秋吉久美子、杉本彩、壇蜜ら数々の女優を作品内で縛り上げてきた緊縛師の有末剛さん。緊縛=エロティックな世界という固定概念から興味はあっても一歩踏み込めない人のために、10月31日には浅草の木馬亭で落語とSMの融合イベントを開催するなど、緊縛という文化を定着させるべく、挑戦の日々を邁進している。世界にも知られる緊縛師が掲げる理想とは!?
縛ることは強く抱きしめること。濃密なコミュニケーションを築かなければ一人よがりの緊縛になってしまう
緊縛は料理に例えるならフレンチ。豪華な料理を毎日食べたら飽きるのと同じで、たまに食べるからいい
──有末さんは70年代後半から緊縛師として活動したそうですが、経緯を教えて頂けますか。「当時、住んでいた吉祥寺にはマスコミ関係者がたむろする飲み屋があって、僕も頻繁に通ってたんです。で、知人の女性漫画家が編集者になりたいって言うんで出版社を紹介したら、編集者になった彼女から『緊縛師をやりなさいよ』と言われて、いきなりプロとしてデビューしたわけです。その頃はSM雑誌の黄金期で、1誌3~4万部は売れてたんですね。全部で8誌ぐらいあって巻頭グラビアも担当してたんで、黄金期と僕の趣味がマッチした感じでしょうか」
──好きなことを仕事にして、辛いことは?
「年間300日ぐらい女性を縛っていると200日は、まったく緊縛に興味がなく“オシゴト”として来るモデルさんを相手にしなければならないんですね。それが延々と続いて26~27歳頃かなぁ、心も体も完全にダメになって、数年間休養して、ボーッと海を眺めるだけの生活を送ったことがあります。最後までNOと言わない、脳と肝臓をヤラれたんですよ。あの頃は心療内科なんてないし、僕より上の世代は『落ち込む暇があるなら砂浜でも走れ!』っていう根性論で生きてましたから(笑)自分では不具合を感じてるのに誰にも相談できなかったんです」
──その経験で学んだこととは。
「好きなことはやりすぎないこと。緊縛は料理に例えるならフレンチ。豪華な料理を毎日食べたら飽きるのと同じで、たまに食べるからいいんです。あとは、緊縛に興味がある女性を相手にすることですね。目を見れば分かりますから」
──目を見ただけで分かるんですか!?
「興味がある女性は緊縛の話をしたら目が潤みますし、恥ずかしそうにしますね。とは言え現実的には10%が興味があって、10%が絶対に嫌で、残り80%が機会があれば経験したい層で成立しているんですね。だから、80%の女性には機会を提示してあげればスッと入って来ますよ」
──機会を提示する意味では『トクボウ 警察庁特殊防犯課』のDVD化は好材料なのでは。
「毎回、違う緊縛の形を見せたのは地上波で初じゃないですかね。法律に関係なく悪人を緊縛で懲らしめるっていうセンスがすごく面白い。伊原剛志さん演じる朝倉草平がサディズムを爆発させるあたりも、感情移入しやすいですよね」
──緊縛師志願男性が増えるかもしれませんね。
「縛ることは強く抱きしめることですから、濃密なコミュニケーションを築かなければ一人よがりの緊縛になってしまうんですね。しかも、リビドーは人によって異なるうえに細分化されてますから、引き出しの中身を幾つも開けなければならない。それが緊縛の醍醐味でもあって、覚えたら女性にモテるんじゃないかという男性志願者もいるんですけど、コミュニケーション能力が低い人には向かないでしょうね」
──なるほど。有末さんは世界でも緊縛師として活躍していますが、今後の展望は?
「紛争前のウクライナでショーに出演して実感したのは、日本のエロスが一番細かくて面白いという現実です。外国人の緊縛師が作務衣を着てるのを見ても分かったんですけど、彼らも日本のエロスをお手本にしてるんです。オリンピックも控えてますし、今後は僕が海外に遠征するのではなく、逆に観に来いというスタイルがいいのかな、と思い、フランスやロシアからの招待もお断りしました。しばらくは国内で誰もがやってない“実験”を続けていきます。10月の落語とSMの融合イベントも、その一環です」
INFORMATION
『トクボウ 警察庁特殊防犯課 DVD-BOX』
この世は、害虫で満ちあふれている…。今年4月期に放送された日本テレビ系ドラマ「トクボウ 警視庁特殊防犯課」がDVDに。出演は伊原剛志、松下洸平、宅間孝行、川平慈英、安達祐実ら。高橋秀武さん原作の人気警察漫画のドラマ化、全13話収録。同作には緊縛監修で参加。特典映像の「必見!!緊縛祭り」も見逃せない。
発売/読売テレビ 販売/ポニーキャニオン
好評発売中 税込¥18,360(レンタルも)
(C)高橋秀武/集英社 読売テレビ
PROFILE
有末剛(ありすえ・ごう )
1954年4月11日生まれ。70年代後半のSM雑誌黄金期に緊縛師としてビュー。映画『花と蛇』や新潮社の月刊シリーズなど、数多くの話題作で緊縛を指導。原作を担当したAV業界の裏を描いた映画『おやじ男優Z』が10月25日(土)から公開。
公式HP
公式Twitter
『トクボウ 警察庁特殊防犯課 DVD-BOX』
この世は、害虫で満ちあふれている…。今年4月期に放送された日本テレビ系ドラマ「トクボウ 警視庁特殊防犯課」がDVDに。出演は伊原剛志、松下洸平、宅間孝行、川平慈英、安達祐実ら。高橋秀武さん原作の人気警察漫画のドラマ化、全13話収録。同作には緊縛監修で参加。特典映像の「必見!!緊縛祭り」も見逃せない。
発売/読売テレビ 販売/ポニーキャニオン
好評発売中 税込¥18,360(レンタルも)
(C)高橋秀武/集英社 読売テレビ
PROFILE
有末剛(ありすえ・ごう )
1954年4月11日生まれ。70年代後半のSM雑誌黄金期に緊縛師としてビュー。映画『花と蛇』や新潮社の月刊シリーズなど、数多くの話題作で緊縛を指導。原作を担当したAV業界の裏を描いた映画『おやじ男優Z』が10月25日(土)から公開。
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取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一