“蹴りたがる女子”ムエタイ世界６冠王は初代タイガーマスクの愛弟子　Little Tiger
「他人ができないことをやって勝つのがプロ。タイ人に認められてムエタイに名前を残したい」

　タイの国技として知られる格闘技「ムエタイ」の世界で、華麗な蹴り技を武器に世界タイトルをいくつも獲得している女子選手がいる。初代タイガーマスクとして一世を風靡した佐山聡の愛弟子でもある彼女は、本場タイの選手も蹴りでＫＯしてしまうほどの強豪だ。そんなＬｉｔｔｌｅ　Ｔｉｇｅｒに得意技である蹴りの極意、東京・西新橋に出したジムのこと、今後の目標などを聞いた。

──蹴りにこだわる理由は？
「人間は体の６割が下半身で、その４割が太腿だから、それを動かすのは腕を動かすよりも大変ですよね。その中で、蹴りをパンチと同じようなスピードで出せて、限られた試合時間で相手を倒せたら、他の選手にはできない華麗さを見せられると思うので、蹴りを中心にしています」

──人と違うことをしたい？
「他人と同じことをやっていたら大会の中でも目立たないと思うし、チャンピオンになることもできないですからね。人ができないことをやって勝つのがプロだと思っています」

──形だけでも、タイガー選手みたいにキレイなハイキックを蹴れるようになるには、どうしたらいいですか？
「まずは力を抜くことなんですけど、それが一番難しいんですよ（笑）最初は、でんでん太鼓になることですね」

──でんでん太鼓？
「棒に糸がついていて、その先に玉がついてますよね。棒が胴体で糸が足として、棒を回すと勝手に足が上がります。それと同じように、体の中心を回すことで、足を放り投げて捨てちゃうようなイメージで出すといいと思います。私も佐山聡先生から、「蹴りは蹴ってはいけない」と最初に教わりました」

──初代タイガーマスクですね。
「佐山先生に指導していただいたのが、キックでプロになるきっかけになったので。リングネームも、デビューの時に先生から「タイガー」の名前をいただきました」

──佐山さんの指導って厳しそうですが……。
「私にはそんなことはなかったですよ（笑）ただ、言われることが独特で難しいので、それを自分なりに解釈して吸収していかないといけないので、向き不向きはあると思います。冗談もよく言われるんですが、それも高度なので、しっかり考えてないとついていけないんですよ（笑）」

──さて、西新橋にジムを出されたそうですが。
「はい、『Jaid Fitness Lab.（ ジャイド・フィットネス・ラボ）』というジムです。私の得意なキックをエクササイズに融合させた「キクササイズ」というオリジナルメニューで、非日常を体験してもらい『自分の体を使って遊ぶ』ことによってストレス発散してもらえればというのが一番の目的です」

──女性専用のジムなんですか？
「クラスは女性専用ですが、男性のパーソナルトレーニングも受け付けています。ダイエットやエクササイズなど、様々な目的に対応できますよ」

──そこで教われば、Ｔｉｇｅｒ選手みたいな蹴りが出せるようになりますか？
「数回やっていくと、力の抜き方が理解できてくると思います。それが分かってきた会員さんは、自分の体の動きに『最初と全然違う』と驚かれますね」

──選手としてはムエタイの世界タイトルを６つも獲得していますが、この先は？
「ゴールは決めていません。ムエタイをやっているからにはタイ人に認められて、タイで名前を残したいというのが大きな目標です。それと、ジムをもっと展開して、いずれはタイにも出したいですね」

──タイにですか！
「日本とタイの懸け橋になれればと思って、模索しているところなんです。ゆくゆくはタイ人の選手を“２代目Little Tiger”として育ててみたいという気持ちもありますね」