File.51　最高位戦日本プロ麻雀協会所属　西嶋千春プロ

──遅ればせながら第17期女流最高位決定戦での優勝、おめでとうございます。優勝時、妊娠しているかどうかは分かっていたのでしょうか。
「精神面、体調面ともに変化がなかったので気づいていませんでしたが、着床はしていたと思います。去年10月初旬に優勝が決まって、15日には検査で陽性判定が出たので。妊娠中は運気がアップすると言われていますけど、娘が導いてくれた部分もあるかもしれません。その後、富山県で開催された健康麻雀大会でも優勝したので」

──初の子育てはいかがですか？
「生後２ヶ月まではブラック企業に勤めているような毎日です（笑）子どもは可愛いんですけど睡眠時間もろくに取れないですし、起きている間中抱っこをせがまれますし。７キロほどある子どもを抱っこし続けていたら、今は〝バネ指〞といって指の曲げ伸ばしが辛い状態です。幸い夫の仕事が土日休みなので、半日娘を預けて空き時間で麻雀を打ちに行くことはできていますけど」

──今年８月からプロとして復帰しましたが、腕前は戻りましたか？
「まだ鈍っている感覚があります。以前は食事と寝る時以外は毎日打っていたんですけど、今は週に２回、数時間しか打っていないので。ピアノに例えるなら、練習しないと指が鈍ることと同じように、もどかしい感覚です。同じ種類の数牌が３枚見えている『ワンチャンス』か、４枚すべてが見えている『ノーチャンス』か数えればいいだけなのに分からなくなる時があって。いろんな人と打ちたいので、早くこのもどかしさから解放されたいです」

──ファンも心待ちにしているかと。ところで麻雀を始めたきっかけは？
「就活に失敗したことが始まりです。大学を卒業する段階で就職先が決まっていないと知った親から『出て行け！』と言われて、食い扶持を得るために働き始めました。（漫画家の）西原理恵子先生と仲がいい銀玉親方さんが経営されていて、店内には西原先生のイラストが飾ってあって、女性でも入りやすかったんです。週５〜６日、朝から晩まで働いていたので、単なるバイトよりは試験を受けたほうがいいと思ってプロになりました」

──早稲田大学卒という学歴を活かした仕事に就こうとは。
「考えませんでした。早稲田はネームバリュー目的だけで選んだから、就活する段階になってもやりたいことがなかったんです。やる気がない人間を面接官が雇うはずがないんですよね、今思うと」

──（笑）ですが優勝、出産と今は人生の春ではないですか！
「そうかもしれません。お店のお客さんだった夫は麻雀に対して理解を示してくれていますし、子育ても手伝ってくれますし。１人目が難産だったのでまだ次を具体的には想像していないんですけど、いつかもう１人作って家族４人で雀卓を囲む日を迎えられたら最高ですね」