「魔性のオンナって、男なら誰しもやられますよ。映画で共演した猫もそうですけど、こっちが知らん顔してほかのことに熱中してると横におったり、つれないなぁ~と思ってたのに急に振り向かれたら、たまりません!」
「動物と人間の共同生活」を描き、着実に固定ファンを増やしてきた動物映画シリーズ第6弾『くろねこルーシー』が10月6日に公開! 主役の甲斐性なし、オーラなし、妻子とは別居中という切なさを背負った占い師を演じたドランクドラゴンの塚地武雅さんに、密着&独占インタビューをしてきました!
大河ドラマ「平清盛」や映画「間宮兄弟」などで俳優としての実力と人気を着々と伸ばし、オリコンの“俳優芸人ランキング”で堂々2位にランクインした塚地武雅さんが、「ハンサム★スーツ」以来、4年ぶりに小誌二度目の登場! 単独初主演映画『くろねこルーシー』の話はもちろん、普段は聞く機会が少ない芸人として売れなかった時代のエピソードや人生観も語っていただきました。芸人のみならず俳優としても本領を発揮する塚地さんの人間性に迫ります!
自分で書きためたネタ帳を見た瞬間お笑いがやりたいと気づいた
──前回の取材前に某女性タレントが塚地さんのファンだと伝言したこと、覚えてますか?「あぁ、あった、覚えてますよ。イケメンでもない僕を好きと言ってダシに使う、〝好感度上げのパターン〟ですよね。そういう魔性の、猫っぽい女の子は大好きですけど、信用できませんね」
──魔性の女、好きなんですか。
「男なら誰しもやられますよ。映画で共演した猫もそうですけど、こっちが知らん顔してほかのことに熱中してると横におったり、つれないなぁ~と思ってたのに急に振り向かれたら、たまらないですよ。好き好きって言われ続けると、やっぱりこっちも安心してしまいますからね。撮影に入る前までは犬派でしたけど、この映画で初めて猫の良さを知りましたね」
──猫の良さとは?
「慣れないうちは気まぐれで側寄ってこないし抱きかかえても嫌がりますけど、日を追うごとにこう、何と言うか、心を預けてくれるようになるところですよね。最初、スチール撮影をした時は抱き抱えると暴れ回ってましたけど、クランクアップした時は預けてくれる感じが伝わってきたから、たまらなく愛おしかったですね」
死ぬときに後悔したくないっていうのも人生を方向転換させるきっかけでした
──それって塚地さんが映画で演じた役と似ていますね。「そうなんですよ。役柄自体も最初は猫を忌み嫌っていて、とあるきっかけで黒猫2匹を飼い始めて、でも飼ったことがないから可愛がり方もわからへんけど、だんだん仲良くなっていくっていうのは、時系列的にも一緒。映画の通りというか、嘘のない感じです」
──役とご自身の共通点は。
「自信がないところはそっくりというか、僕自身ですね。猫の飼い主が現れて、返さなくちゃいけないのに奥さんに預けちゃうっていう、ちょっと正しくないことをしちゃうところも、僕でも同じ行動に出たと思いますし。役作りをした感覚がないから、役者として何もしていないんじゃないかなぁ」
──自信がないところって…役者として評価されているのに?
「いやいや、自信なんてあるわけないやないですか。街中を歩いてると顔を見ただけで笑われますからね。『塚地だ、ウケる~!』って。自信は前よりなくなったかもしれません」
演じた役は僕自身そのもの役者として何もしていない
──ですが今回は読者向け人生指南もして頂かないと。塚地さんは会社員を退職してお笑い芸人になっていますよね。経緯は?「みんなどっかで本当の気持ち、やりたいなと思ってたことをやらなかったりして、自分をごまかしたりするじゃないですか。僕自体も会社員時代はお笑いの世界に憧れてるだけで、仕事を続けていくうちに夢のことなんて忘れてくんだろうと思ってたんです。で、仕事のことを書こうと手帳を買ったんですけど、空き時間を見つけちゃネタを書いてて、それが日課みたいになって。ある日、自分のデスクの上を見たらその手帳が2冊あって、『何で僕はこの意味のない手帳を2冊分も書いた?』と思って、本当はお笑いがやりたいんやな、ということに気づいたんです。あの2冊の手帳が目に飛び込んだ瞬間が、動き出すきっかけでしたね。僕はたまたまついてて、こういう形になってますけど、きっかけが分かれば誰でも動き出せるんじゃないでしょうか。あともう1つ、死ぬ時に後悔したくないっていうのも、人生を方向転換させるきっかけでしたね」
──というのは?
