「『青木ヶ原』という壮大なタイトルが付いていますが、ひとりの男性を 必死に愛した女性が登場する純愛ラブストーリーなので女性でも観やすいと思います」
芥川賞作家で東京都知事を務めた石原慎太郎氏と、新城卓監督が三度目のタッグを組んだ映画『青木ヶ原』。同作で命を賭けて必死に深く温かな愛情を恋人に注ぎ続けたヒロイン純子を演じた女優の前田亜季さんの静かなその物腰は、劇中の純子を彷彿とさせる。どこに共通点があるのだろう。彼女の語る言葉を胸に刻み、劇場で作品を観れば答えは分かる…はずだ!
撮影中はずっと矢柴さんが演じる滝本に恋してました
──着物姿で東京国際映画祭のセレモニーに参加したんですか?「初めてグリーンカーペットの上を歩いたので、少し興奮してしまいました…(笑)あのような場では記者の方々に必ず映画の見どころを聞かれるのですが、この作品はすべてが見どころなのでお伝えするのが難しいんですよね。新城監督は『これは喜劇です!』とおっしゃっていましたけど、冗談なんですよ。私の中では純愛ラブストーリーと捉えています」
──確かに。前田さん演じる加納純子と矢柴さん演じる滝本道夫の関係は、美しかったです。
「撮影中、私はずっと、矢柴さんというか、滝本さんに恋していたんですよ。とても優しく、頼れる方で、現場ではいつも側で寄り添って下さいましたし、私1人のシーンでも、カメラの向こうで見守っていてくれて。矢柴さんがいたからこそ、壮絶な人生を歩んだ純子を演じられました。救われましたね」
──演じる際、意識したことはありますか。
「哀しい人生だけれど(その人生を)自分なりの幸せでしっかり生きた女性を演じたいと思っていました。女としての幸せも手に入れるので、そこを意識するようにして。反面、石原さんは幸せに終わらせたくないともおっしゃっていて、実はラストシーンは2パターン撮影して、より切ない方が採用されたんです。ただ、滝本さんと純子の幸せなシーンも本編ではかなりカットされていて、私が好きなシーンでもあったので、それは少し残念でしたけど…」
メイクで青白い顔にしたらオバケと大笑いされました
──どんなシーンがお蔵入りしたのでしょうか。「純子の体調がすぐれない時に、滝本さんが背中を優しくさすり続けるところとか、幼稚園で先生と滝本さんの親友と滝本さんと純子の4人で、ふざけてダンスを踊るところですね。でも、滝本さんが純子にピアノをプレゼントして楽しい時間を過ごす、私が最も好きなシーンは収録されていたので安心しました」
──劇中ではベートーヴェン作曲の「月光」をピアノで弾いていましたよね。
「幼い頃に習っていたのですが、何年も弾いていないとダメですね。基本を忘れてしまったので、イチから習い直しました。純子はある程度弾ける女性ですし、監督がいろんなことを想定できるようにしたかったんです」
──純子の風貌が変わり果てていく様は、どのように作り込んだのでしょうか。
「メイクさんにもとても助けて頂きました。血の気が引いた顔色にするため、映画館でみなさんがご覧になるより、実物はかなりまっさおだったんですよ。あのメイクで太陽の下に出ると、周りの方々から『出た! オバケだ!』と、大笑いされていました(笑)」
生と死を扱ってはいますが内容はラブストーリーです
──完成作を観た感想は。「現場でのことを思い出してしまうのでまだ冷静に観ることはできないんですけど、生と死を扱っているのでお腹の底にズドンと来る作品で、考えさせられました。『青木ヶ原』という壮大なタイトルが付いていますが、内容はひとりの男性を必死に愛した女性の純愛ラブストーリーなので、女性でも観やすいのかな、と感じました」
──現場には石原さんはいらっしゃいましたか?
「現場でお会いする機会はなかったんです。台本が小説のように細かな描写で、想像が広がる脚本でした。冒頭の樹海のシーンなんかも風、雨、雪、霧…とそれぞれの様子を描く言葉が力強く描かれていましたね」
──ちなみに、原作は?
「原作は…今回はまだ読んでないんです…これから、読まなくちゃ(笑)」
INFORMATION
■映画「青木ヶ原」
INFO&STORY
富士山麓に位置する山梨県の忍野村で議員を務める松村雄大(勝野洋)は、自殺の名所として知られる青木ヶ原樹海で滝本道夫(矢柴俊博)の幽霊に導かれ、遺体を発見。丁重に葬るが、その後も滝本の幽霊が現れ続ける。困った松村が詳しく調べてみると、滝本は東京の老舗紙問屋の入婿にもかかわらず、加納純子(前田亜季)という若い女性と愛し合っていたことが分かる…。怪談をベースにしながら、儚くも美しい男と女の愛の軌跡が魂を揺さぶる。
CAST&STAFF
出演/勝野洋・前田亜季・矢柴俊博・田中伸一・ゴリ(ガレッジセール)ら
企画・原作/石原慎太郎(文芸春秋 石原慎太郎「生死刻々」所収)
製作・監督/新城卓
脚本/水口マイク・新城卓
配給/アーク エンタテインメント
13年1月12日より 有楽町スバル座ほかにて全国公開
PROFILE
前田亜季(まえだ・あき)
1985年7月11日生まれ 東京都出身
92年よりドラマやCMに出演し人気を博す。95年に「トイレの花子さん」で映画デビュー。00年公開の「バトル・ロワイアル」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な作品に映画「学校の怪談3」「この世の外へ~クラブ進駐軍~」「リンダ リンダ リンダ」、ドラマ「風林火山」「ゴンゾウ 伝説の刑事」「母さんへ」「新選組血風録」「白虎隊~敗れざる者たち」などがある。本作で不倫という禁断の関係に葛藤しながら壮絶な運命を辿る加納純子役を熱演している。
公式HP
■映画「青木ヶ原」
INFO&STORY
富士山麓に位置する山梨県の忍野村で議員を務める松村雄大(勝野洋)は、自殺の名所として知られる青木ヶ原樹海で滝本道夫(矢柴俊博)の幽霊に導かれ、遺体を発見。丁重に葬るが、その後も滝本の幽霊が現れ続ける。困った松村が詳しく調べてみると、滝本は東京の老舗紙問屋の入婿にもかかわらず、加納純子(前田亜季)という若い女性と愛し合っていたことが分かる…。怪談をベースにしながら、儚くも美しい男と女の愛の軌跡が魂を揺さぶる。
CAST&STAFF
出演/勝野洋・前田亜季・矢柴俊博・田中伸一・ゴリ(ガレッジセール)ら
企画・原作/石原慎太郎(文芸春秋 石原慎太郎「生死刻々」所収)
製作・監督/新城卓
脚本/水口マイク・新城卓
配給/アーク エンタテインメント
13年1月12日より 有楽町スバル座ほかにて全国公開
PROFILE
前田亜季(まえだ・あき)
1985年7月11日生まれ 東京都出身
92年よりドラマやCMに出演し人気を博す。95年に「トイレの花子さん」で映画デビュー。00年公開の「バトル・ロワイアル」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な作品に映画「学校の怪談3」「この世の外へ~クラブ進駐軍~」「リンダ リンダ リンダ」、ドラマ「風林火山」「ゴンゾウ 伝説の刑事」「母さんへ」「新選組血風録」「白虎隊~敗れざる者たち」などがある。本作で不倫という禁断の関係に葛藤しながら壮絶な運命を辿る加納純子役を熱演している。
公式HP
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一