木村拓哉さん、武田鉄矢さん、出川哲朗さん、テリー伊藤さんなど100を超えるレパートリーを持つ実力派ものまね芸人ホリさん。事務所のオーディション合格を機に99年デビューで芸歴は23年目となる。テレビ番組のMCやナレーターとしても活躍し、ホリさんを含め総勢18人の〝ホリプロコムものまね軍団〟も率いる。広告会社で営業をやっていた経験があり、現在の仕事にも通じるものがあるという。「業界全体の向上が自分にも還元されるはず」という話にはどんな意味合いがあるのか尋ねてみた。
『後輩が売れて業界が盛り上がれば自分にも利点があるという思考』
軍団のブランディング化のために制作全般を手掛ける番組を作った──ホリプロコムものまね軍団のご紹介からお願いします。
「河口こうへい、松田幸起、メルヘン須長が入ってきて10年ぐらい前に〝広似苑〟というライブをやっていたんですよ。僕は事務所にものまね多いなぐらいにしておきたかったのにマネージャーが『軍団にしましょう』とブランディングしだして。沙羅、ジャッキーちゃんが加入して層が厚くなった感じはありましたね。何人かで仕事をしていく中で『もっと増やしましょう』と社内オーディションをやりまして2期生が誕生。後輩が売れたほうが自分も仕事が増えると思っているので、みんなでネタを作ったりアドバイスし合う形を作る、そんな雰囲気になってきたところで、メルヘン須長が『R―1ぐらんぷり』ファイナリストになったりモリタク!&河口こうへい、ハリウリサもテレビ出演が増えて、21年だと2期生のアイドル鳥越やオキシジェンが成果が出始めて、今度は『3期生を募集しましょう』と。気づいたら15組18名の大所帯になりました」
──活動としてはチバテレ『ホリプロコムものまね軍団オフィスDEライブ』出演も。
「芸人の前は広告会社で営業マンをやっていたので30代後半ぐらいから『あのまま続けていたら』と思うようになり、もう1パターンの人生があってもいいなと。裏方をやりたい、バラエティ番組を作りたい、営業もやっていたからできるんじゃないかなって。それを併せ持ったインフォマーシャル的な番組が〝オフィスDEライブ〟で。チバテレのプロデューサーに大学の同級生がいて『ホリプレゼンツ求人任三郎がいく!』という番組を一緒にやっていて、スポンサーを取ってくるから企画・構成・制作・演出を全部やらせてくれと。ホリプロコムのものまね陣が増えて、実績が出てきたから『調子に乗って冠番組やり始めたな』というのをブランディング化しようと思って。番組ロゴも自分でお金を出して作って、だから番組のエンドロールは僕の名前ばっかりです。あと全員が出ているという形にして。若手がレギュラーを持つのはなかなかできないのでモチベーションを持たせたかった。それにオフィスでやるのって変わってて面白いじゃないですか。美容室とか建築現場や飲食店とか、そこで働く人の前でやる。ネタはインフォマーシャルになるようなものをカスタマイズして」
──番組は30分?
「15分番組です。3組でネタを披露して、カメラに映ってないところでは30分ぐらい別にやります。簡易型のスピーカーとマイクだけ用意して、出演者に関してはこれも自腹で抗原検査をやらせて。全部やっていますね、コロナ禍だったのでやっぱり」
──さすが!ホリプロコムものまね軍団のリーダー。
「めちゃめちゃやっています!でも制作をやることでスタッフ側の気持ちが少しは分かって良かった。出たいと思われるように自分では頑張っているつもりです」
──敏腕営業マンとしても。
「仕事の合間を縫って1日で4、5件やったり。プロデューサーの彼がビジネスセミナーをやっているんですよ。そこでクライアントを集めてリストを作るというから『ホリさんもどう?』と言われて、やりましたよ(笑)1時間ぐらいZoomで」
──結果は出ましたか?
