ファッションモデルと精肉店の店主がテレパシーでつながる切なくて不思議な感覚が味わえる映画『こえをきかせて』が4月6日(土)から8日(月)まで渋谷ユーロライブにて限定公開。肉屋の主人、安春を演じた川瀬陽太さんに、本作のメガホンを執ったいまおかしんじ監督、艶姿を披露した渡辺万美さんとのエピソードや作品の魅力とともに、俳優業への信条を聞いた。
「ちょっと気持ちが和む作品になっているので生きづらいなと思った時に、『こいつアホやな』と思ってほっこりして下さい」
格差コメディーではなく互いの寂しさを出したくて
──タッグを組んだいまおかしんじ監督とは旧知の仲ですよね。「90年代半ばからなので20年以上の付き合いですけど、昔から今も変わったオジサンですよ(笑)かつてはアンドロイドのおじいさんが出てくるピンク映画を作って、会社に怒られたりしていましたし。いまおかさんは、できそこないの人や人間関係が好きなんです。例えシリアスな内容だとしても、どこか間抜けたところがないと撮りたくないというか。書く本は基本的に変わらず、同じテーマを形を変えて繰り返す作家かな、と捉えています」
──だからでしょうか。川瀬さんが演じた妻に浮気を繰り返される安春は、観ていて切なかったです。
「僕も安春を演じる上で、渡辺万美さんが演じたモデルのハルカとの格差的なギャップコメディーだけではモチベ ーションが保てなかったんです。安春はダメ男なんですが、ハルカも同じように寂しいんだよね、みたいな切ないニュアンスが見えたほうがいいと感じていたので、目指したところを評価して頂けるのはうれしいですね」
──いまおか監督はどんな演出を?
「演出しないっす(笑)で、撮影中に『分からないんでもう1回』とよく言うんです。書いた本をこっちに放り投げてくる感じですね。俳優によっては頼りないと感じるかもしれませんけど、キャスティングの段階で『俺も分からないから一緒に(答えを)探そう』という姿勢で挑んでくれるのは、考え方によっては期待してくれているとも言えると思います。僕は今回、冗談めかして『いつもの〝いまおかテイスト〟にはしないぞ』なんて言いつつ演じました」
──その意気込みは、渡辺万美さんとの濡れ場でも発揮したのでしょうか。
「自分の濡れ場を語るのは恥ずかしいですねぇ…。でも、彼女自身がサバサバとした男っぽい性格で、こっちに気を遣わせないようにしてくれていたので非常にやりやすかったです。撮影が終わった後、いまおかさんと3人で焼き鳥屋で飲んだんですけど、飾らない性格で、魅力的なコだと思いました」
俳優は染められて転がった結果の存在で継続が大事
──安春とハルカはテレパシーで通じ合いますが、安春が考えることって多くの男性に当てはまるのでは?「ハルカを見て思わず『いい体してんな。ボン、キュッ、ボンだ…』と思ってしまうシーンですよね。まぁ、考えるでしょうね(笑)自信のある人が露出の多い格好をしていたらつい見ちゃうのは、男の性かと。見ると『見ないでよ』と言われるので、あれは『どないせえ言うねん!』とか思ったりすることが僕もあるので」
──あはは! では、川瀬さんがテレパシーで通じてみたい相手は。
「デヴィッド・クローネンバーグ監督の『スキャナーズ』という映画でも超能力者たちの闘いが描かれているんですけど、実際に通じたら精神的に耐えられないでしょうね。僕自身は、仕事をしていて自分が期待している以上に自分のことを考えてくれていたのだということが、その人の行動で分かったり、間接的に聞いたりした時に『通じていたんだ』と思うことがあります。関係が10〜15年以上経って、言わなくても分かる間柄になることができたり。それが、この仕事を続けてきて一番の財産になっています」
──では、仕事をする上で一番大切にしていることは。
「人間関係。そこしかないです。自分がどうしたいというこだわりはないので、自分より相手を優先します。以前、 ワークショップで『就職先としての映画俳優』というテーマで話をしたんです。俳優業は、なりたい自分にはなれないかもしれないけど、続けてやることが大事だと。誰かにいろいろと染められて、転がった結果の存在なので、 その時に『こんな俳優になりたくなか った』と、後悔しても遅いよ、と。有り難いことに僕はそういう思いを抱いていないんですけど、いまだに毎日自信がないですね。僕以外の俳優は〝俳優としての免許〟を持っている感じがするんです。僕は無免というか」
──キャリアがあるのに、ですか!?
