「どんなにイヤでキツイ仕事でも、『この仕事からアイデアを盗んで他で活かそう』と考えるだけで、人生の肥やしになると思いますよ」
個性の強いキャラクターが登場するコントでお茶の間人気を獲得し、「キングオブコント2011」では2位以下を大きく引き離して完全優勝を遂げ、同業者をも唸らせるロバート。デビュー15周年を記念して、彼らのコントの魅力がギュッと濃縮されたDVD『ロバート ベストオブコント作品集 1998~2013』が発売される。収録されているのはテレビで見たことがあるコントが多く、1人で観ても大笑いできること確実の秀逸さだ。だが、これまで「挫折を経験したことがない」と語る彼らにも、苦労した時代があったという…。それをどうやって苦難を乗り越えてきたのかー。
天才肌の秋山竜次さん、飄々としたキャラクターの馬場裕之さん、その2人から「世界で最も標準的な男」と言われている山本博さんのお笑いトリオ、ロバート。比類なき面白さでテレビ界を席巻中の彼らのネタ作り方法や仕事観を徹底取材するため、小誌は収録直後のフジテレビ湾岸スタジオに突撃! さすが芸歴15年だけあり、話はたびたび脱線しながらも、最後には話題をキッチリと戻してまとめるというトーク力でバイトに明け暮れた過去、当時の仕事への考え方や作品集について語ってくれた。3人ともテレビで知る通り、いや、テレビで観る以上に物腰柔らかな好青年。その素顔をご堪能あれ!
ネタにされた本人は気づかないでしょうけど、お前で作品作ったからなって感じられる瞬間が、ものすごく清々しい。それが自分の中でストレス発散になるんです
──『ロバート ベストオブ作品集1998~2013』には17本のコントが収録されていますが、泣く泣く見送ったネタもたくさんあったのではないでしょうか。山本「そうなんですよ。一番入れて欲しかったコントが外されちゃったんですよねぇ」
秋山「お前が先に言うんかい! ネタを書いてる俺が先に言うのが順序でしょう。ま、いいけど」
山本「スープだけを延々と頼み続ける、『スープ』が入ってないんですよ。元は1分だったネタが3分になり、10分になった!」
馬場「何回も企画会議したのに、どうしてその場で言わないんだよ。いる意味ないじゃん(笑)」
秋山「普段から自己主張しないことが今の意見でバレバレですよ」
──となると、15周年記念ライブで山本さんが好きなLUNA SEAに扮した“HIRO SEA”も入っていない?
山本「入れてもらえませんでした」
馬場「ネタの密度とは落差がありますからね~」
秋山「でも映像は残ってるから、500円ぐらいで販売すればいいじゃない。街で手売りしなさいよ」
山本「ムリだって。俺1人だけ出るDVDが売れるわけないって!」
──あはは! でもコントでも十分、山本さんのツッコミが楽しめますから。さすがNSC時代に数多くの同期生とコンビを組み、“お笑いヤリマン”と呼ばれていただけのことはあるかと(笑)。
秋山「山本はね、ほとんどの同期にヤラれてるから、『これだけ人の手垢がついたヤツでいいのか』って最初はためらいましたよ。でも、どこかいい部分があるから人は求めるんだろうってことで、1回だけヤッてみようと」
馬場「ねぇ、どうせヤレるんなら1回ヤッておこうって話になって誘ったんだよね」
山本「ヤッてみるとかヤレるとか、完全にエロコメントだから!」
秋山「一緒に組んで感じたんですけど、山本のツッコミはスタンダードでいいんですよね。劇場に観に来る人と同じ温度で返してくれる。それがコンビが長続きする秘訣ですかね」
馬場「僕と秋山が演じるキャラクターが濃い分、シンプルさが浮き立つんですよ。やっぱり毎回、濃過ぎると飽きちゃいますから」
山本「またエロコメント(笑)。でもね、俺はある意味ツッコんでないんですよ。俺のポジションって、実は誰でもできるのかもしれませんね(苦笑)」
──ネタ作りを担当する秋山さんは天才肌と評されていますが、ネタ作りはどのようにしていますか。
秋山「そうですね、天才としてやらせていただいてますけど…」
山本「謙遜しろよ(笑)。今、謙遜するところだから」
秋山「演りたいキャラクターを元にネタ作りをすることが多いんですが、ネタ元は幼少期に地元の福岡で出会った、変なヤツですね。今はもちろん東京で知り合ったおかしなヤツから部分部分をもらっても作りますけど、見つけたら常に『いつかこいつをネタにしてやろう』と思いながら生活してます」
馬場「あの人だって教えられた時に、当人をモチーフにすっごく膨らましてるのが分かるんですよ」
秋山「ネタにされた本人は気づかないでしょうけど、お前で作品つくったからなって感じられる瞬間が、ものすごく清々しい。それが自分の中でストレス発散になるんです」
山本「すげー陰湿!」
──幼少期の記憶でネタ作りをするということは、秋山さんは記憶力がいいということですよね?
