テレビ局から放送NGを出されるほど、リアルな傷を特殊メイクとして制作。一方でそれを自らの体に施して、「怪我ドル」としてもパフォーマンスを行う野中ひゆ。今年9月のフジテレビ『アウト×デラックス』出演が反響を呼び、11月には拠点を東京に移して活動を本格化する彼女に、その傷メイクとアイドル活動に込めた思いを語ってもらった。
やりすぎると放送NGなのに、思わず「出血大サービス」しちゃうんです(笑)
──野中さんの傷メイク、リアルすぎてゾッとするんですが、この技術はどこで習ったんですか?「独学で始めました!きっかけは、高校時代に友だちができず、心を病んで不登校になったことで。当時はリストカットなどの自傷行為が世間で問題視されはじめた時期。私は自分の体を傷つけはしませんでしたが、『傷を作品にすることで、傷つきやすく自傷行為に走ってしまう多感な女の子の内面を表現できないか』と思って作ってみたんです」
──最初からリアルな傷を作れたんですか?
「試行錯誤しながらですね。高校では美術科に在籍していて、デッサンなどはしていましたが、立体物はあまり作ったことがなくて。100均の化粧品など、身近なもので作ることから始めました」
──その後ですぐプロとして活動を?
「シネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)という映像制作のNPOに、制作スタッフとして応募してからですね。そこでプロの現場に入り、自分にできる傷メイクを作りつつ、現場での経験を少しずつ積んでいきました。日本では買えない特殊な材料の入手法や使い方もそこで学べましたね。『大阪邪道』という映画では、特殊メイクだけでなく、死体役で出演したりもしました(笑)」
──傷のリアルさを出すポイントは?
「神経細胞が死んだ傷口のフチの部分を白くしたり、その周囲の打ち身の部分を黒ずんだ色にしたりと、細部まで演出することですね。メイクを施す人の顔の形や、動きのクセ、シワの寄り方にも合わせて、メイクは細かく調整します。ヤクザ映画などでは、『バットで殴られて頭がパカっと割れた感じでお願い!』みたいなオーダーが多く、思う存分メイクをできるんですが、テレビだとリアルすぎるとNGになるのが難しくて。それでも思わず『出血大サービス』しちゃうんですよ(笑)」
傷メイクが自傷行為に走る人を止め、その人達の救いにもなってくれたら
──言葉通り血を多めに飛び散らせたりしちゃうと(笑)一方で怪我ドルとしても活動中ですよね。「自分に傷メイクをして、ギブスもつけた状態で歌を歌ったり、ズタ袋を被って普段以上にアイドルっぽく振る舞ったり、変なことをいろいろしています(笑)『化粧も行き過ぎたらこうなりませんか?それで人格も変わりませんか?』ってメッセージを実は込めているんですけどね。でもイベントでファンの人に傷メイクをしても、実際に性格が急変する人が多くて。会ったときには内気だったのに、傷メイクをしたら人を脅かそうとする明るい性格になったり、口裂けメイクのまま『これで家まで帰ります』と言い出したり(笑)傷メイクにも、そういうプラスの効果があると思うんです」
──周囲に「怖い」と思わせる以外の面もあると。
「私が傷メイクを作ることで、自傷行為に走る人を止められたり、その人達の救いになれたりしたら嬉しいですね。最近は残虐描写などを『犯罪を助長する』と規制する動きもありますが、規制すればするほど犯罪は増えるんじゃないかと私は思います。作品にできたり、それを見れたりできば、人の欲求はそこで解消されると思うんですよ」
──9月のフジテレビ『アウト×デラックス』出演も話題になりましたし、今後は拠点を関東に移して活動をさらに本格化されるそうですね。
「実は『アウト×デラックス』で関西のアイドルの枕営業事情を話したことで、嫌がらせが多くなって。それで東京に移らざるを得ない面もあるんですけどね(笑)あと自分は憑きやすい、憑かれやすい霊媒体質で、UFOアイドルや怪談の活動もしています。それを特殊メイクや怪我ドルの活動などとミックスすることで、自分にしかできない新しい表現を模索していきたいです!」
PROFILE
野中ひゆ(のなか・ひゆ)
「怪我ドル」として活動する一方、特殊メイクで参加した映画『大阪外道』は、 2012年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でオフシアター・コ ンペティ ション部門グランプリを獲得した。そのほかの映像作品にも特殊メイクのプロと して参加している。電子書籍の写真集『パフォーマンスアイド ル宣言』が発売中。
公式ブログ
公式Twitter
野中ひゆ(のなか・ひゆ)
「怪我ドル」として活動する一方、特殊メイクで参加した映画『大阪外道』は、 2012年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でオフシアター・コ ンペティ ション部門グランプリを獲得した。そのほかの映像作品にも特殊メイクのプロと して参加している。電子書籍の写真集『パフォーマンスアイド ル宣言』が発売中。
公式ブログ
公式Twitter
取材・文/古澤誠一郎