スローガンは「カップル撲滅！」リアルすぎて残念なラブソングの歌い手

　残念な真実を極薄のオブラートに包んで伝える巧みな歌詞、その真逆に流麗＆爽快なメロディ……。ムダにハイクオリティな「リアルラブソング」の歌い手として、絶賛・困惑・批難など、様々な反応を巻き起こしているシンガーソングライター鼻毛の森。〝カップル撲滅〟というスローガンに隠された意外な真実や、新曲の制作秘話を伺った。

──『それまではそばにいるよ』『誰でもよかっただから君でもよかった』『君でいいのかな』など、過去に発表した曲はどれもスゴいタイトルですね。
「カップル撲滅をスローガンに、これまでのＪ-ＰＯＰでは歌われてこなかった真実＝残念な部分を、『リアルラブソング』として歌っているんです」

──このような活動を始めたきっかけは？
「もともと物事を何でも否定から考える後ろ向きな人材なんです（笑）それで残念な恋愛ネタの朗読活動を始め、その延長で歌うようになりました」

──歌詞の題材はどこから？
「人や自分の恋愛体験を元にして、Ｊ-ＰＯＰのありがちなフレーズも参考に『君しかいない』→『誰でもよかった』というように、逆説的なフレーズを作る感じです。結婚式場でこっそり働いていた時期には、幸せそうな式を見ながら、人が疑問、後悔、妥協の過程を辿る『君でいいのかな』『もう一度考え直せるのなら』『幸せだと思うことにするよ』というリアルウェディング三部作も書き上げました」

──またヒドいタイトルですね（笑）でも実際そんなふうに結婚で悩み、妥協する人は多そうな気が。
「『もっといい相手がいるかも』とか、みんな分不相応なことを妄想しがちなんですよね（笑）Ｊ-ＰＯＰには『君に会えてよかった』みたいな歌詞が多いし、恋愛をそういう純真な雰囲気で見なきゃいけない空気がある。だから僕は〝負の選択肢〟も提供して、『妥協するのが最良だ！』と伝えたいというか。僕の活動のスローガンの〝カップル撲滅〟というのは、無計画な恋愛から生まれる失恋を未然に防止したい……という意味なんですよ」

──実は世のため人のためにもなる歌なんですね。
「もちろん。曲のどこかに救いは入れるようにしています。クレーム対応の意味も込めて（笑）」

──一方サウンド面ではストリングスやピアノが入った豪華なアレンジが多いですよね。ニューシングルの『もう一度選び直せるのなら-Ｎｅｘｔ. ｖｅｒ-』もイントロはド直球のラブソングっぽいですし。
「この曲のアレンジは映画主題歌にもなった某女性シンガーの代表曲へのオマージュなんです。７年ほど前から結婚式の定番なので、似た雰囲気のサウンドを聞くだけで人は素晴らしいラブソングと感じてしまう。僕は真逆の歌詞をそこに乗せ、残念な真実を浮かび上がらせているんです」

──歌詞は「君に巡りあえてよかった」から始まり、「そう胸に言い聞かせてきた」「引き返すこともできずに」と徐々に不穏な空気になりますよね。
「『あれ？』『おや？』『おいおい！』とツッコみつつ笑ってくれたら最高ですね。自分の恋愛を見つめ直してくれる人がいても嬉しいですし、キレられることも想定内です（笑）」

──確かにキレる人も多そうですが、Ｊ-ＰＯＰより現実に近い恋愛を描いた歌詞だと感じました。
「インパクトがあって、胡散くさいけど、実は有用……そんな歌を歌いたいんです。鼻毛の森って名前もそこに由来があって。鼻毛には『鼻に入る粉塵を防ぐ』という有用性があるのに、人はそれを認めたがらないし、鼻毛を嫌うでしょう」

──確かに鼻毛の森って名前も歌っている内容も、いくら有用なものだとしても嫌われそうですね。
「メルヘンな世界を信じている女性にはホントに嫌われますよ（笑）でもこんなラブソングが、オリコン15位くらいには入る世の中にしたいです！」