馬場「秋山は記憶力、メチャメチャいいですよ。最初に知り合った幼稚園時代に、僕がミッキーマウスの絵が付いた腹巻きをしてたこと、いまだに覚えてますから」
秋山「幼稚園の先生が着替えてる時、偶然通りかかって見てしまったブラジャーの柄まで覚えてますからね。自分でも辛くなるほど記憶力はいいです」
山本「どんな柄だった?」
秋山「カップが小さめで、薄~い黄色のローズ柄」
馬場「そういう記憶力はずば抜けてるのに勉強はまったくできなくて高校、留年しかかりましたけど」
──なるほど。ネタに枯渇することはなさそうですね。今回15周年で作品集を出しましたが、次は?
秋山「また15年は溜めたいなぁ」
山本「そうしたら俺ら50歳だよ?」
秋山「小出しにせずパンパンに溜めてドカンと出したほうが、気持ちいいですからね」
馬場「実際ヤッてみたら『俺こんなに出る!』って気持ちいいよね」
山本「そこドカントを掛けなくてもいいし、出る! って…」
『はねるのトびら』が始まってからもバイトしてました!
──DVDもリリースして仕事が好調。みなさんは挫折未経験とか。馬場「そんなことないですよ。僕は芸人以外、何1つ仕事が続いたことがありません。コンビニ、ガソリンスタンド、新聞配達、居酒屋、日雇い派遣社員…全部クビになってますから」
秋山「唯一続いたのが、俺と一緒だったビルのダクト掃除ですかね。『はねるのトびら』が始まってからもバイトしてて、4年ぐらい働いたんですよ。給料が安いから、仕事はあるけど収入はない状態がしばらく続いたんです」
山本「早い段階でテレビには出してもらえましたけど、技術が伴ってなかったから、途中で失速したこともありましたし」
秋山「でも一番辛かったのは去年ですかねぇ。11年間続いた『はねる』が終わって、思い入れの強いレギュラーの仕事がなくなったんで」
馬場「僕ら給料制じゃないんで、仕事が1つなくなると収入がガタッと減るんですよ。だから常に危機感は持ってますね」
秋山「そういう時期って自分の中で『何か新しいことを始めなくちゃ』と思うじゃないですか。その試行錯誤する中で、体ものまねを見つけたんです。馬場は特技の料理を活かすようになりましたし」
──山本さんはどんなバイトを?
秋山「山本は寿司屋でずっとバイトしてて、3人組ですごいあだ名を付けられたんだよな?」
山本「俺が『軍艦の山本』で、あとの2人は『シャリ切りのながい』と、『皿洗いのテツ』。何度も社員にならないかって誘われたんですよ。会社からケータイを持たされて呼び出されることもありました」
秋山「その3人、誰も肝心のネタに触ってないじゃない」
秋山「そうだった…(笑)」
馬場「僕は、バイトをするのがイヤでしたね。自分がやりたい仕事とは違うんで」
秋山「だけど、どんなにイヤでキツイ仕事でも、『この仕事からアイデアを盗んでほかで活かそう』と考えるだけで、人生の肥やしになると思いますよ。それに、仕事を辞めたくなったら辞めて、また別の仕事を探せばいいんです」
馬場「仕事を何度も変えるってことは、それだけいろんな世界を見られるってことですからね。視野が広がりますよ」
秋山「そうそう。俺なんて、いまだにもっといろんなバイトをしておけばよかったと思いますもん。あの辛い時期があったからこそ、今に感謝できるわけですし」
山本「秋山、いいこと言うなぁ」秋山「俺の言葉が胸に響いちゃってどうすんだよ。みなさん、これがダメな大人の代表ですよ(笑)」
この後「15年の感謝を伝えたい人は」と聞くと、馬場さんは秋山さん、山本さんは秋山さんのご両親、秋山さんは熟考の上「じいちゃん。でも亡くなってるんで、墓にDVDを持っていきます」とのこと。テレビやライブで見せる姿と同様、絶妙な掛け合いに何度も取材スタッフは大爆笑でした!
