ミュージカル『レ・ミゼラブル』のコゼット役を演じた東京音楽大学卒の女優若井久美子さんがヒロイン役を務めた映画『森のカフェ』が12月12日から公開中。「音楽の道で食べていくことは厳しい」と話し、挫折しかけた経験もあったそうだが、それを乗り越えられた理由や作品の魅力を語ってもらいました。劇中で披露する美しい歌声も必聴!
「監督がおっしゃっていた、風変わりな男女がいさかいを起こしながら恋に落ちる、スクリューボール・コメディだと私も捉えています。美しい紅葉も見どころです」
人間には静と動の時がある静の時に努力を惜しまない
──演じたヒロインは、若井さんが東京音楽大学で声楽を学んでいたことが発端の役ですよね。本格的に声楽を学ぶきっかけを教えて頂けますか?「私、何か1つの事にものすごく集中する子どもだったんです。幼い頃は光GENJIさんが好きでローラースケートを履いて歌ってましたし、両親の影響で聴いた竹内まりやさんも好きで、放っておくとずっと歌ってました。それを見ていた母が、『何か1つ特技を持たせた方がいい』と判断して、中2からクラシックやオペラの勉強を始めました。ただ、音楽の世界で食べていくのはすごく難しいという現実もあって、挫折しそうになった時期もありました」
──それを乗り越えられた理由は。
「母方の祖母の言葉です。『人間には“静”と“動”の時期があって“静”の時期はその時にしかできない努力を惜しまない事。そうすれば“動”の時期が必ず来るから、信じていなさい』と励ましてくれたんです。祖母はそういう名言を沢山持っていて、祖母から母へ、母から私へと受け継がれている言葉がいくつかあるんです」
──その言葉が厳しいと噂の榎本監督の指導も耐える原動力に?
「私もそう伺ってはいたんですけど、榎本監督は厳しいというより、すでにご自分の中に絵があって、それをそのまま実現したいという、こだわりの強い方なだけなんです。だから、本番前は何度も読み合わせを繰り返しました。監督は半音下げて、一音上げて、最初に圧つけて、というような指導をするんです。私は音楽をしていますからすぐ意味が飲み込めますけど、ほかの方は苦労したかもしれませんね。録音機でみんなの音声を録って『嫌な監督だよねぇ』なんて、自虐混じりでしたけど、逆に私は分かりやすくて助かりました」
当時29歳の私が女子大生役 監督を信頼するだけでした
──控え目な演技も指導ですか。「全編に渡って監督の指示に従いました。淡々としていて、我慢してと言われて、会場のお客さま全員に届くような大きな演技を要求されるミュージカルをやっている私としては正直、半信半疑な部分もありました。でも完成作品を観たらやっと監督の言っていた意味が分かって、信じてよかったと思えましたね」
──女子大生役を演じることも、監督を信じて?
「監督と出会った時、私29歳でしたから、信じるしかありませんよね(笑)監督も不安だったみたいですけど、実際の私を見て『若く見えるから大丈夫』と背中を押して下さったので、信頼することにしました」
──若井さんの歌も見どころのひとつですよね。
「作詞が監督ご自身なので『抑揚をつけないで淡々と歌ってほしい』と指導されました。歌詞の内容も哲学的ですし、ギターの弾き語りで歌いますし、結果として正解でしたね」
哲学的な内容を易しく解説している分かりやすい作品
──作品全体の魅力もぜひ。「監督がこだわられた紅葉のシーンがとにかく美しいので、目と心の保養になります。哲学的な内容が出てきますが、分かりやすく解説もしているので、観た方なりに違った答えを出せる映画ではないかと。それと、監督がこの作品のことを、物語のある種の法則に則っているとおっしゃっていたんですね。それが、風変わりな男女がいさかいを起こしながら恋に落ちる、スクリューボール・コメディだと言っていて、私も確かにそうだと感じました。不思議な恋愛関係を味わって頂きたいです」
──映画公開以外には、12月26日にソロコンサートも控えていますね。
「自分の言葉で歌っていきたいのでオリジナルもありますし、ポップスも歌います。Q&Aは恒例にしていく予定です。『休日は何をしてますか?』といった質問が多いですけど」
──その質問、そのままさせて頂いてよろしいですか?
