「完成作品を観て、夢や願望があるなら醜態を晒しても登場人物のように下衆になろうとも、隠さずに貫いていいんだな、と学びました」
園子温監督も大絶賛した映画『下衆の愛』が4月2日から全国順次ロードショー。「映画を愛してはいるが全員下衆(ゲス)」というストーリーを構成する登場人物の織り成す下衆さ加減に、なぜか自分と重ね合わせて考えさせられてしまう逸作だ。渋川清彦さん演じる主人公のテツオの人生に深く切り込むヒロイン・ミナミを演じた女優岡野真也さんに、撮影秘話と見どころを聞く。
ミナミは“W寛治さん”のお世話になるんです(笑)
──完成作を観ましたがミナミがあそこまで下衆になるとは…!「驚きますよね。女優として売れるためなら女性として大切なものを売り捨てても構わないという割り切り方は、私にとっては脱帽レベルの覚悟の持ちようでしたから」
──古舘寛治さん演じる映画監督とのシーンが特に印象的でした。
「あのシーンでミナミは以後、激変しますし、ほぼ私の顔のアップだけで見せなければならない重要なシーンだったので気持ちの準備だけはしっかりして現場に入りました。実は私のクランクアップがあのカットでもあるんですけど、作りこむと観る人にバレてしまうので、内田(英治)監督を信頼してお任せしたんです」
──津田寛治さんとも艶っぽいシーンがありますよね。
「そう、今回ミナミは”W寛治さん“にお世話になるんですよね(笑)ミナミは津田さんが演じた監督より立場が上にいなければならないんですけど、津田さんがすごいオーラと目線1つでほかを飲み込む迫力がある方でしたので、対峙するだけで精一杯でした」
──主演の渋川清彦さんとは初共演でしたが、いかがでしたか。
「役として向き合って下さる方で、テツオが演技指導をする時、ミナミにキスをしたり胸を鷲掴みにするんですけど私、本気で『嫌い!』と言ってます(笑)」
ただ芝居がしたい気持ちに私自身自然と共感しました
──テツオはミナミの存在によって情熱を再燃させますが、ご自身が触発された人物や言葉はありますか?「以前、演出家の方に『上手いのは分かったから』と言われたことがあるんです。どうゆう意味だろうと考え、上手いだけじゃなく、それを超えたいという目標を持つようになりました」
──その目標をミナミ役で達成することはできましたか。
「お芝居をするだけで精一杯でしたから達成できたかは分かりません。それに台本に”才能溢れる新人女優“と書いてあって誰よりもお芝居の才能に溢れていなければ説得力がありませんから正直、最初は怖かったです。でも、どうしても女優をやりたいミナミの気持ちを自分に投影してがむしゃらに演じたら、撮影が終わった感じです」
──岡野さんはすでに女優なのに?
「私は父の勧めでオーディションを受けてこの世界に入っているからミナミとはスタートが違うんですけど、ミナミが言った『売れるためじゃなくただ芝居がしたい』という台詞は共感できるんです。もちろん露出は必要ですけど、ミナミは何も知らずに女優の世界へ飛び込んで、ピュアだからこそ周囲の意見を鵜呑みにするしかなくて結果、下衆になってしまう。同じ人生を歩みたいとは思いませんけど、ただお芝居が好きという気持ちは同じなんです」
渋川さんと細田さんのあの“絡み”が一番好きです
──撮影で印象に残っている出来事も教えて下さい。「キャラクター紹介で使われている写真を撮影した日です。当初はマリリン・モンローの衣装を着て、下から風を当ててスカートがふんわりした絵を撮る予定だったんです。でも扇風機がなくて上手くいかなくて結局、『パルプ・フィクション』の衣装になりました。手に煙草を持ってますけどそういえば撮影中、煙草の吸い方が下手だと指摘されて何度か撮影し直しました。 練習したんですけどね」
──劇中で、好きなシーンは?
