YouTubeの視聴回数が僅か20日間で100万回を突破した、はなわさん作詞作曲の涙腺崩壊ソング『お義父さん』が私小説として発売。ラストに近づくごとに涙がこぼれそうになる展開、繊細に描かれた愛あふれるエピソードと、初めて執筆したとは思えない作品だ。取材班は本書の家族愛にフィーチャー。超天然な奥様とのエピソードやお子さんたちへの愛を掘り下げ聞いた。「芸人なのかミュージシャンなのか、何やねんというポジションがたまらなく心地いいんですよね」と語る、芸人としてのポジショニングの取り方には独自の価値観も込められていて、社会人は参考にしてみてほしい!
唯一無二という言葉が大好きなんです。僕は、僕一人だけがいる小山で常にてっぺんにいたい(笑)
結婚後〝火事場の馬鹿力〟を経験追い込まれた人間は強いんです!
──ご著書を拝読しましたが、はなわさん記憶力がいいですね!「中1からのエピソードを書くにあたって、記憶を掘り起こすのが一番大変だったんです。時系列も含め嘘は書きたくなかったので。でもそのおかげで、若かりし頃に嫁さんに抱いていた初々しい恋心が蘇りました」
──はなわさんが頑張ってアプローチする過程が可愛かったです。
「今は僕の嫁さんですが、当時片思いしてたコに会うためだけに犬の散歩をしたりしましたからね。今は便利になりすぎているのかなって気がするんですよね。僕が若かった頃は不便だからこそ『どうやったら彼女と会えるんだろう。話せるんだろう』と試行錯誤して、手間暇かけて作戦を考えた。あの、自分の脳みそから作戦を捻り出す経験が僕自身の成長に結びついたと今は思っています」
──本書には家族への愛が散りばめられていますが、結婚っていいものですか?
「家族以外に自分の命を捨ててでも守りたいと思える、無償の愛を注げる存在って他にはないじゃないですか。僕は家族という守るべき存在が生きる活力なんです。男はいつでも絶対に自分の味方をしてくれる存在ができると強くなることも、結婚して初めて知りましたし。今は3人の子どもたちを幸せにしたいという思い一筋だけで頑張れていますが、これも結婚していなければ味わえていない感情。嫁さんには感謝しきりです」
──ですが結婚にはトラブルもつきものかと。ご著書では、はなわさんがブレイク前に奥様がご長男を出産されたという記述が。
「あの経験をしたからこそ、人間は追い込まれると強いと実感できたんです。火事場の馬鹿力という言葉は真実なんだな、と。人間は追い込まれると本領を発揮できるんですね。諸先輩方もそういった経験をされているんですよ。以前、番組の収録の合間に明石家さんまさんとお話させて頂いたんです。僕が佐賀にも家を買ってローンが大変だと話したら『そういう枷はあったほうがいいで』とおっしゃるんです。さんまさんは家の購入費用で5億円ぐらい借金を抱えた時期があるそうで、その時は声が出なくなる夢を見てしょっちゅう、脂汗をかいて起きたらしいんです。しゃべれなくなるのは芸人人生を絶たれることと同義じゃないですか。それぐらい追い込まれた経験があるからこそ、今でもお笑い界のトップに君臨しているんだろうなと思うんですよね。だからといって読者のみなさんはあえて借金をする必要はありませんよ(笑)よく『お金がないから結婚できない』という声を聞きますが、お金を言い訳にしないで結婚しましょう! 僕は貧乏時代に結婚しましたが、結婚すると自立できるし、自分の中の軸がしっかりとする気がするので」
──そこまで結婚がいいと断言できるのは奥様を愛している証拠!
「いついかなる時でも僕は嫁さんを〝卑弥呼様〟として崇めていますからね。だから『何を言っているんだろう?』と感じるようなことがあっても『卑弥呼様は神様だから、一般人の僕には理解できるはずがない』と受け入れ体制を整えられるんです(笑)子どもたちにも『男は女を守るために存在しているんだ』と教えています」
──歌にも、小説でも書かれていましたが、奥様は超天然ですし愛されるべき存在かと。
「本に書いたんですけど僕、いまだに嫁さんから『はなわ』と呼ばれているんです(笑)嫁さんに許可を取りながら執筆したんですけど僕が『あなたもはなわだよ…』と心の中でツッコミを入れる下り、危うくNGを出されるところでした。2割ぐらいは〝嫁さんNG〟が出ましたが、あとは事実です。僕と嫁さんと長男の元輝が辰年で、次男の龍之介と三男の昇利は違うんです。次男と長男が生まれた時に嫁さんが『辰年じゃない!』と言い出して、『それじゃあ12年に一度しか産めないじゃん!』という下りもすべて。僕が売れない頃に嫁さんがウエイトレスとして働いていたレストランでカップルに、『サプライズのケーキはいつお持ちしましょう?』と言ってしまったエピソードも書きました」
──あはは! 奥様とは離れた時期もありますが初恋のお相手ですよね。経験が少ないとも言えますが男として満足ですか。
「なるほど、そうきましたか(笑)そこは人によりますよね。他の人はもっといろいろと経験するんでしょうけど、僕は意外とそのあたりは大丈夫なんでしょうね」
結婚にメリットを感じない…特に20〜30代に読んでもらいたい!!
