「リョウコは常に憂鬱の波に囚われています。足りているけど足りていない感覚に陥っているからこそ共感できる感情では」
公開前から話題の映画『身体を売ったらサヨウナラ』で、主人公の鈴木リョウコ役を好演した柴田千絋さん。本作のプロデューサーが「何事にも興味津々で野心家でもある」と評する女優が挑んだこの作品は、彼女の新境地。映画にかける情熱と魅力を聞いてみると――。
主演を全うするならヌードになる事もいとわなかった
──柴田さんは本作で初めてヌードを披露していますね。「長編映画での主演は初でしたから、主役を全うできればヌードになることには何のためらいもなかったんです。グラビアを撮るわけでもないのに内田(英治)監督には、『私は胸は大きくないしお尻が大きいですよ』と、お断りを入れましたけど(笑)そして事前に15日間禁酒しました」
──お酒大好きなのに?
「成人して以来これほど抜いたのは初めてかもしれません。内田監督に『絞ったら?』と言われて禁酒したんですけど、むくみは取れるし4日目ぐらいからは朝清々しく起きられるし、いいこと尽くしでした。今まで二日酔いのような朝ばかり迎えていたのがウソみたいでしたね(笑)撮影中は監督に飲みに連れて行って頂きましたけど」
──それはどのタイミングで。
「雨に打たれながら裸足で新宿を歩くシーンがあるのですが、私の気持ちがどうしてもリョウコに乗り切らなかったんです。何度テイクを重ねてもOKが出なくてその日を終えたんですけど、落ち込む私を見て監督が誘ってくださいました。あのお誘いにすごく助けられたんです」
──他に芝居で意識した点は。
「他人に冷たいわけではないけど興味がなく、エロいことにだけ興味を示す性格をブレないようにしました。原作者の鈴木涼美さんにお会いしたことも演じる上で役に立ちました」
──ご本人に会った印象は。
「想像していたよりも遥かにすごい方でした。フワフワした雰囲気でしゃべり方もスローで、全力ではなく低燃費で生きているというか。東大の大学院を卒業して新聞記者になったという華々しい経歴を持っていると、大半の人は構えてしまうじゃないですか。それを理解していて他人にガードを張らせないよう、ご自身が生きやすいように進化したんだと思いました」
タイトルは過激ですが彼女の気持ちには共感できます
──役との共通点はありましたか。「学生時代、周りにホスト遊びをしていたコがいたから理解はできたんですけど、私の私生活とは真逆でした。私、誕生日は妹にプレゼントをおねだりするんです。公務員をしていて私より稼いでいるから、毎年誕生日前に欲しいものリストの画像を送るんです(笑)一人旅が趣味なんですけど、貧乏旅行も平気ですし。以前オランダに行った時は、10日間を2万で過ごしました。リョウコはきっと、そんな旅行はしないと思うんです」
──ご結婚前から子どもの名前を決めているのもリョウコとは異なる部分かもしれませんね。
「よく、ご存知ですね(笑)長男が真(シン)、次男が暖(ダン)で双子でもいいんです。将来は海外で暮らしたいから、外国の方が呼びやすい名前にしようと思って。真は『クレヨンしんちゃん』から名づけています」
──〝クレしん〟が、お好きですよね。
「しんちゃんは、私の理想のタイプです。自分で遊びを作り出す想像力の天才ですし、同年代の女子から思いを寄せられてもフールに振る舞うし、おバカキャラで周りを和ませてくれますから」
──確かに(笑)こんなに気さくな柴田さんが、あの難役を演じたと思うと意外です。
「そう言って頂けると演じた甲斐があります。今の時代は恵まれていて、自分のテリトリー内で生きていればそれなりの満足を得られると思うんです。でもリョウコは常に憂鬱の波に囚われています。足りているけど足りていない感覚に陥っているからなんですけど、これってみなさんも共感できる感情だと思います。タイトルは過激ですけど、自分の環境に置き換えてみると面白いかもしれません」
──長編初主演作ですが、ご自身にとってどんな作品ですか?
