“超合筋““ラストサムライ““ムエタイハンター“などの異名で知られる元格闘家の武田幸三さんが俳優として第二の人生を歩み始めてから約4年。遂に初主演映画『デスマッチ』が6月21日より公開される。「たどり着きたい場所が決まっているなら、寄り道をせず一直線に進むべき!」と格闘技精神を失わずに役者道をひたすら真っすぐ突き進める理由とはー。
元キックボクサーの武田さんといえば「熱い!」「ストイック!」「漢!」というイメージを持つ人も多いことだろう。間違ってはいないが、実はお茶目な一面を持つ男でもあるのだ。初主演映画に出演したナオミ役の女優を“おっぱい星人“と称し、リサ役の女優と指が触れ合うだけのシーンを「ラブシーン」と断言したりと、取材スタッフを大爆笑させながらユニークに話をしてくれた。もちろん、男としての人生訓も説得力があり納得!
監督が僕の顔を見た瞬間に…予定のラブシーンがナシに(笑)
──ご自身にとって、柄崎という役はどんな存在ですか?「ぶっちゃけ、です」
──初主演映画『デスマッチ』で演じた元傭兵のジョー役は“漢”って感じでカッコ良かったです!
「監督が僕のために脚本を書いて下さったので空手経験があるとか背景は似てるんですけど、実際の僕はあんなにカッコ良くないですねぇ。家にいるとふざけてばっかりなんで、カミさんから『あなたが“ラストサムライ”と呼ばれるなんて、詐欺師!』と言われてますから(笑)親しくさせて頂いている(長渕)剛さんに見せたら『これはお前がこれから役者をやっていくっていう決意表明を紹介するVTRかPVだろ?』とも言われましたし(笑)ホントすみませんって感じですけど、100%以上の力は発揮したつもりです」
──いやいや、ホントに! 夫からのDVに苦しむリサを助けるシーンとか。
「あれをリアルに目撃したら、僕も感情のコントロールが効かなくなるかもしれませんね」
──元格闘家なのに?
「確かにウチの先生(治政館の長江国政氏)からは、自分が飲み屋とかで絡まれた時は、笑って立ち去れと教えられています。でも、『仲間や家族が危険な時は、気兼ねなく技術を使っていい。オレが何とかする』とも言われているんです。どこまでやるかは分かりませんけど、何かやるでしょうね」
──劇中では格闘シーンが盛り沢山ですが、あれは映画用ですよね。
「実はスタントマンと本物の格闘家が混ざっているんです。僕はどうしても当てちゃうクセがあって、それがスタントマンの場合は何度も謝りましたね。ステージの上で戦ったイラン人みたいなヤツは本物の格闘家で、これが結構当ててくるんですよ。1で来たら2で返す、2で来たら3で返す…って、どんどんお互いパワーを出しちゃったりして。それが格闘家の基本で、僕ら的にはそのコミュニケーションが『懐かしいな~』って感じで気持ち良かったんですけど、スタッフさんには心配されました。あと、ラストもリアルなガチンコ勝負なんで、頭から出ているのは本物の血なんですよ」
──リアルが混じっているからこそ、爽快感があるんですね。
「そう、だから僕と同じ世代以降の、いろんなものを抱えているおっちゃんたちに観てもらって、スカッとして頂きたいんです。僕より若い世代には、『まだまだガンガンいくから、40超えたオッサンをナメんじゃねーぞ!』というメッセージを込めました(笑)僕はハリウッドで活躍できる役者を目指してるんで、この映画で根性見せたろか、と。そのためにはもっとできることがあると映画をきっかけに知ることができたんで、できることから勉強を始めたんです」
──具体的にはどんな?
