聞く人の襟首を掴むような圧巻のライブパフォーマンスが評判の激情派ガーリーシンガー・大森靖子。「ときに少女、ときに老婆のように変化するヴォーカル」「ポップでキュートなのにヒリヒリする」「カラフルなのにどこかくすんで見える」……不思議な二面性を備えた音楽世界が、どのようにして生まれたのか。歌手になるまでの過程や、新作への思いを通じて迫ります!
女の子への嫉妬や劣等感が物凄くあって「私にだけ使えない魔法があるに違いない!」と思った
──ニューアルバムのタイトル『魔法が使えないなら死にたい』の意味から伺いたいんですが。「私、中学生の頃から、ほかの女のコへの嫉妬や劣等感が物凄くあって。花柄ワンピを着ようと美大卒だろうと、根本的にダサいからやっぱりダサいし、『私だけ何か違う!私にだけ使えない魔法があるに違いない!』って思いがあったんです。25歳の今もそれをこじらせ続けてる感じですね(笑)」
──上京後に美大で音楽を始められたそうですね。
「地元は愛媛の松山で、優しい人ばかりなんですけど、本当につまらなくて。でも入学した美大は地元よりド田舎な場所だったし、夢を持った人が集っているかと思ったら、みんなアトリエでポケモンやってるし。失望して引きこもり、絵ばかり描いて、鬱鬱としていた時期にライブを始めたんです。絵を描くのとは違い、目の前に人がいるし、嫌悪感でも何でも反応あるのが楽しかったですね」
──負の反応ですらも嬉しかったと。
「ライブというより、大声出してスッキリしていただけでしたから(笑)そこから徐々に『何かうるさい女がいる』と口コミが広まり、私を落とそうとするバンドマンにイベントに呼ばれたり……」
──(笑)今作は『新宿』『高円寺』という曲があり東京への愛憎相半ばする感情が伝わってきます。
「『新宿』は歌舞伎町のおっぱいパブで働いていたときにできた曲なんです。私はボーイ的な“揉まれない店員”だったんですが、大好きな女の子が酔っぱらいの相手で辛い目に遭っているのを見て、自分も心が病んできて。半年で辞めちゃいました」
『新宿』は歌舞伎町のおっぱいパブで働いたときにできた曲なんです
──そんな内容の歌詞じゃなかった気が……(笑)今作はシンセも導入して音は多様化していますね。「以前のレコーディングでは、目の前のエンジニアにライブ感覚で歌っていたんですが、今回は聞く人に届きやすいよう、試行錯誤をしましたね」
──大森さんといえばヒリヒリするようなシャウトが特徴ですが、声の表情もより豊かになった気が。
「ライブを重ねた結果と、モノマネ好きの影響ですかね。SPEEDの寛子・絵理子を1人で歌い分けできますし、最近は相川七瀬にハマってます」
──何か時代が逆行してる気がしますけど(笑)
「でも真面目な話、みんなギターとかではエフェクターをかけて『この音が曲に合ってる』とか考えるのに、声で同じ作業をしないのは変だと思って。私は“自分の声”なんてどうでもいいんです」
──一方で音楽性については「ブルースとパンクと演歌をロリ声でやりたい」と仰ってましたね。
「それも『ジャンルとかは何でもいい』って言いたかったんだと思います。私、シンガーソングライターって呼び方もイヤで。みんな『私が私が!』って、そんなに自分のことを歌いたいのか!と」
──あと大森さんはアイドル好きでもあるそうで。
「特にモー娘。の道重さゆみが大好きなんです!最近の彼女の体調不良はホントに心配で、私の愛が足りなかったのかな……と反省しています」
──ヲタの心理ですね(笑)そんなアイドル好きと、自身の歌手活動には何か関連性は?
「私はアイドルではないですが、私の歌で元気になったてくれる人がいたら嬉しいですね。笑顔でファンを癒すような存在じゃないですけど(笑)」
──では歌手としての目標は?
「紅白ですね!その後は演歌に進みたいです」

◆大森靖子ニューアルバム
『魔法が使えないなら死にたい』
3月20日発売 2200円(税込)
3月22日から始まるレコ発ツアーのファイナルは、5月13日に渋谷CLUB QUATTROで開催。
PROFILE
大森靖子(おおもり・せいこ)
激情派ガーリーシンガー。叙情と激情をカラフルに染め上げる剥き出しのボーカル・ギターと、自身の身をも切り裂くような鋭い歌詞が評判を呼び、2012年4月にEP『PINK』でデビュー。今泉力哉監督『ターポリン』、岩淵弘樹監督『サマーセール』などの映画にも出演している。
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取材・文/古澤誠一郎