「心に文化系を持っていて、一度でもエゴサーチした経験者が観たら刺さると思います」(松江)
「映画では昔の映像も使われているから、『やっとここまで来たんだな』と歴史を感じました」(大家)
プロレス団体DDTによる『劇場版プロレスキャノンボール2014』に続く映画『俺たち文化系プロレスDDT』が11月26日より全国順次ロードショー。東京国際映画祭でのオールナイト上映直前にお邪魔し、本作でプロレスドキュメンタリー映画の初メガホンを執った松江哲明監督と、図らずも(!?)主役を務めることになったレスラー大家健さんに作品の魅力を語ってもらった。 !
1年間撮影をし続けた結果〝大家帝国〟が一番だった
──松江監督へのオファーはDDTの社長兼レスラー高木三四郎さんからだそうですが、具体的な依頼内容は。松江「もともとは『DDTの1年を追いかけてくれ』と言われていたんです。でも高木さん、おそらく前田敦子さんが過呼吸で倒れるシーンが印象的な、AKB48のドキュメンタリー第2弾を観たんでしょうね。ああいったテイストを求められて…僕も好きなんですけど、簡単にあんなドキュメンタリー映画は作れないんですね。しかも打ち合わせの前日は映画『ビリギャル』を観たらしくて、これは大変なことになるぞ、と(笑)結果、大家さんがこんなにクローズアップされて主役になってるとは想像もしていなかったでしょうから、大家さんは驚いてると思いますけど」
大家「驚きましたけど、たまたまっすね。要因があるとすれば、(マッスル)坂井と俺が友だちだというだけです(笑)坂井が俺を贔屓目に見てくれて『ここで大家ならこう動いてくれるんじゃないか』っていう期待はちょっと、あったと思うんですよ。俺は、坂井の操り人形なんで」
──だから、片付いてないご自身の部屋も見せた…?
大家「あれも坂井の『こうなればいいなあ』という願望に対して、俺が言うことを聞いちゃっただけです」
松江「でも、あんなに散らかり放題の自宅を見せるのは勇気ありますよねえ(笑)衝撃映像ですよ。嫌だって断らなかったんですか?」
大家「自分にも意思はあるんですよ。でも気づけば坂井の言うことを聞いてる。魔法にかけられたみたいっすよ。誘導しやすいから、坂井も俺をメインの場面に使うんでしょうけど」
松江「いやいや、大家さんの人間力が結果として出ただけです。1年間を撮っているから飯伏(幸太)選手が怪我で欠場したシーンも素材としてはあったんですけど、すべての素材を観て、〝大家帝国〟が一番、面白いと判断したんです」
本気で一生懸命取り組めば人生の鍵になる人と出会う
──新日本プロレス棚橋弘至選手&小松洋平選手とのカードが決まるまでの大家さん、男気あふれていてカッコよかったです。大家「単にみんなの意見を代表して言っただけなんです。俺が言える立場だっただけ。DDTの象徴であるHARASHIMAさんは『自分が騒いでも仕方ない』という事情で言えなかったんですけど、DDTファンや総意としては違っていた。総選挙で1位を獲れたからこそ言う権利を得られただけですし」
松江「でもカードが決まった瞬間、見てる側は興奮しましたよ」
──棚橋選手と戦った感想は?
大家「もとからスゲエとは思ってましたけど、実際に戦ってみたらやっぱり凄かったです。俺みたいな選手が…という気持ちと負けねえぞって思い、両方ありましたけど、みんなの思いを背負っていて、あの舞台に立たせてもらったのは俺だけの力じゃないので、ケンカするつもりで戦いました。周りの人に感謝したいですね。それに、社長が交渉してくれなかったら俺ら、アホみたいなこと言っただけで終了でしたから」
──大家さんにとって社長はついていきたい人ですし、感謝ですよね。
大家「そうっすね。高木さん自身は僕らに言ったことをあんまり覚えていないんですけど、僕らは結構、高木さんに言われたことを真に受けているところがあるんです。人生の2/3ぐらいはDDTで過ごしてますから、確実に影響は受けてますね」
──大家さんたちにとっての高木さんのような、人生でキーになるような人物と出会う方法ってありますか。
松江「僕がDDTのみなさんを見ていて思うのは、正直な人が多いということですね。自分のやりたいことや表現したいことに対して正直だし、上手い下手じゃなく、一生懸命か否かを高木さんは評価しているんだと思います。だから嘘をつかず本気でぶつかっていけば、本気で見ている高木さんのような人はきちんと応えてくれる。そこに気づけないのはご縁がないだけなんです。何より高木さん自身が本気でぶつかるから、周りは嘘をつけないんですね。映画でも大家さん、プロレスを辞めようか迷った時『プロレスを辞めた後のほうが人生長いんだぞ』と言われたと語っているじゃないですか。ああいう言葉をもらえるのは、お互いが本気である証拠。逆に本気でやればキーになる人とは出会えると思います」
いい意味でプロレス映画としての期待は裏切れたかと
大家「松江監督の言うとおりで俺、今、(歌舞伎町の居酒屋)エビスコ酒場で働いてるんですけど、店長のKUDOが俺たちより率先して仕事を頑張るんです。そんな姿を見せられたらこっちも頑張らなくちゃと思う。だからこそ仕事は一生懸命やるべき。朝から晩まで働いて、お金がもらえたらうれしいじゃないですか。もらえなかったらその時考えればいいだけなんですよ」──勉強になります。最後に改めて映画のPRをお願いできますか。
