シリアスな役から怪しげな雰囲気を持つ独特のキャラクターまで、個性あふれる名脇役として名を馳せる佐藤二朗さん。9月20日に全国ロードショーされる主演映画『幼獣マメシバ 望郷篇』では中年ニートを演じて、ドラマ版でも高い評価を受けている。愛らしいルックスのマメシバが出演しているのに犬にスポットを当てたわけではない本作は、佐藤さん曰く「熱い人間が成長するための、熱い闘いの物語」とのこと。今回初めて明かされる、映画を通して伝えたかったことのほかに、プライベートでの父親&夫としての素顔もさらけ出して頂きました!
今月の“パイセン”は、中年ニートと豆柴の奮闘記を描いた『幼獣マメシバ 望郷篇』の主演佐藤二朗さん。主人公、芝二郎の「うん、うん」と唸る独特のセリフ回しにハマる人続出中で、“寅さん”のように長期シリーズ化しそうな予感。ポロッと吐く的を得た詩のようなセリフにもドキッとする人が多く、人気を博す要因にも繋がっている。佐藤さんと一緒に写っているワンコは、実は最新作にも出演。普段はかなりお転婆なのに、佐藤さんが抱き上げると一瞬でおとなしくなるという、絶妙なコンビぶりも発揮してくれました!!
芝二郎を表する“40歳児”実は僕が嫁に言われた言葉です
──佐藤さん演じる芝二郎は“スーパー40歳児”という異名を持っていますが、ご自身との共通点は?「40歳児って実は、僕が嫁に言われた言葉なんですよ。それをブログに書いたら、企画と脚本を担当する永森(裕二)さんが、『すごくいい言葉なんで、頂いていいですかね』と言ってきて、使うことになったんです。嫁は『まあ、いいんじゃないの』なんて、偉そうに喜んでましたねぇ(笑)」
──家では子どもに戻るんですね。
「精神年齢の低さでは、2歳半の息子と家でデッドヒートを繰り広げますからね。息子はね、すぐにはしゃぐし落ち着きがなくてソワソワするし、お調子者で、ホント僕と似てるんです。似てるというより、最大のライバルです(笑)嫁には『もっと大人になって』と言われるんですけど役者って、大人になることを放棄した人たちが一生懸命バカをやる仕事だと僕は思っているんですね。だから、役者としては大人になりたくない僕は、嫁ともせめぎ合いです(笑)」
──ほほえましい家族円満ぶりが伝わってくるエピソードですね。
「結婚しない選択肢もアリですし、周りにもそういう人がたくさんいますけど、僕は非常に寂しがりやなんで、1人じゃ絶対に生活できないんですよ。1日中、誰ともしゃべらないだけで気が変になります。『今日オレ会話したの、コンビニのお姉さんだけだよ』なんて話を聞いたことがありますけど、僕がその状況に陥ったら、お姉さんと話し込むでしょうねぇ」
──奥様とは20年、人生をともにしてきているんですよね。
「つき合って同棲してから20年経ちますね。って話をこの前、バラエティ番組でしたら、嫁に『同棲してたことは父に秘密だから言わないで!』と叱られたんですけど、住職をしてるお義父さんは御誌ドカントを読まないからいいかな(笑)気づいたら僕がバイトしないで役者だけの収入で生活してる状態と、嫁の30歳という年齢が重なったタイミングで結婚したんですけど、住職って堅い職業じゃないですか。しかも田舎の方なんで、出演したNHKドラマのタイトル名を嫁に先に伝えてもらって、外堀を埋めてから挨拶に行ったんですよ」
──前回、佐藤さんは20代の頃、役者をしたり営業マンをしたりと、放浪していたと語っていましたが、その時代を奥様は支えてくれたと。
「僕ら夫婦の話を美談にしようとしてます?(笑)まぁ、苦労した歴史を知ってくれているっていう安心感がありますし、当然、月日が育てるものもありますから、嫁は僕にとって手離せない存在ではあります。何度も結婚する人に憧れる気持ちもありますけどね。モテるってことですから」
──奥様のような“糟糠の妻”に憧れる男性も多いと思いますが、そういった女性の共通点は。
「あくまでも個人的な趣味で言うなら、笑い方が可愛らしい人。愛想笑いじゃなく、いつも本当におかしそうに笑う人ですかね。あとは、女を武器にする人が苦手なんです。そういう女性をカッコイイなとは思うんですけど、一緒に暮らすとなると話は別なので」
──奥様はその条件に当てはまる?
