多くの若い人に足りないことは、読書と映画を観ること。 映画や名作は単なる時間つぶしのエンターテイメントではなく、人生の予行演習ができるんです。 本を読まず映画も観ないから、誰も冒険しなくなっているんです。
命がけで芸能界を取材し昨年11月に上梓した『藝人春秋2』の執筆や漫才師、コメンテーターなど息つく暇なく活躍し続ける浅草キッドの水道橋博士さん。今春、配信を開始した『博士の異常なYouTube』の話を聞きに5月5日に東京・新高円寺にオープンした雑貨屋『はかせのみせ』にお伺いした。たけし軍団さんの昔話、やりたいことが見つからない若者向けへのメッセージから、話は下ネタに飛び、スタッフ一同大爆笑!博士さんのサービス精神てんこ盛りのインタビューがここに!!
芸人は職業の最終形態だからこそ政治家転身など貶められたくない
──『博士の異常なYouTube』で配信されていた、たけし軍団さんとの会議、面白かったです。「あの会議は下らないことばかりして何も決まらないという、たけし軍団の楽屋を再現しているんです。いわゆる集団芸だから、打ち合わせをしなくてもああなるんです。ヒット数も多いんですよね」
──10〜20代がメイン視聴者層なのに人気とはすごいです!
「開設当初はその世代をターゲットにしていたんですけど蓋を開けてみたら30〜40代の男性が多くて、分析結果によると前代未聞だそうです。視聴者世代はたけし軍団の最盛期を見ていますからね。当時は光GENJIやTHE ALFEEと匹敵する、アイドル並みの人気ぶりだったんですよ。軍団だけで開いたよみうりランドのライブチケットは即完売。ラッシャー板前さんはアイドル王道雑誌の『明星』のグラビアに出ていましたし(笑)当時、坊やだったボクもビックリするほどでした。昔のたけし軍団を定義するなら〝セクハラとパワハラを中心とした芸能活動をするアイドルグループ〟でしたけどね。そりゃあ世の中から消えますよ。全裸で走り回るとか熱湯風呂とか、セクハラとパワハラの象徴ですから」
──あはは!雑貨屋『はかせのみせ』も紹介されていました。
「55歳の5月5日にオープンしたのは、ボクが数字にこだわったからなんです。店は自分の子どもみたいな存在で、育てていこうと思う。本を書く時も同じ。だからいつも、意味のある日付を選ぶんですよ。暦の上では仏滅だから非難されることもありましたけど、ボクは仏教徒でもないし」
──店には篠原ともえさんが絶賛の光る靴も置いてありますね。
「もっと売れると思っていたんですけどねぇ。それこそ高円寺は光る靴で歩いている人しかいない、ぐらいに」
──1万円は少しお高いかと。
「そうですか?くみっきーは3万円でも売れるって言ってましたよ。私のブランドだったらって」
──(笑)雑貨店開店を含め、精力的に活動されていますよね。
「50歳を過ぎたら人生の半分を折り返していて、死に向かって走っているわけですよ。死を見つめると後悔したくなくなりますからね。あと、ボクは完全なワーカホリックで睡眠時間も短い。若い時に眠らず仕事をすると早死すると言われているけど、ショートスリープには慣れているし、時間がもったいない。今、書きたい本が8冊待機しているんです。長州力さんのインタビューが始まっていて、東国原(英夫)さんと『たけし論』を作ることも決まっている。殿の評伝もライフワークとして、死ぬまでに完成させたい。ボクは現段階で死ぬまでスケジュールが詰まっているんです」
──なりたい職業に就けたからこその言葉かと。
「正直、芸人は職業の最終形態だと思っているんです。殿は芸人をしながら映画監督として世界的な称号を得ているし、又吉(直樹)くんは芸人を続けながら小説の最高峰の賞である芥川賞を獲った。引退もないし収入は青天井。最低賃金保障はないけど、望めば望んだだけのものが手に入る。(爆笑問題)の太田(光)くんも同じだと思うけど、コメンテーターの仕事をすると『政治家に転身しないんですか』と聞かれるんだよね。でも、『何で政治家なんかに貶められなきゃいけないの?』っていうのが本音。(立川)談志師匠のように『客が喜ぶから政治家にでもなってやるか』という方は別ですが。政治家転身と噂されたくないから『水道橋博士のムラっとびんびんテレビ』にも出続けているんです。出ていて楽しいのはもちろん、唯一の冠番組がコレってね」
──AV男優のしみけんさんと一緒に毎回、セクシー女優をお招きする番組ですね。番組では高橋しょう子さんのファンだと公言していましたが。
「そうそう。ボク17年間浮気童貞なんですけどママにたかしょーのDVDを観せて『このコとならいい?』と聞いたの。ママも『このコだったらいいよ』って言ってくれたんだけど、どうにもならなくて。入れたくてたまらなかったある日、ママと都知事選に行ったんです。思わず『高橋しょうご』という候補者に投票して挿入を達成しました」
──(笑)奥様と仲良しですよね。
「昼間から致してギックリ腰が再発したことをブログに書いたらさすがに怒られましたけど(笑)仲良しですねえ」
──では博士がご自身の人生に点数をつけるなら?
