「M-1グランプリ2021」では初決勝ながら、6位の成績を残した真空ジェシカのお二人。〝M―1効果〟でバラエティ番組でも活躍し、放送後にネットで大荒れ炎上した「ラヴィット!」出演は記憶に新しい。川北さんとお笑いコンビ・ママタルト大鶴肥満さんとの関係、就活面接で落ちた眼鏡会社とガクさんの〝因果〟について、印象深いライブの話まで直撃インタビューで注目コンビを解き明かす。今年のM-1参戦も表明した真空ジェシカの快進撃はまだまだ、これから――。
『死ぬまでお笑いをやっていきたい!それさえあればいい!〝まーごめ〟で』
昨年の「M―1」決勝進出のお陰でバイト生活を卒業できました!
──「M―1グランプリ」から半年。1年前と比べると。
ガク「バイトしなくてよくなったので、だいぶ変わりました。コールセンターでクレーム対応のバイトをしていて、1日中叱られてました…。スーツを着たサラリーマンがいっぱいいる会社の中に、謝り続ける集団の一角があって、そこに金髪ガリガリのヤツが入っていって頭を下げてました(笑)」
川北「路上のガードレールを拭くバイトを一番最後までやってました。道路には車が走っているので保安器具のカラーコーンを立てるんですが、大きなトラックが通るとコーンが飛ばされちゃうので必死に手で握りながら拭いて。日当で1万円はもらってました」
──6月末の「M―1グランプリ2022」開催記者会見に出席されました。正式な参加表明は?
ガク「表明した感覚はなかったですけど、そうだと思います…」
川北「どうせ出るので」
──会見には優勝した錦鯉さんを筆頭にファイナリストが集結。昨年の大会を思い出しましたか。
川北「ライブシーンで一緒にやってきたメンバーだったので決勝の場が特別というのは、いい意味でなくて。その後、番組を回る時も営業も一緒になることが多いので特別感はなかったです」
ガク「周りの環境が変わった感じはあまりないかもしれません」
──ただ、露出が増える〝M―1効果〟はありますよね。
川北「バラエティ番組を一周させてもらうのが半周ぐらいで終わってしまい…。もの好きが集まった番組だけ何回か呼んで頂いてそうじゃない番組は一回も(笑)」
──TBS系「ラヴィット!」出演時は〝ニュース〟になりました。
ガク「スベっただけで炎上しました。あれ以降は、試される場というか『どういうヤツなんだ?』はなくなって『変なことをしてもいいので、きてください』という時だけいます」
──ガクさんが青山学院大、川北さんは慶応義塾大を卒業。お二人の出会いは?
川北「それぞれ大学のお笑いサークルに所属していて、交流があったので一回組んでみようかと。テレビ朝日『学生HEROES!』という番組のオーディションに出ようと声を掛けました」
──川北さんは学生時代から将来は芸人志望で。
川北「中学生ぐらいからテレビを観ていて大人がふざけて、これでお金をもらっていると聞いてズルいなと思ったので(笑)」
ガク「どちらかといえば裏方志望で、吉本が運営するスタッフや構成作家の養成所に通ったけどなんか違うかなって。それで就職活動を始めたら今の事務所からスカウトされ、内定が出ました(笑)」
川北「就活のために鏡の前に立って自分を見つめ直したら、眼鏡をしていることに気づいて眼鏡屋に面接に行ったんでしょ?」
ガク「アイデンティティに、それしか見つからなくて。その武器を携えて受けたんですけど熱意が足りなくて落とされました」
川北「面接で『僕は眼鏡をかけています』しか言えなくて落とされたそうです」
ガク「ただ、この間、就活の際に受からなかったJINSさんから、22年春・夏の新商品、80年代風メガネのモデルのお仕事を頂きました」
川北「なんの因果か」
ガク「遠回りしたけどJINSにたどり着いたので良かったです」
性格ゆえに断れない選べない芸人を志していない僕は将来が心配…
──話は戻りますが、コンビ結成も川北さんから誘って?