「意外と案件があってチバテレさんに精査して頂いた中から営業に行ったり。たまに話が難しくなってきて脳みそが足りないなあってなることも(笑)僕は福利厚生の一環ぐらいの感じでやっているんですけど、それが販売促進の話とかになってくると…。でも自分で交渉したほうが決定率は高い。打ち合わせの時でも社員さんと写真を撮ったり、めちゃめちゃ撮って何もないことがありますけど(笑)それでも全然OK。一度、同行したマネージャーがひいていました、何枚撮るんだって(笑)」
DМ送り付け大作戦が功を奏して多くの商談をまとめた会社員時代
──そんなホリさんがものまね芸人になられた経緯は。
「小1の時に文集で『将来は漫才師になりたい』と書いていて、当時は漫才ブームで欽ちゃんの番組もドリフもすごかった。お笑い的なことが好きだったのと先生や友だちの真似をする、ものまねが笑いを取りやすかった。ただ普通に考えたらテレビに出るのは無理じゃないですか。だから裏方をやりたいと。高校ぐらいからマスコミ系に進もうと考えて大学に進んで、3年生の時にフジテレビのものまね素人オーディションを見つけて『一回ぐらいはテレビに!』と受けるも落ちまして。その1年後ぐらいに松村(邦洋)さんが出てた『笑っていいとも!』のコーナー、箱の中に松村さんとご本人と素人ものまね名人が入っていて誰が誰なのかって当てるっていう。出川(哲朗)さんの募集があってアルタに行ったらコージー(冨田)さんと原口(あきまさ)さんがいて運良く僕も出れて、その後もオーディションに呼ばれるんですよ。で、コージーさんと『ものまねうまいからプロになれば』『大学4年生だから就職する会社も決まってます』というやり取りがあり、会社員になった頃にコージーさんと原口さんがさんまさんとタモリさんでバーッと出だしてあーっと思って。2人に触発されたのもあり会社勤めに疑問を持ち始め、有給使ってオーディション受けたりネタ見せに行ったり。インディーズライブで力試しして最終的にホリプロに受かりました」
──会社員時代はどんな仕事を。
「銀行のノベルティグッズを作るのが主な仕事で同期7人のうち女子3人と僕が新規営業担当に。たまたま99年はミレニアムに向けていろいろプロジェクトが進んでいる中で会社がメモ帳のパテントを持っていたからテレビ番組宛てに宣伝して欲しいと送ったらTBSの深夜番組からオファーが。『その予算だったら時計とストラップもつけてイケますよ』と提案したら決まって。それでDМ送り付け作戦を続けていたらバラエティ番組やドラマとの商談もまとまり。そんなことを研修が終わってから半年ぐらいやっていました」
『会社員時代は営業マンで今は〝商品〟両方を汲み取れて良かった』
観る絶対数を増やすべき!キャスティングに困ったら連絡して!!──その時期と、現在の仕事に通じていることはありますか。
「会社とか仕事がどんなものかよく分かりました。売上がないと企業としては成り立たないから上げてナンボなんだと。ティッシュやメモ帳を売ってきてくれと言われても全然面白くないし、売りづらい。ということは売りやすい商品にしたらいいのか、とか比較的、逆算してものを考えるようになりましたね。今だとマネージャーが営業マンで僕は商品。売りやすい商品にならなきゃと思うのと同時にマネージャーならどんな商品でも売れるようにって。両方を汲み取れた気はしました」
──話は変わりますが、現在どのくらいレパートリーが。
「よく聞かれますが130ぐらいかなって。レギュラーメンバー20人ぐらいでやっています」
──新ネタで人を選ぶ基準は。
「仕事的には今この人はやっておかないというのをやる。一方で自分が面白いと思っている人を。基本的には面白い人、好きな人をやりますね」
──練習中のネタは?
