「理学療法士1年目の遥と、リハビリに励む柘植がお互いに成長していく物語なんですけど、成長の矛先が違うんです。だから観る人は、自由に感情移入して頂ければと。『一緒にスタートしていこうよ』というメッセージが見どころだと思います」(板橋駿谷)
「ご覧になった方が背中を押されて一歩を踏み出してみようと感じてくださったら、この作品を作った意味があると思っています。他人ごとではなく自分ごとに置き換えて考えられるような作品なので、劇場で観て頂いた後にぜひ、感想を聞きたいです」(落合モトキ)
明日、自分や身の回りにいる大切な人が歩けなくなったら――。そんなことを考えさせられる映画『歩けない僕らは』が11月23日公開。6歳でデビューし映画『桐島、部活やめるってよ』などで知られる落合モトキさんは脳卒中で左半身不随になる難役を、ドラマ「連続テレビ小説 なつぞら」で大ブレイクした板橋駿谷さんは、主人公・遥の先輩で理学療法士役を演じている。共演経験はあるものの本作で初めて同じシーンで芝居をしたという2人が、大盛り上がりで作品への姿勢や役者業の意外な苦労話を笑いながら語ってくれた。
──まずは、共演した感想を教えて頂けますか。
板橋「落合くんは前ご一緒した映画で、めちゃくちゃアッパーでイヤな役を演じたんです。でも、今回のように陰がある役もカッコよくて似合うなと思いました。しかも、陰にもグラデーションをつけていて、すごいなと」
落合「僕、(主人公の遥役を演じた)宇野(愛海)ちゃんとは一切しゃべらなかったから、現場に重い空気が流れていたんです。でも、駿谷くんが笑わせてくれたので一気に場が和みまして。駿谷くんが後輩から慕われる理由が分かります。ムードメーカーで、いい意味で裏切らないというか」
板橋「本当にそうなんです(笑)撮影では悩みや困り事をそれぞれが違うベクトルで抱えているんで、現場を明るくしたいんです。明るいと人ってイメージがいっぱい浮かぶと思っていて、その明るさが失われないように。バカやっているのは俺だけでいいから、皆さんが笑ってくれた分だけ前に進むエネルギーが生まれるように、と」
落合「僕はそこまでできないなぁ」
板橋「やらなくていいと思うよ」
落合「あはは!でも僕は、駿谷くんのような人の“船”に乗っていたい。周りを巻き込めるから」
板橋「一度聞きたかったんだけど、真剣に役作りをしている時に俺みたいな存在って邪魔じゃないの?特に今回みたいな重い役を演じる場合って」
落合「有り難かったです。堕ちる役を演じていると気分も落ちていくだけなんで、癒やされてからもう一度役に向かえるから、すごくうれしかった」
板橋「あ~、よかった!気は遣いましたけど『怒られるんじゃないの!?』というレベルまで騒いだんで(笑)」
──確かに気遣うでしょうね。落合さんが演じた柘植篤志は、脳卒中で左半身不随になるという重い役ですし。
落合「ストーリーも柘植の心境も繊細な上に、柘植のような状況になる人は世の中には絶対にいるわけです。だから撮影中は、常にナーバスな感情を抱えていた気がします」
板橋「分かります。俺自身が前後十字靭帯断裂で両膝をぶっ壊して、理学療法士さんにかかっていた時期があるんで。左が3年前で、舞台中に片脚でジャンプした時に。右が去年で、酔っ払った先輩と後輩が俺に乗ってきて切れちゃったんです(笑)両膝で治療費100万円かかりました」
──余談ですが、劇中で板橋さんが食べていたお弁当箱が小さかったような…。
板橋「よくそんなところまで観てましたね。たぶん、サイズ感。俺のカラダがデカイだけです。撮影当時は体重が85キロで、今は77キロですから。太ったら役(のオファー)がくるかなと思ったら全然こなくて(笑)痩せるしかなくなっちゃったんです。方向性がぐちゃぐちゃですね(笑)」
──作品になぞらえた質問も。仕事をする上での支えは何ですか?。
板橋「俺は、90歳になるおばあちゃんや田舎(福島県)の家族、親戚が喜んでくれることがモチベーションです。亡くなった母ちゃんにもテレビに出ている自分を見せたかったですけど、たぶん(天国で)見てくれていると思うんで。あとは、落合くんや山田裕貴くん、池松壮亮くんとか、作品ごとにお会いできる方々です」
落合「僕は、現実逃避する時間が今のモチベーションを保っている部分があります。一度リセットするために、深夜ラジオを聴くのが好きで。バラエティ番組とかを観て『あ、駿谷くんが出てる』なんて楽しみつつリセットする日もあります。身内に自慢できる役者にはまだなれていないと思うので、もっともっと頑張らないと」
