「この人みたいになりたいっていうお手本がないんですよ。それより、誰もやったことがないことをやって、誰も届かない場所に行きたいですね」
この男、まさに“神童”!18歳にしてプロキャリア20戦、しかも全勝、すでにキックボクシングの世界タイトルを持ち、立ち技最強と言われるムエタイの現役王者をKOしたかと思えば『RIZIN』でMMA(総合格闘技)にも挑戦。4月、5月にも連戦を控えたスーパー大活躍中の那須川天心から目を離すな!!
KO勝ちが多いけど勢いで攻めてるだけじゃないんです
──今日はお父さんが設立されたTEPPENジムでの取材です。那須川選手は都内のジム・TARGETの所属ですけど、お父さんとの練習も少年時代から続けてるんですよね。「TARGETではプロの選手と対人練習をしたり、伊藤隆会長に技術を教えてもらったりですね。あとフィジカルとボクシングも別のジムに行ってます。で、父との練習は基本の確認がメインですね」
──プロになっても親子で練習するものなんですね。
「やっぱり親子なので、自分の短所とか課題をきちっと指摘してくるんですよね。弱いところは見せないようにしてるつもりなんですけど、それでも分かっちゃう。おかげで今まで反抗期なしできました(笑)」
──昨年12月、現役ムエタイ王者をバックキックでKOした時も、お父さんと「顔面にバックキックが当たるんじゃないか」と話していたとか。
「練習でもやってたので、いけそうな感触があったんですよ」
──2月の試合では、元ボクシング世界王者のアムナットをボディブローで倒しました。試合後にコメントを聞いた時も感じたんですが、那須川選手は試合内容をよく覚えてますよね。
「確かにそうですね。試合中も冷静なんですよ。相手の攻撃を見て『あ、いい技だな』とか『俺もやってみよう』とか思ったりしますし。だから僕は、KO勝ちが多いんですけど、勢いでガーッと攻めてるわけじゃないんですよ。相手の動きを見ながら『疲れてきたな』とか『まだパワーが残ってるな』と分析しながら闘ってます」
ジュニア時代から場数を踏んできたのが大きい
──アムナット戦では、蹴り合いで上回ったことでパンチ勝負に持ち込んだ面がありました。相手は元ムエタイ王者でもあるので、蹴り合いを挑むのも勇気がいりますよね。「でも、タイ人って試合運びがうまいので、弱みを見せると調子づくんですよ。どういう場面でも張り合っていかなきゃいけない。結果、蹴りも強いぞ っていう感覚を相手に与えたことでパンチが当たりやすくなりましたね」
──18歳でその落ち着きはただごとじゃないですね。でも子どもの時から空手やジュニアキックボクシングの試合に出てましたから、トータルのキャリアは長いんですよね。
「場数っていうのは大きいと思います。プロでも総合格闘技を合わせると20戦やってますし。4、5戦目くらいから落ち着いて試合ができるようになりましたね。キッズ、ジュニア時代の経験もあってだと思うんですけど」
──よく「タイのムエタイ選手は子どもの時からやっていて、そこで生き残った選手ばかりだから強い」と言われますけど、那須川選手の世代もアマチュア時代からしのぎを削って生き残った選手がプロになっているんでしょうね。
「ルールはちょっと違いますけど、生き残ってきたっていうのは同じだと思いますね。だから日本のリングだったらチャンピオンクラスともすぐ勝負になるし、タイ人にも変なコンプレックスはないです。タイで生き残ってトップになるのと、日本で生き残ってトップになるのと、さほど差はないと思うんですよ」
SNSで同世代が応援してくれるのはすごく嬉しい!
──そういう意味でも新世代ですよね。「今までの人たちとは考え方が違うかもしれないですね。たとえば、ムエタイと闘う時にはテクニック勝負もできるし、ムエタイとは違う動きでKOすることもできる。両方のパターンがあるのが理想です」
──4月にはRIZINでMMA(総合格闘技)3戦目、5月には立ち技のRISEで世界王座防衛戦が決まりました。2カ月連続で試合するだけでも大変なのに、 まったく違うルールで闘うってとてつもないことですよ。
「ほんとに(笑)でも、僕の場合は、それが普通になっちゃってるんですよね。本当は大変なんだけど『那須川天心ならやれるでしょ』と思われてる感じで」
──これまでの試合が凄すぎて、ハードルが上がっちゃってるんですね。
「それを超えていかなきゃいけないし、だからこそやりがいがありますね」
──ちなみに、10代からプロで活躍してると普通の高校生がうらやましくなったりはしませんか?
「昔はちょっとありましたね。文化祭とか『エンジョイしてんなぁ』って。でも今はないですね。僕のほうが活躍してるし目立ってるなと(笑)SNSで同世代の人たちが応援してくれるのは、凄く嬉しいんですよ。僕を見て格闘技を始めたっていう人もたくさんいますし」
──選手としての、将来の理想像は?
「こうなりたいっていうのは、特にないんですよ。チャンピオンベルトがたくさんほしいわけではないし、お金も活躍していけばついてくるだろうって。だから『この人みたいになりたい』っていうお手本がないんですよ。それより、誰もやったことがないことをやって、誰も届かない場所に行きたいっていうのが大きいです」
──「○○みたいになりたい」じゃなく「那須川天心みたいになりたい」って言われるようになりたいというか。
「そうそう。それが理想ですね」
INFO
■『RIZIN 2017 in YOKOHAMA』
【INFO】RIZIN MMAルール
那須川天心(チーム天心)vsフランチェスコ・ギリオッティ
4月16日(日)横浜アリーナにて。
開場13:30/開始15:00
公式HP
■『RISE 118』
【INFO】ISKAオリエンタル世界バンタム級タイトルマッチ
那須川天心(王者/TARGET)vs“アベンジャー”ライアン・シェーハン(挑戦者/アイルランド)
5月20日(土)後楽園ホールにて。
開場17:00/開始18:00
公式HP
PROFILE
那須川天心(なすかわ・てんしん)
1998年8月18日生まれ 千葉県出身
アマチュア時代からハイレベルな試合で注目され、プロデビューすると無敗の快進撃で“スーパー高校生”“神童”と呼ばれる。昨年12月には現役ムエタイ王者をKOし、さらに年末のRIZINでは総合格闘技に初挑戦するだけでなく12月29日、31日と中1日で連戦。いま最も注目される格闘家に。RISEバンタム級王者、ISKAオリエンタル世界バンタム級王者。
公式Twitter
■『RIZIN 2017 in YOKOHAMA』
【INFO】RIZIN MMAルール
那須川天心(チーム天心)vsフランチェスコ・ギリオッティ
4月16日(日)横浜アリーナにて。
開場13:30/開始15:00
公式HP
■『RISE 118』
【INFO】ISKAオリエンタル世界バンタム級タイトルマッチ
那須川天心(王者/TARGET)vs“アベンジャー”ライアン・シェーハン(挑戦者/アイルランド)
5月20日(土)後楽園ホールにて。
開場17:00/開始18:00
公式HP
PROFILE
那須川天心(なすかわ・てんしん)
1998年8月18日生まれ 千葉県出身
アマチュア時代からハイレベルな試合で注目され、プロデビューすると無敗の快進撃で“スーパー高校生”“神童”と呼ばれる。昨年12月には現役ムエタイ王者をKOし、さらに年末のRIZINでは総合格闘技に初挑戦するだけでなく12月29日、31日と中1日で連戦。いま最も注目される格闘家に。RISEバンタム級王者、ISKAオリエンタル世界バンタム級王者。
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取材・文/橋本宗洋 撮影/おおえき寿一