「世界がもし100人の村だったら、うち11人は同性愛者というデータがあるんですね。つまりは自分の周囲にもいる可能性は 否めないわけで、そういった観点でみても楽しめるはずです」
ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー。この4つの言葉を聞いて、明確に違いを説明できる人は何人いるだろうか。統計学的には2~10%ぐらい存在していると言われているが、多くの当事者はその事実を隠している。そんな彼らにスポットを当てて、多くの人に現実を直視してもらいたいという希望が込められた映画『カミングアウト』が、11月29日から公開される。初主演を記念して、ゲイの大学生・陽を演じた俳優高橋直人さんが、意外と骨太な一面を垣間見せながら、作品のことや役者業について、誠実さあふれる言葉で語る。
陽と違い告白するタイプ断って再告白した事も(笑)
──ゲイの大学生・陽は同級生に恋する気持ちを伝えられずにいますが、同じ経験はありますか。「僕は自分から告白したいタイプなので、陽とは正反対で、好きになったら何らかのアプローチはしますね。昔、先に相手に言われてしまったことがあって、納得できなくて、断ってから改めて告白したことがあるんです。意固地ですかね(苦笑)」
──それは珍しい(笑)見た目とはギャップがありますね!
「顔が幼いとはよく言われるんですよね。しゃべると30~40代のオジサンっぽい低い声ってびっくりされます(笑)」
──その低くて渋い声を、陽を演じる時も活かしてましたね。
「メディアでカミングアウトして映画にも出ている歌川(たいじ)さんには、『ナヨナヨした陽を演じてくれなかったことがうれしい』とおっしゃって頂きました。世間的にはゲイってそういうイメージでしょうけど、自分はそっちを選択したくなかった。1人の人間として演じたかったんです」
──実際に身近にいたりは。
「今まで生活してる上で、セクシャルマイノリティーの方は1人もいませんでした。ただ自分は幼い頃から“物語中毒”で、休日の早朝からテレビで放送してるアニメを観るよりは昼まで寝ていたいというタイプで(笑)特に洋画を観ることが好きだったんです。『普通の人々』とか『誓いの休暇』は中学生になる頃には観てましたし、同性愛をテーマにした映画なら『ブロークバック・マウンテン』や『ミルク』も観てましたから、そういう人たちがいることを、肌で感じてたんですね。だから、先入観や違和感なく演じられました」
親が自分を傷つけてしまうカミングアウトが辛かった
──演じる際、苦心したシーンは。「両親にカミングアウトする時が一番、辛かったです。拒絶や嫌悪感を抱かれることは受け入れられますけど、両親が『自分たちの責任だ』と、自分を傷つける方向に行くのがちょっと」
──あのシーンはゲイではなくてもありうることですよね。
「だから痛いほど気持ちが分かるんですよ。僕の両親って、姉には小言をいうけど僕には何も言わない人なんです。だから、『できた親だよね』と伝えたことがあるんですけど『あなたはプライドが高いから、言わなくても勝手にやるでしょ』と返されて、そうだよなって(笑)僕に言えないぶん、発散する方法がなくて、親は心配も苦労もしたと思いますよ」
役は物語を伝えるツール出演には固執していません
──苦労をかけたんですか!?「だと思いますよ。実は僕、大学受験に受かったんですけど、通ってはいないんですね。(ジュノンスーパーボーイ)コンテストに受かったら役者の道1本で行きたいと提示して、逃げ道を絶った経緯があるんですよ」
──そこまで力を入れている役者業で主演作ですから、たくさんの人に観てもらいたいですね。
「陽みたいに秘密を抱えてる人って、魅力的に映るじゃないですか。その魅力的な人間の内面や人との対話を観察するだけでも面白いと思います。あとは、世界がもし100人の村だったら、うち11人は同性愛者というデータがあるんですね。つまりは自分の周囲にもいる可能性は否めないわけで、そういった観点でみても楽しめるはずです」
──初主演作ですが、ご自身にとってどんな位置付けでしょうか。
「役者としてのスタンスは、自分がストーリーを伝えるツールであってほしいと考えているんですね。主演には固執していないんです。自分は『ハロルド・ピンター』みたいに、『あの』『その』だけで話が進んで行く映画も好きなので、固有名詞は必要かもしれませんけど、登場人物に名前は不要な時もあると感じているので。だからこの映画に関しても、ストーリーが伝わることが優先されていることが、自分の一番の願いですね」
INFORMATION
■映画『カミングアウト』
INFO&STORY
ゲイの大学生・赤間陽(高橋直人)は同じサークルに所属する緑川昇(岡村優)に思いを寄せているが、自分がゲイであることは周囲には秘密にしていた。そんな陽がありのままの自分でいられるのは、新宿2丁目にある行きつけのバー「B♭」だけ。友情や恋愛、将来に対する不安など悩みが尽きない陽だったが、様々な出来事を経験していく中で、ある思いが芽生え始める…。
CAST&STAFF
出演/高橋直人・岡村優・夏緒・高山侑子・秋山浩介・歌川たいじ・一ノ瀬文香・高岡瓶々・杉崎佳穂・辻恵美・木村利信・美漸-Bizen
監督・脚本/犬童一利
配給/REIZ INTERNATIONAL
公式HP 11月29日(土)渋谷・ユーロスペースにて公開(チケットぴあ・都内劇場の窓口にて前売り券発売中)
(C)2014 映画「カミングアウト」製作委員会
PROFILE
高橋直人(たかはし・なおと)
1991年6月15日生まれ 群馬県出身
08年に「第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募し、BEST30入り。役者として映画やドラマ、舞台で活躍。テレビ朝日系「特命戦隊ゴーバスターズ」森下トオル役で人気を博した。映画出演は「PRECIOUS STONE」「神さまの言うとおり」などがある。
公式HP
■映画『カミングアウト』
INFO&STORY
ゲイの大学生・赤間陽(高橋直人)は同じサークルに所属する緑川昇(岡村優)に思いを寄せているが、自分がゲイであることは周囲には秘密にしていた。そんな陽がありのままの自分でいられるのは、新宿2丁目にある行きつけのバー「B♭」だけ。友情や恋愛、将来に対する不安など悩みが尽きない陽だったが、様々な出来事を経験していく中で、ある思いが芽生え始める…。
CAST&STAFF
出演/高橋直人・岡村優・夏緒・高山侑子・秋山浩介・歌川たいじ・一ノ瀬文香・高岡瓶々・杉崎佳穂・辻恵美・木村利信・美漸-Bizen
監督・脚本/犬童一利
配給/REIZ INTERNATIONAL
公式HP 11月29日(土)渋谷・ユーロスペースにて公開(チケットぴあ・都内劇場の窓口にて前売り券発売中)
(C)2014 映画「カミングアウト」製作委員会
PROFILE
高橋直人(たかはし・なおと)
1991年6月15日生まれ 群馬県出身
08年に「第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募し、BEST30入り。役者として映画やドラマ、舞台で活躍。テレビ朝日系「特命戦隊ゴーバスターズ」森下トオル役で人気を博した。映画出演は「PRECIOUS STONE」「神さまの言うとおり」などがある。
公式HP
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一