「たとえばやりたいことを我慢して会社勤めを続けて、結婚して奥さんと子ども、孫に病院のベッドで看取られて死んでいくとするじゃないですか。その時、僕は最後の力を振り絞って、『オレ、本当はお笑い、やりたかってん!』と最後にグチを吐露して、みんなに迷惑をかけて死ぬなと思ったんですよ。でも、やってみてアカンかったらグチらへんやろうし、アカンかったなーと分かるためには、やってみないと分からない、みたいな感覚もあったんですよ」
──お笑いの世界は生き残るのが大変ですよね…。
「自分らと同じ年に養成所に入った人たちは全員辞めて、残ったのは結局僕ら一組だけですからね。高校を卒業してすぐこの世界に入ってたら、ダメだったら別の仕事を探そうみたいな遊び感覚だったかもしれませんけど、僕は逆だから意識が違ったのかもしれませんね。好きなことができてるだけで楽しかったから、最悪食えなくたっていいや、って気持ちでした。借金も増えましたけどね」
「演じた占い師が自分に自信がないところはソックリというか、僕自身ですね。自信なんてあるワケないやないですか。街中を歩いてると顔を見ただけで笑われますからね。『塚地だ、ウケる~!』って。 自信は前よりなくなったかもしれません…」
元気が出る生活に張りもももクロが僕の生き甲斐
──当時アルバイトは?「養成所に入った1~3年目って、バイトをする時間がなかったんですよ、逆に。事務所が開催するノーギャラのライブが月15日ぐらいあって、ほかの事務所のライブにもお呼ばれしてネタ見せをして、ネタを作ったり練習すると、月のうち休みがほとんどない状態。だから借金しか方法が浮かばなかったんですよね、当時は」
──ちなみに借金の最高金額は。
「消費者金融4社からトータルで200万ぐらい。一般的に、サラリーマンが借りたら返せないといわれてる金額です(笑)利子分だけ遅延しないで返済してると、急に限度額が上がるんですよ。で、『あと20万円借りられます』と通知が来ると、感覚がマヒしてきて、貯蓄額じゃないのに『やった!』って、めっちゃ喜んでしまったりね。その結果が200万。あぁ僕はもう終わったな、返せる日は来ないんだろうなと思った日もありましたね」
──現在は完済しましたよね?
「しましたねぇ。最後はカードを会社へ返却に行くわけですよ。そこで目の前で、『このままカードを残しておくこともできますし』と言われて、めっちゃ迷いましたけどね。『う~ん、もしかしたら来月、足りなくなって借りるかもしれへんし』という悪魔の囁きを振り切って、『いや、切ってください!!』とお願いしたのはハッキリと覚えてますね」
夢を叶えたいなら友だちと話をしてちっこい夢を辿り職業につなげよう
──その苦労が花開いたわけですね。では、塚地流の夢の叶え方は。「友だちと話すことやと思いますね。若い人は自分に何ができるかわからへん場合もあるやろうから、知らない知識を得て夢をはっきり描くためには、友だちと話すことが一番かな、と。たとえば石のデザインをしたいとか、そういうちっこい夢を辿って行ったら、デザイナーとか建築士っていう職業につながるかもしれないやないですか。職業なんて言ったもん勝ちですから、たとえば僕が今の仕事に就いていなくて人を笑わせることが好きなら、スマイルコーディネーターって名乗りますよ。職業なんて、そうやって自分で名付けちゃっていいんですよ。でも、そこに辿りつくためには友だちと話しながら〝好き〟を見直さないと」
──ありがとうございます。最後に映画にちなんだ質問を。映画同様、今日よりちょっとだけ素敵な明日にするために塚地さんが心掛けていることは。
「僕、楽しみにしてるイベントがあるんで、逆算してその日まで頑張るんです。これで、元気が出るし生活に張りも出ますね」
──楽しみにしているイベント?
「僕、ももクロが好きでね。毎日DVDを観てイベントに備えてます。夏待ちもしたりするんで僕、社会人になって初めて四季を感じてますよ、幸せですねぇ(笑)」
テレビで見せているのと同じ人当りのよい、柔らかな物腰で苦労話や人生の転機を笑いを交えて語ってくれた塚地さん。取材中に幾度も「自信がない」と語っていましたが、役者として世間的に高評価を得ていることは明らか。本作のみならず、今後の役者としての仕事にも大・大・大期待です!
