「キミツの出ているシーンが観客の心のパーキングエリアであればいいなと思いました。映画を観て自分の人生と重なる部分があったら、自分に嘘をつかずに向き合ってみて下さい」
スティーブン・スピルバーグ監督に才能を見出され、映画『レディ・プレイヤー1』でハリウッド進出を果たした森崎ウィンさんが出演の映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』が11月16日より公開される。作品の魅力はもちろん、森崎さんの家族との触れ合い方や下積み時代の話、大作に出演したからこその仕事観にも迫った。
棘あるワードを吐きつつも優しいキミツ役は難しくて
──太賀さん演じるタイジは、反抗期すら迎えられませんでした。森崎さんご自身の反抗期は?「僕は19〜20歳と遅かったんです。当時、両親の反対を押し切って、家賃5万円の木造アパートで一人暮らしを始めました。この仕事に対して理解もしてもらえていなかったので若気の至りでしたけど、近頃はやっと応援してもらえるようになりました。バイトを辞めてこの仕事だけで自分を賄えるようになったのも、最近なんです。20 代半ばまでは、焼肉屋の店員や派遣で晴海埠頭の掃除なんかをしていました」
──反抗期を過ぎて思うことは。
「申し訳なかったと思うんですけど、いまだに面と向かって『ありがとう』と言うのは恥ずかしいんですよね。今は実家暮らしなんですが、母親が祖母と住むためにミャンマーへ帰っているんです。離れてみて考えさせられた結果、今は1つだけ気をつけていることがあります。母親の話を聞いてあげようと。日本に住む期間が長かったので、祖母のためとはいえ文化の違いでストレスが溜まっていると思うんです。電話で40分ぐらい愚痴を言う日もあるので( 笑)『そうだね』『大丈夫だよ』と、ひたすら(母親の)話を聞いています」
──優しい! 映画のお話も。タイジにとって運命の出会いとなる、愛ある毒を吐くキミツの役作り方法は。
「キミツは人との間の取り方やおせっかいの仕方が独特で、存在しているようでなかなかいないキャラクターなんです。棘のあるワードも頻繁に使いますし。御法川(修)監督からは、『その裏に隠れている優しさを出してほしい』と言われました。ニュアンスは分かるんですけど、イチ役者としてカメラの前で表現するとなると、すごく難しかったですね。自分の中のどの引き出しを使うか、手探りしながら演じましたけど、最終的には共演者の方々に助けて頂きました。あとは監督を信じて、自分の壁を壊すというか、枠にはまらないよう意識しました。『これ、このシーンで普通やる?』といった芝居をあえてテストの時からどんどん試したんです」
──共演者の皆さんとはどんな話を。
「吉田羊さんが演じる母親から愛されないタイジ役の太賀が相当しんどかったと思うんです。だから僕ら4人(白石隼也さんと秋月三佳さん)でいる時は、タイジを休ませてあげる役割があったのかな、と感じていました。現場ではカメラが回っていない時でも作品同様の関係性だったので、スクリーンに反映されていたらうれしいです」
映画と人生が重なった時は嘘をつかずに向き合って!
