ソロキャンプYou Tuber、芸人、ベーシスト――。さまざまな顔を持つヒロシさんが今月の〝パイセン〟ゲスト。「ひとりぼっちが最高」と断言する氏がハマっているソロキャンプの魅力や動画をYou Tubeにアップした経緯、好評発売中の最新著書『ひとりで生きていく』に込めた思いなどを聞きました。ひとりで生きているからこそ得られた仕事観は、独身でもパートナーがいても共感+学び+開眼する人が多いのではないでしょうか。
食べるための仕事プラス、You Tubeなどのネットを駆使して自分の人生をハネさせる行動を起こしたほうが、人生は開けていくと僕は思います
人生の責任は自分でとるからこそひとりぼっちは最高の生き方です
──15年にソロキャンプYouTuberとして活動を開始して、登録者数は56.3万人(12月3日現在)。人気が爆発していますね。「当初は、ここまで増えることも、仕事につながるとも想像していませんでした。最初はバイきんぐの西村(瑞樹)くんやじゅんいちダビッドソンさん、うしろシティの阿諏訪くん、ベアーズ島田キャンプくん…他にも多々いる芸人のキャンプ仲間(焚火会)と、キャンプへ行けない日に居酒屋で観るための動画を撮ったことがきっかけなんです。言ってみれば、結婚式で流すプロフィールムービーのような、自分たち用の〝思い出動画〟。他の人が観ても、誰も面白いとは思えないような内容です。アップしても誰も観ないだろうと予想していたのですが、なぜか少しずつチャンネル登録者数が増えていきました。加えてキャンプブームが到来したので、一気に増えたんだと思います」
──その現状に「復活」「再ブレイク」と言われることに対して、ご自身はどう捉えていますか?
「テレビに出ていた頃はよく『再起を懸けてネタを披露!』とか紹介されていましたし、マスコミが分かりやすいキャッチコピーをつけたがることを理解した上で言わせて頂くと、僕の心には何も響きません。確か以前取材して頂いた時(13年9月16日発売号で今回は6年3ヶ月ぶり)は、事務所から独立して個人事務所を立ち上げたばかりでした。当時の目標が、僕と社員とマネージャーが、普通よりも少し高いぐらいの給料をもらえること。あの頃よりは多少マシになりましたし、僕自身は23歳でデビューして47歳になった現在もずっと活動を続けてきているので、『復活』という役回りは違うのではないかな、とも感じますし。メジャーなお笑い市場である、テレビの世界で踏ん張る芸人さんのことは尊敬していますけど、僕は『置かれた場所で咲きなさい』と言われても正直、しんどいんです。好きなことをして生きていこうとすると、人にはワガママだと思われがちだし、僕も完璧には実現できていませんが、やっぱり好きなことをして生きていきたい。だからキャンプの仕事や登録者数が減っても、今のところは全く飽きる気配がないので、続けていくでしょうね。趣味として。注目して頂ける分、簡単にマウントを取ろうとする人も増えますが」
──(笑)そこまでヒロシさんを魅了するソロキャンプに醍醐味は。
「1人ですごすからこそ得られる、圧倒的な自由です。行く時間も帰る時間も、テントや寝袋、食材の準備も食べる時間や寝る時間も自分次第。よく『ソロキャンプなのに、何人かと一緒に行っているじゃないですか』というコメントを頂くんですけど、仲間全員が自立しているんです。集合時間や帰る時間がバラバラで、『なんで先に帰るんだ』なんて言う人はいません。食材も自分の分のみ持ってきて、テントやハンモックも各々が張る。ソロキャンパーが集まっただけで、基本的には1人なんです。これが集団だと、どうなるか分かりますか?集合と解散時間、食事や寝る時間まで自分の意思ではなくすべて多数決で決められてしまう。キャンプが趣味だと言うと、バーベキュー好きだと思われますが、僕は集団バーベキューも嫌いなんです。気が利くフリをした焼き物担当者に食材を取り分けられても、『今は食べたくないです』と言いづらい、あの雰囲気が……」
──分かります…(笑)
「本当ですか?しかもグループキャンプのオンシーズンは夏。グループだと、1つのテントで全員が寝るのがオーソドックスですよね。もし、山へ行くまでに汗をかいているはずのおっさんたちが、ビニールハウスと変わらない温度の中で何人も一緒に床を並べるとしたら、地獄だと思います」
──あはは!だから1人がいいと。
「そう実感したのは、昔ハマッていた釣りの影響もあります。知り合いが誰もいない釣り場で僕だけが安い竿で魚を釣り上げたら、見ず知らずの人たちがワラワラと近づいてきたんです。そして『よく釣れたね』と、上から目線で言う。僕からすれば『あなたは高価な釣り道具を使っても釣れなかったんですよね?』という感覚だけど、いちゃもんをつけてくるんです。趣味に対して文句を言われたくない。1人で楽しめば周りの雑音を聞かなくてもすむから、山を購入したんです」
──今年9月に購入したとか。
「ずっと夢だったんです。川が流れているから魚がいるんじゃないかとか、キノコが栽培できるんじゃないかとか、妄想を膨らませています。47歳で独身ですけど、山を買ってすごくときめいています。今が青春、みたいな感じですね。僕以外は人が入って来ないから、釣りの時のように赤の他人に口出しされることも皆無です。『人は人、自分は自分』という、自分なりの美学を趣味に反映することがやっとできています」
──その美学は、仕事においても活かせるものでしょうか。