「さらば青春の光の森田(哲矢)くん。練習中というか、その段階なのに『新ネタ、ないですか?』と聞かれて、やらされちゃう。森田くんはよく出ているし、意外とやっている人がいないので」
──木村拓哉さんから公認を頂いた話もいいですか。
「月9ドラマの『ラブジェネレーション』が好きで観ていて、20年近く前からやっていたんです。で、ここ数年、芸能界や事務所さんのルールが変わってきたのか木村さんのLINEスタンプが出た時、その中に『ちょ、まてよ!』が入っていて。自分で言うのはおこがましいんですけど2、3コなんで?というのがあってそれって僕が単独ライブ用に作ったワードなんですよ。あと長澤まさみさんと共演した映画『マスカレード・ホテル』の宣伝も兼ねて『全力!脱力タイムズ』にゲストでいらっしゃったことがあって、木村さんが『ホテル事情をロケしてきました』とV振りしたら僕と福田彩乃がやってるんですよ。それを僕ですと言い切ってやっていてメディアで『ホリさんがものまねしているのは知ってましたよ』と初めて名前を言ってくれた!次は『クイズ!ドレミファドン!』の特番で、絡めるかもしれないと話があって」
──ネットニュースで見ました。
「本番の5時間前にOKが出て。同じフジで変人の冠番組をやっていたので僕と山本(高広)くんで行くと。山本くんが渡部篤郎さんでスタジオには渡部さん、木村さんがいらっしゃっていて掛け合いしながら入っていったらめちゃくちゃザワザワして(笑)木村さんの前で全力で小芝居を…。自分から言いづらかったのを司会のヒデ(中山秀征)さんが聞いてくれて『大丈夫っしょ!』とOKを頂きました。ご自身の番組にも呼んで頂いて、すごく礼儀正しい方で年も芸歴も格も僕が下なのにさん付けで言ってくれて」
──最後に、今後については。
「需要がある限り、やれるだけやります。周りが盛り上がってくれれば、こっちを引っ張ってくれると勝手に思っているので」
──同じようなことを取材の冒頭でもお話をされています。どんな意味合いが。
「後輩とはいえライバルと思いがちだけど業界が盛り上がっていれば仕事がくると思っているので。例えば、SNSで上がってきたコたちがテレビに出る時は呼んでくれたり、そういうコたちがウチにいればもっと仕事が増えるんじゃないか、自分を引っ張ってほしいながある。あと、広くはなってきましたが小さいコミュニティなのでものまねを観る絶対数を増やした方がいい。ブッキングに困ったらホリプロコムに連絡してくれと、タイプが違う18人がいるから。マネージャーがねじ込んでくっつけるのもよくやるから、みんなで売れたい。ほかの事務所を敵対視しているワケではなく、業界が盛り上がれば自分たちにも仕事がくると考えているので」
PROFILE
ホリ
1977年2月11日生まれ 千葉県白井市出身
木村拓哉、武田鉄矢、出川哲朗、テリー伊藤など多数のレパートリーを持つデビュー20年超のものまね芸人。17年と19年に日本テレビ系「ものまねグランプリ」優勝の受賞歴がある。年間100ステージ以上を全国各地で開催しスペシャルものまねライブ「変人」のメンバーとしても活躍。テレビ東京系「激!今夜もドル箱」MCや日本テレビ系「マツコ会議」ナレーション、チバテレ「ホリプレゼンツ 求人任三郎がいく!」などに出演中。千葉県白井ふるさと観光大使としても活動している。
公式Twitter
INFOMATION ホリプロコムものまね軍団
木村拓哉さんに扮したホリさんと3期生のメンバー(後列左から)まーなさん(推しものまね:きゃりーぱみゅぱみゅさん)、二ルルたむたむさん(推しものまね:河村隆一さん)、二ルル山中勝仁さん(推しものまね:槇原敬之さん)、きのこちゃん(推しものまね:長澤まさみさん)、ドロンコへいやさん(推しものまね:宮本浩次さん)
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ホリ
1977年2月11日生まれ 千葉県白井市出身
木村拓哉、武田鉄矢、出川哲朗、テリー伊藤など多数のレパートリーを持つデビュー20年超のものまね芸人。17年と19年に日本テレビ系「ものまねグランプリ」優勝の受賞歴がある。年間100ステージ以上を全国各地で開催しスペシャルものまねライブ「変人」のメンバーとしても活躍。テレビ東京系「激!今夜もドル箱」MCや日本テレビ系「マツコ会議」ナレーション、チバテレ「ホリプレゼンツ 求人任三郎がいく!」などに出演中。千葉県白井ふるさと観光大使としても活動している。
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木村拓哉さんに扮したホリさんと3期生のメンバー(後列左から)まーなさん(推しものまね:きゃりーぱみゅぱみゅさん)、二ルルたむたむさん(推しものまね:河村隆一さん)、二ルル山中勝仁さん(推しものまね:槇原敬之さん)、きのこちゃん(推しものまね:長澤まさみさん)、ドロンコへいやさん(推しものまね:宮本浩次さん)
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Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花