モリのいる場所
名優・山崎努と樹木希林が円熟の夫婦役
今も人々を魅了する画家の平穏な日々1930年代、豊島区のある地域に、若い芸術家たちが集まるアトリエ群があった。昼は製作に打ち込み、夜は池袋に繰り出して芸術論を戦わせる、そうした雰囲気を「池袋モンパルナス」と呼んだ。
活躍した芸術家の中で、今でも彼の偉業をたたえた美術館が残る男がいる。画家・熊谷守一だ。晩年の日常を描いた本作は、名声欲、金銭欲とも無縁に好きなことだけを追いつづけてきた、超然として奥深くも愛らしい人間性を浮き彫りにする。
早くから才能を認められながらも、絵を褒められようとも有名になろうとも思わなかった守一。絵で家族を養えるようになったのは50歳を過ぎたころ。42歳のとき、秀子(24歳)と結婚。1932年、豊島区に自宅を新築し、1977年亡くなるまでこの家で暮らした。本作はこの家を舞台に、二人のユーモラスで温かな会話で物語を紡いでいく。
94歳のモリは、30年間ほとんど、家の外へ出ることなく、庭のちいさな生命たちを飽くことなく眺め、絵を描いてきた。今も毎晩「学校」と呼ぶ画室で筆をとる。昼間、さまざまな訪問客たちで茶の間は賑わい、モリが「かあちゃん」と呼ぶ妻の秀子が客たちの相手をする。庭には無数の生命が暮らしていて、築40年以上の木造家屋の縁側には鳥籠がいくつも並ぶ。ちゃぶ台、縁側、黒電話。ふいに客がやって来て、お茶を飲んでいく。人と人との距離が今よりも近く感じられる昭和の暮らしと、50年以上をともに過ごしてきた老夫婦の絆。そして平穏な日々に唐突に現れた、謎の男。心豊かに充足した人生が、ある夏の1日のなかで味わい深く、そしてドラマティックに描かれていく。
5月、シネスイッチ銀座ほか、全国ロードショー
【キャスト】山﨑努、樹木希林、加瀬亮、吉村界人、光石研、青木崇高、 吹越満、池谷のぶえ、きたろう、林与一、三上博史
【スタッフ】監督・脚本/沖田修一
【その他】2018/日本/1時間39分
公式HP
(c) 2018「モリのる場所」製作委員会
男と女、モントーク岬で
名匠が描きたかった大人のラブストーリー
思い出の地でやり直す男女の行方は…作家のマックスは、新作のプロモーションのためにNYを訪れる。実らなかった恋の思い出を綴った小説を携えて。かつての恋人レベッカと再会を果たすマックスだったが、別れた後のことをレベッカは何ひとつ語ろうとしない。失意のマックスがNYを発つ3日前、レベッカからモントーク岬への旅の誘いが舞い込む。幸せだった頃の2人が訪れた場所だ。果たしてレベッカの真意とは?
5月26日より、ヒューマントラスト有楽町ほか、順次ロードショー
【キャスト】ステラン・スカルスガルド、ニーナ・ホス
【スタッフ】監督/フォルカー・シュレンドルフ
【その他】2017/フランス/1時間46分
(c) Ziegler Film/Franziska Strauss
枝葉のこと
世界から絶賛された鬼才が主演も務める
現代の家族像と郊外に生きる若者の物語関わること全てに諦念を抱く無気力な男、隆太郎は、周囲に距離を置く変わり者だ。ある日、幼馴染の裕佑から1本の電話が入る。「うちの母ちゃんが会いたがっている」。裕佑の母・龍子は余命数日に迫っていた。6歳で母親を亡くし、幼少期に世話になっていた隆太郎は、彼女の病気を知っていたが、一度も会いに行っていなかった。龍子と会うことを決めた日から、隆太郎の日常が動き出す。
5月より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー
【キャスト】二ノ宮隆太郎、矢島康美、松本大樹、木村知貴、廣瀬祐樹、 三好悠生、新井郁、堀内暁子、辻野正樹、田井竜也、藤田遼平、ほか
【スタッフ】監督・脚本・編集/二ノ宮隆太郎
【その他】2017/日本/1時間54分
公式HP
(c)Kurinke
ザ・スクエア 思いやりの聖域
第70回カンヌ国際映画祭 最高賞を受賞
人間の善意を試すシニカルな風刺映画クリスティアンは現代アート美術館のキュレーター。次の展示である「ザ・スクエア」は、新しい発想から生まれ、彼は自信を持っていたが、自分の携帯電話を盗んだ泥棒に対し馬鹿げた行動を取り、窮地に陥ってしまう。一方、美術館の宣伝を担当する広告代理店は、斬新な宣伝展開を考えついたが、市民の怒りを買い、美術館だけでなくクリスティアンの存在を危うくさせてしまう。
4月28日より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次ロードショー
【キャスト】クレス・バング、エリザベス・モス、ドミンジク・ウェスト、テリー・ノタリー、他
【スタッフ】監督・脚本/リューベン・オストルンド
【その他】2017/スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク/2時間31分
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