主宰する劇団の名前は「ブス会*」、職業はAV監督、あの焼きそばを連想させる名前……。プロフィールを眺めただけでも、その存在に興味を覚えずにはいられないペヤンヌマキ氏。AV監督の道へと踏み出したきっかけや、女の実態をじわじわとあぶり出す舞台に込めた思い、1月29日に始まる第4回ブス会*「男たらし」の内容などを伺ってきました。
女性の実態をあぶり出す舞台を見て「怖くて帰りたくなった」という男性も
──AV監督になられたきっかけは?「当時は学生時代からやっていた演劇に、金銭的な面でも続ける限界を感じていた時期で。バイト先を探していたときに、偶然AV制作会社の求人広告を見つけたんです。AV監督のバクシーシ山下さんの本を読んだことがあり、その会社に面白いドキュメンタリーを撮っている平野勝之さんが所属していたこともあって、『エロの現場も面白そう』と好奇心で応募して。そしたら人手不足で社員になっちゃって……」
──ご著書『たたかえ!ブス魂』には、AD時代にバイブを忘れて泣いている場面を撮影された話や、「ハメられ撮りをやらないか?」と社長に提案されたエピソードも出てきましたね。
「体を張っている人達の中で、自分だけ傍観者でいるのはやっぱりムリなんですよね。面接で女の子が『乱交してみたい』と言ったとき、『スゴいですね』と他人ごとのように言うのではなく、『私もやってみたい』と言え……と社長に教わったことは、特に印象に残っています」
──ご自身は昔から「ブス」と呼ばれることへの恐怖をずっと持っているそうですが、「女は容姿が全てではない」という発見もあったそうですね。
「AVは店頭に並ぶと写真映えするキレイなコが人気になるんですが、現場の男性には『キレイだけど色気がない』と言われちゃうコもいて。思春期に信じていたスクールカーストとは違い、実は男性の好みも幅広いんだと分かったんです。あとキレイなコも、思わぬところにコンプレックスを抱えていたりして」
──そのようなAVの撮影現場での経験が、再開した演劇の活動でも生きてくるわけですね。
「現場で女性同士の人間関係の面白さに気づいたことが、劇団ポツドールの番外公演“女シリーズ”を始めるきっかけになりました。昔は創作意欲があっても、描きたいものが漠然としていたんですが、AVの仕事をする中でそれも出てきましたね」
──そして自身の演劇ユニット「ブス会*」も立ち上げるわけですが、これも「ブス」と呼ばれることへの恐怖とやはり関係が?
「自ら『ブス』と名乗り、『ブス』という言葉をカジュアル化することで、『ブス』と呼ばれることを恐れずにポジティブに生きていきたいという思いが込められてます。自分から名乗っておけば、『そうでもないじゃん』と言われたときに得した気分になりますしね(笑)」
──舞台ではAVの撮影現場の控室や、デリヘル嬢たちの待機室での人間関係を描いていますね。
「特殊な世界を特殊なものとして描かずに、どこにでもあるものとして描こうと意識しています。複数の女性が集まれば、すぐに水面下の攻防やポジション争いが始まりますし、誰かがトイレに立った瞬間に悪口を言うとか実際にありますから」
──そういう話を聞くと女性が怖くなります……。
「舞台を見た男性で『怖くて途中で帰りたくなった』という方もいました(笑)。でも女性の醜さを描きたいのではなく、私はそんな女性をたくましいと思うし、その可愛らしさにも気づいてほしい。『観終わると不思議と嫌な気持ちにはならない』と言われるので怖がらず見に来てください(笑)」
──1月29日からの公演『男たらし』は、これまでとは変わり女性が1人で男ばかりの舞台ですね。
「女性の群像劇を作り続ける中で、女性については欠点も含めて好きになりすぎた一方で、男性が嫌いになってきたので、今回は男性の可愛らしさも描けたらと思っています。といっても、脚本を書きながら稽古中の現状では、男のゲスな部分が満載な感じになっちゃってますが……(笑)」
INFORMATION
第4回ブス会*「男たらし」
脚本・演出/ペヤンヌマキ
出演/内田慈、古屋隆太(青年団、サンプル)、大窪人衛(イキウメ)、佐野陽一(サスペンデッズ)、松澤匠、金子清文
これまで女の群像劇を描いてきたブス会*が初めて挑む、女と男(ゲス)たちの物語。1月29日~2月4日まで下北沢ザ・スズナリで上演。チケットはブス会*公式ホームページから購入可(前売り券が完売の場合も劇場で当日券の発売予定あり)。
公式HP
PROFILE
ペヤンヌマキ
1976年生まれ。長崎県出身。
早稲田大学在学中に三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。2004年よりフリーのAV監督と活動する傍ら(AV監督名はぺヤングマキ)、ポツドール番外公演”女”シリーズの脚本・演出を務める。2010年には演劇ユニット「ブス会*」を立ち上げ、以降すべての作品の脚本、演出を担当。著書に『たたかえ!ブス魂~コンプレックスとかエロとか三十路とか~』(KKベストセラーズ)。
第4回ブス会*「男たらし」
脚本・演出/ペヤンヌマキ
出演/内田慈、古屋隆太(青年団、サンプル)、大窪人衛(イキウメ)、佐野陽一(サスペンデッズ)、松澤匠、金子清文
これまで女の群像劇を描いてきたブス会*が初めて挑む、女と男(ゲス)たちの物語。1月29日~2月4日まで下北沢ザ・スズナリで上演。チケットはブス会*公式ホームページから購入可(前売り券が完売の場合も劇場で当日券の発売予定あり)。
公式HP
PROFILE
ペヤンヌマキ
1976年生まれ。長崎県出身。
早稲田大学在学中に三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。2004年よりフリーのAV監督と活動する傍ら(AV監督名はぺヤングマキ)、ポツドール番外公演”女”シリーズの脚本・演出を務める。2010年には演劇ユニット「ブス会*」を立ち上げ、以降すべての作品の脚本、演出を担当。著書に『たたかえ!ブス魂~コンプレックスとかエロとか三十路とか~』(KKベストセラーズ)。
取材・文/古澤誠一郎