──はなわさんの仕事人生を助けてくれた人物も数多く登場していますね。「コージー富田さんは今も足を向けて眠れません。僕を『前説じゃなく本番で使ったほうがいい』と推してくれたからこそ、やっと人並みの給料を得て生活できるようになったんです。僕の人生の中で大きな転機だったと、本を書くことで改めて気づきました。『前説の仕事に行ってくる』と言うと嫁さんは『何よ、ワイセツな仕事って』とブンプン怒っていましたけど(笑)僕もコージー富田さんのように、客観的かつニュートラルに後輩の芸を判断できる先輩にならなくちゃと思います。島田洋七師匠や原口あきまささん、前田健さんからもたくさんのことを学ばせて頂き今があるんです」
──〝はなわ流の夢の叶え方〟も教えて頂きたいです。
「僕は唯一無二という言葉が大好きで、他の人と同じことをしたくないんです。この髪型やベースギターで歌うことも、それを突き詰めた結果です。自分にそれほど自信もないので同じ土俵での戦いになると『どうぞ、どうぞ』と一歩引いてしまう性格も影響しているんでしょうね。僕は、僕一人だけがいる小山で常にてっぺんにいたい(笑)〝小山の大将〟で満足なんでしょうね」
──では読者も唯一無二の場所を見つけたら夢が叶いますか。
「いいと思うんですけど、斬新でぶっ飛んだことばかりやっていても周りに受け入れてもらえないんですよね。基本をしっかりと叩き込んで土台を作り込んだ上で挑戦するのはいいと思うんですけど。唯一無二の場所を嗅ぎ当てる嗅覚を研ぎ澄ませることも大切ですし、何事も挑戦するのはいいことですよ。若い人はビビって挑戦しない人もいますけど、とりあえずやってみることって大事です」
──だから若い頃は裸芸も?
「裸で肩からベースを掛けてみたら股間が隠れたアレですよね。原口さんには『はなわ天才やん!?』と言われたし、自分でもイケると踏んだんです。でも好きなコがライブを観に来ることになって『やべえ!』と思って辞めました…」
──(取材陣大爆笑)改めてご著書『お義父さん』のPRを。
「結婚にメリットを感じない世代、特に20〜30代に読んでもらいたいです。僕ぐらいの普通レベルの人間が今も必死に仕事をしつつ、幸せな結婚生活を送っていることを知ってもらえたら、もっと結婚に対して興味がわくのではないかと。仕事に関する価値観も随所に書いてあって読みやすいと思います。ただ、小説執筆は初体験すぎて、目指すべき場所が分からないんですよね。勉強のため村上春樹さんの作品をを拝読しましたが『このタッチは無理だな』と即諦めましたし…(笑)でも芥川賞と直木賞を狙いますか! というのはビッグマウスすぎるので冗談ということで(笑)」
INFORMATION
■『お義父さん』
【REVIEW】
今年いちばん泣ける歌、あの「お義父さん」が小説になった!奥さんの誕生日にプレゼントして曲で、妻そして家族への想いが込められた作品で、YouTubeにアップして20日間で100万回の再生を記録。小説版では、歌詞に描ききれなかったエピソードも収録。楽曲同様に、実話を基にはなわ家の夫婦愛、家族愛などが綴られている。笑えて、泣ける、極上感動ストーリーがそこに!
著者/はなわ
KADOKAWAから12月14日発売。1350円(税込)
PROFILE
はなわ
1976年7月20日生まれ 佐賀県出身
お笑い芸人、シンガーソングライター、ベーシスト。出身地の佐賀県を題材にしたベース弾き語り漫談やモノマネなどで人気を博し、03年に『佐賀県』でCDデビュー。同年の「第54回NHK紅白歌合戦」に出演。04年、「第41回ゴールデン・アロー賞」芸能新人賞受賞。その後もテレビを中心に活躍。17年3月にはYouTubeで公開した『お義父さん』が涙腺崩壊ソングとして注目を集め、17年5月、ビクターエンタテインメントよりシングル『お義父さん』をリリース。同曲で「第59回輝く!日本レコード大賞」の企画賞を受賞した。
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■『お義父さん』
【REVIEW】
今年いちばん泣ける歌、あの「お義父さん」が小説になった!奥さんの誕生日にプレゼントして曲で、妻そして家族への想いが込められた作品で、YouTubeにアップして20日間で100万回の再生を記録。小説版では、歌詞に描ききれなかったエピソードも収録。楽曲同様に、実話を基にはなわ家の夫婦愛、家族愛などが綴られている。笑えて、泣ける、極上感動ストーリーがそこに!
著者/はなわ
KADOKAWAから12月14日発売。1350円(税込)
PROFILE
はなわ
1976年7月20日生まれ 佐賀県出身
お笑い芸人、シンガーソングライター、ベーシスト。出身地の佐賀県を題材にしたベース弾き語り漫談やモノマネなどで人気を博し、03年に『佐賀県』でCDデビュー。同年の「第54回NHK紅白歌合戦」に出演。04年、「第41回ゴールデン・アロー賞」芸能新人賞受賞。その後もテレビを中心に活躍。17年3月にはYouTubeで公開した『お義父さん』が涙腺崩壊ソングとして注目を集め、17年5月、ビクターエンタテインメントよりシングル『お義父さん』をリリース。同曲で「第59回輝く!日本レコード大賞」の企画賞を受賞した。
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取材・文/内埜さくら 撮影/おおえき寿一