「闘い方を批判されるより、結果が出せないことのほうが辛いんです。周りに何を言われても自分を貫くことが大事。だからKー1の決勝に行けたし、結果が出れば評価も変わる」
格闘技は死なず! 今年の大晦日、さいたまスーパーアリーナでのビッグイベントが決定した。『DREAM.18&GLORY.4』と題されたこの大会は、日本の総合格闘技団体DREAMと、ヨーロッパ最大のキックボクシング団体GROLYの合体イベント。そんな大会でコメンテーターを務めるのが、元K-1ファイターの武蔵さんだ。03年、04年にK-1ワールドGP準優勝の実績を持つ武蔵さんに、格闘技への思いと〝世界で闘う日本人〟の心意気を聞いた。
「大晦日は特別な舞台。ファンに求められてるのを感じます。『格闘技は死んでないぞ』ってところを見せる、いいきっかけにしたい」
大晦日イベントの目玉は、世界各国の強豪が集う16人トーナメント。その組み合わせを決める記者会見で、武蔵さんは抽選クジを引く大役を担当した。豪華かつ苛酷な対戦が予想されるこのトーナメントで武蔵さんが注目するのは、やはり日本人ファイター。観客の期待を背負い、デカくて強い外国人と闘うための〝武蔵流〟キーワードとは!?
日本代表の2人には、このトーナメントから世界に羽ばたいてほしい。厳しい闘いだからこそ、やり甲斐もあるはず
──今年の大晦日は『GLORY&DREAM』として新たな形でビッグマッチが開催されます。やはり格闘技界にとって大晦日には特別な意味がありますよね。「とりわけ大きいイベントですよね。立ち技も総合格闘技も合体して行う祭典、フェスみたいな感じで。立ち技がロックなら、総合がヒップホップ、みたいな。そういう中で、お互い競い合ってましたね。『Kー1ファイターよりいい試合をしてやる』『総合の選手にインパクトで負けたくない』と。このところ、ファンの人に一番言われるのは『大晦日に見るものがなくなってつまらない』ってことなんですよ」
──大晦日の大会自体はあったんですが、地上波テレビの中継がなかったですからね。
「普段も言われますけど、特に大晦日なんですよ。それだけ特別なものだったんだなって、改めて思いますね。逆に言うと求められてる。今回はGLORYというヨーロッパの大きい団体が大晦日に日本上陸ということで、『格闘技は死んでないぞ』というところを見せるいいきっかけにしたいですね」
──復活の狼煙ですね。今回は地上波がないんですが、ピーター・アーツやセーム・シュルトが出る16人トーナメントもあり、かなり話題になると思います。
「海外の団体で、世界中に中継されますし、選手からすると今まで以上に勝つことに重みがありますね。本当の意味での世界のベルト。僕が現役だったら、絶対に出たかった」
──組み合わせ抽選会では、武蔵さんが選手名の入ったカプセルを引いてトーナメント表が決まりました。責任重大な大役でしたね。
「緊張しましたね。でも、会見で言ったように『自分で引いて言うのもなんだけど、メッチャいい組み合わせになったな』と」
──ズバリ、武蔵さんの注目は?