INFORMATION
DVD『ロバート ベストオブコント作品集 1998~2013』
INFO
総収録時間3時間越え、コント総数17本!ロバート結成15周年の集大成、熟成されたコントのベスト盤!! 13年9月14日にルミネtheよしもとで行われ、チケットは即完売となった「ロバート結成15周年総決算! 一夜限りのベストコントLIVE!!」の模様を収録。収録内容:転校生/HIROSHI RECORD/地方CMソングライター/三回忌/プロフェッショナル/結婚式~SUPERラブストーリー~/終電逃したときに始発まで暇つぶしに付き合ってくれるプロ/人間ドッグ/シゲとおさださん/トゥトゥトゥサークル/戦国の里 忍者ショー/ギタリスト博~Take it easy~/みまりちゃん/それいけ!竜海運先生/劇団麦わらぼうし/コスプレ/~節~
よしもとアール・アンド・シーから11月27日発売。2940円(税込)
(c)2013 吉本興業
PROFILE
ロバート
山本博(やまもと・ひろし)
1978年9月5日生まれ 群馬県出身
秋山竜次(あきやま りゅうじ)
1978年8月15日生まれ 福岡県出身
馬場裕之(ばば・ひろゆき)
1979年3月22日生まれ 福岡県出身
吉本総合芸能学院(NSC)東京校の4期生で、98年に結成。独特のシュールさと明るいキャラクターは若者を中心に多くの支持を集める。01年4月スタートのフジテレビ「はねるのトびら」で一躍人気を集め、08年、「キングオブコント2008」決勝進出、11年には「キングオブコント2011」で優勝を飾る。メ~テレ「ザキロバ!アシュラのススメ」レギュラー、テレビ朝日「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」「いきなり!黄金伝説。」準レギュラー。DVD「激情プロレスリング~激突!! 吉本芸人軍団 VS 新日本プロレス軍団全面戦争~(仮)」は14年1月22日発売。
DVD『ロバート ベストオブコント作品集 1998~2013』
INFO
総収録時間3時間越え、コント総数17本!ロバート結成15周年の集大成、熟成されたコントのベスト盤!! 13年9月14日にルミネtheよしもとで行われ、チケットは即完売となった「ロバート結成15周年総決算! 一夜限りのベストコントLIVE!!」の模様を収録。収録内容:転校生/HIROSHI RECORD/地方CMソングライター/三回忌/プロフェッショナル/結婚式~SUPERラブストーリー~/終電逃したときに始発まで暇つぶしに付き合ってくれるプロ/人間ドッグ/シゲとおさださん/トゥトゥトゥサークル/戦国の里 忍者ショー/ギタリスト博~Take it easy~/みまりちゃん/それいけ!竜海運先生/劇団麦わらぼうし/コスプレ/~節~
よしもとアール・アンド・シーから11月27日発売。2940円(税込)
(c)2013 吉本興業
PROFILE
ロバート
山本博(やまもと・ひろし)
1978年9月5日生まれ 群馬県出身
秋山竜次(あきやま りゅうじ)
1978年8月15日生まれ 福岡県出身
馬場裕之(ばば・ひろゆき)
1979年3月22日生まれ 福岡県出身
吉本総合芸能学院(NSC)東京校の4期生で、98年に結成。独特のシュールさと明るいキャラクターは若者を中心に多くの支持を集める。01年4月スタートのフジテレビ「はねるのトびら」で一躍人気を集め、08年、「キングオブコント2008」決勝進出、11年には「キングオブコント2011」で優勝を飾る。メ~テレ「ザキロバ!アシュラのススメ」レギュラー、テレビ朝日「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」「いきなり!黄金伝説。」準レギュラー。DVD「激情プロレスリング~激突!! 吉本芸人軍団 VS 新日本プロレス軍団全面戦争~(仮)」は14年1月22日発売。
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一