「“何となく放っておけない”町知子の役作りは苦戦しましたけど、この作品に私は “これから自分がどういう人間になりたいか”と考えさせられるきっかけをもらいました」
次世代を担う若手女優として注目を浴びている東 亜優さんが、3月21日公開の映画『カニを喰べる。』でヒロインとして2役に挑戦。万年モラトリアムなダメ男2人がポンコツの軽トラで旅に出て、自分を見つめ直すという、切なくも可笑しい青春ロードムービーに華を添えている。小誌は東さんを直撃し、映画の撮影秘話や彼女が心揺さぶられた経験をインタビュー!
スマホの電波が届かない実家より栃木は都会でした
──撮影は栃木で1週間行われたそうですが、いかがでしたか。「生まれ育った和歌山と比べて、すごく都会でした(笑)私の実家って山道を通らないと帰れないから暗くなる前に帰らなければいけなかったし、2年前まで家の2階の窓辺にスマホをかざさないと電波がないぐらい田舎なんです(笑)でも、栃木もゆったりとしていて田舎の風景っていいな、と思いました。みんなで同じ宿に泊まって同じご飯を食べて毎日撮影していたんですけど、この作品に私は、“これから自分がどういう人間になりたいか”と考えさせられるきっかけをもらいました。完成作を観て、心を揺さぶられる経験をしたことも思い出しました」
─というのは?─
「大学を卒業後、香川県の直島に1人旅したんです。島が丸ごとアートスペースになっていて、“何でこんな場所にこんなものが置いてあるの?”っていう、新鮮な驚きの連続でした。ただ、1人だから誰とも感動を共有できなくて、盛り上がりに欠けた感はありましたけど(笑)」
──大学へ行かれてたんですね。
「だからこそ、万年モラトリアムの田宮治と青島豪志の心境が分かるんです。私は中学校3年生からこのお仕事を始めたので、ありがたいことに早い段階で目標が決まっていたんですけど、周りには大学を卒業する間際になってもやりたいことが見つからない人が大勢、いましたから。でも、迷いつつも友人は全員、就職しましたけどね」
もし1人選ぶなら青島さん隠さないのが好感持てます
──ということは、モラトリアムになる心理は理解できない?「いえ、そんなことはありませんよ。2人の男の子が堂々とモラトリアムを楽しんで旅をする姿は羨ましいです。あの2人は好きなことには夢中になれるから、就職すると決めたら即、道を決められそうですし。それに私、学生時代からお仕事をしてはいますけど、勉強をしたくて大学に入ってますから、人生に迷った時期もあ ったんです」
──ちなみに大学での専攻は?
「法学部政治学科です。高校の時、ニュースがさっぱり分からなくて知りたい! というのが目指した動機ですけど、講義で判例集を読んだら面白くて。事件が起こる時の悪意の発生の仕方とか、深い人間心理に引き込まれました」
──読書も好きですもんね。人間心理に興味を持つ東さんから見て、2人の登場人物どちらにひかれますか?
「えーっ、主役の2人のキャラってよく似てるから、ひかれるポイントも一緒なんですよ。でも、どちらか1人と聞かれたら、青島さんです。田宮さんは自分がその日暮らしをしていることを隠しますけど、青島さんは隠さず堂々としているじゃないですか。それと、青島さんが旅に出る行動を起こした張本人という理由もありますね」
カーテン越しのキスシーン映画の中で一番すきですね
──劇中で東さんは2役で出演していますね。「メインで演じたのは今井町知子で、監督からは『2人を振り回すような魅力ある女性を演じてほしい』と言われて、役作りに苦戦しました。何となく放っておけない子は、演じるのが難しかったです」
──そんなふうには見えませんでした。3人で野球をするシーンは、町知子に魅力があるからこそ成立したかと。
「あのシーン、暑い中全員、本気でした(笑)町知子はけっこう、ボールをキャッチしてるんですけど、成功したシーンを主に使ってくれたからだと思います(笑)現場では本当に、滑ってコケてばかりでしたから」
──青島と町知子2人きりのシーンも見どころですよね。
「カーテンにくるまって2人がキスするシーン、私一番好きなんです。台本にはなかった演出なんですけど、監督の発案で急遽、決まったんです。作品の中で印象的な場面でもありますし、私も学生時代、こんな青春を過ごしてみたかったという気持ちで作品を観ました。そこからどう展開するかも、ぜひ観て頂けたらうれしいです」
INFORMATION
日雇いアルバイトで生計を立てる田宮(染谷俊之)は、中学時代の野球部仲間・青島(赤澤燈)と再会する。互いにやりたいことが見つからず、その日暮らしの生活を送っていた2人は、野球部時代の先輩の地元である富山へカニを食べに行くことに。軽トラに乗り込み富山を目指し、道中で立ち寄った廃校の体育館で町知子(東 亜優)という女性に出会う。彼女は、かつて2人が憧れていた野球部マネージャーの真沙美にそっくりだった…。夢も目標もないダメ男2人組が、ポンコツトラックの旅を通して自分を見つめ直していく姿を描いた青春ロードムービー。
CAST&STAFF
出演/染谷俊之・赤澤燈・東 亜優・水澤紳吾・中里ひろみ・谷口千明
監督・脚本/毛利安孝
配給・宣伝/ユナイテッドエンタテインメント
公式HP
3月21日(土)より新宿 K’s cinemaにて公開
(C)2015「カニを喰べる。」製作委員会
PROFILE
東 亜優(ひがし・あゆ)
1990年9月21日生まれ 和歌山県出身
05年、フジテレビ系深夜ドラマ「15歳のブルース」でデビュー。CX「鹿男あをによし」、TBS「桜蘭高校ホスト部」、携帯ドラマ「最恐ダーリン」、舞台「トーキョービッチ,アイラブユー」など話題作に多数出演。映画出演はほかに「赤い文化住宅の初子」「16」「君に届け」「ねこにみかん」「1/11 じゅういちぶんのいち」「神さまの言うとおり」などがある。
公式Twitter
日雇いアルバイトで生計を立てる田宮(染谷俊之)は、中学時代の野球部仲間・青島(赤澤燈)と再会する。互いにやりたいことが見つからず、その日暮らしの生活を送っていた2人は、野球部時代の先輩の地元である富山へカニを食べに行くことに。軽トラに乗り込み富山を目指し、道中で立ち寄った廃校の体育館で町知子(東 亜優)という女性に出会う。彼女は、かつて2人が憧れていた野球部マネージャーの真沙美にそっくりだった…。夢も目標もないダメ男2人組が、ポンコツトラックの旅を通して自分を見つめ直していく姿を描いた青春ロードムービー。
CAST&STAFF
出演/染谷俊之・赤澤燈・東 亜優・水澤紳吾・中里ひろみ・谷口千明
監督・脚本/毛利安孝
配給・宣伝/ユナイテッドエンタテインメント
公式HP
3月21日(土)より新宿 K’s cinemaにて公開
(C)2015「カニを喰べる。」製作委員会
PROFILE
東 亜優(ひがし・あゆ)
1990年9月21日生まれ 和歌山県出身
05年、フジテレビ系深夜ドラマ「15歳のブルース」でデビュー。CX「鹿男あをによし」、TBS「桜蘭高校ホスト部」、携帯ドラマ「最恐ダーリン」、舞台「トーキョービッチ,アイラブユー」など話題作に多数出演。映画出演はほかに「赤い文化住宅の初子」「16」「君に届け」「ねこにみかん」「1/11 じゅういちぶんのいち」「神さまの言うとおり」などがある。
公式Twitter
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一