「昭和歌謡」一このフレーズに、あなたは何を思い、何を思い出すだろうか。昭和歌謡曲を代表する歌手やアーティストは大勢いるが、今回お招きしたのは1月11日から公開中の映画「山内惠介・THE歌謡ムービー 昭和歌謡危機一髪!」に主人公・山内惠介さんの頼りになる兄貴分役として出演している、元チェッカーズのリーダー武内享さん。小誌は役ともリンクするその気さくで頼りになるアニキ的な人柄に密着。映画の話以外にも、シンプルな人生理論について本音で語ってもらった。
83年のデビュー直後から一世を風靡し、時代の寵児にまで登り詰めた伝説のアイドルグループ、チェッカーズ。スター性抜群の藤井フミヤさんに声をかけ、チェッカーズ誕生のきっかけを作ったリーダー武内享さんを直撃! 高校時代のあだ名が“先輩”で、現在も業界の後輩たちから「アニキ」と慕われるキャラクターに存分に甘えて、今回は人生指南をメインに話を伺った。甘えても広い心で受け止めてくれる武内さんは、やっぱりアニキです! 男の中の男です!!
ちょっとでいいからと出演したのにセリフの嵐…騙された
──劇中では山内惠介さんの兄貴分役を演じていますが、プライベートでもアニキキャラですよね。「“慢性リーダー病”と呼んでますからね、自分のこと(笑)若いミュージシャンたちからは駆け込み寺的に、いつも相談を受けてますし、昔からスカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とつき合いがあるんだけど、95年かなあ、ボーカルが亡くなったでしょう。彼らから冗談半分で、『リーダーで入ってほしい』って話も出ましたから。ただねぇ、俺は徒党を組むのが好きじゃないんですよ、昔から」
──そうなんですか?
「例えば“武内組”じゃないけど、後輩をゾロゾロと引き連れるようなヤツって大っ嫌い。大将っぽい存在になって壊れていくヤツを何人も見てるんで、そうはなりたくないなって。もちろん、後輩にはメシを食わせたり酒を飲ませたりはしますけど。俺、一匹狼タイプなんで」
──映画で演じた香川真平も、武内さんと同じタイプですよね。
「あれねぇ、もともとは音楽監修のみで、出る予定じゃなかったのよ。ニッポン放送のスタッフってチェッカーズ時代から知ってる人が多くて、『享ちゃん、少~し色を付けてくれるだけでいいから』と説得されてOKして台本をもらったら、セリフの嵐。まーダマサれた(笑)その上、『衣装はすべて私服でお願いします』って、いつもの俺、そのまんまだから(笑)」
──当て書きだから境遇も似てる?
「『カミさんと子ども3人食わせなきゃ…』ってアレでしょ? バンマスで恵ちゃん(山内惠介)の相談役って普段の俺のスタイルだから、香川さんって呼ばれるたびに『オレ武内ですけど』ってドキッとした(笑)でも、ファンのコが観たら面白いと思う」
──チェッカーズは、武内さんが藤井フミヤさんに声掛けしていなければ、誕生しませんでしたよね。人を見る目がある武内さんから見て、山内さんはどんな男性?
「九州出身同士だし、本当に素直でいいヤツだな~って思いましたよ。コイツなら友だちになれそうだなって。分かんないけど、演歌の世界に10年以上もいたら、どっかで(性格とか)曲がってたりするんじゃねえかな、とか思ってたけど、まったく曲がってない。素直でいいコですね」
──映画のタイトル同様、昭和歌謡という共通項もありますしね。
「そう! 俺ね、チェッカーズの中でも昭和歌謡の一番のマニアで、アマチュア時代から、スタンダードな曲からB級まで今もコレクションしてるの。iTunesに曲を入れるとフォルダごとに分数が出るでしょう。あれ、9.2日って書いてありましたもんね。9日分って(笑)チェッカーズを除いて、ですよ」
クロベエがいないんで再結成しませんよチェッカーズは!