松江「DDTがほかのプロレス団体と違うのは文化系という点で、その最たるシーンが、食事をしながらもスマホでエゴサーチするという、あの後先を考えず生きている感じ。だから、心に文化系を持っていて、一度でもエゴサーチした経験者が観たら刺さると思います。いい意味でプロレス映画としての期待は裏切っていますし」
大家「俺もエゴサーチしますけどその何が文化系なのか、実はよく分かっていません(笑)でも映画では昔の映像も使われているから、『やっとここまで来たんだな』と歴史を感じたんですよね。高木さんの器のデカさとともに俺らの歴史も楽しんでほしいですね」
■映画『俺たち文化系プロレスDDT』
INFO&STORY
15年8月のDDT両国国技館大会のリングに上がった新日本プロレス棚橋弘至。DDTのエースHARASHIMAとの試合終了後に発した棚橋のコメントは、プロレス界周辺で波紋を呼んだ。その発言によりファン、そしてHARASHIMAらDDTの選手たちに生まれたモヤモヤした感情を解消すべく、男色ディーノ、マッスル坂井、大家健らは棚橋とHARASHIMAの再戦を希望するのであった…。DDTプロレスリングによる「劇場版プロレスキャノンボール2014」に続く劇場用作品第2弾で、異なる目的を抱えたままリングに上がるレスラーたちを追ったドキュメンタリー。
CAST&STAFF
出演/マッスル坂井・大家健・HARASHIMA・男色ディーノ・高木三四郎・鶴見亜門・KUDO・伊橋剛太・今成夢人/棚橋弘至・小松洋平
監督/マッスル坂井・松江哲明
音楽/ジム・オルーク
製作総指揮/高木三四郎
配給/ライブ・ビューイング・ジャパン
公式HP
公式Twitter 11月26日(土)より新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
(C)2016 DDTプロレスリング
PROFILE
松江哲明(まつえ・てつあき)
1977年生まれ 東京都出身
ドキュメンタリーを手法を得意とし、「童貞。をプロデュース」「あんにょん由美香」「ライブテープ」「フラッシュバックメモリーズ3D」などがヒットを記録。テレビ東京「山田孝之の東京都北区赤羽」「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」も担当した。プロデュースを手掛けた映画『あなたを待っています』上映中。
公式Twitter
大家健(おおか・けん)
1977年生まれ 富山県出身
01年、DDTでデビュー。13年2月、退団を懸けたシングルマッチに敗れ無所属に。その後、高木三四郎代表から渡された1万5000円を資金にプロレスをメジャースポーツにするため「ガンバレ☆プロレス」を旗揚げ。代表兼レスラーとして活躍中。 14年には映画「劇場版プロレスキャノンボール2014」に今成夢人と参加。PR活動にも奔走した。
公式Twitter
INFO&STORY
15年8月のDDT両国国技館大会のリングに上がった新日本プロレス棚橋弘至。DDTのエースHARASHIMAとの試合終了後に発した棚橋のコメントは、プロレス界周辺で波紋を呼んだ。その発言によりファン、そしてHARASHIMAらDDTの選手たちに生まれたモヤモヤした感情を解消すべく、男色ディーノ、マッスル坂井、大家健らは棚橋とHARASHIMAの再戦を希望するのであった…。DDTプロレスリングによる「劇場版プロレスキャノンボール2014」に続く劇場用作品第2弾で、異なる目的を抱えたままリングに上がるレスラーたちを追ったドキュメンタリー。
CAST&STAFF
出演/マッスル坂井・大家健・HARASHIMA・男色ディーノ・高木三四郎・鶴見亜門・KUDO・伊橋剛太・今成夢人/棚橋弘至・小松洋平
監督/マッスル坂井・松江哲明
音楽/ジム・オルーク
製作総指揮/高木三四郎
配給/ライブ・ビューイング・ジャパン
公式HP
公式Twitter 11月26日(土)より新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
(C)2016 DDTプロレスリング
PROFILE
松江哲明(まつえ・てつあき)
1977年生まれ 東京都出身
ドキュメンタリーを手法を得意とし、「童貞。をプロデュース」「あんにょん由美香」「ライブテープ」「フラッシュバックメモリーズ3D」などがヒットを記録。テレビ東京「山田孝之の東京都北区赤羽」「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」も担当した。プロデュースを手掛けた映画『あなたを待っています』上映中。
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大家健(おおか・けん)
1977年生まれ 富山県出身
01年、DDTでデビュー。13年2月、退団を懸けたシングルマッチに敗れ無所属に。その後、高木三四郎代表から渡された1万5000円を資金にプロレスをメジャースポーツにするため「ガンバレ☆プロレス」を旗揚げ。代表兼レスラーとして活躍中。 14年には映画「劇場版プロレスキャノンボール2014」に今成夢人と参加。PR活動にも奔走した。
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取材・文/内埜さくら 撮影/熊代紀章