「プロレスがオリンピック競技だったら、金メダルを獲るのはDDTっていう。今のDDTは面白くて人気もあるけど、実力面での評価がまだついてきてない 気がするんですよ。そこを押し上げるのが僕の役目だと思いますね」
人気プロレス団体DDTの頂点であるKO-D無差別級のベルトを保持する竹下幸之介選手。まだ21歳、高校時代にデビューし、常に期待を背負ってきたが、実は理想と現実に悩んだ時期もあったという。バラエティ色の強い“文化系プロレス”DDTにあってアスリート性の高さも際立つ新エースは、自身とDDTについて、いかなる未来を思い描いているのだろうか。8月28日のビッグマッチ、両国国技館大会を前に、その率直な思いを聞いた。
プロレスを見てきた長さと量なら絶対に負けない!
──5月の後楽園ホール大会で、21歳にしてKOーD無差別級王者となりました。デビューから4年弱です。「普通の選手の感覚だと短いと思うんですけど、僕の中ではメチャクチャ長かったですね、ここまで。理想と現実のギャップに悩んだ時期もあって」
──デビュー当時から「DDTの未来を担う存在」と期待されてましたが、自分自身の期待には応えられなかった?
「高校生でデビューしましたからね。
体は大きいんですけど、中身はまだ子どもで。もっと早くベルトを獲れると思ってたんですよね。でもプロレスって、やればやるほど難しいんですよ。 まだ視野が狭かったし、先輩の選手たちへの遠慮もあって。分かってるんだけど、どうしようもないっていう」
──周りのことも自分のことも分析できちゃうだけに歯がゆいというか。小さい頃からのプロレスファンだから批評眼も鋭いんでしょうし。
「僕が同世代、同じキャリアの選手に絶対負けない部分といったら、プロレスを見てきた長さと量だと思います。 2歳から見てたらしいので(笑)」
──そもそも、小学生で入門志願してたんですもんね。
「小学校卒業の時点で身長が178センチあったので、なれるんじゃないかと。陸上を始めたのも、スポーツでいい成績を残したら中卒でも入団できるかも、と聞いたからで。ずっとプロレスのことだけ考えてきたんですよ」
苦労してきたけどそうは見てもらえなかった(笑)
──その陸上でも結果を出して高校時代にデビュー。ビッグマッチでは大物選手と当たることも多かったですから、どうしても期待は大きいし特別視されますよね。今のDDTには若手部門の大会『DNA』がありますが、そこでデビューしていたら、ちょっと違ってたかもしれませんね。「DNAはホントにいい環境ですよね。若い選手同士で切磋琢磨しながらキャリアを積めますから。それをファンに見守ってもらえますし。僕の場合は、そこを一人で考えてやらなきゃいけなかったので。孤独といえば孤独でしたよ、うん。僕もDDT生え抜きで、苦労しながらやってきたんですけど、なぜかそう見てもらえなかった(苦笑)可愛げがないんですよね」
──それは、できるからですよ。体も大きいし運動神経もいいし、なんでもできちゃうから逆に応援しにくい。
「そうですかねぇ…」
──だからこそ今、ベルトを巻いている姿がしっくりきますよ。トップに君臨してるほうが似合う感じで。
「なんか違和感なくやれてる感じはしますね。でもこれからです。『竹下がチャンピオンになってからのDDTは面白いな』って言われたいんで。僕の理想は、夜のスポーツニュースで野球、サッカーと一緒にプロレスの結果も流れる時代にすること。だから練習して筋肉つけたことに対して『頑張ってますね』とは言われたくないんですよ。それって当たり前のことだから、野球選手には言わないじゃないですか」
目指すはアスリートと〝都市伝説〟の両立!!
──やっぱりプロレスラーはスポーツマンというより怪物幻想というか「飲みに行ったらお店のお酒が全部なくなった」的な要素が求められるんですかね。「そこも大事にしていきたいです。プロレスラーはナメられちゃいけないんで。僕のプロレスを〝アスリートプロレス〟って言う人もいるんですけど、飲みに行ったら誰にも負けないですし、ジムでウェイトやる時も意識して重いのを挙げますからね」
──練習中もナメられちゃいけない?
「そうです。見た目自体もそうですよね。前は『見た目では分からなくてもパワーはあるし動けるんだから構わない』と思ってたんですけど、やっぱりゴツい筋肉の迫力、説得力ってありますもんね。街を歩いてたら『なんか凄い人がいる!』と見られるくらいじゃないと。都市伝説的な(笑)」
──昔のレスラーらしさと現代的アスリートの両方をやってやろう、と。
「そうなんです。豪快に飲むから練習しないんじゃないし、練習重視だから節制するわけでもない。あらゆる意味でナメられないようにしたいですね。それは僕個人も、DDTも」
──団体としても、ですか。
「たとえばプロレスがオリンピック競技だったら、金メダルを獲るのはDDTっていう。今のDDTは面白くて人気もあるけど、実力面での評価がまだついてきてない気がするんですよ。そこを押し上げるのが僕の役目だと思いますね」
──DDTはバラエティ色が人気ですけど、そこだけじゃないぞと。
「DDTの楽しい面っていうのは、もう評価が高いわけじゃないですか。僕は〝強さ〟で引っ張っていきたい。そのためには他団体参戦もいいアピールになりますよね」
──10年後のDDTは〝実力派〟の団体と呼ばれているかもしれないですよね。
「その時、僕は31歳。レスラーとしてアブラが乗ってる時期でしょうね。あ……でも僕、子どもの頃から『お前は生き急ぐタイプだから早死にする』って言われてるんですよねぇ(笑)そこだけは気を付けないと」
INFORMATION
■DDTプロレスリング『両国ピーターパン2016〜世界で一番熱い夏〜』
INFO
<対戦カード>
KO-D無差別級選手権試合
その時点での王者vs石川修司(挑戦者)
KO-Dタッグ選手権試合
大家健&KAI(王者)vsHARASHIMA&宮本裕向(挑戦者)ほか
8月28日(日)14時から、東京・両国国技館にて
公式HP
PROFILE
竹下幸之介(たけした・こうのすけ)
1995年5月29日生まれ 大阪府出身
幼少期からのプロレスファンで、小学生時代から団体に履歴書を送る。陸上競技で結果を出し、12年、高校時代に日本武道館でエル・ジェネリコ(現WWEのサミ・ゼイン)相手に破格のプロデビュー。13年にはプロレス大賞・新人賞を受賞。今年5月、後楽園ホールで佐々木大輔を下し、KO-D無差別級王座奪取。8月28日に開催される両国国技館大会にも出場する。
公式Twitter
■DDTプロレスリング『両国ピーターパン2016〜世界で一番熱い夏〜』
INFO
<対戦カード>
KO-D無差別級選手権試合
その時点での王者vs石川修司(挑戦者)
KO-Dタッグ選手権試合
大家健&KAI(王者)vsHARASHIMA&宮本裕向(挑戦者)ほか
8月28日(日)14時から、東京・両国国技館にて
公式HP
PROFILE
竹下幸之介(たけした・こうのすけ)
1995年5月29日生まれ 大阪府出身
幼少期からのプロレスファンで、小学生時代から団体に履歴書を送る。陸上競技で結果を出し、12年、高校時代に日本武道館でエル・ジェネリコ(現WWEのサミ・ゼイン)相手に破格のプロデビュー。13年にはプロレス大賞・新人賞を受賞。今年5月、後楽園ホールで佐々木大輔を下し、KO-D無差別級王座奪取。8月28日に開催される両国国技館大会にも出場する。
公式Twitter
Interview&Text/橋本宗洋 Photo/おおえき寿一