映画出演本数100本超、今年も『セーラー服と機関銃ー卒業ー』や『64ーロクヨンー前編/後編』などの話題作公開が続く俳優の宇野祥平さんが出演した映画『俳優 亀岡拓次』が1月30日から公開される。オファーがあればどんな役でも応じ、私生活では酒を楽しみとする脇役一筋の地味な役者・亀岡拓次の慎ましい人生を、安田顕さん主演で描く本作。宇野さんは主人公の脇役仲間で、モデルの1人とも噂される。そんな若きバイプレイヤーの雄とも称される宇野さんもまた、映画関係者から出演依頼が絶えない。引っ張りだこの魅力をひも解いてみた一。
安田(顕)さんと酒を飲むシーンお互い本気で酔っ払ってます(笑い)
──宇野さんが出演された映画『俳優亀岡拓次』では主演の安田顕さん演じる亀岡の後輩俳優を演じていますよね。安田さんは撮影以外でも映画そのままの関係を維持したとか。「待機場所が居酒屋や韓国料理屋だったから、お酒を一緒に飲ませて頂きながら本番を待ってましたね。しかも本番でも一緒に飲んでるから、2人で飲むシーンはお互い、本気で酔ってます(笑)基本、亀岡拓次と僕が演じた宇野泰平がいる場面は、お酒を飲んでいるシーンばかりですから。安田さんは、ほかのシーンでも飲んでましたから、かなり飲んだでしょうね」
──お二人とも酔っていたとは(笑)映画のパンフレットには「僕だけが知っている安田さんが…」とコメントを寄せられていますが、その隠れた一面もぜひ、教えて頂ければ。
「撮影中も撮影外も同じ安田さんでいて下さったので、正直、境界線が曖昧なんです。それは映画に滲み出ていると思うので、ぜひ作品をご覧頂ければ。実は撮影中、僕自身も酔っていて、本当のところはあまり覚えていないんですよ(笑)それぐらい、安田さんは雰囲気作りに長けた方でした」
──そういった雰囲気作りに飛び込むことも、役作りの一環ですか。
「安田さんの雰囲気作りの上手さがそうさせて下さったところはありますし、横浜(聡子)監督に引き出された部分も大きいです。僕はいまだに役作りに関して分からない部分がありますが、今の自分から出るものを表現すればいいと、教えてくれるのが監督なんです」
──劇中ではお茶目なシーンもありますが、あれも監督に引き出されたということですか。
「宇野泰平が、安田さんが演じた亀岡を『いいなぁ~』と、子どものように羨ましがるシーンですよね。あれはホント、横浜監督が引き出してくれたものです」
──では、役との相違点は。
「う~ん……完成作品を観て『こんな自分もあったんだ』と驚くことの方が多かったから、あまり分からないんです。僕は横浜組に参加すると毎回、他人のことどころか自分のことすら全然分からない事実を突きつけられるので。似ているところは分からないんですけど、違う点を挙げると、着ている洋服が僕のではない、というところです。個人的にはキャラクターがプリントされたトレーナーを着る勇気がありません…」
──ですよね(笑)ちなみに、ご自身が好きなシーンは?