「完全に当てはまってますね。でも、見た目はブ……と言ったら怒られちゃう(笑)フツーですよ。僕は世界で一番、カワイイと思ってますけど」
類を見ない日本映画ですから観ないと人生!損します!!
──お子さんができたことで、佐藤さんの犬への接し方が変わったと、動物トレーナーの北村まゆみさんがコメントしていましたよね。「まゆみはそう言ったかもしれませんが、僕は1作目からまったく変わりません!(同席するトレーナーを突然呼び捨てにしたため、一同大爆笑)最近、芝二郎が成長したよね、という評価を頂くんですけど、佐藤二朗も芝二郎も、成長したって意識はないんですね。ただ、まゆみのように、本人より周囲が先に気づくさじ加減が、リアルな成長なのではないかと」
──では、1作目から最新の4作目までで、何か変化はありましたか。
「演じて6年経つんですけど、1作目は僕の白髪がアップで映って、監督がNGを出したんです。親のスネをかじってぬくぬくとしているニートに白髪があったらおかしい、という理由で。だけど今回は、芝二郎が40歳、佐藤二朗も45歳なんで、白髪ぐらいあるだろうってことでOKになりました。これって、長年同じキャラを演ってる楽しさだし醍醐味だなぁ、と」
──ご自身に変化は?
「プライベートで最も変わった点は、子どもができたことですね。他人の命に責任を持つって、大変だし面倒だから、子どもはいらないっていうのが夫婦の価値観だったんです。でも、子どもをつくろうかという気持ちになれた。こういう些細な変化って、実は芝二郎ともリンクしているんです。今までは人に巻き込まれていたんですけど、4作目にして初めて、自発的に家を出て、自分からトラブルに飛び込むんです。だからね、僕はもう、このドラマのことを『ゆるくて、かわいくて、脱力系』と言うことを止めます。むしろ、熱いんですよ」
──確かに、芝二郎は現実に体当たりしますからね。
「口には出さないものの、内面にある負の部分を、歯茎から血が滲むぐらい食いしばって、半歩でも前進しようとしますからね、芝二郎は。だからこの映画は、熱い人間が成長するための、熱い闘いの物語なんです。おっ、僕いいこと言ったね!(笑)」
──えぇ~(笑)それが作品で本当に伝えたかったことなんですね。
「今って頑張らないブームじゃないですか。そういう風潮だからこそ、逆に頑張らなきゃいかんときもあるだろうってことを、伝えたかったんです。伝えるためには、主人公が熱血キャラだと当たり前すぎて面白くない。口では『頑張るなんてナンセンス』と言いながら内面では闘う、芝二郎じゃないとダメなんです。これ、4作目にして初めて言ったんですけど、初めてをもう1つ。今までは、『小規模作品ですけどよかったら観て下さい』と控えめに言ってましたけど、もっと素直に正直に言います。類を見ない日本映画ですから、観ないと人生、損します! 不運にもこの作品をまだ知らない人たちのためにも、声を大にして言いたい。動物を悲劇に合わせて涙を誘ったりまるで人の気持ちが分かるように擬人化することはしていない、人間と動物のリアルな距離感を描いた作品はほかにありませんし、“セリフにポエムがある”作品もほかにはありません。永森さんと酒を飲んだ時に『この作品は賭けなんですよね』と言われて、それは役者に言っちゃいかんだろうと思いましたけど(笑)彼の選球眼に応えたい。役者のネームバリューではなく、純粋にいい作品を観たい人たちの想いにも応えたいんです」
──熱い! この代表作をつかみ取るまでに紆余曲折あったと思いますが、若いうちに経験しておいてよかったことって何でしょう。
「20代の頃、メソメソウジウジ余計なことばかり考えて、ノイローゼ気味になるほどダメになるパターンを何度か経験してきたんですけど、あの経験があるから今の自分があります。考えすぎるという経験をしたことで、精神的にも肉体的にも上手にバランスが取れるようになったんですよ。人生、無駄なことはないと思うので、若い人たちも遠慮せずに考え込んでダメになれ! と言いたいですね」
最後に「この作品、佐藤さんがおじいちゃんになっても演じてほしいです」と伝えると、「おじいちゃんが引きこもり!? どんな展開になるんでしょう~(笑)」と答えてくれました。佐藤さんのライフワークとも言える本作の続編も楽しみにお待ちしております!
