バラエティ番組の出演を機に、「イケメンなのにコメントが独特で面白すぎる！」と話題をさらった俳優の満島真之介さんがテレビアニメ『僕だけがいない街』で務めている主人公の悟役（29歳。10歳の悟役は土屋太鳳さん）でも話題となっている。作品の見どころはもちろんのこと、話は仕事観や人生観、過去の経歴にも飛び……!?

「悟ではなくても『あの時こうしていれば…』と過去を心の中でリバイバル（再上映）することは誰にでもある。だから悟は、どんな人でもスッと感情移入しやすい人物だと思います」

──声優初挑戦ですが、オファーが来た時の感想は？
「楽しみでしかありませんでしたね。人って、あまり知らない相手にもイメージを持っていますよね。職業に対しても、人に対しても。僕は、なるべくそういう先入観は、となりに置いておきます。今回のような新しい仕事に取り組む時も、人と関わる時もすべてにおいて。イメージで固めちゃうと新しい発見を見逃してしまうので。声優という仕事は未知の世界でしたが、自分がワクワクするかしないかで判断しました」

──では本作の話を聞いた時もワクワクしたんですね。
「原作を読んだらとてつもなく面白くて、意義がある仕事だと感じましたし、コレには足を踏み入れたいな、と」

──特に原作のどこが面白く感じたのでしょうか。
「主人公はピザ屋でバイトをしながら漫画家を目指す29歳の青年、悟なんですけど、一般的に悟の状況って主人公になりえませんよね。でも、その彼が作品を背負っているのが面白いなと。しかも悟は、向き合いたくない過去にリバイバル（再上映）という形で引き戻されてしまう。僕は、リバイバル（再上映）できる悟が、特殊な能力を持っているとは捉えていないんです。身体ごと過去に戻る人はいませんけど、『あの時こうしていれば…』と過去を心の中でリバイバル（再上映）することは誰にでもあると思っているので。だから悟は、年代や性別に関わらず、どんな人でもスッと感情移入しやすい人物だと思います。人には誰しも使命が与えられていると思うんですけど、勝手に気づかされてしまうところも、作品の魅力ではないでしょうか」 ──では俳優業は満島さんにとって、使命ということですか？
「僕自身はこの職業に就こうとは考えていなかったんですよ。20歳の頃に半年かけて自転車で日本一周したのですが、昇っていく太陽の光を浴びた時、初めて、なにかを表現したいという衝動にかられました。それまで俳優という仕事は、自分の選択肢に、まったくなかったのですが。だから、自分が思い描いていた人生とは違いますね」

──ほかに夢があった、と。
ほかに夢があった、と。 「両親と同じ、体育の先生になりたかったんです。だから高３の夏に体育大学へ見学に行ったんですけど、そこにいる誰よりも僕が体育大学の学生っぽかったんですね（笑）大学に行くなら４年間で人生の基盤となるものを築きたかったんですけど、その瞬間は、それが感じられなかった。それなら４年間、あらゆることに挑戦しようと決めて上京しました。最初のバイトは、履歴書も書かずに家の近所にあった学童保育に飛び込んでスタートしました」

──フットワークが軽いですね！
「僕らの世代って情報過多で育ってるから、難しく考えすぎると、まったく違う方向に走りがちになるんです。親の世代は自ら入手しなければ知ることができなかった情報を、僕らはワンクリックするだけであたかも深く知ったような感覚になれる。それが悪いこととは言い切れないんですけど、自分の五感、六感まで含めて全部で体験したいんです。そうすれば情報が入ってきた時に、自分なりに咀嚼する力が備わるだろうな、と。だからたくさん、バイトも経験しました」

──ちなみにどんなバイトを？
「沖縄料理屋やレンタルビデオ店のスタッフ、パチンコ屋、運送業、映画の助監督、ティッシュ配り…たくさんやりましたね。だけどほら、こうして思い出すことも、悟のリバイバル（再上映）と一緒なんですよ。聞かれなければ、過去のバイト経験を思い起こす機会なんてありませんから」 ──では、本作を通じてリバイバル（再上映）したりも？
「２話で幼少期の悟が美味しそうに食事をするところを、母親が温かい目で見守るシーンがあるんですけど、僕自身に重ね合わせようとしてみても、正直あまり覚えていなかったんです。でも先日、実家に帰ってアルバムを見たら、愛情をたっぷりと注がれている自分がそこにいて、涙が止まらなくなりました。それで気づいたんです。脳の断片に残っている記憶はごくわずかで、だからこそ感覚は大切だな、と。フッと突然沸いた感覚は、ご先祖様や血縁が出したサインなのかもしれませんし、経験から出たのかもしれない。実は脳って頼りないからこそ、感覚を研ぎ澄ませることは大事なんですよね。超えてはいけないラインは法律が決めてくれているんだから、その中なら自由に動き回ったっていいと思うんです。僕自身がそれを体現できる人間でありたいですね」

──その感覚で感じた、土屋太鳳さんの第一印象は？
「年齢も性別も違いますけど同じようなパワーが流れていて、彼女とだったら楽しくできるな、という感覚が第一印象でした。作品を観るたびに何となく似てるな、と思っていたんですけど、『まれ』のチーフで監督をしていた方とカメラマンさんが、僕がＮＨＫで初めて主演したドラマと同じ方々なんです。パワーの出し方や空気感がそっくりだと言われ。その直後にこのお仕事を頂いて、しかも彼女とは同じ役。練習したわけでもないのに声を重ねる場面も息が合って、運命的なものを感じました。この空気感と、アニメ界に流れるであろう新たな風をみなさんにもお届けしたいですね」