生きている証をセックスという快楽に求める、大森南朋さん演じる狸穴勇介と、その欲望のはけ口にされる三輪ひとみさん演じる岡辺京子。そして2人を取り巻くすべての人間たちも苦しみもがき、喘いで、それでも生きていこうとする人間ドラマを描いた映画『捨てがたき人々』が全国順次公開中。ヒロイン役の三輪さんがオーナーの赤坂リビングバー「Bonne eau~煩悩~」にて、インタビューをさせて頂きました。
私ではなく京子が脱ぐのだから濡れ場ごとに解決策を設定
──「銭ゲバ」「アシュラ」のジョージ秋山さん同名漫画が原作。映画『捨てがたき人々』は、セックス描写が多いことでも話題ですよね。「ストーリー的には、原始時代の話ですよね。人の目が加わることが倫理観に繋がるわけじゃないですか。倫理観というタブーがない世界で生きると、人は性に淫らになるのかなっていう。京子も1人の人間としてはブレブレで、複数の人とカラダの関係を持つんですね。それを単純に“あばずれ”というカテゴリーに入れられるなら演りやすかったんですけど、宗教にのめり込むことで聖母になろうとしている一面もあるんです。だから、清さとダークさを繋ぐ線を作ることが難しくて、妄想に妄想を重ねて役作りしました」
──京子にはどんな妄想を?
「私の妄想の中では、京子は一度、狭い島での暮らしから抜け出して東京に出ているんですね。東京ではクラブに勤めていた時期もあって、すったもんだがあって酷い目に合って、戻って来たんです。東京に住んでいたプライドがあるから、島での服装もオシャレで、ミニスカートなんかも履いちゃうんです。ここまで妄想しても、何となくな感覚で生きている京子に対して違和感があって、それぞれの濡れ場で解決ストーリーを組み立てましたけどね、自分の中で。それぞれの相手に対してどんな感情でカラダを捧げているかを自分なりに把握していないと、それは京子ではなくて私がただ脱いだだけの作品になってしまうので」
──大森南朋さん演じる勇介と京子にはどんな組み立てを。
「レイプされて好きになったとか、宗教の教えによって愛を与えようとか、単純なことではない気がしたんです。愛を与えようとはするけど一歩踏み込むことをしないで結局は、狸穴さんが求める母性というか、無償の愛を与えることはできていないんですよね。美保純さんが演じた京子の叔母と狸穴さんが関係を持っていることを知っても、不快感を表すこともなく嫉妬心も持たない」
登場人物にとってセックスはあいさつ代わりかも……(笑)
──では、京子が出産後に若い信者と不倫をする意味は。「あれは、宗教によって救われた自分たちを、お互いに昇華させるためですよ。京子にとっては自分をアゲるための行為ですね」
──劇中の登場人物は、とにかくセックスしまくりますよね。
「この人たちにとっては挨拶代わりというか、仲良くなるきっかけ程度のことなんでしょうね(笑)男性には、いろんな女性の愛のかたちが見られるからこの映画を観てほしいと言いたいです(笑)内田慈さんのハジケ感もすごいので、衝撃を受けてからストーリーに入り込んで頂くのもアリです。京子が電話で母の死を知らされるシーンは最後までOKが出なくて、どのカットが使われているのか分からないので、私自身も不安であり楽しみでもありますね」
──最後に。ご自身にとってセックスとは何ですか?
「男女は夫婦になっても結局は他人ですから、相手との繋がりを強く深くするための、唯一の手段だと思います。だから、挨拶代わりなんて絶対に無理です(笑)演じ終えても『こんな人たちがいるってことにしちゃっていいの?』という気持ちは拭えませんね」
INFORMATION
■映画『捨てがたき人々』
INFO&STORY
生きることに飽きてしまった狸穴勇介(大森南朋)は故郷へ戻り、そこで顔にあざのある女性・岡辺京子(三輪ひとみ)と出会う。快楽を求める勇介は京子と関係をもち、そのままなし崩し的に同棲を始めるが…。ジョージ秋山氏の同名漫画を映画化。金も仕事もなくセックスのことばかり考えている勇介が、苦悩しながら生きる意義、愛や幸せを見つけ出そうともがく姿を通して、人間の業を描き出していく。
CAST&STAFF
出演/大森南朋・三輪ひとみ・内田慈・滝藤賢一・佐藤蛾次郎・諏訪太朗・寺島進・荒戸源次郎・伊藤洋三郎・美保純・田口トモロヲ
監督/榊英雄
原作/ジョージ秋山「捨てがたき人々」(幻冬舍文庫)
脚本/秋山命
配給/アークエンタテインメント
公式HP
6月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開中
(C)2012「捨てがたき人々」製作委員会
PROFILE
三輪ひとみ(みわ・ひとみ)
1978年12月18日生まれ 神奈川出身
映画「D坂の殺人事件」小林少年役で、本格的な女優デビューを果たす。99年に「発狂する唇」で初主演、第10回日本映画プロフェッショナル大賞の新人奨励賞を受賞。以降、「呪怨」などのホラー作品に数多く出演し、特撮ドラマでも活躍。近年の映画出演には「ひぐらしのなく頃に」「モルモット」「アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争」などがある。東海テレビ「聖母・聖美物語」に森尾愛美役で出演中。
公式ブログ
公式Twitter
■映画『捨てがたき人々』
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生きることに飽きてしまった狸穴勇介(大森南朋)は故郷へ戻り、そこで顔にあざのある女性・岡辺京子(三輪ひとみ)と出会う。快楽を求める勇介は京子と関係をもち、そのままなし崩し的に同棲を始めるが…。ジョージ秋山氏の同名漫画を映画化。金も仕事もなくセックスのことばかり考えている勇介が、苦悩しながら生きる意義、愛や幸せを見つけ出そうともがく姿を通して、人間の業を描き出していく。
CAST&STAFF
出演/大森南朋・三輪ひとみ・内田慈・滝藤賢一・佐藤蛾次郎・諏訪太朗・寺島進・荒戸源次郎・伊藤洋三郎・美保純・田口トモロヲ
監督/榊英雄
原作/ジョージ秋山「捨てがたき人々」(幻冬舍文庫)
脚本/秋山命
配給/アークエンタテインメント
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6月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開中
(C)2012「捨てがたき人々」製作委員会
PROFILE
三輪ひとみ(みわ・ひとみ)
1978年12月18日生まれ 神奈川出身
映画「D坂の殺人事件」小林少年役で、本格的な女優デビューを果たす。99年に「発狂する唇」で初主演、第10回日本映画プロフェッショナル大賞の新人奨励賞を受賞。以降、「呪怨」などのホラー作品に数多く出演し、特撮ドラマでも活躍。近年の映画出演には「ひぐらしのなく頃に」「モルモット」「アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争」などがある。東海テレビ「聖母・聖美物語」に森尾愛美役で出演中。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一