「100点を超えてるよ。自分の才能と比較したら、芸能界での位置も上出来。早い段階で自分には卓越した才能がないことにも気づいていたし」
幼い頃から今も〝死恐怖症〟です死が怖いから平凡な人生を嫌った
──なるほど。ですが博士のようにやりたいことを見つけられない若い世代も増えているかと。「何がやりたいか分からないという人は、見聞を広めていないだけだと思うんです。(ウーマンラッシュアワーの)村本(大輔)くんとは今、飲みに行く仲なんですけど以前『君は読書量が足りない。もっと本を読め』と言ったんです。彼は『僕は体験しか信じない。批評はいらない』と言うので『君は美しい批評を読んでいないだけだ』と伝えたら今は理解してくれているんだよね。多くの若い人に足りないことは、読書と映画を観ること。映画や名作は単なる時間つぶしのエンターテイメントではなく、人生の予行演習ができるんです。『もしかしたら自分もこういう事態になるかも』という疑似体験ができる。本を読まず映画も観ないから、誰も冒険しなくなっているんです」
──今はネットが主流ですからね。
「ネットのニュースを見る6割の人が、見出ししか見ていないという統計値が出ているんです。『RT』した人で最後まで読んでいる人は4割。ネットニュースですら読んでいないという結果を誰も言いませんよね。だからボクは積極的に言うようにしている。こういうスタンスだからボク、24時間炎上しているんですよね。炎上で暖を取っているぐらいですから。だって自ら火にくべてるんだもん」
──(取材陣爆笑)そこまで怖いもの知らずの言動ができるのは、死を意識しているからですか?
「さっき『50歳を過ぎたら』と言いましたけど、小さい頃からボクは〝死恐怖症〟ですよ。いつかは迎える『死』に突き動かされている部分は絶対にある。死が怖いから、昔から平凡に生きるのがイヤだった。実家が商売をしていて裕福だったから、『大学を辞めて実家に戻ったら家業を継いで短大出のコと結婚するんだろうな』と人生のゴールが見えた時、さらに平凡を嫌うようになったんです」
──有難うございます。最後に『はかせのみせ』の宣伝を。
「ぜひして下さいよ。常々言っているんです。店の看板に『ボッタクります』と書いておきなさいって。最初から断りを入れておけばお客さんも『ボッタクられても仕方ない』と思ってくれるでしょう?トイレの扉には『ヌキ、ありです』とか」
──中野や渋谷で仕入れたシールも置いてありますね。
「1枚110円で仕入れて、店では250円で販売しています」
──ボッタクってる!!(笑)
「そうですよ。最近、店に小物が増えたのはボクがZOZO TOWNで90%オフの商品を買って転売しているからです。でも、価格って何かなって思いませんか?流通経路でもボラれているし、価格についてきちんとした価値観を持っている人が少ないことは、実家の商売を見て知っているんです。だから、この価格で納得できる人が買えばいいと思うんですよね」
──テンガも置いてあるとか。
「いつも『使用済みです』と言っていますね。『白濁した液が出てきたら当たりです』と。家の本棚に置いていたら『パパ、これなぁに?』と聞かれたから『マッコリ製造器だよ』と答えておきました。(男性スタッフに)電動テンガがね、得も言われぬ気持ちよさなんですよ。どんないい女とシタとしても、電動テンガには敵わない。家に誰もいない昼下がりに電動テンガを洗う時ほど人生の敗北感を感じることはありませんけどね。すごく哀しい気持ちになる。ボク、そこだけは鶴の恩返し的に、誰にも見せないから(取材陣大爆笑)」
──この後、延々と電動テンガエピソードが続きました。水道橋博士の〝珍接客〟が受けられるかもしれない『はかせのみせ』、ぜひ一度来店を!
PROFILE
水道橋博士(すいどうばし・はかせ 本名/小野正芳)
1962年8月18日生まれ 岡山県出身
86年、ビートたけしに弟子入りし、87年に玉袋筋太郎と浅草キッドを結成。お笑い芸人としてテレビやラジオ、バラエティで活躍するほか、『藝人春秋』『はかせのはなし』『藝人春秋2(上)ハカセより愛をこめて』『藝人春秋2(下)死ぬのは奴らだ』などの著書やライターとして雑誌等にコラムやエッセイを執筆。自身が編集長を務める日本最大級の有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』好評配信中。今春、YouTubeチャンネル『博士の異常なYouTube』を開設、5月には東京・新高円寺にセレクトショップ『はかせのみせ』をオープンした。
公式ブログ
公式Twitter
公式Instagram
水道橋博士(すいどうばし・はかせ 本名/小野正芳)
1962年8月18日生まれ 岡山県出身
86年、ビートたけしに弟子入りし、87年に玉袋筋太郎と浅草キッドを結成。お笑い芸人としてテレビやラジオ、バラエティで活躍するほか、『藝人春秋』『はかせのはなし』『藝人春秋2(上)ハカセより愛をこめて』『藝人春秋2(下)死ぬのは奴らだ』などの著書やライターとして雑誌等にコラムやエッセイを執筆。自身が編集長を務める日本最大級の有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』好評配信中。今春、YouTubeチャンネル『博士の異常なYouTube』を開設、5月には東京・新高円寺にセレクトショップ『はかせのみせ』をオープンした。
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取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一