「もちろんです。文句を言ってくる人の指示に従って失敗しても、相手は何も保証してくれませんよね。自分が考えたプランを実行して失敗したなら納得できますけど、他人に強要されるとポテンシャルを100%発揮できない上に、失敗した時のダメージも重いじゃないですか。他人に期待したからこそ、他人に絶望することになるので。他人は無責任で結局、人生の責任は自分で背負うことになる。ストレスの根源は大抵が人間関係なので、だからこそ、ひとりぼっちは最高なんです」
『ひとりで生きていく』は『人生詰んだ』と思う人に向けて書いた
──ご著書『ひとりで生きていく』の中にもまさに今のような、人生に迷っている人たちを勇気づける金言が並んでいました。「拙著の中に何度か出てきますが、僕は『人生詰んだ』と思っている人に向けて書いたつもりです。僕自身がフリーター生活を経験して分かったことですが、最初から好きなことだけをして生きていくのはムリなんですよね。でも、生活のために働くのは大事なことだけれど、楽しくはない。生きるためだけに仕事をして、家に帰って食事をして寝て、また翌日仕事へ行く…という生活の繰り返しでは、何も生み出せませんし。だから、『人生詰んだ』とネガティブになっている人にこそ、まずはお金が掛からず楽しめる趣味を見つけてほしいと思っています。僕は小学2年生の頃、親に連れて行ってもらったキャンプでしたが、学生時代を掘り起こすとコスパのいい趣味を見つけられるかもしれません。そして、その趣味を見つけたら自分の人生をハネさせるために動画を投稿してみる。ネットが普及した今は自身の境遇を嘆く暇があるなら、自分が惨めにならない環境作りを模索できるという逃げ道があります。有り難いことに動画が人気になれば、YouTubeはお金を払ってくれるので個人的にオススメなんです」
──ヒロシさんは芸能人だから成功できたと言われませんか?
「『テレビに出ていたから』と言われることはありますけど、最初は僕自身を動画に映していませんでしたしタレントは少数派。しかも、ほとんどの人気YouTuberは一般人です。『自分なんて…』と考えたり、立ち位置に文句を言って躊躇する人は、自分が成功するイメージを描けていないのかもしれませんね。動画の投稿内容は何でもいいんです。ゲーム実況でもいいし、趣味が見つからなければ生活のためにしている仕事のことでもいい。昔、ビルの掃除バイトをしていたんですけど、一番下っ端で床にこびりついたガムをコテで剥ぐ〝ガム剥ぎ〟が役目でした。断定はできませんが、ひたすらガムを剥ぐ作業が誰かに刺さるかもしれない。動画投稿は恥ずかしいと思う人が大半だと思いますけど、恥ずかしいなら自分を映さなければいいし、登録者数が増えなかったらやめて、別の策を試してみればいい。YouTubeではないにしても、食べるための仕事プラス、自分の人生をハネさせる行動を起こしたほうが、人生は開けていくと僕は思います」
INFORMATION
群れない、媚びない、期待しない。絶望せずに生きる、独り身社会の処方箋。つながらずに生きるのは、こんなにラクで素晴らしい。YouTube「ヒロシちゃんねる」チャンネル登録者数56万超!今、ヒロシが注目されている理由が、ここにある!!<50歳、未婚。彼女、友達なし>そんなヒロシが、群れずにつながらずに生きることが、どんなにラクで、楽しいものか――を明かす。
廣済堂出版より好評発売中。1430円(税込)
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PROFILE
ヒロシ
1972年1月23日生まれ 熊本県出身
九州産業大学卒。福岡でお笑いコンビ・ベイビーズとして活動。上京後、解散。食いつなぐため29歳から31歳まで、歌舞伎町でホストの職に就く。ただ夢を諦めることができず、この時期に“ヒロシ”が誕生。その後、ピン芸人として「ヒロシです。」のフレーズで始まる自虐ネタで大ブレイク、以降、お笑い活動のほか俳優、ラジオパーソナリティ、執筆活動など幅広い分野で活躍。近年では、趣味であるソロキャンプ動画の撮影編集を行うYoutube「ヒロシちゃんねる」の登録者が50万人を突破するなど人気を集める。著書はほかに「ヒロシです。」「ヒロシです。2」「沈黙の轍 ずんだれ少年と恋心 」「ヒロシです。華も嵐ものり越えて」「ネガティブに生きる。ヒロシの自虐的幸福論」「働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける」など。12月31日(火)23時からBS朝日「迷宮グルメ 異郷の駅前食堂 年越しスペシャル」が放送。
公式Twitter 公式Instagram
ヒロシ
1972年1月23日生まれ 熊本県出身
九州産業大学卒。福岡でお笑いコンビ・ベイビーズとして活動。上京後、解散。食いつなぐため29歳から31歳まで、歌舞伎町でホストの職に就く。ただ夢を諦めることができず、この時期に“ヒロシ”が誕生。その後、ピン芸人として「ヒロシです。」のフレーズで始まる自虐ネタで大ブレイク、以降、お笑い活動のほか俳優、ラジオパーソナリティ、執筆活動など幅広い分野で活躍。近年では、趣味であるソロキャンプ動画の撮影編集を行うYoutube「ヒロシちゃんねる」の登録者が50万人を突破するなど人気を集める。著書はほかに「ヒロシです。」「ヒロシです。2」「沈黙の轍 ずんだれ少年と恋心 」「ヒロシです。華も嵐ものり越えて」「ネガティブに生きる。ヒロシの自虐的幸福論」「働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける」など。12月31日(火)23時からBS朝日「迷宮グルメ 異郷の駅前食堂 年越しスペシャル」が放送。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一