「一番は生産性が低いことをやりたいんですよ。生産性が低いところに熱狂が宿るんじゃないかと思ってて」
昨年、サイバーエージェントグループ入り、ネットテレビ局AbemaTVでのゴールデンタイム生中継も始まるなど話題にこと欠かないプロレス団体DDTから、今回はマッスル坂井さんが登場!一度は引退し、新潟で実家の金型工場の専務を務めながらマスクマン「スーパー・ササダンゴ・マシン」としてしれっと復帰。常に“文化系プロレス”の頭脳であり続ける坂井さんに、DDTの現在とこれから、そして新潟と東京を往復しながらの仕事ぶりについてもお聞きしました。
エンターテインメントの仕事は、安定したらいけないと思ってる
──今日はこういう(見本誌を出し)求人誌でのインタビューになります。「あっ、ドカントさんっていろんな求人情報が載ってるんですね。風俗店で働くのは女性だけではないと。昔ね、僕もよく渋谷とか歌舞伎町で声掛けられましたね。『プロレス好きなんです』なんて。お店で働く女性よりも断然男性の店員さんから」
──今日はお仕事の話もお聞きしたいなと。金型工場とレスラー、新潟と東京の往復という。
「DDTの全大会に出てるわけじゃないので。マイペースでやってます。僕は意外と、好きな仕事ができればお金は関係ないってタイプではなくて。細 々とでいいから好きなことで暮らしていきたい、長く続けたいということではないですね。エンターテインメントの仕事は、安定したらいけないと思ってるので。やっぱりどっかでホームラン打ちたい、一番目指したいって思ってたほうがいいんじゃないかと」
──ホームランを狙うには三振のリスクもありますよね。
「そうですね。三振のような試合を恐れちゃいけない。それができるという意味でマイペースです、今は」
──レギュラー参戦じゃないので代打の切り札ですか。『あぶさん』的な。
「あ、そうですそうです。やっぱり水島新司イズムが流れてますからね、我々新潟県民には」
──あぁ、新潟県民は。
「特に僕はプロレスファン以外に届けるのが任務だったりもするので。まあ場外ホームラン狙い」
──三振できないのは社業くらいですか。
「そこはもう着実にランナーを進める野球、高校野球みたいな愚直な仕事を目指しています。ピッチャー、審判、サードコーチャー全員に頭下げながらやるような。帽子を取って頭を下げる。頭を下げる予備動作として帽子かぶってるくらいの感じですよね」
──昨年、DDTはサイバーエージェントグループ入りして、AbemaTVでネット中継されるようになりました。4月からはゴールデンタイムのレギュラー中継番組も始まって。そうするとアピールすべきターゲットも変わってくるんですかね?
「それは極力、考えないようにしてますね。どこに届くかなんて分かんないですし。正直な話をすると、僕にとってのAbemaTV効果としてはDDTの中継よりも昨年末の『朝青龍を押し出したら1000万円』のほうがデカかったんですよ」
──それこそ新潟の、プロレスファン以外の人たちにも届きましたか。
「届きましたね。凄かった。けっこうね、みんなが集まってる場所で、それぞれのスマホで見たりしてるみたい。居酒屋とか。大晦日だったら実家で、テレビでは紅白歌合戦を見ながらスマホでAbemaっていう」
──テレビで紅白見ながら、スマホで朝青龍VSササダンゴ見て。
「だからDDTも勝負はこれからですよ。現時点で、僕らがやってることが届いてるなんて思っちゃまずい。そんな狭くないですよ、世間って」
じっくり時間をかけて味の濃いものが作りたいわけですよ!