INFORMATION
映画『幼獣マメシバ 望郷篇』 INFO&STORY
幼なじみのべーちゃんを訪ね、一郎の弟マメシバ三郎が住む鯨露島(くじらつゆじま)を訪れた二郎だったが、べーちゃんは三郎を連れて行方不明になっていた。捜索を始めた二郎は、三郎が島で「幸運を呼ぶ柴犬」と崇められていたことを知る。やがて三郎にそっくりな一郎が、島民たちに「幸運のお犬様」と勘違いされてしまい…。佐藤二朗主演で、ニートの中年男・芝二郎と愛らしい子犬の交流を描いた「マメシバ」シリーズの第4弾。
CAST&STAFF
佐藤二朗・高橋洋・竹富聖花・菅原大吉・盛岡冷麺・篠田薫・朝倉伸二・佐藤貢三・田根楽子・宍戸開
監督/亀井亨
製作総指揮/吉田尚剛
企画・脚本/永森裕二
配給/AMGエンタテインメント
公式HP
9月20日(土)より全国ロードショー
(C)2014「幼獣マメシバ 望郷篇」製作委員会
PROFILE
佐藤二朗(さとう・じろう)
96年、劇団ちからわざを旗揚げし、すべての公演で作・出演。08年、初監督・脚本作品の映画「memo」が公開され、09年の初主演映画「幼獣マメシバ」は、テレビドラマと映画でシリーズ化される。13年「めしばな刑事タチバナ」でキー局連続ドラマ初主演。近年の出演作にドラマ「JIN 仁」「勇者ヨシヒコ」シリーズ、映画「アフロ田中」「HK 変態仮面」「俺はまだ本気出してないだけ」「ボクたちの交換日記」「JUDGE ジャッジ」「薔薇色のブー子」「女子ーズ」など。「想いのこし」(平川雄一郎監督)は11月22日公開。10月23日から東京・天王洲 銀河劇場で上演の舞台「THE 39 STEPS」に出演する。
公式HP
公式ブログ
公式Twitter
映画『幼獣マメシバ 望郷篇』 INFO&STORY
幼なじみのべーちゃんを訪ね、一郎の弟マメシバ三郎が住む鯨露島(くじらつゆじま)を訪れた二郎だったが、べーちゃんは三郎を連れて行方不明になっていた。捜索を始めた二郎は、三郎が島で「幸運を呼ぶ柴犬」と崇められていたことを知る。やがて三郎にそっくりな一郎が、島民たちに「幸運のお犬様」と勘違いされてしまい…。佐藤二朗主演で、ニートの中年男・芝二郎と愛らしい子犬の交流を描いた「マメシバ」シリーズの第4弾。
CAST&STAFF
佐藤二朗・高橋洋・竹富聖花・菅原大吉・盛岡冷麺・篠田薫・朝倉伸二・佐藤貢三・田根楽子・宍戸開
監督/亀井亨
製作総指揮/吉田尚剛
企画・脚本/永森裕二
配給/AMGエンタテインメント
公式HP
9月20日(土)より全国ロードショー
(C)2014「幼獣マメシバ 望郷篇」製作委員会
PROFILE
佐藤二朗(さとう・じろう)
96年、劇団ちからわざを旗揚げし、すべての公演で作・出演。08年、初監督・脚本作品の映画「memo」が公開され、09年の初主演映画「幼獣マメシバ」は、テレビドラマと映画でシリーズ化される。13年「めしばな刑事タチバナ」でキー局連続ドラマ初主演。近年の出演作にドラマ「JIN 仁」「勇者ヨシヒコ」シリーズ、映画「アフロ田中」「HK 変態仮面」「俺はまだ本気出してないだけ」「ボクたちの交換日記」「JUDGE ジャッジ」「薔薇色のブー子」「女子ーズ」など。「想いのこし」(平川雄一郎監督)は11月22日公開。10月23日から東京・天王洲 銀河劇場で上演の舞台「THE 39 STEPS」に出演する。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一