プロレス界のレジェンド武藤敬司さんがプロデュースする大会『プロレスリングマスターズ』が話題を呼んでいる。長州力、藤波辰爾ら一時代を築いたベテランが集結するこの大会。2月16日の後楽園ホールでは蝶野正洋率いるTEAM2000も登場!レジェンドならではの魅力と、日本、アメリカを股にかけて活躍、新日本プロレスを皮切りに全日本プロレスで社長を務め、WRESTLE-1(W-1)を旗揚げするなど幅広いキャリアからくる〝プロ論〟を武藤さんに伺いました。
お客さんの優しい目に乗せてもらいながら、こっちは〝過去の武藤敬司に負けてたまるか〟ってつもりでやるけどね。そうじゃないと退化しちゃうから
キャリアが長い選手にはそれぞれの「印籠」がある
──武藤さんプロデュースの『プロレスリングマスターズ』は毎回、お客さんの熱気が凄いですね。「やっぱりレジェンドと呼ばれるレスラーに思い入れのある人も多いから。お客さんは主に40代、50代の男性。その人たちが二十歳だった頃に戻れる興行なのかな」
──若い頃に夢中だった人たちと再会できるという。
「当時の思い出に浸る人もいるんじゃない?〝あの頃は失恋して〟とかね。逆に〝このオッサンも頑張ってるし、俺もまだまだ〟って思う人もいるだろうし」
──またプロレスには、ベテランにしか出せない味もあるのかなと。
「キャリアが長くなると、選手それぞれが水戸黄門の印籠みたいなものを持ってるからね。それを見せることでお客さんが納得してくれる。それは技であったりキャラクターだったり、ちょっとした動きだったり」
──入場曲もそうですよね。
「俺も昔の『HOLD OUT』に戻してるんですよ。原点回帰じゃないけど、新しい曲を作ってもらえないんで(笑)」
──ファンにも昔の曲が嬉しいんですけどね(笑)リングに上がってくれること自体も「ありがたいなぁ」という。今回はTEAM2000に蝶野正洋さんも加わっての登場が話題です。
「蝶野はセコンドだけどね。でもチームの創始者としていてもらわないと。nWoもやりたかったけど、これはなかなかWWEの許可が出ないんだよね」
──蝶野さんが当日、どんな感じで動くのかは楽しみです。
「どうなるか分かんないですよ、ナマモノだから。ただ入場曲が鳴って花道から出てきた時に、何かしらの〝空間〟ができ上がると思うんで。そこでどうなるのかなって思ってますね」
──蝶野さんに声を掛けた時の反応はいかがでしたか?
「最初に話した時は、どうせやるなら一点では終わらせたくないって言ってたね。せっかくやるならって。俺のリングでそこまでたびたびできるかは分からないけど。いや、実際いつも崖っぷちなんですよこれ」
──マッチメイクですか?
「いないんだもん、レジェンド選手が。みんな死んじゃうからさぁ(苦笑)前回も(ドン)荒川さんを呼ぼうとしたんだけど、体調が優れないと。その後、亡くなられちゃってね」
──もちろんケガもあるでしょうし、引退されてる方もいますし。
「レスラーは引退したって戻ってくりゃいいんだよ(笑)『プロレスリングマスターズ』に関しては、だよ。団体じゃないし、このリングで飯食おうっていうんじゃないんだから。それは復帰じゃないんだから」
──あくまでお祭りというか。
「今のプロレスを壊すつもりもないしね。邪魔はしないし、否定もしないから。まあ馳だって長州さんだって一回、引退してるしね」
──長州さんや藤波さんは武藤さんにとっても先輩になりますが、お互いベテランになってみると会った時の感じも違いますか?
