「詩織は日々、『このままでいいのかな』と悩みながら生きている女性。同じように思い悩む人なら共感して頂けると思います」
薬師丸ひろ子さんの生みの親である事務所社長に見出されたブレイク必至の女優中西美帆さんの初主演映画『東京ウィンドオーケストラ』が1月21日より公開。常に笑顔で感情豊かなご本人とは真逆の役を演じる時に意識したことや作品の魅力を語って頂きました。 !
4つの点を意識して毒舌で肝が据わった詩織を演じた
──本作ではなかなかの毒舌キャラを演じていますね。「自分のミスでアマチュア楽団を呼んでしまったのに、帰ろうとした彼らに『ギャラ泥棒』と平然と言い放つシーンは特に毒舌ですよね(笑)しかも大して慌てない上に逆ギレ気味に対処しますから、(樋口)詩織はすごく肝が据わっているなと思いました。私だったら絶対、『大変なミスをしました』と報告します」
──当初、詩織は朝ドラのヒロイン的に演じる予定だったとか。
「2回本読みをしたんですけど初回で坂下(雄一郎)監督に指示されて、天真爛漫なイメージで試しに演じたんです。その芝居を見た監督が『どこにでもある作品になってしまうから、真逆でいきます』とおっしゃって今回のキャラクターが生まれたんですけど、台本には全く手が入っていないんです。それなのに作品のテイストがまるっきり変わってしまうんですから、監督の決断力はすごいなと思いました」
──演じる際、意識した点は?
「監督からは主に4つのことを言われていたんです。『ロボットのように台詞を言う』『早口で』『感情を入れない』『笑わない』と。ただ、感情は入れたほうが芝居をしやすいので、それが意識しつつも苦労した点です…と、 今思い出しました。さっきまでのインタビューでは『屋久島では何度も雨に降られて大変でした』と答えていたんです」
──新情報ありがとうございます(笑)ほかに苦労したシーンは。
「私、自転車に乗れないんですけど2回乗るシーンがあったので、監督に相談したんです。そうしたら『ゆっくりで大丈夫です』とおっしゃっていたのに、当日になったら『全速力でこいで下さい』と。その無茶ぶりに『何て鬼なの!』と思いました(笑)だからブレーキの掛け方が分からず、足で止めました」
役者として悩んでいた時期だったから共感できました
──不倫中の詩織の心理を理解することも苦労したのでは。「私も詩織が田辺のことをどこまで好きか分からなくて、聞いたんです。監督は『それほど好きじゃないんじゃない。飲み会で打ち解けて、何となくダラダラと関係が続いているだけ』とおっしゃっていました。それでも、コンサート中に別れを切り出す詩織の気持ちが理解できなくて、悩んでいたんです。共演の小市慢太郎さんに『それでええねん!』と、おっしゃって頂けたのが印象的でした。『才能のある監督だし、面白い脚本なんだから、理解できなくても信じて台詞を言えば完成作品を観た時、必ず繋がっているから』と。あの言葉に救われました」
──なるほど。では詩織に共感は。
「すごく共感していました…。日々、『このままでいいのかな』と悩みながら生きているんですけど実はこの撮影前、私も役者として悩んでいた時期だったんです。というのも、『自分にしかできない役に巡り逢いたい』と考えている一方で、決まったキャラクターを演じる機会が多かったからなんです。だから、同じように思い悩む人なら共感して頂けるのではないかと」
──役に愛着を持っていますね。
「何度観たか分からないほど試写会へ足を運んでいるんですけど、こんなにも愛おしいと思える役と作品に出会えて幸せです。自分が出ているので演技的には反省点が見えて『うわっ!』と目をつぶりたくなるシーンもありますけど、間違いなく私のターニングポイントになる作品だと思っています」
原節子さんや岸恵子さんのような凛とした女優が目標
──本作との出会いは、調理師専門学校を卒業後、2年間の長いレッスン期間を経ただけのことはあった、と。「不安になったこともありましたけど『レッスンを受けるだけでデビューできないかもしれない』と疑ってしまったら道は開けないと思っていたので、信じることしかできませんでした。孤独を感じる時もありましたし、自分と の葛藤もありましたし。でも、デビュー作で松下幸之助さんのご著書の中の『成功するまで続けたら失敗ではなくなる』という言葉を拝読して、考え方は間違っていなかったのかなと」
──いい言葉ですよね。
「私も今は座右の銘にしているほど好きな言葉なんです。役者は(オファーが来るのを)待つことが仕事だと言われていますし、これからも不安を抱えることはあるでしょうけど、信じることが大切だと思っています」
──では、原節子さんに影響を受けて女優になった中西さんの今後は?