「今は『恋の渦の…』と紹介して頂いていますが、これからは『身体を売ったらサヨウナラ』の柴田千絋だよね、と言って頂けるようになるのが願いですね」
INFORMATION
■映画『身体を売ったらサヨウナラ』
【STORY&INFO】
有名大学から東大大学院修士課程を経て、某経済新聞社で記者を務め、エリートコースを歩んでいたリョウコ(柴田千紘)には大学在学中にAVに出演したという過去があった。間違いなく幸せな昼の世界の生活だけでは退屈な彼女は、友人たちや権力と財力を持つ彼氏らとホスト通いに明け暮れ、昼と夜の世界で矛盾する日々を送っていた。心の拠りどころを求め続け、「女の身体は何度でも売れる」と呟きながら幸せになりたいと願う1人の女性のドラマが、現役のAV女優やAV監督、スカウトマンらのインタビュー映像を交えて描かれる。
【CAST&STAFF】
出演/柴田千紘・小西キス・久保田悠来・内田慈・冨手麻妙・原田篤/川上奈々美・筒井真理子・品川祐(特別出演)
原作/鈴木涼美「身体(からだ)を売ったらサヨウナラ」(幻冬舎文庫)
監督/内田英治
脚本/伊藤秀裕・内田英治
配給/エクセレントフィルムズ
公式HP
7月1日(土)から新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー
(C)2017 東映ビデオ/エクセレントフィルムズ
PROFILE
柴田千紘(しばた・ちひろ)
1988年10月24日生まれ 千葉県出身
13年公開の映画「恋の渦」(大根仁監督)で第23回日本映画プロフェッショナル大賞の新人奨励賞を受賞。短編「しば田とながお」で主演を務めたほか「春子超常現象研究所」「リアル鬼ごっこ」「ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ」など映画を中心に活躍。また、Web小説や雑誌コラムの執筆も手掛け、短編小説集「ショートショートの宝箱」発売中。
公式Twitter
■映画『身体を売ったらサヨウナラ』
【STORY&INFO】
有名大学から東大大学院修士課程を経て、某経済新聞社で記者を務め、エリートコースを歩んでいたリョウコ(柴田千紘)には大学在学中にAVに出演したという過去があった。間違いなく幸せな昼の世界の生活だけでは退屈な彼女は、友人たちや権力と財力を持つ彼氏らとホスト通いに明け暮れ、昼と夜の世界で矛盾する日々を送っていた。心の拠りどころを求め続け、「女の身体は何度でも売れる」と呟きながら幸せになりたいと願う1人の女性のドラマが、現役のAV女優やAV監督、スカウトマンらのインタビュー映像を交えて描かれる。
【CAST&STAFF】
出演/柴田千紘・小西キス・久保田悠来・内田慈・冨手麻妙・原田篤/川上奈々美・筒井真理子・品川祐(特別出演)
原作/鈴木涼美「身体(からだ)を売ったらサヨウナラ」(幻冬舎文庫)
監督/内田英治
脚本/伊藤秀裕・内田英治
配給/エクセレントフィルムズ
公式HP
7月1日(土)から新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー
(C)2017 東映ビデオ/エクセレントフィルムズ
PROFILE
柴田千紘(しばた・ちひろ)
1988年10月24日生まれ 千葉県出身
13年公開の映画「恋の渦」(大根仁監督)で第23回日本映画プロフェッショナル大賞の新人奨励賞を受賞。短編「しば田とながお」で主演を務めたほか「春子超常現象研究所」「リアル鬼ごっこ」「ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ」など映画を中心に活躍。また、Web小説や雑誌コラムの執筆も手掛け、短編小説集「ショートショートの宝箱」発売中。
公式Twitter
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一 ヘアメイク/山科美佳