「やっぱり逃げたくないですよね、相手がいくら強くても。リスクよりも、大きい仕事を任されたことが光栄だなって」
かつて“闘うフリーター”として人気になった格闘家・所英男選手が、39歳にして大勝負に挑む! 7月30日開幕のRIZINバンタム級GP、その1回戦で闘うのは世界最高峰の舞台・UFCで活躍してきた堀口恭司選手。過去最大の難敵に、ベテランとなった所選手はどう挑むのか。主宰するジム『リバーサルジム武蔵小杉 所プラス』を訪ねてみました。
ジムの会員さんたちの応援を肌で感じて試合をしてます
──かつて「闘うフリーター」と呼ばれた所選手も、いまやベテランですね。「その呼び方で覚えてもらってるんでありがたかったんですけど、実はフリーターじゃなくなって10年以上経ちます(笑)」
──ジムとストレッチ店を経営する実業家ですもんね。
「いやいや、僕は言われるがままです。何も成長していないです」
──とはいえ、やっぱり弟子というか、 ジムの会員さんがいると選手としての考え方も変わってきますか。
「それはありますね。変な試合はできないなっていうか。毎日、ジムで指導させてもらうじゃないですか。人に教えるっていうことは、絶対的な技術だったり、説得力が要ると思うんですよ。それが僕はないタイプで。だから試合が大事になってきますね」
──いわゆる理論派じゃない分、試合でお手本を見せるという。
「それしかないですよね。練習すると、こんなふうにできますよっていうのを見せないと。しかも会員さんたちが応援してくれてるっていうのを、本当に肌で感じながらやってるので」
──7月3日のRIZINさいたまスーパーアリーナ大会、バンタム級GP1回戦では強豪・堀口恭司選手と対戦します。世界トップでやってきた選手ですから、それこそ応援にも熱が入るでしょうね。
「分かりやすいくらい強い選手ですよね。空手がベースにあって、体幹が強い。だからなのかレスリングの面でも強いですし、パウンド(寝技でのパンチ)も威力がありますよね。前後左右にステップできるし、あんなふうに動けたら気持ちいいだろうなって思いますね。研究すればするほど、自分とは遠い存在だなって」
──対戦のオファーがあってから、周囲の反対もあって決定まで時間がかかったそうですね。
「僕が目標にしてきたのはKID(山本〝KID〟徳郁)さんとやることだったので。それを考えたら、GPに出る意味はあるのかっていう話になりましたね。KID戦につながるような試合をやっていくほうがいいんじゃないかって」
──ベテランでもありますし「トーナメントで誰が一番強いか決めよう」じゃなく、一つ一つの試合のテーマを優先させようという。
「あとはやっぱり、堀口選手は危険すぎるっていう」
──それでも試合を受けた理由は?
「やっぱり逃げたくないですよね、相手がいくら強くても。リスクよりも、大きい仕事を任されたことが光栄だなって。そんな機会、たくさんあるわけじゃないですから」
自分なら勝てる!最後までそう信じて闘い抜きます!!
──今年のRIZINのGPは1つ上か下の階級で開催と言われてましたから、バンタム級GPになったのも不思議なめぐり合わせというか。「バンタム級でGPをやるって聞いて、嫌な予感はしてたんですよ」
──嫌な予感(笑)「堀口選手と当てられるかも……」と。
「でも試合が決まってみたら、毎日楽しいんですよ。堀口選手を研究して、『こうやったら勝てるかも』と考えながら練習するっていうのは凄く楽しいですね。相手があまりにも強いので、それに挑むのはやりがいがあるんですよ。ちょっと疲れたからって休むわけにはいかないですけど、疲れがたまっていくのも何か嬉しいっていうか」
──対戦決定の記者会見では「堀口選手に勝てるとしたら自分しかいない」とおっしゃってましたね。
「それは、僕が一世代前の選手だからですね。堀口選手はケージ(金網)の中でやる、MMAと呼ばれるようになった総合格闘技の選手なんですけど」
──隙がないタイプですよね。
「僕は隙だらけなんで(笑)でも何か一発というか、不意を突くことはできるかもしれない」
──古い世代だからこそ、最新鋭の堀口選手が予想していないことができる。
「そうだといいなっていうか、そうなることを最後まで信じて闘いたいですね。たくさんの人に応援してもらってますからね。信じて闘わないと」
──所選手も、アメリカでの試合を目指していた時期がありました。
「隙のないスタイルでやろうとしてました。でも結果が出なくて吹っ切れたんです。自分の持ち味を出そうって」
──そういう時にRIZINが旗揚げして、堀口戦につながるっていうのも面白いですね。
「不思議な流れですね」
──GPの優勝候補は堀口選手になるとは思いますが、今回のように一回戦で闘うのと、決勝で対戦という組み合わせとどっちがよかったですかね?
「いやもう、今回のほうが。だって決勝まで行くのに3回勝たなきゃいけないんで。そんなに勝てないです」
──いやいや、優勝しましょうよ(笑)決勝戦は大晦日のメインイベントですよ、たぶん。
「大晦日のメインって、今までないんですよ。そういう機会がここにきて来るんですねぇ。けどとにかく堀口選手に勝つことですね、今は」
INFORMATION
■『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント 1st ROUND -夏の陣-』7月30日(日)さいたまスーパーアリーナ
【INFO】☆全対戦カード
堀口恭司vs所英男/大塚隆史vsアンソニー・バーチャック/石橋佳大vsカリッド・タハ/北岡悟vs矢地祐介/那須川天心vs才賀紀左衛門/KINGレイナvsレイディー・タパ/山本美憂vsキャシー・ロブ/アミール・アリアックバリvsタイラー・キング/テオドラス・オークストリスvsカール・アルブレックソン/ギャビ・ガルシアvsオクサナ・ガグロエヴァ/真珠・野沢オークライヤーvsシーナ・スター
公式HP
PROFILE
所英男(ところひでお)
77年8月22日生まれ、岐阜県出身
高校卒業後に格闘技を始め、ZSTでの活躍からTBSで中継された『HERO’S』で全国区の人気選手に。その後DREAMなどで活動し、現在はRIZINを主戦場に。常に動き続け、KO・一本を狙うスタイルが大きな魅力。現在は武蔵小杉にてジムのほかストレッチ店の経営も。
公式Twitter
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■『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント 1st ROUND -夏の陣-』7月30日(日)さいたまスーパーアリーナ
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所英男(ところひでお)
77年8月22日生まれ、岐阜県出身
高校卒業後に格闘技を始め、ZSTでの活躍からTBSで中継された『HERO’S』で全国区の人気選手に。その後DREAMなどで活動し、現在はRIZINを主戦場に。常に動き続け、KO・一本を狙うスタイルが大きな魅力。現在は武蔵小杉にてジムのほかストレッチ店の経営も。
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取材・文/橋本宗洋 撮影/熊代紀章