「1つは殺陣の稽古です。現地でスタッフに『何ができる?』と聞かれて、『パンチとローキックだ』と答えたんですね。そうしたら、『…ほかには?』と聞かれて、今の自分じゃダメだな、と(苦笑)あと、乗馬も始めたんですよ」
──おおっ、映画『ラストサムライ』風の作品を想定したんですね。
「そうなんです。最近、初心者向けのルシファーって白馬を乗りこなせるようになったんですよ。ヤツは賢くて休むことが好きだから、ムチでバッチバチしばいて調教したんですね。そうしたら次の回で先生から、競馬のG1で優勝した馬を渡されて。『コイツちょっとヤバいな』と思ったら案の定で、何度も落とされてひどい目にあいました(笑)映画やドラマにはあんな馬は出て来ないらしいですけどね」
恥ずかしくても公言することが僕なりの夢の叶え方なんです!!
──ラブシーンも経験しておきたいところでは。「それがこの作品で経験するはずだったのに、監督が最初に僕の顔を見た瞬間、『やっぱりナシ!』って(笑)噂によるとハリウッドは、ラブシーンだけは『どうぞご自由に』ってスタンスらしいですね。ヤバいですよね、手の内がバレるって恥ずかしいですよ(笑)」
──武田さんが主演なのに全編英語というのも、それを意識してのことですか?
「もちろんです。僕からお願いして英語にして頂きました。これもハリウッドを見据えて始めたことですけど、1回2時間の英語レッスンを週1~2回、外国人の先生にファミレスで教わってます。そこで食べるキャラメルハニーパンケーキが大好きでね」
──えっ、甘い物お好きなんですか。
「大好きですよ。特に生クリームが大好物で、パフェを注文する時は必ず増量をお願いします。それ単体には値段がついてないから、お金を払うと言っても断られることがあって、『じゃあ、気持ちで盛って』と言っても断られると、『何でできないの!?』とケンカ腰になるほど好きなんですよ(笑)」
──意外な一面です…! ところでハリウッド俳優を目指すことに関して、ご家族の意見は?
「大賛成してくれていますね。カミさんは『いつビバリーヒルズに住めるの?』と聞いてきますし、子ども2人はすでに英会話を習い始めてます。恥ずかしくても周りに公言することが、僕なりの夢の叶え方なんですよ。キックボクサー時代も退路を断って『世界を獲る!』と宣言しましたし。どうせ一度きりの人生ですから生涯イケイケでいたいですし、自分の人生は自分でしか切り拓くことができませんからね。実際、少しずつではありますけど、僕はそうやって役者への階段を登り始めているんで」
──それは、プロキックボクサーを目指す後輩たちにも教えていることですか?
「これは半分、(長渕)剛さんの受け売りですけど、僕は絶対に無理強いはしません。相談されたら『どうなりたいの?』と聞き出したことに対して、『それが答えでしょ。じゃあ、その通りに一直線に進みなよ』と伝えます。たまに、自分はダメ人間とか根気がないという相談も受けるんですけど、『そこで終わりなんだろうね』と答えたことがありますね。冷たく聞こえるかもしれませんけど、人生は自分で行き先を決めて切り拓いていくものですから、まずは自分で選んだ選択肢に対して責任を持たなくちゃいけないんですよ」
──武田さんは更正施設でも講演をされていますが、彼らには何と?
「相談されたら、『ここにいることが正解なの?』とは聞きますね。彼らの大半は家庭環境が良くない中で育っているんですけど、それは僕も同じなんですよ。妹2人と母ちゃん、ばあちゃん5人の母子家庭で育ったんですけど、僕はグレるのではなく、小学校の頃からずっと、どうやって金持ちになろうかってことばっかり考えてきた。のし上がってここから脱却してやるってことを人生で選びましたから」
──その強い決意が育まれた背景は。
「母子家庭だから貧しくて、木造の倉庫を改装した、2階建ての長屋に住んでたことがデカいですね。1階が6畳、2階が4畳半と3畳と狭くて、風がピューピュー吹き込むから、冬は寒くてね。台所の横にトイレがある変な間取りだから、『お前ん家の飯は臭い』って友だちにからかわれたりもしましたから。その時に分かったんですよ。頑張って稼いで周りを潤わせるのが男の役目だって。だから絶対にハリウッドへ行って、ガンガン稼ぎます。で、世界一のアクション俳優ジェイソン・ステイサムとガチで勝負します!」
「ハリウッドを連呼して僕、痛くないですか?」とお茶目な言葉を交えつつ語ってくれた武田さん。世界的な活躍、期待しています!!
