CINEMA×STYLE 257号vol.2

CINEMA×STYLE　257号vol.2

一月の声に歓びを刻め

『幼な子われらに生まれ』の三島有紀子監督の最新作は島を舞台に心に傷を抱える３人の物語

　お正月、洞爺湖の近くで１人暮らしするマキの家に家族が集まり、彼女が作ったおせち料理を囲む。マキはかつて次女れいこを亡くしており、一家団らんの場に喪失の雰囲気が漂う。八丈島に暮らす牛飼いの誠のもとに、娘の海が５年ぶりに帰省する。誠は交通事故で妻を亡くし、男手ひとつで海を育てた。海は妊娠しており、結婚さえ知らずにいた誠は複雑な思いを抱く。元恋人の葬儀に参列するため故郷の堂島を訪れたれいこは、レンタル彼氏をしている男トト・モレッティに声をかけられる。過去のトラウマから誰にも触れることができない彼女は、そんな自分を変えようと、男と一晩過ごすことを決意する。

　日常のささやかな時間に生まれる人間の軋みを描きつつ現代の問題を浮かび上がらせ、観る者の心をえぐる三島有紀子監督の新作であり長編10作目の節目の作品となる本作は、自主映画から製作がスタートしたオリジナル企画。その想いに賛同した出演者やスタッフが結集して、最高純度のプロジェクトが実現した。監督自身が47年間向き合い続ける“ある事件”をベースに、北海道・洞爺湖の中島、伊豆諸島の八丈島、大阪の堂島の三つの“島”を舞台に、ストーリーの重要な存在として登場する“れいこ”をめぐる心の葛藤が描かれていく。

　“船でやってきた者”れいこを前田敦子、“船を待つ者”誠を哀川翔、“船で向かう者”マキをカルーセル麻紀が演じ、３人の魅力的で個性的な役者たちと、方舟（はこぶね）をテーマに罪と赦しを圧倒的かつ繊細な映像で描いた。

2月9日(金)テアトル新宿ほか全国公開

【CAST】前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰、片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、松本妃代、とよた真帆
【STAFF】脚本・監督／三島有紀子
【INFO】2024年／日本／1時間58分配給／東京テアトル
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(C)bouquet garni films

梟―フクロウ―

韓国で年間最長NO.1記録を樹立！史実に残された最大の謎に迫る“全感覚麻痺”サスペンス・スリラー

　盲目の天才鍼医ギョンスは病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。ある夜、ギョンスは王の子の死を“目撃”したことで、おぞましい真実に直面。追われる身となった彼は限られた時間のなか、謎を暴くため闇を駆けるが…。目撃者が謎めいた死の真相を暴くため奔走する姿を予測不可能な展開で緊張感たっぷりに描き、韓国で大ヒットを記録したサスペンススリラー。

2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

【CAST】リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン
【STAFF】監督／アン・テジン
【INFO】2022年／韓国／1時間58分　配給／ショウゲート
公式HP

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哀れなるものたち

『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組んだファンタジー

　天才外科医のバクスター（ウィレム・デフォー）の手によって胎児の脳を移植されたベラ（エマ・ストーン）は、不幸な死から甦る。世界を自分の目で見たいという欲望に駆られたベラは、放蕩者の弁護士ダンカン（マーク・ラファロ）に誘われて大陸横断の旅に出る。偏見から放たれたベラは世界を吸収し、成長していく――。アラスター・グレイの同名小説をヨルゴス・ランティモス監督が映画化。

風よあらしよ劇場版

今から100年前に自由を求めて闘った一人の女性の生涯を描いた吉高由里子の主演ドラマの劇場版

　村山由佳による評伝小説をもとにしたNHKドラマ「風よあらしよ」の劇場版。大正時代に結婚制度や社会道徳に真正面から異議を申し立て、関東大震災後の混乱の中で殺された女性解放運動家・伊藤野枝の波乱に満ちた生涯が描かれる。吉高由里子が野枝に扮し、平塚らいてうを松下奈緒、野枝の夫の辻潤を稲垣吾郎、のちにパートナーとなる無政府主義者・大杉栄を永山瑛太が演じた。

2月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

【CAST】吉高由里子、永山瑛太、松下奈緒、音尾琢真、石橋蓮司、稲垣吾郎ほか
【STAFF】原作／村山由佳『風よあらしよ』(集英社文庫刊)　演出／柳川強　脚本／矢島弘一　音楽／梶浦由記
【INFO】2023年／日本／2時間7分　配給／太秦
公式HP

(C)風よあらしよ 2024 (C)村山由佳/集英社

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