──昭和歌謡のど真ん中、チェッカーズは今も根強い人気ですね。「チェッカーズは伝説になりましたよね。最近、二世代でイベントに来る人たちも増えたんですよ。昭和歌謡が流行った時代って、テレビやラジオ、どれか1つのメディアにみんながガーッと集中して楽しんだじゃないですか。今はそうじゃなくなったけど、ネット社会になってもみんな、誰かとつながっていたいって気持ちは強いよね。そこにみんなが惹かれて、昭和歌謡に哀愁を感じるのではないか、と。でも、人気があるからと言って、チェッカーズは再結成しませんよ。復活とか多いけど、もうクロベエがいないんで、ね。断言します」
──武内さんは昔も今も、好きなことをして生きてますよね。
「それ、よく言われる(笑)けどさあ、俺の仕事はエンターテイメントだから楽しい部分しか見せないけど、仕事は何であれとっても大変だということは認識しなきゃいけないよね。俺だって、『ブイブイでヨロシク~!』って言ってるだけじゃ生きていけないから、努力はしてます。だけど、努力してる姿は見せない」
──音楽監修はいかがでしたか?
「映画音楽をつくる時は『完パケ納入』だから、全部自分でイチからつくって、録音してMIXして、すべての楽器を操るんですよ。完成に至るまでには、相当の努力を要するわけです。チェッカーズ時代は、スタジオの一番デカイ部屋を1日押さえた料金さえ知らなかったから、解散してから5年ぐらいはほとんど表に出ることなく、自宅で録音できるシステムをつくったり、そういう勉強ばっかりしてた。だから、何の仕事にしろ努力はしなきゃいけないんじゃないのかな」
──努力すれば夢は報われますか?
「絶対に報われると思ってる。絶対です。だから、報われなかったら、努力が足りないと思ったほうがいい。俺の仕事する姿を見ていて、息子が中3ぐらいの時かな、正座しながら真剣に『音楽でメシを食いたい』って言ってきたのね。厳しく釘刺したもん。『どれだけの数の芸能人やアーティストがデビューして、どれだけ残ってるか知ってんのか。生半可な気持ちじゃ生きていけないんだぞ、この世界は』って。今も、『努力が足りないから売れるワケがない』と言い続けてますし。ただし、後輩にアドバイスする時は『自分のペースで』という言葉を付け加えますね。その上で、前に進むことを止めるな、と言い続けてる」
──映画の中の山内さんも、前に進み続けて再起しますよね。
「ラストがINGでその後どうなるか描かれてないけど、きっと頑張れるんだろうなって終わり方だよね。心がほっこりするっていう」
──小誌読者も勇気をもらえるかと。
「そうだね、だから本当に観てみるといい。しかも、渋い線を触ったストーリーなのよ。事務所が吸収合併されてマネージャーがクビになってタレントが干されるって、リアルにある世界だから。ほかの業界、職種でも絶対にあることでしょ。この話を観て思ったけど、51歳になって、自分で仕事をつくり出せる状況になれたのは、つくづくありがたいな、と。今のような自分になりたくて、20代から努力してきましたからね」
──チェッカーズとしてデビューしたことが、最大の転機かと。
「そうだね。だから、いや、昔の話だから…と言うつもりもないし、それだけじゃないけど、チェッカーズのリーダーというポジションを抱え続けて死んでいくんだと思う。解散前に唯一メンバーに伝えたことがあって、『チェッカーズを誇りにして、その看板を傷つけないように生きていこうぜ』と。俺も、そういうふうに生きていかなきゃいけないと思ってるんで」
──その割にツイッターのプロフィールに「全裸」と記載が(笑)
「あれはね、心はいつも全裸でって意味なんです(笑)俺、ほとんどのことを隠さないのね。家族と仲間とファン、支えてくれる人がいるから俺が成り立つワケだから、みんな同じテーブルでいいじゃないかって気持ちに、40歳を過ぎた頃からなったんですよ」
──思いやりと頼りがいある武内さんのようなアニキに、どうしたら知り合えますか?
「面白い話があって、ガソリンスタンドでね、男の子にファンですって声掛けられて、時間もあったんで話してたら『店をやりたい』と相談されたの。『やればいいじゃん。やりたいって言うヤツはいっぱいいるけど、実行できるかどうかは別だぜ』って答えたのね。で、ある日、友だちに連れて行ってもらった東京・池尻のうまいって評判の居酒屋にいたのが、そいつだった。そいつが始めた店で、メールアドレスを教えたのに、営業メール一切ナシで偶然の再会。『いつか来てくれると信じてたから』って。いい話でしょ。だから、そいつみたいに、見かけたら『享さん』って声をかけてくれたらいいよ。そういうこと、よくあるから」
取材後、武内さんと取材スタッフの自宅が近いことを知ると、美味しい飲食店を教えてくれるアニキぶりも見せてくれました。これからも大きく広いその器で、デカイこと仕掛けてください!!