「休日ですか? 最近、ハンドメイドのアクセサリー作りに凝っています。その前はお菓子作りでした。小麦粉と卵が完全に混ざりきらない、寸前のあの感じを、眺めているだけでリフレッシュできたんです。夜中に起きて突然、お菓子作りを始めることもありました。だけどアクセサリーならコンサートを観に来て下さったお客さまにもプレゼントできますし、今は、いつかネットショップを開きたいと思うほどの凝りようです。…って私、結局、何か1つの事に集中する性格はずっと変わらないんでしょうね(笑)」
INFORMATION
■映画『森のカフェ』
INFO&STORY
論文が書けず、気晴らしに紅葉が美しい近所の森へとやって来た若手の哲学研究者、松岡啓志(管勇毅)。鳥がさえずる森の中でノートを広げると、目の前に見知らぬ女、森野洋子(若井久美子)が現れる。「森のカフェにようこそ」などと口にするその不思議な女に、研究者の松岡は無理矢理コーヒーを飲まされてしまい…。「見えないほどの遠くの空を」の榎本憲男監督が、少し気むずかしい哲学者と不思議な少女が展開するユーモラスで哲学的なやりとりを描いた長編第2作。
CAST&STAFF
出演/管勇毅・若井久美子・橋本一郎・伊波麻央・永井秀樹・志賀廣太郎・東亜優・安藤紘平
監督・脚本/榎本憲男
音楽/安田芙充央
劇中歌/「いつのまにかぼくらは」若井久美子
配給/ドゥールー
公式HP
12月12日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
PROFILE
若井久美子(わかい・くみこ)
1984年10月3日生まれ 東京都出身
東京音楽大学演奏家コース卒業後、同大学科目履修声楽コースに進む。在学中に、第39回国際芸術連盟新人オーディション最優秀新人賞を受賞。その後、東宝ミュージカルアカデミーに入学し、同アドバンスコース修了。10年の卒業公演「レ・ミゼラブル」でコゼット役を演じた。主な出演作にミュージカル「この森で、天使はバスを降りた」、音楽劇「しあわせのタネ」などがある。コンサート「~カランコエ~」は12月26日(土)19時から飯田橋のザ・グリーにて。
公式ブログ 公式Twitter
■映画『森のカフェ』
INFO&STORY
論文が書けず、気晴らしに紅葉が美しい近所の森へとやって来た若手の哲学研究者、松岡啓志(管勇毅)。鳥がさえずる森の中でノートを広げると、目の前に見知らぬ女、森野洋子(若井久美子)が現れる。「森のカフェにようこそ」などと口にするその不思議な女に、研究者の松岡は無理矢理コーヒーを飲まされてしまい…。「見えないほどの遠くの空を」の榎本憲男監督が、少し気むずかしい哲学者と不思議な少女が展開するユーモラスで哲学的なやりとりを描いた長編第2作。
CAST&STAFF
出演/管勇毅・若井久美子・橋本一郎・伊波麻央・永井秀樹・志賀廣太郎・東亜優・安藤紘平
監督・脚本/榎本憲男
音楽/安田芙充央
劇中歌/「いつのまにかぼくらは」若井久美子
配給/ドゥールー
公式HP
12月12日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
PROFILE
若井久美子(わかい・くみこ)
1984年10月3日生まれ 東京都出身
東京音楽大学演奏家コース卒業後、同大学科目履修声楽コースに進む。在学中に、第39回国際芸術連盟新人オーディション最優秀新人賞を受賞。その後、東宝ミュージカルアカデミーに入学し、同アドバンスコース修了。10年の卒業公演「レ・ミゼラブル」でコゼット役を演じた。主な出演作にミュージカル「この森で、天使はバスを降りた」、音楽劇「しあわせのタネ」などがある。コンサート「~カランコエ~」は12月26日(土)19時から飯田橋のザ・グリーにて。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一