「亀岡拓次と宇野泰平が、街を歩くシーンです。作品の軸でもあると思うんですけど、この映画ってストーリーを追うのではなく、亀岡を追う映画だと僕は思っています。亀岡には俳優という仕事もあり、プライベートもあり、恋もある。そして、亀岡が歩いて行く先には、漠然とした寂しさが感じられる。その寂しさは感傷でも哀愁でもなく、普段は意識することがない、当たり前にある寂しさなんだと思います」
──ほかにもあればぜひ。
「宇野が亀岡に、自分が観て面白かった映画を話す場面でしょうか。宇野は言葉を編集せず、頭に浮かんだそのままを伝えるから、亀岡は分からないんだけど、でもなんか分かる。その、理屈以外でなんか分かるというところが好きです」
──今まで100作品以上に出演していますが、俳優を目指す原点は。
「小3くらいの頃、祖父に映画館へ連れて行ってもらって勝新太郎さん、渥美清さん、森繁久彌さんなどが出ている映画を観たことがきっかけです。僕を映画館に放り込んで祖父はどっかに行ってました。その間、祖父が何をしていたか今も分かりません。名立たる方々の作品を観て、映画は、普段自分の周りにいる大人たちからは見えない部分を見せてくれるんだというのが、僕の印象でした。俳優になりたいと思ったというより、映画の中で見る人物に圧倒された覚えがあります」
競艇を中継するカメラマンの仕事含め紹介のみで職探し経験はゼロ
──その後、宇野さんは日本一を目指して上京したんですよね。「映画を観ていた大人たちが、登場人物に向かって“よっ、日本一!”と叫んでいたんです。だから、僕が心惹かれた登場人物は日本一なのかと思っただけなんですよ」
──そして上京したのは22歳ですよね。それまでは。
「高校を卒業してから、最初は営業の仕事をしました。その会社の飲み会がすごく楽しかったんですけど、それでなんだか嫌だな、と思ってしまって。すぐに辞めてしまいました」
──その後は?
「僕の親戚には商売を営む人が多くて、祖母からもずっと『手に職をつけろ』と言われ続けていたんですね。だから当時も映画が好きではありましたけど、役者になる選択肢はなくて、親戚が紹介してくれた花屋へ修行に行きました。その店がかなり大規模で、朝、仕入れた花を捌く…捌くというのは店に出すまでの準備ですけど、捌くのに夕方までかかるほど大量に仕入れる店で。通勤に片道1時間ぐらいかけて通って1日、10時間ぐらいは働いてましたね。店の裏にある駐車場で、花束を作ったり、バラの棘を抜いたりして。仕事三昧でしたけど、息抜きに映画をまた観るようになって。あるとき、仕事から帰る電車の中で、役者になろうと思ったんです」
──それで上京したのでしょうか。
「ではなく、大阪の梅田を歩いていたら、専門学校の看板を見つけたんです。若気の至りで『映画に出るなら自分で撮ればいい』と考えていたので、入学しました。入学費用は、大工や防水関係の仕事に就いていた友だちに仕事を紹介してもらって工面して。それで、夜間部に入学して、昼間は友だちに紹介してもらった、競艇を中継するカメラマンのバイトをしました。そこで出会った大阪芸大の人から声を掛けてもらって出た映画『絵里に首ったけ』が役者としての初作品です」
──ここまで経緯を聞くと宇野さんは、お仕事すべてご友人に紹介してもらっていますよね?
「そういえば自分から探したことがありません(笑)これまでずっと、人に助けられている人生です。振り返ってみると、人との縁と出会いが僕の財産なんだと痛感しますね。上京当初は友だちが居候させてくれましたし、録音スタジオ内の喫茶店のバイトを紹介してくれたのも、先輩でしたし。そこの店長である方に言われたことは、今でも覚えてます。『あなたのキャベツの盛り方は面白くない!』って言うんですよ。当時は何を言ってるのか分かりませんでした。キャベツの盛り方に答えなんてないじゃないですか。でも、その答えのないものに勝手に答えを決めつける仕事を許さない方だったんだな、と最近やっと思うようになりました。どんな仕事にもいえるやり方、というか気持ちの持ちようのようなものを見せてもらっていたと思います。横浜監督も含め、ヒントを下さる方々との出会いがあるからこそ、今の自分があるんだと思います」
INFORMATION
■映画『俳優 亀岡拓次』
INFO&STORY