ガク「断る発想がなくて、誘われたら全部やっていたんです。(川北は)芸人を目指していると言っていたので『責任が生じそうで怖いな』と思ったぐらいでした。ここまでこれたのは相方のお陰なので今となっては良かったです」
川北「だから、(ガクは)芸人になると一度も決意してないんですよ。人力舎に声を掛けてもらってプロになっているので」
ガク「志してはない(笑)」
──性格と関係がありますか。
ガク「言われてやることなら自分に責任が生じないので。選べない性格だから、人生で二択を迫られた時に正しいほうを選ぶのは至難の業。その選球眼もないし、いざ一人になった時に終わってしまうと思います…(笑)」
──気づいたんですが、川北さんのTシャツは〝まーごめ〟ママタルト大鶴肥満さんですか?
ガク「いいです、触れなくて」
川北「漫才中に大鶴肥満が『じゃあ、オレ何々するわ』と役に入る瞬間でスゴくカッコいい」
ガク「いらないよ、この時間」
川北「ママタルトのTシャツを着ていろんな現場に行くと僕が作ったみたいになっていてラッキーだなって(笑)」
ガク「仲がよすぎて自作だと思われていて。大鶴肥満が出しているのを買っているだけなのに」
──高学歴芸人と称されるお二人。この〝肩書〟については。
ガク「得は一回もないです!」
川北「ネタ前のフリで、高学歴のエリートコントという紹介で出たことがあって、それって『どれどれ?』となるじゃないですか(笑)コンプレックスではありますね。高学歴って面白くはないので」
ガク「損でしかない。そういうネタもしてないのに」
川北「鼻につくだけで賢くないし。『Qさま!!』に出させてもらった時に番組全体の一問目で3回しか使えないヒントを2回使っちゃって。いつもふざけているので『なんだコイツ?やりにきてるのか』と思われて…」
ガク「誰でも答えられるサービス問題なのに…。ボケだと思われたほうがまだ良かった」
川北「鼻につくバカなんです」
──芸人を選んだことでの不安や反対はありましたか?
川北「コイツは芸術一家みたいな家で。お父さんが建築士をやっていてキレイな玉をひたすら作っていたっていう」
ガク「子育てが一段落したタイミングで好きなことをやりたいと勤めていた会社を辞めたんです。ある日、部屋に入ったらツルッツルの玉を作っている親父がいて、いろいろな大きさのカラフルな泥団子のいいヤツみたいな玉を(笑)」
川北「お兄ちゃんも小説家を目指していたんでしょ」
ガク「小説家になりたいと言った次の日から着ていた服を全部捨てて、袴を着るスタイルに。どんな小説を書いてるか聞いたら純文学ではなくライトノベルで、袴もよく見たら薄い迷彩柄のダサいヤツ。母親は芸人になるんだろうと思っていたけど、父親は本当に大丈夫か?と反対するポーズをして」
川北「ポーズだけ?」
ガク「どっちなんだろう?と面と向かって『芸人やりたいです』と言ったら『なにを言っても聞かないよな。オレの息子だからな』って。そのセリフを言いたいがために反対していたんじゃないか、本当にポーズだったのではと」
川北「(ガクは)なにを言っても聞くタイプなのにね」
何度も練習した下ネタが仕上がってしまいM―1決勝の候補に入り
──川北さんはどうでしたか。
川北「両親に『芸人になりたい』と言っていて、だったら大学を出ておきなさいと。芸人の仕事は頭がよくないとできないんだからって言われ、それで勉強して大学に入りました」
──デビューから10年が経ちます。描いていた将来像通りですか。
川北「デビュー直後に『日10☆演芸パレード』というネタ番組に出させてもらってスゴいチャンスだと。こんなチャンスってなかなか回ってこない、これで売れないとめちゃめちゃ厳しいことになるぞって2人で言ってたらその通り厳しい結果になりました(笑)」
ガク「ネタ番組に出たのはそれが最後で、そこから10年。だから思い通りではないです。扱いづらい芸風になるとも思ってなくてもう少しうまくやれると…」
──扱いづらいと言われますか?