「日本代表のファビアーノ・サイクロン、羅王丸ですね。これををきっかけに世界に羽ばたいてほしい。世界トップのメンバーが揃って、しかも1日4試合。厳しい闘いですけど、その分やり甲斐はありますから。ファビアーノも羅王丸も勝つのは難しいと思われてるでしょうけど、そこでのし上がってほしいですよね」
──それは、まさに武蔵さんが現役時代にやってきたことでもありますね。
「正直、日本代表の2人が勝てると思ってる人はほとんどいないでしょうね。そういう中で試合をするのって辛いんですよ。でも、そこでどれだけ反骨心を持てるか。『今に見とけよ!』って。僕はずっとそれでやってましたね」
勝てると思われていない中で、いかに反骨心を持つかが大事。現役時代は「今に見てろよ!」って気持ちでずっとやってきた
──ヘビー級の外国人と闘うのって、本当に大変でしょうね。体格差、パワー差がモロに出ますから。「階級制だと似たような体格、体重ですけど、ヘビー級だと無制限ですからね。シュルトなんて身長212センチ、体重も130キロとかある選手がいましたから。日本人としては、すべてにおいて自分が劣っているという前提で闘わなきゃならないんですよ。じゃあどうやって勝つかといったら、自分ならではの持ち味を出すしかない」
──武蔵さんの場合は、それがスピードとテクニックでした。
「相手を撹乱して、しっかりポイントを取っていく。判定でもとにかく勝つ。それが大事でしたね。そういう戦法だと逃げてると思われることもあるんですけど、でも結果を出してナンボの世界ですから。まして大晦日のトーナメントは、1ラウンドが2分と試合時間が短い。選手はアグレッシブに攻めてきますから、その中で真っ向から打ち合っても勝てないと思います」
──「よーいドン」で殴り合ったら、デカくてパワーのある外国人が有利ですよね。
「たとえばシュルトと闘ったら、パンチが届く距離に踏み込むことだけでも大変なんで(笑)逆に一発でももらったら、それだけで危険ですから。ヘビー級の攻撃は当たったら一撃KOが当たり前。倒れないまでもダメージ回復に凄く時間がかかる。そういう中で、自分がどうやれば勝てるのかを、ファビアーノと羅王丸には突き詰めてほしいですね」
──やはり、かつて〝武蔵流〟と呼ばれたスピード&テクニックを見直す必要がありそうですね。
「僕が心掛けていたのは、相手の攻撃をもらわないこと。攻撃をかわせばカウンターのチャンスも出てくる。熱くならずに、相手のどこに隙があるかを見極めるんです。外国人選手のパンチって、ブロックしても効いちゃうんですよ。だからしっかりかわさないと。ましてトーナメントでは、ダメージをいかに少なくして勝ち上がるかが重要ですからね」
──そんな武蔵選手の闘い方には「KOが少ない」という批判もありましたが……。
「勝つためには仕方がなかったですね。批判されることより、結果が出せないことのほうが辛いですし」
──まして相手は世界トップの強豪ばかりでしたからね。
「技術がない段階でデビューして、運良くなのか運悪くなのか勝っちゃって(笑)そこからはもう、試合で経験を積むしかなかったですね。そこで培われたのが、スピードとテクニックの闘い。『試合がつまらない』『もっと倒しにいけ』って言われることもありましたけど、変えるつもりはなかったですね。何を言われても自分を貫く。それがあったからこそ、結果も出せたと思いますね」
僕はスピードとテクニックで世界と闘ってきた。今の選手にも「自分は何が得意なのか」「持ち味は何なのか」を突き詰めてほしい
──「今に見てろよ!」という反骨心、批判されても自分のやり方を貫く……。格闘技だけでなく、一般の仕事や人生そのものにも通じる話ですね。そして、Kー1ワールドGPで決勝進出を果たすと、評価がガラっと変わりました。「そうでしたね。『やっぱり日本人が勝つにはこれしかないよね』って(笑)反骨心を貫いてきてよかったですよ。批判されてブレてたら、決勝には行けなかったでしょうね。もちろん決勝で負けたのは悔しかったんですけど、やってきたことは間違いじゃなかったんだなって。だからどんな人でも、どんな仕事でも『自分は何が得意なのか』『持ち味は何なのか』を考えることは大事だと思います。そして、それを貫くことですよね。結果を出せば、評価は必ずついてくるんで。人に言われた通りにやっても、失敗したら責任を取るのは自分。まして、それが自分に向いてるかどうかも分からないんですから」
──批判されても、最終的に結果を出すためにどうすべきかを考える、と。
「僕はジャパンGP(日本代表決定戦)で何回勝ってもファイトスタイルを批判されたんですよ。でもジャパンGPは世界で闘うための準備だと思ってたんで、耐えられました。ジャパンGPが最高峰ではないので。あくまで最高峰はワールドGPですからね」
──目先の内容ではなく、その先にある結果を見ていた、と。では最後に、ドカント読者である若い世代へのメッセージをお願いします。
「とにかく、なんでもやってみる、チャレンジしてみることですね。今は情報過多で、いろんなことが分かるじゃないですか。だからやる前から勝手に『俺がやったらこんなもんかな。まあ無理だろうな』と想像してしまう。でも、本当の力はやってみないと分からないんですよ。僕だって、腕だめしに空手を始めた時には世界トーナメントの決勝、東京ドームのメインで闘うなんて想像してなかった。どんな夢でも目標でも、とにかく挑んでみてほしいです」
引退から3年が経った今でも、武蔵さんのマインドはやはりファイター。格闘技について語る始めるととにかく熱く、そして説得力抜群! グローバル化する社会にあって、常に〝世界〟と闘ってきた武蔵さんの経験と言葉は、あらゆる分野に通じるはずだ。大晦日の闘いでも、武蔵さんの含蓄ある解説に期待大!
