自分は明日も何十年後も元気に暮らしているはず――。そんな思い込みを払拭され、今、歩けている意味を再度考えたくなる映画『歩けない僕らは』が11月23日より公開される。回復期リハビリテーション施設で働く新人理学療法士で主人公の宮下遥を演じた宇野愛海さんは、患者の苦悩に向き合う難しい役にどう挑んだのか。プライベート話も交えてインタビューした。
感情移入しすぎず距離を保つ話を聞いて勉強になりました
──演じる上で、役と同じ理学療法士の方に話を聞いたとか。「5人の方からお聞きしたんですけど、一番参考になったのはリハビリをする患者さんとの距離感でした。感情移入をしすぎず、適度な距離感を保たなければいけないんです。感情を入れすぎた結果、『私が担当じゃなかったら、もっといい段階まで治せたかもしれない』と猛省した経験を、泣きながら話してくださった1年目の方もいて。私が演じた宮下遥も、落合モトキさんが演じた患者さん、柘植さんと似た経緯をたどるので、演じる上で大きな影響を受けました。理学療法士の知識がなかったので、大学の図書館で調べたんですけど、書籍よりも実体験のほうが分かりやすかったです。お話を伺ったら、私と同年代の20代前半の方でもすでに結婚している方が多いことにも驚きました」
──遥と性格面でリンクしている部分はありましたか。
「ひとつの物事に集中すると周りが見えなくなる不器用な性格は、私も同じです。一度にひとつのことしかできないんです。今はようやく落ち着いたんですが、大学の卒業制作で色々請け負ってしまい、マネージャーさんに怒られたこともありました。『仕事とオーディションの予定が入れられないでしょう!』って(笑)」
──芝居の鍵を握る佐藤快磨監督とは、現場でどんな話を。
「私の不器用な性格を察してくださったのか、毎回真摯に優しく向き合ってくださったので、遥の心情に関してとことん質問や相談をさせて頂いていました。おかげで気持ちにウソをつくことなくお芝居ができましたし、これほど正面から接してくれる大人がいるのかとうれしくて。例え時間がかかっても、佐藤監督の作品には絶対に帰ってきたいと思えるほどでした
生きる意味を再考できる作品“僕らは”の意味にも注目を
──遥にとって彼氏である翔の存在はすごく大きい、とコメントされていましたね。翔役の細川岳さんとは現場ではどのように接していたのでしょうか。「撮影期間はホテルに泊まり込んでいたので、一緒にお散歩もしました。主に『翔と遥はどちらがどれぐらい好きか』など、役柄について話し合うための時間をすごしたんです。劇中では今流行っている使い捨てカメラでお互いを撮り合うんですけど、カメラが回っていない時も撮影し合ったり。遥が投げつけて壊すのは、実際に使っていたものなんです。話し合って実物を使うことにしたんですが、写真を現像できないので少し寂しかったです」
──恋愛模様が描かれているので、宇野さんの好みのタイプも。
「礼儀正しくて常識人で、頼れる男らしい“ザ・日本男子”です。作品をご覧頂くと分かると思いますけど、(彼氏役の)翔は当てはまっていないかもしれません(笑)」
──プライベートなお話も。実家では愛犬を飼っていますよね。
「ティーカッププードルだと思って飼っていたら、実はトイプードルだった煎茶くんのことですね。名付け親の父に一番懐いていて、私と2人きりの時はベタベタ甘えてくるのに、父が帰ってくると私に吠えるんです。両親と姉、妹の5人家族なんですが、私よりも留学していて最近帰国した姉に懐いている気が…。犬は家族を順位づけする説がありますけど、私はヒエラルキーの最下層だと思います」
──あはは!最後に宇野さんが感じる作品の魅力を。
「生きることの意味を改めて考えさせられる作品だと思います。自分が歩けるのが当たり前だと考えている人は多いと思いますけど、人はいつ健康を失うか分からないということが描かれているので。個人的に心を揺さぶられたのは、リハビリ中に柘植さんが言う台詞です。『何で(半身不随になったのが)俺なんだよ……』という言葉を、スクリーンで観て、感じて頂きたいです。私はタイトルも好きで、『歩けない僕らは』の“僕ら”の意味も注目して下さい」
INFORMATION
■映画『歩けない僕らは』
INFO&STORY
回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士・宮下遥(宇野愛海)は、慣れない仕事に戸惑いながらも、同期の幸子(堀春菜)や彼氏・翔(細川岳)に励まされながら患者たちと触れ合う日々を送っている。担当していたタエ(佐々木すみ江)が退院し、新たに遥が担当したのは帰宅途中に脳卒中を発a症し、左半身が不随になった柘植(落合モトキ)だった。遥が初めて入院から退院までを担当する患者となった柘植から、元の人生には戻れるか聞かれるが、何も言葉を返せない。日野課長(山中聡)と田口リーダー(板橋駿谷)の指導を受け、遥は柘植を取り巻く現実と向き合っていく…。
CAST&STAFF
出演/宇野愛海・落合モトキ・板橋駿谷・堀春菜・細川岳・門田宗大・山中聡・佐々木すみ江
監督・脚本・編集/佐藤快磨
配給・宣伝/SPEAK OF THE DEVIL PICTURES
11月23日(土・祝)より新宿K’s cinemaにて公開ほか全国順次
公式HP
(C)映画「歩けない僕らは」
■映画『歩けない僕らは』
INFO&STORY
回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士・宮下遥(宇野愛海)は、慣れない仕事に戸惑いながらも、同期の幸子(堀春菜)や彼氏・翔(細川岳)に励まされながら患者たちと触れ合う日々を送っている。担当していたタエ(佐々木すみ江)が退院し、新たに遥が担当したのは帰宅途中に脳卒中を発a症し、左半身が不随になった柘植(落合モトキ)だった。遥が初めて入院から退院までを担当する患者となった柘植から、元の人生には戻れるか聞かれるが、何も言葉を返せない。日野課長(山中聡)と田口リーダー(板橋駿谷)の指導を受け、遥は柘植を取り巻く現実と向き合っていく…。
CAST&STAFF
出演/宇野愛海・落合モトキ・板橋駿谷・堀春菜・細川岳・門田宗大・山中聡・佐々木すみ江
監督・脚本・編集/佐藤快磨
配給・宣伝/SPEAK OF THE DEVIL PICTURES
11月23日(土・祝)より新宿K’s cinemaにて公開ほか全国順次
公式HP
(C)映画「歩けない僕らは」
PROFILE
宇野愛海(うの・なるみ)
1998年3月19日生まれ 栃木県出身
アイドルグループ私立恵比寿中学の元メンバー。08年に女優デビュー。15年公開の『デスフォレスト恐怖の森 3』で映画初主演を飾った。映画出演は他に『燦燦-さんさん-』『罪の余白』『斉木楠雄のΨ難』などがある。
公式Instagram
宇野愛海(うの・なるみ)
1998年3月19日生まれ 栃木県出身
アイドルグループ私立恵比寿中学の元メンバー。08年に女優デビュー。15年公開の『デスフォレスト恐怖の森 3』で映画初主演を飾った。映画出演は他に『燦燦-さんさん-』『罪の余白』『斉木楠雄のΨ難』などがある。
公式Instagram
撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら ヘアメイク◎山崎惠子