「人生で負けを数多く経験しない。だから辛い。負け慣れしたほうがいい。麻痺してくるので」「逃げても頑張らなきゃいけない時がくる。それまで気長に待って、楽しいほうに」「頑張っても報われないことがあるのを学ばせて頂いたので。なるようにしかならないと」と名言連発!総額1000万円以上の借金ネタでクズ芸人として大活躍のピン芸人・岡野陽一さんにパチンコとの出会いから芸人になる経緯、ギャンブル負けからの切り替え術、前向きになる秘訣、これからのビジョンまで根掘り葉掘り。笑いも満載の現場レポートをお届け!
『楽して楽しく生きていく―これが人類の一番の目標でいいと思う』
完済のため一生懸命に!努力したらお金ってもらえるんだと学んだ「ドカント!懐かしい~めっちゃ見ていた記憶が。昔からありますよね。高いバイトをずっと見てたんですよ」
──有難うございます。岡野さんの借金の原点は学生時代にありと聞きました。大学を単位ゼロで中退されて…。
「4年通って0単位だったんですよ。単位がいるらしいんですよね卒業するのに。なので無理だなっていうのはありまして。運なんですよねアレは。ツイてなかったという。10回も行ってないんじゃないですか」
──では、どこに(笑)
「入学と同時に、憧れのキャンパスライフを思い描いたんですが、初めての1人暮らしで。ちょうどその時期にパチンコと出会いまして(笑)そっちのほうが楽しくなっちゃいまして。親には言ったんです。『辞めたい』と。でも親は『一回入ったんだから行け!』って。折れてくれないので、またパチンコ生活になって。いよいよ0単位を知った時に『もう辞めていい』と。申し訳ないですね、親には…お金は……」
──パチンコは?
「ずっと負けてますよ。ただ楽しかったです。覚えたてなんで毎回楽しくて。でも、負けて負けて150万ぐらい借金して」
──なのに、パチンコで完済されてますよね。
「一生懸命やりましたね。ホントに努力!今までの楽しいパチンコとは変わるというか、朝も昼も夜も行って。努力したらお金ってもらえるんだなと学びましたね。大学中退後も京都にはずっといて行きつけのデ・マッセってパチンコ屋さんだったんですけど(笑)出してくれたんですよそのお店が。デ・マッセさんに毎日通って返しましたね」
──その後、地元の福井に帰られてアルバイトを。
「完済する2年間、真剣にパチンコをやっていた時は一本でやりましたけど、アルバイトは学生の時もしてました。バイトしてパチンコに行っての繰り返しでちゃんと(借金を)積み重ねてました。友人の紹介で働き始めたんですが、その頃はパチンコ以外に興味がなくて何を作っている仕事なのか、どうでもいいというか。ただ毎日、工場に通っていたんです」
──そこで、どんな仕事を。
「オジサンが作業するのを朝9時から夕方5時まで見る仕事です。ネジを締めてるオジサンが高い場所で作業する時は、ほかに脚立を抑えるオジサンがいるんです。そのオジサンがちゃんと脚立を抑えているかを見る仕事なんですよ。ずっと監視…。ヒマですよ。ケータイも見れない環境で。それを何か月か繰り返したら『オマエちゃんと見るな』って言われて。意外と見ないんですよ、飽きちゃうし。で、いろいろな見る仕事を任されていく。監視人みたいな腕章をして、最終的には泥を見るという仕事になりました」
──泥ですか?
