「最終的には心地いい場所にお連れするんで、最初は狂気を内包する城宮を怖がらずに観て頂けたら。最大の見どころは、女優・平尾菜々花誕生の瞬間。ぜひ劇場で肉眼に焼きつけて下さい」
早世の鬼才・小路啓之氏が遺した家族愛の物語『ごっこ』が映画化。公開が先送りにされていたが遂に10月20日、小路氏の命日に封を切る。40歳目前にも関わらずニートの城宮と、城宮を「パパやん」と呼ぶヨヨ子の人生を賭けた究極の選択とは――。撮影時はまだ子どもが生まれていなかったという千原ジュニアさんが、自身の家族愛も絡めて作品のキーポイントを語る。
天才女優・平尾菜々花に完全にハンドリングされた
──本作の公開が決まった時に「ごっこ、やっと、きっと、ぐっど」というコメントをされています。「やっと」の真意を教えて下さい。「映画にはよくあることなんですけど、諸事情あってこの作品はお蔵入りする可能性があったんです。撮影が終わった時点ではまだギャラももらっていなかったし、せっかくやったのに『そうなんかぁ…』と少しがっかりしかけた時期がありました。それよりも何よりも、僕が演じた城宮と暮らす5歳児ヨヨ子を演じた平尾菜々花という天才女優誕生の瞬間が埋もれてしまうのは、 あまりにも惜しいなぁ、と思うてました」
──確かに圧倒される演技力でした。目の前で彼女の芝居を見て、どう思われましたか。
「紛れもない天才やな、と思いました。僕は引っ張ってもらったというか、完全にハンドリングされていたというか。城宮は少しずつ父性が滲み出てくるんですが、熊澤(尚人)監督の演出はもちろん、彼女の芝居あってこそかと。加えて記憶ではほぼ順撮りだったことも功を奏したと思います。撮影と作品の時間軸がマッチングしていて、自然な時間の流れがスクリーンに落とし込めているな、という感じはありましたね。僕らみたいな役者が本業じゃない人間にとって、順撮りは結構役に立ってくれるんです。役者さんならどんな順番で撮影しても持ってきはるんでしょうけど、僕は有り難かったですね」
──平尾さんとは撮影以外でどんなお話をされましたか。
「『学校でこんなんが流行ってる』とか『昨日は夜、帰ってから宿題した』とか、いろいろと話はしましたよ。カラフルな輪ゴムを編み込んだブレスレ ットみたいなんをくれたりとか。手紙ももらいました」
──そこにはどんな言葉が?
「クランクアップの時にくれた手紙には『すっごく楽しかったから終わるのが寂しいです』と書かれていて、可愛いなあと思いましたね。当時、5歳役を演じた彼女の実年齢は8〜9歳。今は12歳ですから撮影はかなり前で、僕はまだ子どもがいなかったんです。彼女と接していたら、『こんな可愛い子 ぉがいたらお父さん、たまらんやろなあ』という感じはありましたね」
パパやんっていいですよね僕は呼ばせ方を考え中です
──ヨヨ子が城宮を呼ぶ時の名前も可愛かったです。「パパやん、いいですよねえ。幼い頃はお父さん、お母さんで反抗期になったらおとん、おかんに変わるのが一般的で、自分の周りにもパパ、ママと呼んでる人はいなかったんで。映画でパパやんと呼ばれてみて、息子が大きくなったらどう呼ばせようか考えるようになりました」
──ご子息が大きくなったらしてみたい〝ごっこ〟遊びは。
「何歳ぐらいからいけるのか分からないんですけど、バイクの後ろに乗っけてどっか行く、みたいなんはしたいですね。子どもが生まれる前は奥さんを後ろに乗っけて旅行に行ってたんですが、息子が大きくなったら奥さんはお留守番になるでしょうね、たぶん。今のところサイドカーを取りつける予定もありませんし」
──お仕事の話も。若手時代、意識していたことはありますか。
「僕は〝続けない〟ことを選択し続けていました。アルバイトは必ず3ヶ月で辞めて転々としていましたね。回転寿司屋、本屋、喫茶店、ラーメン屋、肉体労働…いろいろやりました。当時流行っていたQ2ダイヤルのビラ配りやティッシュ配りもしましたね。『絶対に売れてこの世界で飯を食っていく』と信じるしかなかったんで『バイト先で居心地がよくなってどうすんねん』という思いもあったし、転々とすれば売れた時にしゃべるネタが増えるという狙いもあった。バイト先に就職した芸人もいっぱい見てきたんで」