「映画好きな父の影響で原節子さんを好きになったんですけど、生き様が潔くてカッコいい、岸恵子さんも大好きなんです。増村保造監督作品の若尾文子さんもすごく好きですし。これを言うと渋い趣味と言われるんですけど、あの方たちのような、凛とした女優であり女性が目標です」
■映画『東京ウィンドオーケストラ』
INFO&STORY
舞台は世界遺産の屋久島。有名オーケストラと間違われて島にやってきたアマチュア楽団と、彼らを“本物”として押し通そうとする島の女性職員・樋口詩織(中西美帆)が巻き起こす、笑いと感動のハート・ウォーミング・コメディ。「神奈川芸術大学映像学科研究室」が注目を集めた坂下雄一郎監督の商業デビュー作で、「滝を見にいく」(沖田修一監督)「恋人たち」(橋口亮輔監督)に続く、松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト第3弾として製作された。
CAST&STAFF
出演/中西美帆・小市慢太郎・松木大輔・星野恵亮・遠藤隆太・及川莉乃・水野小論・嘉瀬興一郎・川瀬絵梨・近藤フク・松本行央・青柳信孝・武田祐一・稲葉年哉
脚本・監督/坂下雄一郎
配給/松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
公式HP
1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(C)松竹ブロードキャスティング
PROFILE
中西美帆(なかにし・みほ)
1988年12月5日生まれ 兵庫県出身
09年に「奇跡の人」で初舞台。11年、NHKドラマ「神様の女房」で本格的にデビュー後、NHK大河ドラマ「八重の桜」や映画『永遠の0』などの話題作に出演。14年公開の映画『喰女-クイメー』では市川海老蔵の相手役を熱演した。『惑う After the Rain』(林弘樹監督)は1月21日公開。
公式HP
INFO&STORY
舞台は世界遺産の屋久島。有名オーケストラと間違われて島にやってきたアマチュア楽団と、彼らを“本物”として押し通そうとする島の女性職員・樋口詩織(中西美帆)が巻き起こす、笑いと感動のハート・ウォーミング・コメディ。「神奈川芸術大学映像学科研究室」が注目を集めた坂下雄一郎監督の商業デビュー作で、「滝を見にいく」(沖田修一監督)「恋人たち」(橋口亮輔監督)に続く、松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト第3弾として製作された。
CAST&STAFF
出演/中西美帆・小市慢太郎・松木大輔・星野恵亮・遠藤隆太・及川莉乃・水野小論・嘉瀬興一郎・川瀬絵梨・近藤フク・松本行央・青柳信孝・武田祐一・稲葉年哉
脚本・監督/坂下雄一郎
配給/松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
公式HP
1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(C)松竹ブロードキャスティング
PROFILE
中西美帆(なかにし・みほ)
1988年12月5日生まれ 兵庫県出身
09年に「奇跡の人」で初舞台。11年、NHKドラマ「神様の女房」で本格的にデビュー後、NHK大河ドラマ「八重の桜」や映画『永遠の0』などの話題作に出演。14年公開の映画『喰女-クイメー』では市川海老蔵の相手役を熱演した。『惑う After the Rain』(林弘樹監督)は1月21日公開。
公式HP
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一