絶好調のプロレス団体ＤＤＴの両国国技館大会で団体最高峰のベルト・ＫＯ-Ｄ無差別級タイトルに挑戦する坂口征夫選手。昭和の名レスラー坂口征二氏の息子だが、独自の闘いで“二世レスラー”のイメージを払拭してみせた。30代で総合格闘技デビュー、40歳を過ぎてプロレスラーとして花を咲かせた紆余曲折の人生。そこで得た“仕事論”はすべての人間に当てはまること間違いなし！

「どんな仕事でも、３年やって分かってくることがある。試行錯誤して、これから実を結んでくるのかなと。総合やってたとはいえ、プロレスは学んでる最中なんで」
──ＤＤＴ両国大会ではメインでタイトルに挑戦することになりました。
「ありがたいですね。でもやることは同じです。自分が持ってる武器を全部投入して勝つだけ。あとは両国っていう大舞台に呑まれなければ」

──チャンピオンは、同じユニット酒呑童子のリーダーＫＵＤＯ選手ですが、坂口選手は「戦争」「殺（や）ってやる」という言葉を使っています。
「そこは誰が相手でも。結局、リングに上がったら勝つか負けるかしかないんで。そう言うことで自分の気持ちを引き締めてる部分もありますね。『殺る』っていうことは、自分が殺られる覚悟もしてるぞってことなんで」

──総合格闘技からプロレスのリングに上がって３年。ご自身はどんな成長を感じてますか？
「まだまだですね。どんな仕事でもそうなんですけど、３年やって分かってくることがあるんですよ。そういう意味ではこれからだと思ってます。３年試行錯誤して、これから実を結んでくるのかなと。総合やってたとはいえ、プロレスは学んでる最中なんで」 ──所属するＤＤＴはシリアスな闘いもあれば路上プロレスもあるバラエティ豊かな団体。それだけに難しさもありそうですね。
「闘い方が総合と全然違いますからね。だから、自分を成長させてくれる面もある。自分がどこまでできるかっていう挑戦ですよね。ＤＤＴはなんでもありだから見てもやっても面白い。いろんな試合、いろんなキャラクターがありますけど、みんな楽しんでるんですよ。会社にやらされてるんじゃあ、あんなムチャなことできませんよ（笑）選手は言うこともやることもバラバラなんですけど、向いてる方向は全員一緒なんです。ＤＤＴを大きくしたいっていう。その一員に自分もなれてるっていうのは嬉しいですね」

──ＤＤＴでは“坂口ジュニア”という面が強調されてないのも面白いですね。
「坂口征二の息子としては扱われなかったですね。それが自分の求めてたことだったんだと思います。若い頃は坂口っていう名前に反発してたし、クソみたいな生活してたんですよ。酒飲んで、遊んで、金ないから高収入のバイト探して。でも、今は坂口家の人間であることを受け入れましたね。３割受け入れて、７割開き直りで（笑）反発したって変えられないんで」

──それは格闘技とプロレスで“坂口征夫という選手”が確立できたからかもしれませんね。
「プロレスやるようになってから、親父と話すことは増えましたね。会話のキャッチボールができるようになった。実際、話してみると勉強になるんですよ。さすが昭和のレスラーだなって。だから今はもっと話がしたいし、いろんなものを盗みたい。40歳過ぎてそうなるっていうのも面白いですよね。人間いくつになっても学べることがあるし、成長できるんだなと」 ──坂口選手は格闘技の『坂口道場』の代表、そして会社経営者として若者を指導する立場でもあります。ぜひ、読者の若者たちにアドバイスを。
「道場では選手の練習をずっと見てるわけじゃないんですけど、できるだけセコンドにはついてますね。精神的な部分で力になれればってことで。会社は水道管とか道路工事をやってるんですけど、そこも大事なのは気持ちなんですよ。さっきも言ったみたいに、まずは３年やってみること。そしたら見えてくるものがある。そこまで我慢できるかどうかですよね。人間、生きてりゃいいことも悪いこともある。できないヤツほどメリットを欲しがるんですけど、悪いことを我慢した先にしかいいことはないんで。それと、新しい世界に入ったら変なプライドは捨てること。年齢に関係なく学ぶ姿勢を持っていれば、成功できると思います」