「30~40代男性は子ども心を持った人が多いから刺さったんでしょうね。少女とかけ離れた世代に“翻訳”できて伝えられたことは、意外な収穫でした」
国際的に活躍するアーティストで、きゃりーぱみゅぱみゅの美術演出も手掛けるアートディレクターの増田セバスチャン氏がハローキティ40周年記念映画『くるみ割り人形』で初メガホンを担当。「kawaiiカルチャー」の火付け役であり第一人者である彼らしい、“カワイイ”とカラフルが融合した、今までに観たこともないような世界観が広がっている作品。監督曰く「デートに誘うと女子が喜ぶ」とのことなので、きっかけ作りにも最適だ!
一番最初の脚本が寺山修司作と知り運命を感じました
──初監督が大作です。プレッシャーは相当なものだと思いますが。「自分がこの大作をリ・クリエイトするなんて恐れ多くて、受けるか迷ったくらいのプレッシャーを最初は感じたんです。でも旧作の前身となる脚本を書いたのが、僕が多大なる影響を受けた寺山修司さんだと知って、運命的なものを感じて、むしろ自分以外の人がやったら悔しいという気持ちに切り替わったんですよ」
──増田さんは、18歳の頃引きこもって、寺山さんの『書を捨てよ町へ出よう』を読んだことで今があるんですよね。
「そう。寺山さんを含め、先人たちの偉大なクリエーションを引き継いて送り出すこと、つまり『過去から未来への接続』がコンセプトなんです。僕は小2の頃、地元の松戸にあるサンリオ劇場でこの作品を観てるんですけど、何かが引っかかったまま大人になったんですね。その引っかかりも、意外と重要なメッセージだったんじゃないかと、今になって思いますね」
──小学生の頃はどんな子どもでしたか?
「人生で一番の天才時代です(笑)生活のことを考えなくていいし、しがらみもないから、自由で大胆な発想ができた。あの頃見てたもの、考えてたことを今やってる感じなんですよ。だから今も、僕のライバルは小学生です。色を使ったワークショップをやると、常識を飛び越えてきますからね。その中で新たな発見をして、影響を受けることもありますし」
受け手と対峙する時は必ず“余白”を作るんです
──映画は監督ならではのカラフルな映像ですから若い女性にウケるかと思いきや、30~40代の男性にも人気と聞きました。「試写を観た後、キャピキャピしながら感想を伝えてくれますね(笑)僕は原宿で20年活動していて、高校生から20代前半までの女子とは毎日接しているんで、彼女たちに何が響くかは理解してるんですね。だからそこに向けてグサッと刺さるものなら作れるなと思ったんですけど、30~40代の男性は子ども心を持った人が多いから、ストレートに刺さったんでしょうね。少女とかけ離れた世代に“翻訳”できて伝えられたことは、意外な収穫でした」
──作品を観ましたが、大人が観ても何かを考えさせられます。
「僕がアーティストとして受け手と対峙する時は、必ず余白を作るんです。余白があることによって、受け手も作品に対してイマジネーションを膨らませることができますから」
20代では何もできない…40代で形になるのが人生
──きゃりーぱみゅぱみゅさんの美術演出でも知られていますが、人生順風満帆ではなかったとか。「25歳の頃、6%DOKIDOKIというショップを原宿のマンションの一室にオープンさせたんですけど、最初はまったく儲からなくて、店が終わったら肉体労働のバイトをしてました。でも、苦労したとは思ってないんですよ。これは今でも同じなんですけど、僕は仕事は、お金のためじゃなく自分がやりたいことをやると決めているんですね。それで生活できないならバイトするしかないでしょうっていう」
──当時はどんなバイトを?
「テレビ局の大道具をしてました。大河ドラマのセットとか、図面を見ながら作ったり。そういえば最近出演する側でテレビ局へ行くことが増えたんですけど、当時の大道具さんに会ったら『こんなに有名になるなら、あんなに怒らなきゃよかった』と言われました(笑)当時の経験が今に活かされてるんで、無駄なことは1つもなかった。今のために当時はスパルタ教育を受けたんだと思えますから」
──40代を迎えて、20~30歳に対して思うことは?