INFORMATION
映画「くろねこルーシー」
INFO&STORY
迷信を信じ、縁起を担いでばかりいる気の小さい占い師・鴨志田賢は、妻の幸子と5歳の息子・陽と別居し、わびしい一人暮らしを送っていた。そんなある日、鴨志田の前にルーシーという名の黒猫が現れ、2匹の子猫を置き去りにする。仕方なく子猫の世話をすることになった鴨志田だったが、次第に運勢が上向きになり始めて…。黒猫を飼い始めたことで事態が好転してく男の姿を描いたテレビドラマ「くろねこルーシー」の劇場版。ドラマ版主人公・鴨志田陽の父親を主人公に、妻子に見放されたダメ占い師が、2匹の幼い黒猫に励まされ、前向きになっていく姿を描く。
CAST&STAFF
出演/塚地武雅・安めぐみ・大政絢・濱田マリ・山本耕史(特別出演)・京野ことみ(特別出演)・佐戸井けん太・生瀬勝久ら
監督/亀井亨
製作総指揮/吉田尚剛
企画・脚本/永森裕二
配給/AMGエンタテインメント
公式HP
10月6日(土)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
(C)2012「くろねこルーシー」製作委員会
PROFILE
塚地武雅(つかじ・むが)
1971年11月25日生まれ 大阪府出身
鈴木拓とお笑いコンビ・ドランクドラゴンとしてデビュー。「はねるのトびら」「エンタの神様」など多くのテレビ番組に出演し人気を集める。06年、森田芳光監督の映画「間宮兄弟」に主演し、第30回日本アカデミー賞新人俳優賞、第49回ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど俳優としても着実にキャリアを重ねている。主な出演作品にテレビドラマ「裸の大将」シリーズ(フジテレビ)「シバトラ~童顔刑事・柴田竹虎~」シリーズ(フジテレビ)「ハンチョウ」シリーズ(TBS)、映画は「キサラギ」「ハンサム★スーツ」「交渉人 THE MOVIE」「高校デビュー」「ひみつのアッコちゃん」「グッモーエビアン!」などがある。NHK大河ドラマ「平清盛」、テレビ朝日「ブロサー」出演中。
公式HP
映画「くろねこルーシー」
INFO&STORY
迷信を信じ、縁起を担いでばかりいる気の小さい占い師・鴨志田賢は、妻の幸子と5歳の息子・陽と別居し、わびしい一人暮らしを送っていた。そんなある日、鴨志田の前にルーシーという名の黒猫が現れ、2匹の子猫を置き去りにする。仕方なく子猫の世話をすることになった鴨志田だったが、次第に運勢が上向きになり始めて…。黒猫を飼い始めたことで事態が好転してく男の姿を描いたテレビドラマ「くろねこルーシー」の劇場版。ドラマ版主人公・鴨志田陽の父親を主人公に、妻子に見放されたダメ占い師が、2匹の幼い黒猫に励まされ、前向きになっていく姿を描く。
CAST&STAFF
出演/塚地武雅・安めぐみ・大政絢・濱田マリ・山本耕史(特別出演)・京野ことみ(特別出演)・佐戸井けん太・生瀬勝久ら
監督/亀井亨
製作総指揮/吉田尚剛
企画・脚本/永森裕二
配給/AMGエンタテインメント
公式HP
10月6日(土)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
(C)2012「くろねこルーシー」製作委員会
PROFILE
塚地武雅(つかじ・むが)
1971年11月25日生まれ 大阪府出身
鈴木拓とお笑いコンビ・ドランクドラゴンとしてデビュー。「はねるのトびら」「エンタの神様」など多くのテレビ番組に出演し人気を集める。06年、森田芳光監督の映画「間宮兄弟」に主演し、第30回日本アカデミー賞新人俳優賞、第49回ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど俳優としても着実にキャリアを重ねている。主な出演作品にテレビドラマ「裸の大将」シリーズ(フジテレビ)「シバトラ~童顔刑事・柴田竹虎~」シリーズ(フジテレビ)「ハンチョウ」シリーズ(TBS)、映画は「キサラギ」「ハンサム★スーツ」「交渉人 THE MOVIE」「高校デビュー」「ひみつのアッコちゃん」「グッモーエビアン!」などがある。NHK大河ドラマ「平清盛」、テレビ朝日「ブロサー」出演中。
公式HP
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一