INFORMATION
映画『デスマッチ』
INFO&STORY
夫の暴力に苦しむ人妻リサを助けようとして、誤ってその夫を殺してしまった元傭兵のジョーは、6年の刑期を終えて出所する。リサが夫の残した借金に苦しんでいることを知ったジョーは、リサの兄ブライアンとコンビを組み、ストリートファイトに出場。金を稼いでリサの借金を清算しようとするが…。元キックボクサーの武田幸三が映画初主演を務め、オールフィリピンロケでストリートファイトに挑む男のストイックな生きざまを描いたアクションドラマ。13年の「第5回沖縄国際映画祭」コンペティション「Peace部門」出品作。
CAST&STAFF
出演/武田幸三 エル・ベラスコ アルビン・アンソン マクシー・マンバ アリ・ファワズ ケニオン・マーティン クーヤ・マンザーノ 江原シュウ アルマリオ・レアル 監督・脚本/アーティ・モーガン
配給/よしもとクリエイティブ・エージェンシー
公式HP
6月21日(土)からシネマート新宿ほか順次公開
(C)Death Match FILM PARTNERS
PROFILE
武田幸三(たけだ・こうぞう)
1972年12月27日生まれ 東京都出身93年に治政館入門。
95年、新日本キックボクシング協会でデビュー。97年にウェルター級王者となり01年、ラジャダムナン・スタジアムウェルター級王座獲得。03年よりK-1 WORLD MAXに参戦。強烈なローキックと右ストレート、愚直に前に出続けるファイトスタイルで人気を博す。09年10月のアルバート・クラウス戦を最後に現役引退。以降、俳優活動を始めドラマや舞台、映画に出演。主な出演作にドラマ「検事・鬼島平八郎」「示談交渉人 ゴタ消し」「デカ 黒川鈴木」「お助け屋☆陣八」、映画「MG-2416」「日曜日、すずは口笛を吹いた」「ハートに火をつけて」がある。
公式ブログ
映画『デスマッチ』
INFO&STORY
夫の暴力に苦しむ人妻リサを助けようとして、誤ってその夫を殺してしまった元傭兵のジョーは、6年の刑期を終えて出所する。リサが夫の残した借金に苦しんでいることを知ったジョーは、リサの兄ブライアンとコンビを組み、ストリートファイトに出場。金を稼いでリサの借金を清算しようとするが…。元キックボクサーの武田幸三が映画初主演を務め、オールフィリピンロケでストリートファイトに挑む男のストイックな生きざまを描いたアクションドラマ。13年の「第5回沖縄国際映画祭」コンペティション「Peace部門」出品作。
CAST&STAFF
出演/武田幸三 エル・ベラスコ アルビン・アンソン マクシー・マンバ アリ・ファワズ ケニオン・マーティン クーヤ・マンザーノ 江原シュウ アルマリオ・レアル 監督・脚本/アーティ・モーガン
配給/よしもとクリエイティブ・エージェンシー
公式HP
6月21日(土)からシネマート新宿ほか順次公開
(C)Death Match FILM PARTNERS
PROFILE
武田幸三(たけだ・こうぞう)
1972年12月27日生まれ 東京都出身93年に治政館入門。
95年、新日本キックボクシング協会でデビュー。97年にウェルター級王者となり01年、ラジャダムナン・スタジアムウェルター級王座獲得。03年よりK-1 WORLD MAXに参戦。強烈なローキックと右ストレート、愚直に前に出続けるファイトスタイルで人気を博す。09年10月のアルバート・クラウス戦を最後に現役引退。以降、俳優活動を始めドラマや舞台、映画に出演。主な出演作にドラマ「検事・鬼島平八郎」「示談交渉人 ゴタ消し」「デカ 黒川鈴木」「お助け屋☆陣八」、映画「MG-2416」「日曜日、すずは口笛を吹いた」「ハートに火をつけて」がある。
公式ブログ
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一