「僕は就職したことがないんですけど、経験を積むためには就職すべきだと思います。そうすれば僕のように、遠回りをしないですみますから。ただ、20代は経験を積むだけで何もできない。失敗を経験できるのが20代の強みで、30代になればその経験でリスクマネジメントできます。そして30代になって、やっと1つの仕事を任されるぐらいになって、40代でやっと何か形になる。20代でうまくいっているように見える人もいますけど、そこで成功すると、ほぼ30代で一度は落ちます。周りのアーティストを見ても、20代で成功して、今残ってる人って限られているんです。20~30代は年収や地位にとらわれる大変な世代ではありますけど、人生ってそういうものだと思いますよ」
INFORMATION
■映画『くるみ割り人形』
INFO&STORY
大切なくるみ割り人形をネズミの大群にさらわれてしまった少女クララは、ネズミたちの後を追いかけて人形の国に迷い込む。そこで人形とネズミの戦いに巻き込まれたクララは、くるみ割り人形に隠された悲しい秘密を知る…。サンリオが79年に製作・公開したコマ撮り人形アニメーション「くるみ割り人形」をもとに、アートディレクターの増田セバスチャンが、新たに作り上げたミュージカルファンタジー。オリジナル作品のネガフィルムをデジタル化して色彩処理やまったく異なる編集を施し、新撮カットやアニメーションパートも加えた上で3D映像化した。
CAST&STAFF
声の出演/有村架純・松坂桃李・藤井隆・大野拓朗・安蘭けい・吉田鋼太郎・板野友美(友情出演)・由紀さおり(特別出演)・広末涼子・市村正親
テーマ曲/きゃりーぱみゅぱみゅ「おやすみ-extended mix-」(ワーナーミュージック・ジャパン)
監督/増田セバスチャン
3D監督/三田邦彦
製作/サンリオ
企画・制作・配給/アスミック・エース
公式HP
11月29日(土)全国ロードショー<3D/2D同時公開>
(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD TOKYO,JAPAN
PROFILE
増田セバスチャン(ますだ・せばすちゃん)
1970年生まれ 千葉県松戸市出身
アートディレクター、アーティスト、ショップ6%DOKIDOKIのプロデューサー。「カワイイ」にこだわり続け、95年から現在まで原宿を中心に活動。日本の原宿kawaiiカルチャーの第一人者。店の常連だったきゃりーぱみゅぱみゅのアーティストデビュー時からワンマンライブの演出・美術デザインを担当。同作が初映画監督作品となる。
公式HP
公式ブログ
公式Twitter
■映画『くるみ割り人形』
INFO&STORY
大切なくるみ割り人形をネズミの大群にさらわれてしまった少女クララは、ネズミたちの後を追いかけて人形の国に迷い込む。そこで人形とネズミの戦いに巻き込まれたクララは、くるみ割り人形に隠された悲しい秘密を知る…。サンリオが79年に製作・公開したコマ撮り人形アニメーション「くるみ割り人形」をもとに、アートディレクターの増田セバスチャンが、新たに作り上げたミュージカルファンタジー。オリジナル作品のネガフィルムをデジタル化して色彩処理やまったく異なる編集を施し、新撮カットやアニメーションパートも加えた上で3D映像化した。
CAST&STAFF
声の出演/有村架純・松坂桃李・藤井隆・大野拓朗・安蘭けい・吉田鋼太郎・板野友美(友情出演)・由紀さおり(特別出演)・広末涼子・市村正親
テーマ曲/きゃりーぱみゅぱみゅ「おやすみ-extended mix-」(ワーナーミュージック・ジャパン)
監督/増田セバスチャン
3D監督/三田邦彦
製作/サンリオ
企画・制作・配給/アスミック・エース
公式HP
11月29日(土)全国ロードショー<3D/2D同時公開>
(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD TOKYO,JAPAN
PROFILE
増田セバスチャン(ますだ・せばすちゃん)
1970年生まれ 千葉県松戸市出身
アートディレクター、アーティスト、ショップ6%DOKIDOKIのプロデューサー。「カワイイ」にこだわり続け、95年から現在まで原宿を中心に活動。日本の原宿kawaiiカルチャーの第一人者。店の常連だったきゃりーぱみゅぱみゅのアーティストデビュー時からワンマンライブの演出・美術デザインを担当。同作が初映画監督作品となる。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一