「配管から茶色い泥が落ちてくるのを、1人で見るんですね。その茶色い泥が茶褐色になったら上の者を呼びに行く係をやってました。昇格して(笑)収入は日当1万5千円から8千円とかで」
──辞めて芸人を志したのは。
「飽きたのが一番デカいです。2年働いて1回も泥が茶褐色にならなかった。ただイスに座っていて考える時間だけはあって、いろいろ考えるじゃないですか人生についてとか。芸人になるとは決めてたんです最終的には。ダウンタウンさんの『ごっつええ感じ』を観て育ったので芸人にはなりたいと思っていたんですが売れて忙しくなる前にやりたいことをやりたいなって。パチンコが楽しかったんで。芸人になったらできないじゃないですか忙しくて。実際は今もバリバリできるんですけど(笑)ダラダラ流されて泥を見るのも飽きたし、そろそろなるかって」
言っちゃダメなんですが働かずに楽してお金を頂きたいのが本音で
──26歳で芸人デビュー。当時の将来像は。
「毎日、テレビ局に通ってМCの番組があってコント番組があってという王道の売れてる芸人さんになるもんだと思い描いてました。現状は全然っ違いますね(笑)違いますけど、ズレてきました。後付けかもしれませんが、あまり忙しいのはイヤだなって。本当に働きたくないです(笑)働くことに苦手意識がありまして理想の芸人像とは違いますが毎日働いて3時間しか寝れなくて次の現場に行ってというのがイヤだなって…なったこともないんでアレですけど本当にイヤです!」
──そんなにキッパリと。
「もっと売れたいとかは正直。こんなこと言っちゃダメなんですけどね。人間って頑張っている人を応援する生き物なので得ではないなと思いますが、なるべく働かずに、楽してお金を頂きたい。楽して楽しく生きていく―これが人類の一番の目標でいいと思う。僕の借金にそうですけど、そんなに悪いこと言ってます?小学生の時って普通に消しゴムの貸し借りしてましたよね。それがみなさん大人になってコイツ返さないじゃないかと変な発想になってる。悪い人間は一部で、悪い金借りには我々も被害を受けてるんですよ。善良な金借りがね(笑)」
──お笑いコンビ巨匠を解散後、ピン芸人に。現状については。
「コンビを組んでた時の仕事内容とピンになってからが違って。コンビの時はキングオブコントとかネタを頑張ってやっててネタ番組にたまに呼んでもらって、食えはしなかったですけど芸人やってるなって感じだったんですが、コンビのネタをずっと作ってきたので前よりネタがうまく出来なくなっていて、ピン芸人って結構難しいなと。なのでパチンコのネタとか自分が思うことをやろうと」
──パチンコ、ギャンブルから繋がっていくんですね。
「スケジュールを見るとクズとギャンブルしか仕事が来ないんですよ。最初はイヤイヤ~と思ってたんですけど結局これで呼ばれることしかないんだなと理解したというか。クズとか借金は有り難いと思ってます。何もないですもん他の人と違うところが。名刺代わりじゃないですけどそこの〝入り〟はいいと思ってます」
──クズ芸人、借金芸人の〝肩書〟を受け入れて。
「クズ仕事にもランクがございまして(笑)空気階段の鈴木もぐらとかと出させて頂くクズ仕事はパチンコ番組にしても比較的良質なものが多い(笑)受けちゃいけないクズ仕事ってあるんですよ。全部有難うございます!でやっていくとクズが5人ぐらいいた時に張り合って言っちゃいけないことを言う合戦になっていくので」
──競馬、パチンコ、麻雀とギャンブル好きな岡野さん。負けからの切り替え方法は?
「人生で負けってそんなに数を味わうもんじゃないですよね。普段味わわないからツラい。慣れなんですよ。負けに慣れちゃダメ!と言う方もいらっしゃいますがドンドン負けたほうがいいと思ってます。麻痺してくるので(笑)負けという事実だけを見ると、お金の面ではただの負け。これをどうプラスにするか、メンタルで優るしかない!『8万負けた!最悪だ』を『8万しか負けなかった!嬉しい』に持っていく。それがとにかく大事ですね(笑)」
──究極のポジティブシンキングで立ち向かえと。
「長年通えばみんなできるようになるんですよ。一喜一憂してたら持たないんですよ毎日行くのに。だからメンタルを沈ませないことが大事。僕はマイナスをめちゃめちゃ想定して生きているので今日も『どこかでアキレス腱が切れるな』と思って家を出てくる。でも今は切れてない。嬉しいんですよ。どんなにパチンコで負けようが、切れてなければ勝ちなので」
『普段から負けに慣れること。メンタルを沈ませないことが大事!』
困難に直面して克服するのが美徳も時代は変わり逃げていいんです──お金がない、借金があって苦しい。気分が落ち込みますよね。岡野さん流の前向きになる秘訣は。
「借金して思いましたが、日本の教育で『逃げちゃダメだ!』があるんですよ。エヴァンゲリオンの碇シンジくんも言ってた。物事に立ち向かっていくと何でも解決できるという教え。マンガでも主人公が困難に立ち向かって乗り越えていくのが美徳とされる。けど何でも戦っていいもんじゃない。例えばクマが目の前に出た時に戦う人はエラいんですか?褒められるんですか?小学校の時に牛乳が飲めないと言ってるのに、給食時間が終わっても飲んでるコがいたでしょ。飲んだらエラいねって。今は令和、時代が変わりました。逃げていいんです。僕も逃げて逃げてココに辿り着いた。大学行ったけど勉強するのがイヤでパチンコに行って、次は工場に行ってヒマだからイヤだと辞めて芸人になって…。でも、いつか逃げられなくなるんですよ。お笑いではあまりないですけど辞めたら次にやることがないので」
──パチンコだと?