──サイバーエージェント体制のDDTで、坂井さんがやりたいことは?「これはいつも言ったり言わなかったりですけど、DDTは興行の数が増えて、選手も増えて、毎日のように興行やら記者会見がある。そうするとなんとなくですけど、味が薄まる可能性がある。健康的っていうかね」
──さじ加減の調節は永遠のテーマでしょうね。
「僕はやっぱり味の濃いものが作りたいわけですよ。今、逆に『マッスル』みたいなものがやりたいなって。じっくり時間かけて出汁をとって、その出汁のいい味が分からなくなるくらい油分と塩味をたっぷり足して」
──時間掛けて、まあ冒険的というか実験的な興行を高木三四郎社長も「今の坂井、ササダンゴが作るビッグマッチが見たい」って言ってましたね(後日『マッスル』両国大会が正式決定)。
「まぁ今やったら面白いものが作れるんでしょうねぇ。やりたいですねぇ」
──ねぇ。
「なんかね、僕は自分の中で、金型工場の専務としての立場があり、ササダンゴ・マシンとしての役もありますけど、一番は生産性が低いことをやりたいんですよ。たった2〜3時間の興行のために何ヶ月も悩んで分厚い進行台本書いてっていう」
──確かに効率悪いですよね。
「生産性が低いところに熱狂が宿るんじゃないかと思ってて。それってブラック企業の経営者が考えがちなことなんですけど、まあ自分が自分にやらせることなのでいいかなと。マインド自体は高校の文化祭とかと一緒です。売り物のために作ってるっていうより、学校の同級生たちにスゲー!って言わせたいっていう気持ちの方が頑張れるんです」
──坂井さんはDDTのドキュメンタリー映画を作り、コラム連載もありますけど、たとえばプロレス関係なく作家デビューとか考えないですか?
「編集者の友人に酔った勢いで言われたことありますよ。小説書きませんかとか。でも今はプロレスがやりたいっていうか、やっぱりライブ、興行が一番楽しいと思って。わざわざ来てくれる人たちに向けて作るものが」
──AbemaTVで生中継されても、大事なのは会場だと。
「生中継に乗せるべきは会場の熱狂でしょう。中継は試合を見せるというより、盛り上がりを届けるものじゃないかって。外側に届ける上で、会場に来てるお客さんっていうのが最大の〝インフルエンサー〟だと思いますけどね」
INFORMATION
【INFO】
■『DDT LIVE! マジ卍』
新木場1st RINGにて、毎週火曜日(後楽園大会開催週を除く)19:00試合開始。大会の模様はAbemaTVにて生中継される。
■『マッスルマニア2019〜2030年まで待てないよSP(仮)〜』
2019年2月16日(土)両国国技館
※詳細は後日発表
公式HP
PROFILE
マッスル坂井/スーパー・ササダンゴ・マシン
1977年11月5日生まれ、新潟県出身。
大学在学中よりレスラーとして活動、またDDTの映像制作も手掛ける。プロデュース興行『マッスル』は「台本あり」を公言する斬新な演出で大人気に。2010年に引退するも、現在はスーパー・ササダンゴ・マシンとして活躍。「煽りパワーポイント」(プレゼン)が話題に。新潟ではテレビでレギュラー番組も持つ。
公式Twitter
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■『DDT LIVE! マジ卍』
新木場1st RINGにて、毎週火曜日(後楽園大会開催週を除く)19:00試合開始。大会の模様はAbemaTVにて生中継される。
■『マッスルマニア2019〜2030年まで待てないよSP(仮)〜』
2019年2月16日(土)両国国技館
※詳細は後日発表
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PROFILE
マッスル坂井/スーパー・ササダンゴ・マシン
1977年11月5日生まれ、新潟県出身。
大学在学中よりレスラーとして活動、またDDTの映像制作も手掛ける。プロデュース興行『マッスル』は「台本あり」を公言する斬新な演出で大人気に。2010年に引退するも、現在はスーパー・ササダンゴ・マシンとして活躍。「煽りパワーポイント」(プレゼン)が話題に。新潟ではテレビでレギュラー番組も持つ。
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取材・文/橋本宗洋 撮影/おおえき寿一