INFORMATION
映画『山内惠介・THE歌謡ムービー 昭和歌謡危機一髪!』
INFO&STORY
演歌歌手としてデビューした山内(山内惠介)は、ようやく人気が定着しはじめた矢先、所属事務所の社長が飲食事業に失敗し、事務所が携帯ゲームの会社に買収されてしまう。なんとか歌手活動は続けられることになった山内だが、これまでの慣習を認めない新経営陣とうまく折り合えない。さらに、歌うことができない奇病にかかってしまった山内はすっかり自信を失い、歌手生活を諦めて旅に出るが…。演歌界の若きホープとして注目を集める山内惠介の銀幕デビュー作で、ニッポン放送開局60周年記念作品、涙と笑いと歌で綴る人情物語。歌うことができなくなった演歌歌手が人の温かさに触れ、自分を取り戻していく姿を描く。
CAST&STAFF
出演/山内惠介・武内亨・不破万作・村松利史・土井よしお・清水宏・梅垣義明・清水ひとみ・小島光一朗・高橋乱・和田雅成・出口哲也・徳光和夫(特別出演)
監督・脚本/すずまさ
音楽監修/武内亨
主題歌/山内惠介「ただひとつの花」(ビクターエンタテインメント)
制作/ニッポン放送
配給/松竹メディア事業部・Thanks Lab
公式HP 1月11日(土)より東劇ほか全国順次公開中
(C)2013「山内惠介・THE歌謡ムービー 昭和歌謡危機一髪!」製作委員会
PROFILE
武内享(たけうち・とおる)
1962年7月21日生まれ 福岡県田川市出身
元チェッカーズのリーダーでギター担当。83年に「ギザギザハートの子守歌」でデビュー。92年、解散。以降は武田真治やCHEMISTRYのサポートなどを務めながら、プロデュースにも進出。また映画やテレビドラマにも役者として出演し、ドラマなどの音楽も担当している。現在もホールやライブハウスなどを中心に、ミュージシャンとして精力的に全国を駆け回る。本作では出演のほか、音楽監修も担当。
公式ブログ
公式Twitter
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演歌歌手としてデビューした山内(山内惠介)は、ようやく人気が定着しはじめた矢先、所属事務所の社長が飲食事業に失敗し、事務所が携帯ゲームの会社に買収されてしまう。なんとか歌手活動は続けられることになった山内だが、これまでの慣習を認めない新経営陣とうまく折り合えない。さらに、歌うことができない奇病にかかってしまった山内はすっかり自信を失い、歌手生活を諦めて旅に出るが…。演歌界の若きホープとして注目を集める山内惠介の銀幕デビュー作で、ニッポン放送開局60周年記念作品、涙と笑いと歌で綴る人情物語。歌うことができなくなった演歌歌手が人の温かさに触れ、自分を取り戻していく姿を描く。
CAST&STAFF
出演/山内惠介・武内亨・不破万作・村松利史・土井よしお・清水宏・梅垣義明・清水ひとみ・小島光一朗・高橋乱・和田雅成・出口哲也・徳光和夫(特別出演)
監督・脚本/すずまさ
音楽監修/武内亨
主題歌/山内惠介「ただひとつの花」(ビクターエンタテインメント)
制作/ニッポン放送
配給/松竹メディア事業部・Thanks Lab
公式HP 1月11日(土)より東劇ほか全国順次公開中
(C)2013「山内惠介・THE歌謡ムービー 昭和歌謡危機一髪!」製作委員会
PROFILE
武内享(たけうち・とおる)
1962年7月21日生まれ 福岡県田川市出身
元チェッカーズのリーダーでギター担当。83年に「ギザギザハートの子守歌」でデビュー。92年、解散。以降は武田真治やCHEMISTRYのサポートなどを務めながら、プロデュースにも進出。また映画やテレビドラマにも役者として出演し、ドラマなどの音楽も担当している。現在もホールやライブハウスなどを中心に、ミュージシャンとして精力的に全国を駆け回る。本作では出演のほか、音楽監修も担当。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一