにもならない時は誰か救ってくれる人が現れることもあるよっていうことですね。完全に人頼りですけど(笑)」
豊本「僕の場合は運や人だけに恵まれて、フワッとここまできてしまったんです。運がいい人は周りにも運がいい人が多いかも…(と、チラリと角田さんを見る)」
角田「僕は東急ハンズに行った日が偶然、定休日だったりして、少しの不運を経験しつつ(笑)それでバランスを取っているんです」
飯塚「確かにウチらはツイてますよね。周りに恵まれているというか。オークラさんも引っ張り上げてくれたし、おぎやはぎとかアンタッチャブルとか、周囲に才能があるヤツも多かった。だから、周りへの感謝を忘れなかったらいい感じになると思いますけどね」
──当時の自分に声をかけるなら。
飯塚「好きなことをやっていたらいいことがあるよ、とは言えますかね。東京03はショートネタブームの時に一切、手を出さなかった。やせ我慢でしたけど(笑)好きなことだけを突き詰めていったら食えるようになったので」
豊本「やったほうがいいと思いつつ、好きなことしかやらないと決めたら何となくいい方向に行ったので、やりたくないことは無理してやらなくていいと思いますよ」
飯塚「やりたくなくても時にはやらなくちゃいけないこと、ありますけどね…(笑)」
INFORMATION
■ドラマ『漫画みたいにいかない。』
【INFO&STORY】
根拠もなく「ビックになる!」と意気込み漫画家になるも、全く売れる気配のない主人公の戸塚オサム(角田晃広)は、今日も頼りないアシスタントの荒巻弘彦(山下健二郎)と事務所兼自宅で新作漫画を執筆中。だが、ひとり娘のるみ(山本舞香)、編集者の足立徹(豊本明長)、幼馴染みで定食屋を営む鳥飼昭雄(飯塚悟志)がいつも問題を持ち込んできて漫画制作どころではなくなってしまう。「ほとんどの大人の人生は…どうして漫画みたいに上手くいかないんだ」5人の日常と不満が、シニカルな笑いを生み出していく。『素敵な選TAXI』『住住』などドラマの脚本も手掛ける放送作家オークラ氏が脚本・初演出を担当。18年春には同キャストでの舞台化も決定している。
【CAST&STAFF】
出演/東京03・山下健二郎(三代目J Soul Brothers)・山本舞香
脚本・監督/オークラ
製作著作/漫画みたいにいかない。製作委員会
10月31日よりHuluで独占配信中(全10話)第2話以降は毎週土曜日更新
公式HP
PROFILE
●飯塚悟志(いいづか・さとし)
1973年5月27日生まれ 千葉県出身
公式Twitter
●豊本明長(とよもと・あきなが)
1975年6月6日生まれ 愛知県出身
公式Twitter
●角田晃広(かくた・あきひろ)
1973年12月13日生まれ 東京都出身
公式instagram
03年、お笑いトリオ東京03を結成。テンションの起伏の激しいシチュエーションや日常がリアル過ぎるほどに描かれたコントで人気を博す。06年、「第4回お笑いホープ大賞」大賞受賞、07年、NHK「爆笑オンエアバトル」ゴールドバトラー獲得、09年、「キングオブコント2009」優勝。メンバー単独での出演も多い。17年に過去のライブのコントをランダムで公開する公式チャンネル「東京03 Official YouTube Channel」を開設。MCを務めるライブ「東京03寄席」は12月4日に銀座ブロッサムで開催する。
■ドラマ『漫画みたいにいかない。』
【INFO&STORY】
根拠もなく「ビックになる!」と意気込み漫画家になるも、全く売れる気配のない主人公の戸塚オサム(角田晃広)は、今日も頼りないアシスタントの荒巻弘彦(山下健二郎)と事務所兼自宅で新作漫画を執筆中。だが、ひとり娘のるみ(山本舞香)、編集者の足立徹(豊本明長)、幼馴染みで定食屋を営む鳥飼昭雄(飯塚悟志)がいつも問題を持ち込んできて漫画制作どころではなくなってしまう。「ほとんどの大人の人生は…どうして漫画みたいに上手くいかないんだ」5人の日常と不満が、シニカルな笑いを生み出していく。『素敵な選TAXI』『住住』などドラマの脚本も手掛ける放送作家オークラ氏が脚本・初演出を担当。18年春には同キャストでの舞台化も決定している。
【CAST&STAFF】
出演/東京03・山下健二郎(三代目J Soul Brothers)・山本舞香
脚本・監督/オークラ
製作著作/漫画みたいにいかない。製作委員会
10月31日よりHuluで独占配信中(全10話)第2話以降は毎週土曜日更新
公式HP
PROFILE
●飯塚悟志(いいづか・さとし)
1973年5月27日生まれ 千葉県出身
公式Twitter
●豊本明長(とよもと・あきなが)
1975年6月6日生まれ 愛知県出身
公式Twitter
●角田晃広(かくた・あきひろ)
1973年12月13日生まれ 東京都出身
公式instagram
03年、お笑いトリオ東京03を結成。テンションの起伏の激しいシチュエーションや日常がリアル過ぎるほどに描かれたコントで人気を博す。06年、「第4回お笑いホープ大賞」大賞受賞、07年、NHK「爆笑オンエアバトル」ゴールドバトラー獲得、09年、「キングオブコント2009」優勝。メンバー単独での出演も多い。17年に過去のライブのコントをランダムで公開する公式チャンネル「東京03 Official YouTube Channel」を開設。MCを務めるライブ「東京03寄席」は12月4日に銀座ブロッサムで開催する。
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一