──では現在、後輩芸人に共通して教えていることはありますか。
「全くないです。僕ら自身も先輩から 何かを教えてもらったというよりは、 勝手に背中を見て盗んで勉強していただけなんで。僕はただ、後輩らとキャ ッキャッと一緒に遊んでいるだけです。ただ、映画で城宮がヨヨ子に『ありがとうとごめんなさいはちゃんと言いなさい』と教えた気持ちは同感です。上のお兄さん方を見ててもそうやし」
──最後にPRをお願いします。
「実際に虐待をされていた方なんかに観て頂けたら、映画の色合いがより濃く映るかもしれません。最終的には心地いい場所にお連れするんで、最初は狂気を内包する城宮を怖がらずに観て頂けたら。最大の見どころは、女優・平尾菜々花誕生の瞬間。ぜひ劇場で肉眼に焼きつけて頂きたいですね」
INFORMATION
■映画『ごっこ』
【INFO&STORY】
大阪の寂れた帽子店には、40歳目前にも関わらずニートの城宮(千原ジュニア)と、5歳児・ヨヨ子(平尾菜々花)の親子が仲睦まじく暮らしていた。実はこの二人、他人に知られてはいけない秘密を抱えた親子だった。十数年ぶりに城宮が実家に戻ったことを知る幼馴染で警察官のマチ(優香)は、突如現れたヨヨ子に疑いの目を向ける。ごっこ生活のような不安定な二人のその日暮らしはある日突然、衝撃の事実によって崩壊してしまう……。16年に他界した漫画家・小路啓之さんの同名マンガの実写化。
【CAST&STAFF】
出演/千原ジュニア・優香・平尾菜々花
原作/「ごっこ」小路啓之(集英社ジャンプコミックス デラックス刊)
監督/熊澤尚人
脚本/熊澤尚人・髙橋泉
配給/パル企画
公式HP
10月20日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
(C)小路啓之/集英社
(C)2017楽映舎/タイムズ イン/WAJA
PROFILE
千原ジュニア(ちはら・じゅにあ)
1974年3月30日生まれ 京都府出身
89年、実兄・千原せいじとお笑いコンビ千原兄弟を結成。数多くのバラエティ番組に出演、人気お笑い芸人としての地位を確立している中で、俳優として映画やドラマにも出演。映画主演作に『ポルノスター』『HYSTERIC』『新・ミナミの帝王 劇場版』などがある。DVD「にけつッ!!35」は10月24日発売。
公式Instagram
■映画『ごっこ』
【INFO&STORY】
大阪の寂れた帽子店には、40歳目前にも関わらずニートの城宮(千原ジュニア)と、5歳児・ヨヨ子(平尾菜々花)の親子が仲睦まじく暮らしていた。実はこの二人、他人に知られてはいけない秘密を抱えた親子だった。十数年ぶりに城宮が実家に戻ったことを知る幼馴染で警察官のマチ(優香)は、突如現れたヨヨ子に疑いの目を向ける。ごっこ生活のような不安定な二人のその日暮らしはある日突然、衝撃の事実によって崩壊してしまう……。16年に他界した漫画家・小路啓之さんの同名マンガの実写化。
【CAST&STAFF】
出演/千原ジュニア・優香・平尾菜々花
原作/「ごっこ」小路啓之(集英社ジャンプコミックス デラックス刊)
監督/熊澤尚人
脚本/熊澤尚人・髙橋泉
配給/パル企画
公式HP
10月20日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
(C)小路啓之/集英社
(C)2017楽映舎/タイムズ イン/WAJA
PROFILE
千原ジュニア(ちはら・じゅにあ)
1974年3月30日生まれ 京都府出身
89年、実兄・千原せいじとお笑いコンビ千原兄弟を結成。数多くのバラエティ番組に出演、人気お笑い芸人としての地位を確立している中で、俳優として映画やドラマにも出演。映画主演作に『ポルノスター』『HYSTERIC』『新・ミナミの帝王 劇場版』などがある。DVD「にけつッ!!35」は10月24日発売。
公式Instagram
取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一
スタイリスト/鬼塚美代子(アンジュ)
衣装協力:MIDWEST
スタイリスト/鬼塚美代子(アンジュ)
衣装協力:MIDWEST