「もう終わりだって数えきれないぐらい。一銭もなくて、マジで終わりだって。それが意外と終わらない。でもいずれその時がくる。昔でいうと(学生ローンに)お金を借りに行ったら怖いオジサンが『これ以上借りたら兄ちゃんクビ吊らなあかんで』と。そこが僕の終わりだった。怖いと心から思って、そうなったら人間変わるんで勝手に。義務が嫌いなのでやらなきゃ!やらなきゃ!と思うとマジでキツくなるんです人生的に。逃げても頑張らなきゃいけない時がくる。それまで気長に待って、楽しいほうにいって頂ければ」
──勉強になります!売れて稼ぎが増えると借金は減りますよね。そのバランスというか…?
「一番恐ろしいヤツなんですよそれが(笑)売れること、収入を得ることと共存できない。なくなったら借金…借金キャラは変ですけど(笑)金貸してくださいボケもできない。悪いヤツ、悪役でいいんです。受け入れて笑ってくださるみなさんのキャパが僕らをOKにしてくれてる。ただ、このままいけると思ってないですし、仲間たちは裏切り始めてますから」
──そうなんですか。
「もぐらは結婚して借金を返し始めている。王道のパターンで汚い作戦。クズで出して頂いたうちに返すボケをやり出す。「今月は2万だけ返しました」とか。好感度も上がって汚いなって思ってまして(笑)後輩のザ・マミィ酒井も少しずつ返し始めて、ツイッターでアピールしたり。みんな人が変わってしまって。私だけですよ、ちゃんとクズ業をやっているのは(笑)彼らは借りるとか、やってないですから。収入も追いついてきてるので。僕も前よりは上がってきたと思いますけど、ちゃんと使ってますから。競馬で100万勝ったことがあるんですが、次の週に110万負けて。持っちゃダメなんだ意味がないんだと。最近はお金があると人にあげたりしてます。使っちゃうんで。ビジョンというかクズで出して頂いたら違う何かがいるんですね。クズで出して頂いたけど、実はコレが得意です!みたいな。最初はクズで出たけどクズがなくてもこの人、面白くない~?がベストですけど、そこは目指してません(笑)先ほども言いましたが、そんなに頑張らずに。パチンコとかで、すごい頑張っても報われないこともあるを学ばせて頂いたので。いい台でもハマりの時期があるを勉強させてもらったので、なるようにしかならないと思っていて。クズがダメなら、その時に考えようかなって。そんなに深く考えないで」
PROFILE
岡野陽一(おかの・よういち) 1981年11月29日生まれ 福井県敦賀市出身 スクールJCA17期を経て08年にお笑いコンビ巨匠を結成。14年と15年の「キングオブコント」で決勝進出するも、16年に解散。以降はピン芸人として活動。社会からはみ出してしまった〝おじさん〟を演じるネタが中心で「R-1ぐらんぷり2019」ファイナリスト。バラエティを中心に活躍し、借金エピソードでも人気に。BS12 Twellv「ドランクドラゴンのバカ売れ研究所!」、テレビ埼玉「新王庭伝説」、ABEMA「真里矢口の火曜The NIGHT」、YouTube新!王庭チャンネル「くずパチ」出演中。
公式Twitter
岡野陽一(おかの・よういち) 1981年11月29日生まれ 福井県敦賀市出身 スクールJCA17期を経て08年にお笑いコンビ巨匠を結成。14年と15年の「キングオブコント」で決勝進出するも、16年に解散。以降はピン芸人として活動。社会からはみ出してしまった〝おじさん〟を演じるネタが中心で「R-1ぐらんぷり2019」ファイナリスト。バラエティを中心に活躍し、借金エピソードでも人気に。BS12 Twellv「ドランクドラゴンのバカ売れ研究所!」、テレビ埼玉「新王庭伝説」、ABEMA「真里矢口の火曜The NIGHT」、YouTube新!王庭チャンネル「くずパチ」出演中。
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Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花