「俺もファンだったから分かるんですよ、みんなが見たいものが。 それってド派手なKO、衝撃映像ですよね。じゃあそれを見せたいなって」
大晦日のビッグイベントをはじめ、大会ごとに注目度を増している格闘技イベントRIZIN。RENA、那須川天心など新世代の台頭が目立つこの大会で、新時代を牽引する“主役”の一人として期待されているのが矢地祐介選手です。昨年は大物相手に3連勝。明るいキャラと派手な試合ぶりでも知られる“お祭り漢”に、躍進の理由とRIZINへの思いを語ってもらいました。
プロになっても最初はフワフワしてましたね!
──矢地選手はRIZINに出る以前から修斗で新人王、環太平洋王座を獲ったり、早くから活躍していたイメージがあります。「そう言われるとそうなんですけど、 最初は明確なビジョンとかなかったんですよ。デビュー当時は大学生だったし、目立ちたいとかチヤホヤされたいとかまさに学生のノリで(笑)」
──キッズ、ジュニア時代からキャリアを積んできたわけでもないですし。
「高校からですからね。格闘技始める前は文武両道というか、部活(野球)も勉強もしっかりやってっていう、ごく普通の感じでしたから。マジメでしたよ。プロになっても最初はフワフワしてたんですけど、変わってきたのは (6戦目から)2連敗した時ですね。 しかも同じような負け方だったんで、『あ、ここで勝てないんだ俺』と。その頃は世界を相手に闘いたい、メジャ ーでやりたいっていう気持ちが出てきてたんで、このままじゃマズいなと。 ちょうどその頃、(堀口)恭司も入っきたんですよ。『こんなに練習するのか?』って驚きましたね」
──ジムを率いる山本〝KID〟徳郁選手は放任主義みたいですね。
「そうなんですよ。挫折しても、そこで食らいついて生き残っていくやつだけでいいっていう。『みんなで頑張ろうよ』みたいなノリはないんですよ。 だから自覚がないとやっていけない。ていうか俺、そもそもプロがどれくらい練習するのかも分からないでやっていましたから(苦笑)」
──プロの合同練習だけしかやってない、みたいな感じですか。
「みんなそれ以外に自主的にやっているって知らなかった(笑)」
──ただ矢地選手が実力をつけていった頃には日本で大きいイベントが続かない時代になっていましたよね。目指すのは海外、UFCという。矢地選手はまずPXCという団体に出て、タイトルを獲ります。
「ちょうど修斗の65kgの階級が停滞していた時期なんですよ。なかなか世界タイトルマッチも組まれなくて。それよりは(アメリカの格闘技団体)PXCのほうが、UFCに向けた経験とかアピールにもなるなって」
──格闘家としてのキャリアもありますけど、大学生だから周りは就活してたりとか。
「それもありました。だから目標を決めていました。大学生のうちにベルトが巻けなかったら辞めようとか。○歳までにメジャー団体に上がれなかったら諦めようとか。ギリギリ、クリアしながらやってこれたんですよ」
RIZINで新しい時代を作るという役割をもらった
──その目標は、今だとどんな感じになるんですか?「シンプルに言えば、1年間すべての試合で勝つとか、そういうことですよね。去年はそれができて。まあ、ひたすら夢中でやってきただけですけど」
──RIZINという大きいイベントでの連勝ですから価値もありますよね。 株の上がり方がとてつもない。
「そうですか?」
──元UFCのダロン・クルックシャンク、日本のトップを張ってきた北岡悟、レジェンドファイターの五味隆典の3選手に勝ったというのはインパクト絶大でしょう。実感ないですか。
「いや、こういう取材をしてもらうこともそうですけど、実感はあるんですよ。ただ、もっとほしい(笑)」
──試合ぶりも前よりよくなっている気がします。打撃主体なのは変わらずですけど、爆発力が際立ってきてるなと。
「前は勝ちにこだわってましたね。修斗のタイトルとかUFCを目指すってなると、勝ち星を重ねるっていうのがまず大事で。『負けたら終わり』みたいな感じが大きくて。それプラス減量がつらくて気持ちもネガティブになってましたしね」
──RIZINでは70kgの階級に上げましたね。
「RIZINに出るのと階級を上げて減量苦から解放されるタイミングが合 って、自分でも明るくなりました(笑)RIZINでも負けたくはないんですけど、自分としても興行としても『まず盛り上げようよ、楽しもうよ!』っていう感じで。『せっかくこんな大きい舞台に出れるんだから、楽しんで思い出を残そうぜ!』って。のちのち、自分の子どもとか孫に自慢する材料を作ってるみたいな(笑)」
──RIZINでの勝利はすべてKO、一本ですよね。
「もともと寝技も得意なんですよ。でも打撃のほうが盛り上がるじゃないですか。俺もファンだったから分かるんですよ、みんなが見たいものが。それってド派手なKO、衝撃映像ですよね。じゃあそれを見せたいなって。ファイターって、ファンがいなかったら成り立たないですからね」
──結果、今の異名が「RIZINのお祭り漢」ですからね。
「水が合っていました。格闘技界を盛り上げるには若いヤツが前に出ていかなきゃいけないし、俺はRIZINで新しい時代を作るっていう役割をもらったと思ってるんで。今年は強い外国人とやって、この階級で日本の星になりたいですね。選手としても、ここから30歳すぎるくらいがピークだと思っているし、周りよりプロ意識の芽生えも遅かったので(笑)」
INFORMATION
■RIZIN 2018年第1戦『RIZIN.10』
【INFO】
5月6日(日)マリンメッセ福岡
〈決定対戦カード〉
堀口恭司 vs イアン・マッコール
浅倉カンナ vs メリッサ・カラジャニス
マネル・ケイプ vs 朝倉海
ウェイリー・ジャン vs 村田夏南子
北井智大 vs RISE WEST.10トーナメント優勝者(※キックルール)
〈出場予定選手〉
那須川天心(※キックルール)
公式HP
PROFILE
矢地祐介(やち・ゆうすけ)
1990年5月13日生まれ 東京都出身
08年、全日本アマチュア修斗選手権のライト級で優勝を飾り09年に修斗でプロデビュー。12年、環太平洋ライト級王者となり、海外ではPXCフェザー級タイトルも獲得。16年にRIZIN参戦を果たすと打撃主体のスタイルで連勝、昨年の大晦日にはレジェンド五味隆典に一本勝ちを収めた。
公式Twitter
■RIZIN 2018年第1戦『RIZIN.10』
【INFO】
5月6日(日)マリンメッセ福岡
〈決定対戦カード〉
堀口恭司 vs イアン・マッコール
浅倉カンナ vs メリッサ・カラジャニス
マネル・ケイプ vs 朝倉海
ウェイリー・ジャン vs 村田夏南子
北井智大 vs RISE WEST.10トーナメント優勝者(※キックルール)
〈出場予定選手〉
那須川天心(※キックルール)
公式HP
PROFILE
矢地祐介(やち・ゆうすけ)
1990年5月13日生まれ 東京都出身
08年、全日本アマチュア修斗選手権のライト級で優勝を飾り09年に修斗でプロデビュー。12年、環太平洋ライト級王者となり、海外ではPXCフェザー級タイトルも獲得。16年にRIZIN参戦を果たすと打撃主体のスタイルで連勝、昨年の大晦日にはレジェンド五味隆典に一本勝ちを収めた。
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取材・文/橋本宗洋 撮影/おおえき寿一