INFORMATION
格闘技イベント『DREAM.18&GLORY4~大晦日 SPECIAL 2012』
INFO
12月31日、埼玉・さいたまスーパーアリーナで行われる大会は「DREAM.18」と「GLORY4」の合同開催に。ヘビー級トーナメント「GLORY4」は歴代K-1王者のアーツ、シュルト、ボンヤスキーら16人が出場して優勝を争う。対戦カードは以下の通り。ピーター・アーツ対ムラッド・ボウジディ、セーム・シュルト対ブライス・ギドン、レミー・ボンヤスキー対フィリップ・ヴェルリンデン、セルゲイ・ハリトーノフ対リコ・ベホーベン、エロール・ジマーマン対ジャマール・ベン・サディック、グーカン・サキ対羅王丸、アンデウソン・シウバ対イゴール・ユルコビッチ、ダニエル・ギタ対ファビアーノ・サイクロン。試合は1R2分の3R制。各Rごとに優劣をつけ、2R連続で取れば勝ちが決定する。決勝のみ3分3R。優勝賞金は40万ドル(約3200万円)。「DREAM.18」には川尻達也、高谷裕之、北岡悟らが出場する。
PROFILE
武蔵(むさし)
1972年10月17日生まれ 大阪府堺市出身
正道会館所属。95年9月デビュー。空手をベースとした強烈な蹴り技を武器に、“世界と戦うサムライ“の異名を取り、K-1ファイターとして活躍。K-1 JAPAN GPの99、00、02、03王者。03年、04年にはK-1 WORLD GP準優勝。09年引退。10年4月には、K-1WORLD GP 2010 IN YOKOHAMAにて引退セレモニーが行われ、引退後は実弟のTOMO氏が代表を務める株式会社パウンドフォーパウンドの専務としてタレント兼実業家の道を歩んでいる。競技を離れると親しみやすい関西弁で、多くのファンを魅了。格闘技界との関わりはもちろんバラエティ番組や映画、ドラマ、CMなどにも多数出演している。
公式HP
公式ブログ
格闘技イベント『DREAM.18&GLORY4~大晦日 SPECIAL 2012』
INFO
12月31日、埼玉・さいたまスーパーアリーナで行われる大会は「DREAM.18」と「GLORY4」の合同開催に。ヘビー級トーナメント「GLORY4」は歴代K-1王者のアーツ、シュルト、ボンヤスキーら16人が出場して優勝を争う。対戦カードは以下の通り。ピーター・アーツ対ムラッド・ボウジディ、セーム・シュルト対ブライス・ギドン、レミー・ボンヤスキー対フィリップ・ヴェルリンデン、セルゲイ・ハリトーノフ対リコ・ベホーベン、エロール・ジマーマン対ジャマール・ベン・サディック、グーカン・サキ対羅王丸、アンデウソン・シウバ対イゴール・ユルコビッチ、ダニエル・ギタ対ファビアーノ・サイクロン。試合は1R2分の3R制。各Rごとに優劣をつけ、2R連続で取れば勝ちが決定する。決勝のみ3分3R。優勝賞金は40万ドル(約3200万円)。「DREAM.18」には川尻達也、高谷裕之、北岡悟らが出場する。
PROFILE

1972年10月17日生まれ 大阪府堺市出身
正道会館所属。95年9月デビュー。空手をベースとした強烈な蹴り技を武器に、“世界と戦うサムライ“の異名を取り、K-1ファイターとして活躍。K-1 JAPAN GPの99、00、02、03王者。03年、04年にはK-1 WORLD GP準優勝。09年引退。10年4月には、K-1WORLD GP 2010 IN YOKOHAMAにて引退セレモニーが行われ、引退後は実弟のTOMO氏が代表を務める株式会社パウンドフォーパウンドの専務としてタレント兼実業家の道を歩んでいる。競技を離れると親しみやすい関西弁で、多くのファンを魅了。格闘技界との関わりはもちろんバラエティ番組や映画、ドラマ、CMなどにも多数出演している。
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Interview&Text/橋本宗洋 Photo/おおえき寿一