──お仕事のお話も。小誌は求職中の人も読むわけですが…。
板橋「そんな時期いっぱいありましたよ。仕事がないのに『役者って名乗っちゃえ!』って時期が」
落合「僕も。でもその時は、サービス業って名乗っていました。高校は芸能コースがある学校だったのですが周りが役者の話ばかりしていることに違和感があって」
板橋「分かる!俺も場所によっては絶対に役者って名乗らなかったもん。フリーターって言ってたかなぁ。『やりたいこととか、あるの?』って聞かれても、面倒くさそうな人の前では絶対にぼかしてた。普通に人前で『役者です』と言えるようになったの、今年ぐらいですから」
落合「役者って言うと突っかかってくる人っていない?『何に出てんだよ』とか。言うと『あ~、それ観てないわ』って」
板橋「いるいる。『観てないのは自分のせいじゃん!』って話だよね。『俺も昔、役者やってたんだよね』と言う人も多い。23~24歳の頃、ゲイバーでバイトしてた時によく言われた。昔ってことは負け組なのに。ラッパーと同じで、マイクを握っているヤツしか語っちゃいけないのに」
──大変なんですね。それでも腐らずやる気を維持できた秘訣は。
落合「毎日、人と会ってお話することじゃないですかね、誰も認めてくれないからって家にこもっても、何も生まれませんから。だったら人と会って、生き方の刺激を受けたほうがいい」
板橋「それ本当に大事!俺は腐ってもいいと思っていて。でも、ちゃんと意識することが大切なんです。週間や月間で“俺は腐っていますキャンペーン”をやって開き直ると、人に会いに行けるんで」
──勉強になります!最後にお2人から映画の魅力をぜひ。
板橋「宇野ちゃんが演じた遥と、落合くんが演じた柘植がお互いに成長していく物語なんですけど、成長の矛先が違うんです。だから観る人は、自由に感情移入して頂ければと。『一緒にスタートしていこうよ』というメッセージが見どころだと思います」
落合「ご覧になった方が背中を押されて一歩を踏み出してみようと感じてくださったら、この作品を作った意味があると思っています。他人ごとではなく自分ごとに置き換えて考えられるような作品なので、劇場で観て頂いた後にぜひ、感想を聞きたいです」
■映画『歩けない僕らは』
INFO&STORY
回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士・宮下遥(宇野愛海)は、慣れない仕事に戸惑いながらも、同期の相馬幸子(堀春菜)や彼氏の翔(細川岳)に励まされながら患者たちと触れ合う日々を送っている。担当していたタエ(佐々木すみ江)が退院し、新たに担当したのは帰宅途中に脳卒中を発症し、左半身が不随になった柘植篤志(落合モトキ)だった。遥が初めて入院から退院までを担当する患者となった柘植から、元の人生には戻れるか聞かれるが、何も言葉を返せない。課長の日野智久(山中聡)とリーダー田口勝(板橋駿谷)の指導を受け、遥は柘植を取り巻く現実と向き合っていく……。
CAST&STAFF
出演/宇野愛海・落合モトキ・板橋駿谷・堀春菜・細川岳・門田宗大・山中聡・佐々木すみ江
監督・脚本・編集/佐藤快磨
配給・宣伝/SPEAK OF THE DEVIL PICTURES
11月23日(土・祝)より新宿K’s cinemaにて公開ほか全国順次
公式HP
(C)映画「歩けない僕らは」
落合モトキ(おちあい・もとき)
1990年7月11日生まれ 東京都出身
主な出演作に映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』『台湾より愛をこめて』『私の人生なのに』『HiGH&LOW THE WORST』、ドラマ「トレース 科捜研の男」「パーフェクトクライム」「最上の命医2019」などがある。
公式Instagram
板橋駿谷(いたばし・しゅんや)
1984年7月1日生まれ 福島県出身
主な出演作に映画『美しい星』『おじいちゃん、死んじゃったって。』『ギャングース』、ドラマ「連続テレビ小説 なつぞら」「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」などがあり映画、ドラマ、舞台、バラエティと幅広く活躍。
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