「渋川さんと細田善彦さんが絡むシーンです。渋川さんは本当に気持ち悪がっていたそうですが、細田さんはノリノリだったみたいなので(笑)みなさんにも楽しんで頂きたいです」
──最後に作品のPRをお願いします。
「このようなタイトルの映画が公開されるので、興味を持ってくださっている方もいると思います。すでにご覧頂いた方からは面白いと太鼓判を押して頂いたので、少しでも興味があればぜひ。私自身は完成作を観て、夢や願望があるなら醜態を晒しても登場人物のように下衆になろうとも、隠さずに貫いていいんだな、と学びました。観て下さる方にもその思いが伝わってほしいですね」
INFORMATION
■映画『下衆の愛』
INFO&STORY
40歳を目前にしながらも夢を諦めきれない自主映画監督のテツオ(渋川清彦)は、映画祭での受賞経験を唯一の心の支えにしながら、女優を自宅に連れ込む自堕落な生活を送っていた。そんな彼の前に、才能あふれる新人女優ミナミ(岡野真也)が現われる。新作映画の実現に向けて立ち上がったテツオは、「裸と動物」にこだわるプロデューサーの貴田(でんでん)や枕営業に賭ける売れない女優の響子(内田慈)、自らのハメ撮りで生計を立てる助監督マモル(細田善彦)ら仲間たちと最後のチャンスに挑むが、現実の壁が立ちふさがり…。インディーズフィルムシーンの底辺に巣食う下衆な人々の葛藤や映画愛を描いた作品。
CAST&STAFF
出演/渋川清彦・岡野真也・でんでん・内田慈・忍成修吾・細田善彦・山崎祥江・津田寛治・古舘寛治・木下ほうか ら
監督・脚本/内田英治
製作/サードウィンドウフィルムズ
配給/エレファントハウス
公式HP
4月2日(土)よりテアトル新宿レイトショーほか全国順次公開
(C)third window films
PROFILE
岡野真也(おかの・まや)
1993年2月22日生まれ 栃木県出身
ドラマ「アゲイン!!」「ハードナッツ!」、舞台「blue,blew,bloom」「sea,she,see」など出演多数。映画は「図書館戦争 THE LAST MISSION」「俺俺」「アナザー」「恋文X」などに出演。15年公開の「飛べないコトリとメリーゴーランド」で主演を飾った。
公式ブログ
■映画『下衆の愛』
INFO&STORY
40歳を目前にしながらも夢を諦めきれない自主映画監督のテツオ(渋川清彦)は、映画祭での受賞経験を唯一の心の支えにしながら、女優を自宅に連れ込む自堕落な生活を送っていた。そんな彼の前に、才能あふれる新人女優ミナミ(岡野真也)が現われる。新作映画の実現に向けて立ち上がったテツオは、「裸と動物」にこだわるプロデューサーの貴田(でんでん)や枕営業に賭ける売れない女優の響子(内田慈)、自らのハメ撮りで生計を立てる助監督マモル(細田善彦)ら仲間たちと最後のチャンスに挑むが、現実の壁が立ちふさがり…。インディーズフィルムシーンの底辺に巣食う下衆な人々の葛藤や映画愛を描いた作品。
CAST&STAFF
出演/渋川清彦・岡野真也・でんでん・内田慈・忍成修吾・細田善彦・山崎祥江・津田寛治・古舘寛治・木下ほうか ら
監督・脚本/内田英治
製作/サードウィンドウフィルムズ
配給/エレファントハウス
公式HP
4月2日(土)よりテアトル新宿レイトショーほか全国順次公開
(C)third window films
PROFILE
岡野真也(おかの・まや)
1993年2月22日生まれ 栃木県出身
ドラマ「アゲイン!!」「ハードナッツ!」、舞台「blue,blew,bloom」「sea,she,see」など出演多数。映画は「図書館戦争 THE LAST MISSION」「俺俺」「アナザー」「恋文X」などに出演。15年公開の「飛べないコトリとメリーゴーランド」で主演を飾った。
公式ブログ
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一