──お仕事のお話も。スティーブン・スピルバーグ監督のオーディションで言った日本語が話題になりました。「『First to the egg.(一番になろう)』を、『卵を取りに行こう!』と言った件ですよね。頭が真っ白でしたし、どうせ日本語は分からないだろうと思って(笑)咄嗟に言ってしまったんです。スピルバーグ監督がハリウッドで僕を初めて認めてくれた監督ですし、『レディ・プレイヤー1』に出演できたことは、人生のターニングポイントになりました」
──監督との出会いが、仕事に対する姿勢も変えたそうですね。
「目標は口にすることにしました。口に出すことによって声が自分の耳に届くので、自分にプレッシャーをかけていることになるんです。言葉にすることで見えてくるものがあると思いますし。まだ28年間しか人生経験がないので、はっきりとは断言できないんですけど、芸能界に限らずこの世は人間が作り上げた世界。向き不向きではなく、やるかやらないかだと思いたいからこそ、口に出すようにしました。今の目標は、10年以内にオスカーを獲ることです!」
──有難うございます。森崎さんが思う本作の魅力も教えて下さい。
「きっと誰もがなかったことにしたい過去があると思うんです。この作品を観ると、どこかのシーンが自分の人生と重なって、走馬灯のように駆け巡る瞬間があると思います。思い返すのは、大切な何かかもしれません。もしその事柄が現実的に解決可能でも不可能でも、向き合いたくなったら自分に嘘をつかずに向き合ってほしい。一瞬、歩みは止まるかもしれませんが、いずれぶつかる壁のはずなので。そして、向き合って、感動を誰かに広めてくれるとたくさんの人に届けられるので、僕たちもうれしいです」
──森崎さんが感じたキミツの魅力もお願いします。
「物語全体を見た時に、キミツの出ているシーンが観客の心のパーキングエリアであればいいなと思いました。疲れたから寄ってみたら面白いものが売っているな、という感覚というか。観客の皆さんは『は?』と、虚を突かれて揺さぶられて下さい」
INFORMATION
■映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
【INFO&STORY】
タイジ(太賀)は幼い頃から大好きな母・光子(吉田羊)に愛されることなく育てられた。母親からの愛の欠乏、さらに壮絶な家庭環境に耐えかね、17歳で家を飛び出し、1人で生きることを選択したタイジだったが、金持ちで華やかだが毒舌家のキミツ(森崎ウィン)や会社の同僚カナ(秋月三佳)、カナの恋人・大将(白石隼也)ら友人の言葉に動かされて母と向き合う覚悟をする。大人になってもタイジを拒絶する母。そんな母からの愛を取り戻すため、タイジは母に立ち向かっていく…。
【CAST&STAFF】
出演/太賀・吉田羊・森崎ウィン・白石隼也・秋月三佳・小山春朋・斉藤陽一 郎・おかやまはじめ・木野花
監督/御法川修
脚本/大谷洋介
原作/歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(KADOKAWA刊)
主題歌/ゴスペラーズ「Seven Seas Journey」(キューンミュージック)
配給/REGENTS
公式HP
11月16日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、イオンシネマほか全国ロードショー
(C)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
PROFILE
森崎ウィン(もりさき・うぃん)
1990年8月20日生まれ ミャンマー出身
08年にダンスボーカルユニットPrizmaXに加入しデビュー。音楽活動と並行して映画やドラマ出演を重ね、14年公開の『シェリー』で映画初主演を飾る。近年の主な映画出演作に『マイ・カントリー マイ・ホーム』『レディ・プレイヤー1』『クジラの島の忘れもの』などがある。
公式Instagram
■映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
【INFO&STORY】
タイジ(太賀)は幼い頃から大好きな母・光子(吉田羊)に愛されることなく育てられた。母親からの愛の欠乏、さらに壮絶な家庭環境に耐えかね、17歳で家を飛び出し、1人で生きることを選択したタイジだったが、金持ちで華やかだが毒舌家のキミツ(森崎ウィン)や会社の同僚カナ(秋月三佳)、カナの恋人・大将(白石隼也)ら友人の言葉に動かされて母と向き合う覚悟をする。大人になってもタイジを拒絶する母。そんな母からの愛を取り戻すため、タイジは母に立ち向かっていく…。
【CAST&STAFF】
出演/太賀・吉田羊・森崎ウィン・白石隼也・秋月三佳・小山春朋・斉藤陽一 郎・おかやまはじめ・木野花
監督/御法川修
脚本/大谷洋介
原作/歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(KADOKAWA刊)
主題歌/ゴスペラーズ「Seven Seas Journey」(キューンミュージック)
配給/REGENTS
公式HP
11月16日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、イオンシネマほか全国ロードショー
(C)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
PROFILE
森崎ウィン(もりさき・うぃん)
1990年8月20日生まれ ミャンマー出身
08年にダンスボーカルユニットPrizmaXに加入しデビュー。音楽活動と並行して映画やドラマ出演を重ね、14年公開の『シェリー』で映画初主演を飾る。近年の主な映画出演作に『マイ・カントリー マイ・ホーム』『レディ・プレイヤー1』『クジラの島の忘れもの』などがある。
公式Instagram
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一