「いや、30年前そのまんまですよ(笑)まったく変わらない。お互いそれぞれの道で分かれてやってきても、会ったら30年前そのまんま。長州さんはちょっと丸くなったけどね」
──あ、そうなんですか。
「そりゃバラエティ(番組)出てるくらいだから。昔だったら絶対出てないでしょ。プロデューサーからするとベテランとか先輩とか、一番めんどくさいよ(笑)」
──めんどくさい(笑)
「長州さんも、練習して自分が納得いくコンディションにならないとOKくれないから。でもこっちはカード発表しなきゃいけないんだけどって。そこはギリギリのところまで話し合いましたよ。大会を平日開催にしてるのも、あえてなんですよ。土日はどこかしらの団体が興行やってるから」
「コイツを雇ったら絶対儲かる」そんな存在になれたら強いよ
──バッティングを避けていると。「他の団体に所属してる選手もいますからね。平日のほうが出てもらいやすいので」
──平日興行で会社帰りの、スーツ姿の男性客も多いですよね。
「そのお客さんたちが優しいんだよね。動きが昔と同じってわけにはいかないんだけど、それでもオッサンたちが一生懸命やってると許してくれるっていうかね」
──それはそうなりますね。見られるだけでありがたいですから。
「お客さんの優しい目に乗せてもらいながら、こっちは〝過去の武藤敬司に負けてたまるか〟ってつもりでやるけどね。そうじゃないと退化しちゃうから。変なヤジも飛ばないし、いい雰囲気でやれる興行だと思いますよ。お客さんの年齢層も高いから、上品だっていうのもあるかな」
──そのあたりも〝現在〟のプロレスとは違うものになると。以前、武藤さんは「俺しか持ってないパスポートがある」と、他団体参戦について語られたことがありました。
「Wー1ではどうしても浮いちゃうというか、孫みたいな世代の選手が中心になってきてるから。俺なりのテーマ、刺激がほしいなと。案の定、そう言った途端にいっぱいオファーがきちゃって。ノアに出てDDTに出て、ドラゴンゲートも。アメリカからもいっぱいオファーが来てるんですよ」
──「パスポート」の話にもつながりますが、武藤さんの豊富な経験が今につながっている面は大きいですか。新日本、アメリカで活躍し、全日本で社長を務め、Wー1旗揚げ……と。動いてきたからこそのキャリアというか。
「それはありますねぇ。これは自分にとって財産ですよ。上の世代でいったら(アントニオ)猪木さんからハルク・ホーガンともやったし、リック・フレアー、いろんな世代の選手とやって、果てはインリン(・オブ・ジョイトイ)とかね(笑)」
──ありましたね、『ハッスル』で。
「俺ほどたくさんの大物とやってきたレスラーは、現役選手の中で他にいないんじゃないかな。まず猪木さんとやったことのある選手がほとんどいないもんね。前田日明、高田延彦……やったことない大物って、(ジャイアント)馬場さんとジャンボ鶴田くらいかなぁ。アメリカでもいろんな選手とやってきたし、その中での自慢の一つは、スティーブ・オースチンと何回もやってるけど負けたことがないんですよ」
──WWEでトップを張ったオースチンと。
「俺がやったのはWWEの前だけどね(笑)でも自慢の一つ。WWEっていえば、ザ・ロックの親父さんともやったしね」
──そういういろんな経験っていうのが、プロとしての強みにもなるわけですよね。
「あ、これ求人誌なんだよね。そう考えると、俺の経験は参考になるかなぁ(笑)だって俺、スペシャルだよ」
──一級品すぎて比べないほうがいいかもしれない。
「参考にならねえよ(笑)でもやってきたのは、一般の仕事とも共通するかな。それはお客さんを満足させるっていうことと、プロモーター、雇い主を潤わせるっていうこと。〝コイツを雇ったら絶対に儲かる。損はしない〟って、そんな存在になれたら強いよ」
──だからこそ、ベテランのレスラーになってからもファンを熱狂させられると。
「会社のブランドじゃなくて、自分自身に〝顧客〟がつく生き方だよね。それをしてきたのがレジェンドレスラーなんだと思う。まあそんな人間、会社は嫌がるかもしれないけどさ(笑)」
INFORMATION
■『PRO-WRESTLING MASTERS』
【INFO】
2月16日(金)東京・後楽園ホール
開場/18:00 開始/19:00
☆対戦カード(怪我等の理由により選手が変更になる場合があります)
武藤敬司&藤波辰爾&長州力&獣神サンダー・ライガーvs天山広吉&小島聡&ヒロ斎藤&AKIRA with蝶野正洋
グレート小鹿&タイガー戸口&百田光雄vs越中詩郎&青柳政司&斎藤彰俊
藤原喜明&高橋義生&冨宅飛駆vsリッキー・フジ&黒田哲広&保坂秀樹
ウルトラセブン&獅龍vsブラックタイガーV&ブラックタイガーVII
佐野巧真vs大矢剛功
公式Twitter
PROFILE
武藤敬司(むとう・けいじ)
1962年12月23日生まれ、山梨県出身。
新日本プロレスで84年にデビュー。抜群のレスリングセンスと華やかさを誇り、橋本真也、蝶野正洋とともに闘魂三銃士として活躍、アメリカでもグレート・ムタとしてトップに。02年、全日本プロレスに移籍し、社長就任。13年には新団体WRESTLE-1を旗揚げ。現在は会長職に就く。
公式ブログ
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■『PRO-WRESTLING MASTERS』
【INFO】
2月16日(金)東京・後楽園ホール
開場/18:00 開始/19:00
☆対戦カード(怪我等の理由により選手が変更になる場合があります)
武藤敬司&藤波辰爾&長州力&獣神サンダー・ライガーvs天山広吉&小島聡&ヒロ斎藤&AKIRA with蝶野正洋
グレート小鹿&タイガー戸口&百田光雄vs越中詩郎&青柳政司&斎藤彰俊
藤原喜明&高橋義生&冨宅飛駆vsリッキー・フジ&黒田哲広&保坂秀樹
ウルトラセブン&獅龍vsブラックタイガーV&ブラックタイガーVII
佐野巧真vs大矢剛功
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PROFILE
武藤敬司(むとう・けいじ)
1962年12月23日生まれ、山梨県出身。
新日本プロレスで84年にデビュー。抜群のレスリングセンスと華やかさを誇り、橋本真也、蝶野正洋とともに闘魂三銃士として活躍、アメリカでもグレート・ムタとしてトップに。02年、全日本プロレスに移籍し、社長就任。13年には新団体WRESTLE-1を旗揚げ。現在は会長職に就く。
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取材・文/橋本宗洋 撮影/近藤 誠