川北「(扱いづらいと)言わせようとしているとしか思えない行動を取っている時があります」
ガク「言われるというよりは扱いやすそうにしている人を見たことがない」
──ライブ活動も活発ですが、印象深いライブを挙げると。
川北「一番よくなかった時期に作家の悪口を言うライブをして。ネタ見せでダメ出しをもらうんですけど、なにそれ!?と思うことが多かったので文句がある芸人を集めてネタ見せの場を舞台上で再現するライブとか…」
ガク「Tシャツのヤツは」
川北「そのオーディションに行く意味とか作家の格を六角形のグラフで表して、それでTシャツを作ろうとなって」
ガク「パラメーターみたいな。悪い、本当に悪気だけの(笑)」
川北「さすがにライブが終わった後、マネージャーから『救いがなさすぎる』と注意されました。劇場を悪く言うライブもやりました。あれはよくなかったなあ」
──自社はもちろん他事務所のライブにも多く出演されてます。お二人の戦略だったりします?
川北「吉本さんには呼んでもらってますね。マネージャーの戦略かも。事務所に所属してすぐ『この世界は、吉本にハマるかどうかだから』と言われたので」
ガク「人力舎の人が、言うセリフじゃない(笑)」
川北「渋谷∞ホールの楽屋の奥にあるイスに座るとか、吉本ぶることはありますけど(笑)それは戦略というより人間として当然のこととして」
ガク「生き物も生存するために自然と擬態したりするので」
川北「戦略ではなく、人間として最初から備わっている」
──参加されたM―1トレーニングはどのようなものですか?
ガク「M―1の運営がやっていて、ルミネとか大きな劇場で時間も4分間。準々決勝の感じで時間が過ぎたら強制暗転とかがあって」
川北「去年までは準々決勝が最高だったので役に立ちました」
ガク「M―1では絶対にやらないネタをやりたがるんです。それがあるお陰で本番では変なネタをしなくて済んではいます」
川北「何回もやってると仕上がってくるので(笑)去年は危なかった。仕上がってる下ネタが決勝の候補に入ってきてしまい」
ガク「トレーニングがありすぎるのも怖いんです」
──最後に今後の目標、展望を聞かせてください。
川北「具体的じゃなくていいなら〝まーちゃんごめんね〟で」
ガク「具体的に言わせたほうがいいです」
川北「彼が通訳してくれます」
ガク「最悪だ!オマエの将来のビジョンなんか知らねえよ!えー、死ぬまでお笑いをやっていきたいと言ってます。それさえあればいいって」
川北「あってます!まーごめで」
ガク「それで〆ないで」
PROFILE
真空ジェシカ(しんくうじぇしか)
11年1月にコンビを結成し12年デビュー。「M-1グランプリ2021」ファイナリストの注目株だ。7月30日(土)の「フードコートより愛をこめて」、8月11日(木)の「ザ・マミィ×吉住×真空ジェシカ 福山お笑いライブ」、8月16日(火)の「ホリプロお笑いライブ夏スペシャル2022」、8月25日(木)の「夏ネーター2022」などライブ出演が目白押し。TBSラジオ「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」(Podcast)、YouTube「真空ジェシカのギガラジオ」配信中。
ガク
1990年12月3日生まれ 神奈川県出身
公式Twitter 公式Instagram
川北茂澄(かわきた・しげと)
1989年5月23日生まれ 埼玉県出身
公式Twitter
真空ジェシカ(しんくうじぇしか)
11年1月にコンビを結成し12年デビュー。「M-1グランプリ2021」ファイナリストの注目株だ。7月30日(土)の「フードコートより愛をこめて」、8月11日(木)の「ザ・マミィ×吉住×真空ジェシカ 福山お笑いライブ」、8月16日(火)の「ホリプロお笑いライブ夏スペシャル2022」、8月25日(木)の「夏ネーター2022」などライブ出演が目白押し。TBSラジオ「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」(Podcast)、YouTube「真空ジェシカのギガラジオ」配信中。
ガク
1990年12月3日生まれ 神奈川県出身
公式Twitter 公式Instagram
川北茂澄(かわきた・しげと)
1989年5月23日生まれ 埼玉県出身
公式Twitter
Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花