「確定申告で『今年これだけか〜。あんなに頑張ったのに』って、落ち込んでこの取材現場に来ています(笑)数はこなしているんですけど〝チャリーン〟だな、と思いながら。後輩に示しがつかないんで頑張らないと、と今、 思っているところです」
──では本作のPRをしないと!
「ですね(笑)この作品では渡辺万美さんのナイスバティをぜひ拝んで頂きたいです。あとは最近、こういったテイストの映画が少ない気がするので、生きづらいなと思った時に、『こいつアホやな』と思ってほっこりして頂ければ。ちょっと気持ちが和む作品にな っているので、劇場でご覧下さい」
INFORMATION
■映画『こえをきかせて』
【INFO&STORY】
ファッションモデルのハルカ(渡辺万美)は食事制限が祟り撮影中に気を失ってしまう。その帰り、立ち寄った精肉店の店主・安春(川瀬陽太)の「いい体してんな。ボン、キュッ、ボンだ…」という言葉が頭の中に聞こえてしまう。最初は不審感と恐怖にさいなまれるハルカだったが、子どもの頃からエスパー能力を持つ安春と次第に打ち解けていく。仕事への葛藤、愛妻の不倫など互いの悩みを曝け出していく2人は、ある出来事から一線へと踏み出していく…。キングレコードの新映画レーベル「エロティカ クイーン」の記念すべき第一弾作品。
【CAST&STAFF】
出演/渡辺万美・吉岡睦雄・今川宇宙・長屋和彰・広瀬彰勇・古藤真彦・丸純子/川瀬陽太
監督・脚本/いまおかしんじ
製作/キングレコード
配給/アルゴ・ピクチャーズ レジェンド・ピクチャーズ
公式Twitter
4月6日(土)〜4月8日(月)渋谷ユーロライブにて限定公開
(C)2019キングレコード
PROFILE
川瀬陽太(かわせ・ようた)
1969年12月28日生まれ 神奈川県出身
95年、『RUBBER’S LOVER』で主演デビュー。自主映画から大作までボーダーレスに活動し、16年に「第25回日本映画プロフェッショナル大賞」で主演男優賞を受賞。近年の出演作にドラマ「anone」「ルームロンダリング」、映画『体操しようよ』『清澄』『おっさんのケーフェイ』『月夜釜合戦』などがある。映画『天然☆生活』は3月23日公開。
公式Twitter
■映画『こえをきかせて』
【INFO&STORY】
ファッションモデルのハルカ(渡辺万美)は食事制限が祟り撮影中に気を失ってしまう。その帰り、立ち寄った精肉店の店主・安春(川瀬陽太)の「いい体してんな。ボン、キュッ、ボンだ…」という言葉が頭の中に聞こえてしまう。最初は不審感と恐怖にさいなまれるハルカだったが、子どもの頃からエスパー能力を持つ安春と次第に打ち解けていく。仕事への葛藤、愛妻の不倫など互いの悩みを曝け出していく2人は、ある出来事から一線へと踏み出していく…。キングレコードの新映画レーベル「エロティカ クイーン」の記念すべき第一弾作品。
【CAST&STAFF】
出演/渡辺万美・吉岡睦雄・今川宇宙・長屋和彰・広瀬彰勇・古藤真彦・丸純子/川瀬陽太
監督・脚本/いまおかしんじ
製作/キングレコード
配給/アルゴ・ピクチャーズ レジェンド・ピクチャーズ
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4月6日(土)〜4月8日(月)渋谷ユーロライブにて限定公開
(C)2019キングレコード
PROFILE
川瀬陽太(かわせ・ようた)
1969年12月28日生まれ 神奈川県出身
95年、『RUBBER’S LOVER』で主演デビュー。自主映画から大作までボーダーレスに活動し、16年に「第25回日本映画プロフェッショナル大賞」で主演男優賞を受賞。近年の出演作にドラマ「anone」「ルームロンダリング」、映画『体操しようよ』『清澄』『おっさんのケーフェイ』『月夜釜合戦』などがある。映画『天然☆生活』は3月23日公開。
公式Twitter
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一