「お金をもらってる以上〝分かる人にだけ分かればいい〟じゃいけない。確実に楽しませるのがプロとしての責任感よね」
DDTプロレスの“対世間”の切り札・男色ディーノがついに小誌初登場! 相手の唇を唇で塞いで失神させるリップロックをはじめとした「男色殺法」とアイデアに満ちた試合内容で観客を沸かせるディーノ選手。8月20日のビッグイベント『両国国技館大会』では“大社長”高木三四郎選手との対戦が決まっています。大会場で所属団体の社長と闘う思い、そしてプロフェッショナル論とは?
両国での高木戦はDDTの歴史書に載る試合になるわ!!
──ディーノさんは学生プロレス時代とリングネームが同じという珍しいタイプですよね。「いつの間にかね。プロレスと関係ない仕事で東京に出てきて、知り合いに誘われてプロレスの練習に出て、気がついたら試合が組まれて。だから下積みを経験してないっていう変なコンプレックスもあるんだけど」
──学生プロレス時代とプロになってからの変化はありますか?
「仕事としてやってるっていうのは大きいわよね。お金をもらってる以上、〝分かる人にだけ分かればいい〟じゃいけない。確実に楽しませるのがプロとしての責任感よね。そのことで良くも悪くも〝尖り〟がなくなるけど、代わりに広がりが生まれるから」
──確かにディーノさんの試合は誰が見ても面白いし、DDTの〝対世間〟の切り札だと思います。その一方で、キャラ的な部分でクレームもあったりするのかなと思うんですが。
「団体が大きくなるにつれてそうなっていくわよね。世の中の流れもあるし。でも、それを気にしても仕方ない。じゃあどうすればいいかを考えればいいだけ。DDTという団体自体もそうだけど、変化していくものだから」
──両国大会では高木三四郎戦、つまり団体の社長との試合が決まりました。
「私はレスラーとしてファンタジックな存在だっていう自覚はあるんだけど、今回はそこじゃないわよね。私から見て今年は勝負の年だから」
──旗揚げ20周年とは関係なく、ですか。
「それは偶然であって。今の団体の流れが〝勝負だぞ〟と。これは私しか気づいてないかもしれないんだけどね。今のDDTは世代交代が進んでるけど、じゃあ何時代なの? っていうところにファンも戸惑いがあるかもしれないじゃない」
──戦国時代なのか、江戸時代が始まってるのか、という感じですか。
「年表の区分が変わってるのかどうかをはっきりさせなきゃいけないし。そこは日本人特有の曖昧さを発揮して、ここまできてるわよね。でも私には危機感があるのよ。地盤は安泰じゃない って思う。それを訴える相手は、社長の高木三四郎しかいないわよね。この試合はDDTの歴史書があるとしたら必ず記載される試合になるわね。そうしなきゃいけない」
──最近のDDTでは、ディーノさんやマッスル坂井(スーパー・ササダンゴ・マシン)選手が担ってきた〝文化系プロレス〟に対して、運動能力の高い選手たちの〝アスリートプロレス〟が台頭。「DDTらしさ」もテーマになってきますよね。
「いや、そこは気にしてないのよ。文化系とかアスリートとかっていうのは、その時にいる選手の配分によりけりで、ベストなバランスなんてないから。私がいるといないとで配分がだいぶ変わるとは思うけどね。といって私は後継者を育てるような選手でもないでしょ(笑)男色ディーノは一代限りの存在だから」
サブカル寄りなイメージで見られるけど興味ないのよ…
──では高木戦は「かつてのDDT、あるべき姿のDDTを取り戻す」といったことではないと。「そういうことでは全然ないわね。でもDDTへの〝大丈夫なのか〟という思いはあるのよ。ひとつ変化を挙げるなら、さっきの私の話じゃないけど分かりやすくなってはいるわよね」
──だからこそファンも増えているんでしょうし。
「で、変わっていくのが当然だし、分かりにくいもののほうが面白いとも思わないので。坂井だってだいぶ変わったでしょ?」
──一度は引退して、いまやマスクマンのスーパー・ササダンゴ・マシンとして試合前のパワポプレゼンが人気です。
「プレゼンって、分かりやすさの象徴じゃない? だって説明してるんだから。〝行間を読め〟じゃないのよ」
──そう考えると野暮ですねぇ。
「そこは大人になったと言ってほしいわね(笑)分かりやすくすることで、最大公約数に届くものができるのよ」
──ただ、分かりやすくする作業を「妥協」と思う人もいるかもしれません。
「でも妥協って何かしらね? 妥協した結果いいものができることもあるし、妥協しなかったら必ずいいものができるとも限らないでしょ。私の目的は、〝たくさんの人に知ってほしい〟ということだから、そのための作業は妥協ではないと思ってるし」
──ちなみにディーノさん、映画や本ではどんな作品がお好きですか?
「映画は好きだけど全然詳しくないのよ。見るのは流行ってるやつね」 ──監督とか脚本家を追いかけたりは…。
「しないしない。これは音楽も本も同じなんだけど、流行ってるものに触れて〝この場面で観客のどんな反応を引き出そうとしているのか〟〝どこがウケているのか〟を考えるのが好きね」
──世間との向き合い方を見ていると。
「そういうことになるわね。私、なぜかサブカル寄りなイメージで見られるんだけど、一切興味ないのよ」
──非・サブカル宣言ですか(笑)
「ホントそうなのよ。何か申し訳ないわね(笑)」
INFORMATION
■『両国ピーターパン2017〜ピーターパン 二十歳になっても ピーターパン〜』
【INFO】8月20日(日)東京・両国国技館
開場13時30分/開始15時
〈主な対戦カード〉
◆KO-D無差別級選手権試合
竹下幸之介(王者) vs 遠藤哲哉(挑戦者)
◆KO-Dタッグ選手権試合
入江茂弘&樋口和貞(王者組) vs HARASHIMA&丸藤正道(挑戦者組)
◆DDT20周年記念スペシャルシングルマッチ
高木三四郎 vs 男色ディーノ ほか
公式HP
PROFILE
男色ディーノ(だんしょくでぃーの)
1977年5月18日生まれ 広島県出身
DDTプロレスリング所属。学生プロレス時代から活躍し、02年にプロレスデビュー。多数のベルトを獲得しただけでなくDDTの“アイコン”として会場を沸かせ、メディア出演も多数。相手(および男性客)の唇と股間を狙う独自のゲイレスリングは達人の域。ゲームについての連載を持つなどライター活動も。
公式Twitter
■『両国ピーターパン2017〜ピーターパン 二十歳になっても ピーターパン〜』
【INFO】8月20日(日)東京・両国国技館
開場13時30分/開始15時
〈主な対戦カード〉
◆KO-D無差別級選手権試合
竹下幸之介(王者) vs 遠藤哲哉(挑戦者)
◆KO-Dタッグ選手権試合
入江茂弘&樋口和貞(王者組) vs HARASHIMA&丸藤正道(挑戦者組)
◆DDT20周年記念スペシャルシングルマッチ
高木三四郎 vs 男色ディーノ ほか
公式HP
PROFILE
男色ディーノ(だんしょくでぃーの)
1977年5月18日生まれ 広島県出身
DDTプロレスリング所属。学生プロレス時代から活躍し、02年にプロレスデビュー。多数のベルトを獲得しただけでなくDDTの“アイコン”として会場を沸かせ、メディア出演も多数。相手(および男性客)の唇と股間を狙う独自のゲイレスリングは達人の域。ゲームについての連載を持つなどライター活動も。
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取材・文/橋本宗洋 撮影/熊代紀章