映画やテレビでよく見かけるが、作品名や本人の名前もすぐにはパッと浮かばない……そんな脇役メインの俳優として活躍する亀岡拓次(安田顕)、37歳独身。泥棒やチンピラ、ホームレスと演じた役は数知れず、大作から自主映画まで、声が掛かればどんな役でも応じる亀岡は、監督たちに重宝され仕事が途切れることはないが、プライベートは1人お酒を楽しむ地味な生活。撮影現場と酒場を行き来する毎日だ。そんな“カメタク”がロケ地で出会った居酒屋の女将・安曇(麻生久美子)に恋をして……。世界的巨匠からもオーディションの声が掛かり、人生に大きな転機が訪れるのか? 戌井昭人の小説「俳優・亀岡拓次」を、「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督が映画化。
CAST&STAFF
出演/安田顕・麻生久美子・宇野祥平・新井浩文・染谷将太・浅香航大・杉田かおる・工藤夕貴・三田佳子・山崎努
監督・脚本/横浜聡子
原作/戌井昭人
音楽/大友良英
配給/日活
公式HP
1月23日(土)北海道先行、1月30日(土)テアトル新宿ほか全国ロードショー
PROFILE
宇野祥平(うの・しょうへい)
1978年2月11日生まれ 大阪府出身
00年に映画「絵里に首ったけ」(三原光尋監督)で俳優デビュー。映画やテレビドラマ、CM、DVDシネマ、舞台のフィールドで役者として活動。主演短篇映画「女」「鵜野」が、ひろしま映像展2005でグランプリと演技賞を受賞し注目を浴び、これまでに100本以上の映画に出演している。近年の主な出演作は映画「オカルト」「超・悪人」「ぼっちゃん」「わたしのハワイの歩き方」「百円の恋」「深夜食堂」「味園ユニバース」「夫婦フーフー日記」、ドラマ「一番電車が走った」「となりのシムラ」「ウルトラマンギンガ」「深夜食堂」シリーズなど。公開待機作に3月5日公開の「セーラー服と機関銃-卒業-」、3月19日公開の「つむぐもの」、5月7日&6月11日公開の「64-ロクヨン-前編/後編」、6月25日公開の「二重生活」などがある。
■映画『俳優 亀岡拓次』
INFO&STORY
映画やテレビでよく見かけるが、作品名や本人の名前もすぐにはパッと浮かばない……そんな脇役メインの俳優として活躍する亀岡拓次(安田顕)、37歳独身。泥棒やチンピラ、ホームレスと演じた役は数知れず、大作から自主映画まで、声が掛かればどんな役でも応じる亀岡は、監督たちに重宝され仕事が途切れることはないが、プライベートは1人お酒を楽しむ地味な生活。撮影現場と酒場を行き来する毎日だ。そんな“カメタク”がロケ地で出会った居酒屋の女将・安曇(麻生久美子)に恋をして……。世界的巨匠からもオーディションの声が掛かり、人生に大きな転機が訪れるのか? 戌井昭人の小説「俳優・亀岡拓次」を、「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督が映画化。
CAST&STAFF
出演/安田顕・麻生久美子・宇野祥平・新井浩文・染谷将太・浅香航大・杉田かおる・工藤夕貴・三田佳子・山崎努
監督・脚本/横浜聡子
原作/戌井昭人
音楽/大友良英
配給/日活
公式HP
1月23日(土)北海道先行、1月30日(土)テアトル新宿ほか全国ロードショー
PROFILE
宇野祥平(うの・しょうへい)
1978年2月11日生まれ 大阪府出身
00年に映画「絵里に首ったけ」(三原光尋監督)で俳優デビュー。映画やテレビドラマ、CM、DVDシネマ、舞台のフィールドで役者として活動。主演短篇映画「女」「鵜野」が、ひろしま映像展2005でグランプリと演技賞を受賞し注目を浴び、これまでに100本以上の映画に出演している。近年の主な出演作は映画「オカルト」「超・悪人」「ぼっちゃん」「わたしのハワイの歩き方」「百円の恋」「深夜食堂」「味園ユニバース」「夫婦フーフー日記」、ドラマ「一番電車が走った」「となりのシムラ」「ウルトラマンギンガ」「深夜食堂」シリーズなど。公開待機作に3月5日公開の「セーラー服と機関銃-卒業-」、3月19日公開の「つむぐもの」、5月7日&6月11日公開の「64-ロクヨン-前編/後編」、6月25日公開の「二重生活」などがある。
Interview&Text/内埜さくら Photo/おおえき寿一